2002年12月7日(土)惟信高校での例会の記録です。

 12月に入り、めっきり寒くなってきました。日の落ちるのもずいぶん早くなり、下校のころは外は真っ暗闇。
ノーベル賞のW受賞が話題になり、日本の科学力は捨てたものではない、心配ない、という声が聞こえますが、
田中さんは20年以上前の、小柴さんは50年?以上前に教育を受けた方々です。現在の科学教育がうまくいっ
ているということにはなりません。それどころか、年々意欲を持たない学生が増えている、というのが現場の実
感です。
 教育の成果は20年、30年経ってから現れてきます。現状での予想では、あまり芳しい結果を生まないように
思われてなりません。
 結果を的確に予想し、その結果についての対策を今の時点でとっていく必要があるように思います。私たちの
研究がその対策に役立つことを願っています。


電気力による分子運動
(舟橋さん)
 発泡スチロール球に墨汁をつけ乾燥させて作った軽量導体球。これを底にアルミを貼った容器に入れ上に金網をかぶせました。床のアルミと蓋の金網を静電高圧発生器につないで、電圧をかけると導体球が踊りだします。
 蓋を金網にしたことで上から様子を見ることができます。
 
大きな球を入れることで、ブラウン運動も見られます。
 浸透圧の定性的な理解にも使えます。
 

静電高圧発生器で3000Vぐらいかけています。

     

墨汁をつけた発泡スチロール

不導体の白い球がブラウン運動します。

しきりに適度な穴をあけて溶質分子が移動できないようにして、浸透圧の理解に役立てます。

超音波の干渉
(山岡さん)
 超音波も干渉するということを、理解しやすい教材で示しました。
 まずは、クインケ管やつりざお共鳴管で可聴音で干渉を確認します。
 
 次に超音波。超音波スピーカーを容器に入れ小さな穴から超音波を出します。
 もちろん聞こえませんから、超音波→可聴音変換器(清水さんの製作)を使います。
 ミニクインケ管とミニ直管共鳴器で数ミリの動きで干渉が起こることが確かめられます。

 超音波も可聴音も波長の違いだけで、同じように干渉をすることがわかりますね。

 でも、ミニクインケ管、ミニ直管共鳴器なんて、よくつくりましたね。

アルミパイプと塩ビ管ですりあわせがぴったり。

クインケ管のスピーカー部
釣竿共鳴管、右側にスピーカー部がある。


   ミニクインケ管とミニ直管共鳴器

水平飛び速度計
(清水さん)
 マジックテープを巻いた投射体を、マジックテープを張った板で受け止めます。落下位置にぴたりと止まります。水平到達距離は投射体が支持棒から離れる速さに比例します。落差の高さを目盛っておけば、水平到達距離と落差との関係が簡単に測定できます。
 何といっても落下位置にぴたりと止まることがいいですね。
 

つまみーな
(清水さん)
 写真のように角度をつけて2枚の板をつなぎます。これを指でつまんで持ち上げられるか、というものです。
 仮説社の製品をもとに考えたシンプルバージョンです。
 摩擦力、力の合成などを含んだ面白い教材になりそうです。
 いろいろな角度のものを作ってあります。自分の限界(?)にも挑戦できます。
 
 タイルでも同様のものをつくりました。

 さて、ここで問題です。木とタイル、どちらのほうが大きな角度のものまで持ち上げられるでしょうか

ばねばかり楽器
(清水さん)
 100円ショップで売っていたばねばかり(ウェイトキーホルダー)を利用して、弦楽器を作成。ばねばかりは4kgwまで目盛りがあります。張力と弦の振動数がどういう関係にあるか、一目でわかる装置というわけです。
 残念ながら音色はいまいちでした。でも、張力が4倍になると確かに1オクターブ上がることは確認できました。

 100円ショップって本当に何でもあるんですね。

巨大紙蛇
(清水さん)
 荷造り用テープを利用した巨大紙蛇(もう紙蛇の紙は噛み蛇にしなくては・・・・)。
 今度は指ではなく腕ごと入れて引っ張り合います。

 そのうち、体ごと入る超巨大な蛇が現れたりして・・・・・・。
 恐ろしいですね (^^;)


X線はどこから出ている?
(林さん)
 イメージインテンシファイヤ(映像増幅装置)でX線の探求を続けている林さん。
 X線といえば制動放射を考えます。電子が陽極の金属にあたって制動を受け、そのエネルギーがX線になるというものです。クロス真空計の最も真空度が高い管で、図のような電圧をかけ、X線の発生実験をしていたところ右のほうにはほとんどX線が出ないことがわかりました。制動放射を考えると、右方にたくさんのX線が出るように思われます。

 次の図のように逆に電圧をかけてやると、今度は右方にたくさんのX線が出るのです。この場合、陽極は棒状。制動放射は狭い面積でしか起こらないのでは、と考えられます。


 いろいろ調べて、どうも電子がガラス壁に衝突してX線が出ていると考えれば、すべてうまく説明できるということがわかってきました。
 古いクルックス管でのX線の発生もうまく説明できます。新しいクルックス管はガラスの成分が違うのか、X線がほとんど出ません。ちゃんと対策がとられているのですね。
 
 もちろん、テレビでも電子がガラス面にあたるのですから、X線が出てもおかしくないのですが、ちゃんと対策がなされており、テレビ画面から出るX線はほとんどありません。

2次元分光計
(伊藤さん)
 ピンホールやスリットをあけた筒に、ホログラムシートで覗き窓を作ります。美しい2次元分光模様が見られます。写真は青い電球をこれで見たものです。覗き窓を2重にして回転できるようにすると、模様が動きます。

コウモリの音
(伊藤さん)
 コウモリの音を、コンピュータで声紋分析しました。
 アブラコウモリが発する超音波のパルスの間隔が、虫を捕まえるときに急激に変わることや、コウモリの種類によって音の内容が違う点の説明もありました。
 
 このソフト、cooledit というそうです。英語版のシェアウエアだそうです。インターネットで検索すれば入手法はわかるとのこと。残念ながら日本語版はありません。
 超音波だけでなく、人の声なども調べられます。コンピュータでオシロスコープの代わりをさせられるというものです。それ以上の性能もありますので役に立ちます。
 

電磁力
(臼井さん)
 授業で電磁力を説明するためにつくったものです。磁石にアルミパイプをレール状に貼り付けて、導体棒を走らせるというものです。接触がいいと結構な速さで動きます。
 この応用で、円形ドーナツ磁石の上で、回転運動をさせようという思惑。スムースに動きませんが、時計の秒針のような、カクッカクッと間欠的な動きをします。こちらは回転する導体棒の材質や重さなど、微妙なことがたくさんあるようです。
                           
 

講演会のお知らせ
(野田さん)
 12月27日(金)に行われる講演会の案内です。
 名古屋大学大学院理学研究科・名古屋市科学館共済で、京都大学基礎物理学研究所所長の益川敏英さんのよる「坂田理論が切り開いたもの」というテーマでの講演会です。
 高校生以上が対象です。無料ですので、ぜひ参加してくださいとのことでした。

 日時:平成14年12月27日(金) 14:00〜16:30
 場所:名古屋市科学館サイエンスホール
 
 申し込みは下記のホームページからもできるそうですので、お早めに。
 申込締切は12月13日です。
 
 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/astro/lecture/

星とキューピットの矢
(児島さん)
 矢印の書いてある2枚の紙と、中心の紙の3枚の紙を張り合わせたものですが、親指と人差し指ではさんで回転させると、はさむ位置により矢印の角度が重なったり90°ずれたりと不思議な矢になります。

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