2003年2月11日(火)名古屋大学地球水循環研究センターでの例会の記録です。

 イラクでの戦争がいまにも始まりそうな物騒な世界情勢です。
 科学技術は人類の福祉と生存のために使うべきだと思いますが、目的のためには手段を選ばず、
という考えで最新の科学技術が使われそうです。
 科学技術に良いも悪いもない、使う人間によるのだ、といえるのかもしれません。しかし、本当に科学
する心が育っていれば、あらゆる可能性を考え、粘り強く目的に近づく努力をするのではないでしょうか。
力づくで科学的真理がつかめるものでしょうか。
 人々が、本当に科学する精神を持てば、冷静に合理的に思考し判断するのではないかと思うのです。
 科学する精神を育てていくのに、私たちの研究が役立つことを願っています。


 2003年最初の例会は、名古屋大学環境学研究科 上田(あげた)豊教授の話を聴きました。
 上田教授の専門は雪氷学。南極氷床やヒマラヤ氷河の調査により、地球環境の変動を研究されています。
 地球温暖化の懸念が広がっていますが、この点の話や、自分が雪氷学を志す経緯なども話していただき
ました。
  著書には「ガネッシュの蒼い氷」(共著、朝日新聞社1966)、「残照のヤルン・カン」(中公文庫1991)、
「水の気象学」(共著、気象の教室3、東京大学出版会1992)、「氷河」(共著、基礎雪氷学講座4、古今書院1997)
などがあります。
  

 講義終了後参加者で記念写真


地球環境と南極氷床・ヒマラヤ氷河
 (上田 豊教授)
 
 地球が氷期と間氷期を10万年周期で繰り返している。現在は間氷期である。
 現在の地球の水資源は、海水が98%、陸上の氷が2%。この2%のなかの90%は南極の氷床である。この氷床は、地球環境の小さな変動ではほとんど変化しない。
 氷床は、
 (1)堆積時に流水などで流されないので資料の連続性がある
 (2)いわば冷凍保存されているので資料の変質がない
 (3)媒体が多量にあるので時間分解能がよい
 (4)気体が封入されているので古気体を調べられる
というような性質を持つので、深さにつれての氷床の性質の変化を調べることで、過去の地球環境についての大きな変動を見ることができる。
 いわば地球環境のタイムカプセルを深層掘削する場所として最高所の越冬基地「ドームふじ」が造られた。
 ここで3000mほどの深さを掘削し、柱状資料を取り出し、中に含まれる過去の空気や微粒子、化学物質などを調べて、過去35万年の地球環境に関する様々なデータをえた。
 
 それによると、確かにCO2(二酸化炭素)の量と気温との間には相関関係があることがわかった。
 しかし、相関があるだけで、CO2(二酸化炭素)の増加と気温の上昇はどちらが原因でどちらが結果かは即断できない。

 いったん気温が上がりだすと、正のフィードバックがかかりやすく、南極以外の陸上氷床はどんどん減少する。
 
 現在、地球のCO2(二酸化炭素)は増えており、気温も上昇しつつある。この結果、ヒマラヤなどの氷河が減少しており、このままいくと今後100年間で5℃ぐらいの気温の上昇が予想される。
 

結晶の問題
(山岡さん)
 これまでビー玉で作っていましたが、新たに卓球のボールで作ったそうです。大きいのでインパクトはビー球よりあるかもしれません。でも、かるいな・・・・・。
 問題の内容は、上にある白い卓球のボールを箱(オレンジの卓球ボール)の中に入れなさい、というものです。原子の配列と体積の関係を問題にしたものです。

 正解の生徒には「ピンポン!」といってあげるのかな。

電気力分子運動模型
(山岡さん)
 前回の例会で船橋さんが発表した、電気力による分子運動モデルの変形版。
 片方の電極を棒状にすることで、電場が斜めを向き、発泡スチロールで作った導体球が、斜めの動きをします。
 白い球がブラウン運動する様子も見られます。
 片方の電極を、粗い網目にしても、導体球はよく動きます。
 穴を1つにして電子銃のモデルも・・・・・。

 でも、電子銃の電極間で電子は往復しないはずだが・・・・・・






立体錯視
(山岡さん)
 岐阜物理サークルのホームページで発表されていた立体錯視の作品を真似て作ってみたそうです。
 いずれも実物を見ると、何これは、というものですが、写真にすると何かしら不思議な感覚に襲われます。
 平面(2次元)の写真や映像だけでは、立体(3次元)について間違った印象をもってしまうことがある、という実例の教材として利用できるか・・・・・・。

モーターいろいろ
(川田さん)
 ご存知、誘導モーターです。片方のコイルにはコンデンサーをとおして電流を流すことで、電流の位相がずれ、回転磁場ができます。
 摩擦の少ない回転子を置くと、誘導電流が流れ磁場の変化を追っかけて回る、という良く知られたモーターです。
 もちろん教材としては、短冊状の回転子では回りませんよ、というセットで使います。
 渦電流ができにくいことが形からよくわかります。

 

コンデンサーが見えます。よく見ると 何と!
交流なのに極性あり電解コンデンサーだ・・(^^;
 この回転磁場の中に、磁石を回転子にしたものを置くと・・・
 右の写真のように勢いよく回ります。
 回転磁場の方向と磁石の向きを考えると、なぜ回るのか不思議ですが・・・
 議論の末、コイルの形から、回転する磁場ベクトルは、完全に水平面を向いているのではなく、上下方向成分をもっているのだろう、ということになりました。

 すると、コイルをきちっと作ると回らない・・・・・。

 右は、回転磁場ではなく交代磁場でも回ります、というもの。
 コイルに交流を流すとビュンビュン回ります。

 磁石のかわりにスチールウールでも回る、という話も出ました。次回あたりにでてくるかな・・・

 本当にいろいろなモーターがありますね。
  

アルキメデスの螺旋
(清水さん)
 螺旋状のホースを回転させて水を汲み上げようというもの。
 汲み上げた水を落下させて羽根車を回し、その動力で水を汲み上げる・・・・。もし、そんな装置ができたら永久機関ができてしまいますね。
 
 下の水面も1気圧、ホースの出口も1気圧。それなのになぜ水が上がるのか?
 
 水はホース内の位置エネルギーが極小の場所に移動。軸の回転により位置エネルギー極小の場所が上に上がっていく、という説明になりましたが、かえってわからない・・・・・??。


  それにしてもきれいに作ってあります。技術と美術は一致する!。
 


 一般に使われている電池式の灯油ポンプがどんな仕組みで灯油を汲み上げているのか、科学のために(!)分解してみました。
 何と!
 スクリューを回転しているだけ。一巻きの螺旋と理屈は同じ!!
 ただ高速回転することで、比較的大きな圧力差を作り出しているようです。
 
 身近な製品も、原理をうまく応用しているのですね。

シャボン玉爆弾?
(林さん)
 消えないシャボン玉(商品名:触れるシャボン玉)の新しい利用法です。
 シャボン玉が固まらないうちに、酸素と水素を中に注入します。火を近づければ、パン!と爆鳴します。
 うまく注入できれば、透明なシャボン玉が爆弾(?)になる!

 普通のシャボン玉でよく行われている実験ですが、シャボンを長い間貯めておくことはできません。
 消えないシャボン玉をつかって爆鳴気を貯めておければ、面白い実験ができるかもしれません。
 

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