2004年8月20日(土)惟信高校での臨時例会の記録です。

  トス・エステル女史とウリバリ・シャンドール氏は,国際的に著名なハンガリーの高校物理の先生です。東京の物理教育研究会(APEJ)の夏の大会で講演したあと,長崎の放射線学会に出席する途中で名古屋に寄っていただくことになりました。

 そこで、お二人を迎えて歓迎交流会・物理サークル臨時例会を開きました。

 歓迎交流会終了後の記念撮影。
 幽霊の格好をしているのではありません。stray catsの、つまり猫の格好のつもりです。

エステルさんの講演

 最初にいきなり「私たち教師の役割とは」と問題提起。写真にハートマークで書かれている内容がそれですが、一言でいえば、人間に働きかけること。「知識だけを教えたり、テストして採点したりするためなら、コンピュータでできるでしょ」てな話。生徒といっしょに村を回って、ラドンの調査をし、部屋の窓を開けてたまったラドンを追い出すという新しい習慣を作ったエステルさんらしい表現。故ジョージ・マルクスさんの「学校は生徒のもの」という言葉が印象的でした。  ラドンの放射能の話は、アルファ崩壊をしたあとの原子がプラス、マイナスどちらのイオンになっているかという問いかけから出発。答は……どっちだと思いますか。みんな間違えました。説明を聞くと「なるほど」と。  で、イオンになる性質を利用して、部屋の中のラドンを帯電させた風船に吸着させるという実験を見せてくれました。
 エステルさんが示しているあぶくみたいな写真は、プラスチックをアルファ線が通った痕。水酸化ナトリウム溶液で処理して、顕微鏡で撮ったものです。特殊なプラスチックを使っていますが、どんなプラスチックでもOK。
 棒グラフは横軸がラドン環境で、縦軸が癌の発生率。  棒グラフの横軸の「above110とかbellow110の数字は、プラスチック板上での単位面積あたりのあぶくの数で示していたようです。(これがちょうど、単位体積あたりの崩壊数ベクレルに比例する)  まあ、数字が大きいほど、環境の空気中のラドン濃度が高いと考えればいいでしょう。
 で、驚いたのが、調査データ。二つの村で調査した結果、喫煙者の場合でもラドン濃度の高い部屋で暮らしている人の方が、癌の発生率が高い。ところが、ラドンの影響がはっきり出るグループ(非喫煙者の女性――非喫煙者の男性は数が少なく、データが取れなかったとのこと)では、110から185の間の濃度環境で暮らしている人の発ガン率がなぜか一際小さかった。これには、みんな唖然。
 川田さん「そうか、ラドン温泉は健康にいいんだ」。ただ、エステルさんは「いいアイディアだけど、事実として確実なのはこのデータだけです」と繰り返していました。  みんなでいつものように議論百出。「そもそもラドン温泉があの110〜185の領域にあるのかどうかもわからんぞ」などと大騒ぎ。  実りのある講演でした。

 空気中には微量の放射性元素Rn(ラドン)が漂っています。 これがα崩壊してPo(ポロニウム)になります。
 Poがβ崩壊するときのβ線をGM管で測定します。

 ゴム風船を髪の毛で摩擦して帯電させます。部屋の低い場所に風船を置いて三〜四十分。この状態でGM管間で放射線を測ります。このままでは弱いのですが、風船を縮めると、濃縮されてやや強い線源になります。風船を置いた位置がちょっと高くてはっきりしませんでしたが、有意な差は確認できました。
 写真はその測定の様子を示しています。

 ここで問題です。風船を帯電させるとPoが吸いつけられるのですが、Poは+-どちらに帯電しているのでしょう。
 

シャンドールさんの実験

 違和感ありません。  例会のメンバーの一人といった感じ。やってる実験の雰囲気がそっくりなんだもの。
この人も、エステルさん同様、変わっていないなあ。

 もっとも驚いたのは、液体窒素にピンポン球を突っ込み、それを机の上に出すと、ものすごい勢いで回転を
始めるというもの。「なんで回るんだ!」と騒然としました。
 種明かしは――  ピンポン球に小さな穴が一つ、表面に大して斜め方向に、開けてあるのです。  シャン
ドールさんいわく「前に、回転しながら机から高く飛び上がったことがあった。理由はわからないんだけど」

 他には、携帯レーザーでの光通信で、紙面での反射光でも通信ができるとか、板バネで一体化して作った
フォトフォンとか、液体窒素を詰めた風船を爆発させるとか、いろいろ紹介してくれました。
 最後に、みんなでピンポン球に穴を開けて、ああだこうだと実験がはじまりました。


力学的エネルギー保存の法則実験
(伊藤昇さん)
 アルミ棒と重りで振り子を作り、最下点での重りの速度をビースピーで測ります。
 軽い棒なので、重りが十分重ければ、いい結果が出ます。

面白実験紹介
(船橋さん)
 さそりの標本―ゴムと厚紙で作ったサソリ(?)を紙に包んで人に渡します。紙を開けるとサソリ(?)があばれます。
 心臓の弱い人やお年寄りにはやらないようにしましょう。

新しい錯視図形
(船橋さん)
 出っ張りと引っ込みをくっつけた形をしています。
 どこが出っ張っているかわかりますか。

NEWアインシュタインへの道
(奥村さん)
 自分自身を理解する問題、アインシャタインへの道のNEWバージョンです。全ての挿絵を自分で書きました。
 エステルさんとシャンドールさんにも説明しました。
 英語版の発行が待たれますね!!!

穴を通してみると2
(奥村さん)
 表面が青と黄の発泡スチロールで作った立方体の一面に穴を開けて覗くと、色が違って見えます。穴の向こうは青色なのですが、緑に見えますね。不思議です。
 黒板で説明してくれましたが・・・・・

紙蛇の進化型の紹介
(戸田さん)
 進化型の紙蛇をお二人
に紹介。
 早速実施。大勢で引っ張り合いです。一度くわえるとなかなか外れません。

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