2006年2月18日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 今年の冬は例年になく寒い日が続きました。北陸地方や信越地方では大雪も記録的でした。一見地球の温暖化とは反対の動きに見えますが、夏の暑さも含めた気候の変動幅が大きくなっていることは確かです。

 米カリフォルニア工科大などのチームが17日付の米科学誌サイエンスに発表した記事によると
人工衛星の観測データから、グリーンランドの大半を覆う巨大氷河の融解が加速、海に流れ込む氷の量が過去10年ほどの間にほぼ2.5倍になったそうです。
 また、気象庁の調べによると、今冬は大雪に見舞われた日本列島だが、積雪の年間最大値の長期変化をみると、1990年代以降は平年と比べ、北陸は7割台、西日本は7―8割台に減っているそうです。
 
 これらの事実からは、徐々に温暖化が進行しているように感じられます。気象現象は複雑な過程で、簡単には因果関係を示すことはできませんが、着実な観測で本当に何がおきているのかを見ていく必要がありますね。

 

 2006年最初の例会は、北原政子さんの「名古屋市科学館を中心とした天文普及事業に38年間携わって」の講演を聴きました。
 北原先生は名古屋市科学館において38年間、プラネタリウム企画、制作、解説、及 び、各種天文普及啓発事業をとおして天文教育に従事されました。天文講座、講演も多数。 2005年3月フランス国立「パリ発見の宮殿」科学館のプラネタリウムにおいて日本人初公式生解説をされました。また、天文宇宙の科学技術への理解増進に対する寄与を評価され、平 成17年度・文部科学大臣賞を受賞されました。
 
科学館での活動の歴史や現状などについて楽しい話を聞かせていただきました。 

講演の後の、参加者の記念写真です。


名古屋市科学館を中心とした天文普及事業に38年間携わって
(北原政子先生)
 プラネタリウムの始まりは1923年で、装置はカールツァイスが作成したものでした。
 名古屋市科学館の開館は1962年11月で、装置はカールツァイスの後継機です。以来今日までに累計1400万の方の来館を数えています。
 
 プログラムは一般向と学習向とがあります。
 一般向のものは、毎月テーマを変えるという目標を実現させています。大変ですが、工事等の休館を除き貫いています。
 学習向は、小中学生向きの講座ですが、2002年の学習指導要領の改訂で参加者数が激変してしまいました。

 最近は、キッズアワー、天文学に挑戦、特別投影などのプログラムも行っています。
 
 天文分野は小学4年と中学3年の後期のみになり、それに応じて参観者の割合が、下の棒グラフのようになってしまいました。(小学5年生、中学生の激減を見てください!)
 そのため総合学習などで学べるような講座を開いています。
○一般向プログラム
 平成16年度(2004年度)の例
  4月 2つのほうき星
  5月 黒い金星
  6月 古代人と太陽
    ・・・
 科学館には天文クラブがあります。小学生クラス200名、中学生クラブ100名、一般クラス900名で日本一の規模です。
 例会や講演会や観望会の開催などを通して天文の学習をしています。初代天文主幹の山田卓先生の指導のもと、以下のような天文クラブの目的が明示されています。
 「天文学者の真似事や、将来は天文学者にとか、天文学の貢献することを目標にするのではなく、子供でも大人でも天文学をサイエンスとして興味深く楽しむこと、正しい宇宙観から素敵な人生観を育て、楽しい人生を送ることが人間にとって最も大切であり、天文学は人間が生きるために必要な学問なのだということが実感できるクラブでありたい」
 さらに、星を見る楽しみを人に伝えられる人に天文ボランティアとして協力してもらっています。

  科学館の65cm大望遠鏡
天文観測のポイント
 観測する位置を決める。
 方向を決める。
 指分度器などで、角度を見積もる。

 望遠鏡などを使わなくても、体で観測できます。月の大きさや位置などを観測してみるとたのしいですよ。
 ところで満月の大きさは視直径で何度ぐらいだと思いますか?
 1度? 5度? 10度?
 ぜひ一度右図を参考に測定してみてください。
 見かけの大きさと(心理的な大きさ)と実際の大きさとの違いに驚かれるでしょう。
 
 <質問> 宇宙について中学卒業までに身につけておいて欲しいことは何でしょうか。  今の宇宙像を規模を正しく理解することが大事です。
  地球−太陽系−銀河系−銀河団−宇宙 
 こういう姿を体系だてて知る機会が少ないことが残念です。
  科学館では10倍ずつ視野を広げて見ていくソフトなどを製作して、プラネタリウムなどで上映しています。 

 全反射
(川田さん)
 光の折れ曲がりを見るためのアクリルケースを作りました。底にアルミテープを貼って横からレーザー光を入れると、底と水面で全反射を繰り返し進んでいきます。
(写真ははっきり見えませんが・・・・)

背景による混色の違い
(杉本さん)
 写真のような黒の台紙に赤、青、緑の丸い色紙を貼り棒を回転すると、3原色の混合の図が見えます。中心部は白く見えます。

 今度は、白の台紙に同様にして3色の丸い色紙を貼り
棒を回転してやります。
 なんと今度は中心部は黒く見えます。

 背景が白か黒かで違う色が見えるというのは不思議ですね。

 
小型扇風機でやってみましたが、こちらはあまりはっきりしませんでした。

 人間の色の感じ方について、まだまだ面白いことがありそうですね。

回り続けるコマ
(林 煕さん)
 前回の例会で4時間回り続けるコマの話がありましたが、その解明。
 写真のように、中心部は重めのフライホイールが付いた回転子で内部コマ、モーターの外枠と電池、支えが外コマ、になっています。

 モーターが回転すると、外コマは内コマと反対方向にトルクを受けます。
 外コマの軸は床との接触面で摩擦力を受け回転速度が抑えられます。その結果外コマが支点となって内コマの回転エネルギーの補給を続けることができます。
 
 内コマの慣性モーメントが大きければ、コマは全体として安定に回り続けるわけです。

 このコマはまさにモーターそのものといえるわけです。

 回転しているコマの底の支えを糸でつるすと横向きのまま回ります。コマって本当に面白いですね。
 
 大きいと迫力あります。
 

ガリガリトンボ
 (田中さん)
 ガリガリトンボの回転羽を増やしたらどうなるか。そんなものを作ってしまいました。
 棒の両端の回転羽は必ず反対向きに回転します。また、中心部の棒のどちら側をガリガリこするがでも回転方向は逆転します。
 
 どんな原理で回るのかについて。
 、田中さんは棒に定常波ができているのでは、と主張しましたが、単に振動しているだけだという声の方が強かったようです。

半波と全波
(臼井さん)
 ダイオードの働きの理解のための教材です。
 ダイオード1つで交流を半波整流して電球を点灯させます。
 波形を見ると、確かに一方向しか流れません。

 ダイオード4つを使って全波整流して点灯させると、半波整流のときの倍流れていることが波形でも明るさでも判ります。
 
 駄目押しで、クランプメータで流れる電流をはかっても違いを確かめることができます。

 実物で確かめながらだと素子のはたらきがより深く理解できそうですね。
 

 植物の葉は赤外線を反射する
(伊藤さん)
 フジから販売されているIR80(800nm以上の赤外線を透過して可視光は通さない)といゼラチンフィルターをデジカメの前において手軽に赤外線写真を撮れます。

 植物の葉は白く強く写っています。赤外線を強く反射していることがわかります。
 空は暗く写ります。雲は赤外線を反射してはっきり写っています。

 人工衛星などから地表の植生などを調べるのに、赤外線の反射量が使われているそうです。
(反射スペクトルが0.7μmを境に大きく変化しています。)

 
 普通のデジカメには赤外線を減少させるフィルターが入っているので30秒ぐらい露出時間が必要ですが、上のカメラや携帯電話のカメラなどにはフィルターがはずせたりなかったりするので、IR80ですぐ赤外線写真が撮れます。
 

(参考)
http://www.sci.osaka-cu.ac.jp/~masumoto/vuniv2000/gis09.html
 全く同じアングルで撮影していたカラー写真を赤・緑・青の成分に分解し、これに赤外写真を加えて、赤外・赤・緑をそれぞれ赤・緑・青で表現した赤外カラー写真もできます。
 こうすると植物の部分がはっきりします。

 撮った写真を擬似赤外カラーにするソフトがあります。参考ページを見てください。

 参考
 http://www.jafta.or.jp/news/shinrinkosoku/194/

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