2008年5月10日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

 硫化水素による自殺事件が相次ぎました。 市販品による硫化水素製造方法が、ネット上で簡単に得られるため事件が広がったと思われます。
 
 事件の拡大をうけて、警察庁では、インターネット上の硫化水素に関する情報について、製造方法に加えて「簡単に作れる」などの製造や利用を誘引する書き込みがあるものについては、「有害情報」として削除依頼などを行なうよう全国の警察に通達しました。

 有用な市販品で危険物ができる場合、これをどう伝えるかという重い問題が横たわっているような気がします。 事実を隠せば意図的な事件(自殺)は減るかもしれませんが、 無意図の事故が増えるかもしれません。 事実を危険情報として発信しても、受け取る側がこれを悪用するかもしれません。
 
 科学的知識は、有用な使い方もその逆もできます。科学を学ぶ際には、知識をどう使うかという点もあわせて正しく学ぶ必要があります。


 容量計 (船橋さん  
 自作の容量計です。10pF以上をかなりの精度で測定できます。
 本体は田中さん設計のH8マイコンマルチ測定器、それに船橋さん製作の容量計ボードをつないでいます。



 精度が高いので、極板面積による容量の変化や、間に挟む紙の枚数による容量変化が詳しく調べられます。
 
 浮遊容量などの存在で、ぴったり計算どおりにはなりませんでしたが、1台あると便利な測定器です。
 市販の測定器でも同様な測定が可能ですが、値段が高い・・・。

 H8マイコン測定器は、ボードを替えることで様々な量の測定が可能です。どちらがお買い得?

 紙の枚数で容量がどう変化するか調べました。

  市販の測定器です。

 モーターの整流子 (臼井さん  
 授業でモーターの回る仕組みを説明する際に整流子が出てきます。
 図だけで説明してもなかなかわかりにくいので、実物で説明することにしました。
 百聞は一見にしかず。
 本物を見ることが大切ですね。
 
 

 風船による電場増強 (杉本さん  
  ゴム風船を膨らませて摩擦により帯電させます。
 帯電した風船を導電粒(発泡スチロール球の表面に墨汁を塗って乾かしたもの、電気伝導性がある)に近づけると、静電誘導により導電粒が風船にくっついてきます。
 この状態で風船の空気を徐々に抜いていきます。
 どうなると思いますか?




膨らんでいるときより、たくさんの導電粒がくっついてきます。
 どうしてでしょう。
 
 風船が縮むことにより表面電荷密度が大きくなり、付近の電場が強くなったと考えられます。電気力線が見えたなら、風船が縮むことにより電気力線が密集していくのでしょう。
 電気力線を理解する一助となる実験ですね。


 
 この実験はAAPT(AMERICAN ASSOCIATION. OF. PHYSICS TEACHERS)の機関紙の記事にあったものです。
 記事によると使うのは発泡スチロール球になっています。
 しかし、発泡スチロール球でやってみるとうまくいきません。くっついてこないのです。


                   
 用意した発泡スチロール球に、摩擦した塩ビパイプを近づけたところ、これにもくっつきません。摩擦したアクリルパイプにはたくさんつきます。
 どうも用意した発泡スチロール球は最初から負に帯電していたようです。
 アルミ箔ではどうかということでやってみました。
 風船が縮むと見事に
アルミが引かれます。

 とび出してしまう球よりこの方が扱いやすいですね。
  

 マジカルシートを使った補色の実験 (佐野さん  
  白色光をマジカルシート(東急ハンズで購入)に通し天上に投影すると補色が観察できます。反射光と透過光が色違いで、互いに補色となっているのです。
 入射角を変えていくと、段階的な補色の関係が観察できます。


 左が反射光(緑)、右が透過光(マゼンタ)



色相環。
円の反対側に位置する色が補色

   シートと光源を固定します。
 反射光と透過光を回折格子を通してみると、どう見えるでしょう。
 右は白色光源を回折格子に通したものです。1次の回折が出ています。

 緑の反射光を回折格子に通したものが下図です。波長の長い光が多いことがわかります。
 下右図はマゼンタの透過光を回折格子に通したものです。波長の短い光が多いことがわかります。
 
 光源から特定の波長の光を取り出す干渉フィルターも同様に、反射光と透過光で異なる色を呈します。


 

  様々な波長に対応する干渉フィルター

 透過光は緑色です。
 マジカルシートでどうして補色がでるのか、角度によって色が異なるのはなぜか・・・

 薄膜の干渉で説明できそうですが、確定するには角度と波長の関係を測定する必要がありそうです。

 反射光はオレンジ色

 薄膜の干渉でうまく説明できるでしょうか・・・
  


  このシートを傘に貼り付けると、内側と外側、また角度によっても様々な色の変化を見ることができます。残念なのは、費用の関係で一部傘の骨だけの部分があること。
 人はこの傘を「サノパラソル」と呼ぶそうです・・・・・・。

 共振棒式周波数計 (清水さん  
 電波(高周波電流)の周波数は、オシロスコープや周波数カウンタで測定できます。しかし、一般に入手できる機器で測定できる周波数は数10MHzが上限です。それ以上の周波数を測定するため「共振」と「電磁誘導」の原理を応用した周波数計を考案しました。

 シールドされた本体内に、1次コイルと2次コイルを取り付け、その間を長さ可変の金属棒(共振棒)で電磁的に結合します。1次コイルは信号源、2次コイルは電流計に接続します。本体は片面基板(ベークライト板に銅箔を張ったもの)をハンダ付けして作ります。

 一端をアース(=固定端)、他端を白由端とした金属棒に高周波電流を流し、共振の条件を満たすと、   ・自由端で電圧の振幅が最大、電流の振幅が最小
  ・固定端で電圧の振幅が最小、電流の振幅が最大
の定常波が発生します。固定端の付近では、電流の振幅が最大となり変動磁場が発生するので、近傍にコイルを置くと誘導電流が発生します(逆に、コイルに交流電流を流すと、金属棒に誘導電流が流れる)。
 信号源の1次コイルと、負荷(測定端子)の2次コイル間に金属棒を置くと、信号源の高周波電流が金属棒の共振条件を満たした場合のみ、電磁結合が生じてエネルギーが伝達され、負荷に電流が流れます。基本波による共振では、棒の長さは1/4波長となります。 

[使用方法]
 @入力端子に検出用コイル、またはプローブを接続し、信号源と結合します。
 A共振棒を本体から出し入れして、メーターの指針が最も大きく触れる位置を探します。
 B共振棒のアースから先端の長さ L から、周波数 f を読み取ります。

  f =c/L (cは光速度)
 入力に特定小電力トランシーバー(422MHz)を使うと、共振棒の長さは15.5cmでした。式にを代入すると   f=483.8[MHz]となります。
 周波数が実際より高く現れるのは、共振棒(アルミニウム)中の電流の伝搬速度が、真空中の光速度よりも遅いためと考えられます。
 
 アンテナ引き出し型の携帯電話があったので、入力をダイポール型にして偏波の確認をしてみました。

 アンテナの向きによって電流計の振れの最大値が大きく違いました。

 最新の携帯電話でも同様の測定をして見ましたが、どんな向きにしても電流計が振れません。
 f の調整がうまくいっていないのか、それともこれでは感知できないほどの微弱電波をだしているのか・・・・・

 知ればまた不思議が出てきますね。
 

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