愛知工業高校での例会の記録です。
7月7日〜9日洞爺湖でサミットが開かれました。 温室効果ガスの排出削減が、世界の未来にとって重要であることは明らかなのですが、サミットの宣言を見る限り、為政者たちは本当に危機感を持っているのか疑わしく思えます。 中国やインドなどの 「これまでの温室効果ガスの発生源は、19世紀後半以降、工業化を先に進めてきた先進国だ。責任を認めた上で議論を進めるべきだ」という意見も理解できます。 「中国やインドなどの主要排出国の参加がない限り、効果的な対策は不可能」という米国流の考えも、経済を中心に考える世界観では当然(?)でしょう。 やはり、地球規模の大きな被害が多く発生しないと行動できないのでしょうか。でも、それまでに環境を回復することが不可能なところまでいってしまうかもしれません。 科学を学ぶということは、未来を予測して合理的な行動をすることにつながります。未来を担う若者たちには、科学的な判断、合理的な行動を期待したいですね。 |
名古屋大学で宇宙論を教えている杉山先生のお話を伺える機会を得ました。 現在の宇宙についての認識、観測方法、そしてダークエネルギー、ダークマターという最新の研究テーマについても暑い中、3時間にも及ぶ熱心な講演をしていただきました。参加者一同、熱意に圧倒されつつも、多くのものを得たように思います。 講演後の質疑で、現在の学生の物理離れの傾向に対して私たちと共通の危機感をお持ちということもわかりました。今後も小学、中学、高校、大学それぞれで果たしていく役割を考えていきたいと思います。 先生の著作、研究成果などは、先生ご自身のホームページに詳しく掲載されています。 http://www.a.phys.nagoya-u.ac.jp/~naoshi/ |
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講演後の参加者との記念写真です。 |
最新の宇宙像 (杉山 直先生) |
1 宇宙の構造 宇宙は階層的構造を持っており、それぞれの階層に特徴的な現象と観測方法があります。 宇宙からの光を可視光だけでなく電波、赤外線、紫外線、X線、γ線を調べることで、今まで見えなかった姿を見ることができるようになっています。 地上に届くのは可視光と赤外線の一部、電波ですが、衛星に観測機器を積み込むことですべての波長での観測ができるようになってきています。 冥王星が惑星から格下げ(?)されたのも、観測の進歩による知見からです。 太陽系、銀河、銀河団、大規模構造とそれぞれの階層で新しい観測結果が得られています。数億光年にまたがる銀河のネットワークの存在も明らかになってきました。 また、ブラックホールの存在や、他の恒星にも惑星があることなども明らかになってきました。 2 宇宙の膨張 アインシュタインの一般相対性理論を最初に解いた人としてシュバルツシルトが有名ですが、その解は奇妙なもので、いまでいうブラックホールの存在を示唆していました。 ブラックホールは観測からその存在が確認されています。 一般相対性理論には、静的(収縮しない)宇宙を維持するための宇宙項が入っていました。その後の観測で宇宙は膨張していることがわかり、宇宙項の必要がなくなり、アインシュタイン自身が宇宙項を入れたのは生涯最大の誤りと述べていたようです。 ところが最近の観測で、宇宙膨張の速度が過去は現在より小さかったことがわかってきました。つまり膨張の速度は加速しているのです。これは超新星の観測の精密化などではっきりしてきました。 (天才は間違わない!?!) 加速させているエネルギーの正体は不明ですが、これをダークエネルギーと呼んでいます。 |
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遠方の超新星の観測で、膨張速度は大きくなっていることがわかってきました。 |
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3 暗黒物質 回転運動の速度は、物体が剛体なら外側のほうが速くなります。太陽系の惑星のような集団では、外に行くほど遅くなります。(ケプラーの第3法則) では銀河系の場合はどうでしょう。 左下のように、銀河系中心部は密度が大きいので剛体型、外側はケプラー型になっていると予想されたのですが、観測はそうなっていませんでした。 この結果から、銀河の周りには見えない質量が多量にあると考えざるを得ません。 これをダークマターと呼んでいます。正体は不明です。 |
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ダークマターは、銀河系レベルだけではなく、大規模構造のレベルでも存在します。 遠くの星の光が、途中の大質量の存在で進行方向が曲げられるという重力レンズ効果が、観測にかかるようになり、弱い重力レンズ効果も調べられるようになりました。 これから、大規模構造のレベルでも、観測できないダークマターの存在が明らかになり、その分布まで求められています。 4 今後の観測 宇宙の物質の7〜8割はダークマター、宇宙のエネルギーもまた7〜8割はダークエネルギーと考えられています。 光で見える世界は宇宙全体の1%程度です。今後は他の波長の光を精密に観測していく必要があります。また、重力波の観測などが可能になれば、さらに新しい知見が得られるようになるでしょう。 |
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<質問> ダークエネルギーなどがあるとすると、物理学のエネルギー保存の法則はどうなるでしょうか。 |
真空のエネルギーも含めて考えれば、エネルギー保存の法則は敗れないだろうと考えています。 |
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<質問> ダークマターは太陽系にもありますか。 |
私たちは、宇宙の平均から見れば特別密度の大きい世界に生きています。ダークマターがあっても密度的に私たちの世界に比べて小さいですから、あっても感じないでしょう。観測する研究は進められています。 | ||||
<質問> 膨張を加速させている、宇宙の外からの引力があるのではないでしょうか。 |
いろいろな考え方が許されます。 | ||||
<質問> 天文学を志した理由は何ですか。 |
子供のころから李下が好きでした。中学ではブルーバックスをたくさん読みました。大学では素粒子を専攻していましたが、極微の世界と宇宙はつながっていると感じて宇宙論を始めました。 | ||||
<質問> 高校での物理教育についてどう感じていますか |
大学から見て入学生の物理離れが深刻な状態といえます。「物理はものの考え方である」から理学部に来る生徒でも物理を履修していない者がいることに将来の危惧を感じています。 生徒の興味を引き止めるには、問題を解くばかりではなく、実験をもっとする必要があるのではないかと考えています。 大学でも、いろいろな行事を通して対応策を考えています。 |
帽子ラジオ (永田さん) |
前回の例会で林さんが傘ラジオを発表してくれましたが、永田さんは帽子ラジオです。これからの季節を考えて麦藁帽子にゲルマニウムラジオを仕込みました。 帽子に巻いたスカーフ部分がコンデンサになっています。スカーフをまわすと選局できるようになっています。コイルの巻き数は試行錯誤で決めました。今のところ残念ながらNHK第一放送しか受信できないそうです・・・。 イヤホンを耳に入れ帽子をかぶると、なかなかオシャレです。ラジオを聴いているなんて思えません。 こんな帽子が1つあると、街を歩くときも退屈しないかも・・・。 |
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自在鉤 (前田さん) |
昔懐かしい(?)自在鉤をつくりました。塩ビパイプと棒と板でできます。 自在鉤は囲炉裏などで使われ、鍋や湯釜などを吊るし、また高さを自由に変えることができるので、火力調整するには優れた道具です。 どの高さでも静止させられるのはなぜか、という声に川田さんと飯田さんが説明してくれました。 棒と板を1つの物体と考えると、糸から受ける力と棒の部分が筒から受ける力と重さがつりあうことになります。 棒と板を別の物体として考えると、棒には板からの垂直抗力と摩擦力が働いていることになります。 |
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