2011年7月2日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   
 福島原発の事故発生から3ヶ月以上たちました。
 残念ながら、原子炉や使用済み燃料の冷却システムの構築が完了しておらず、外部からの注水が欠かせません。すると、放射性物質を含んだ水がたまる一方です。注水を減らせば冷却がうまくできません。
 まさに、あちらを立てればこちらが立たずの八方塞り状態です。
 
 こういう重大事故を想定しての対策は考えられておらず、現場は冷温停止に向けて試行錯誤の対策を打ち続けているものと思います。どんなに費用をかけても収束させなければなりません。 現場の方々には、被曝する放射線量をカウントし、過度の放射線を浴びないようにしてもらった上で、目標に向かっての尽力をお願いせざるを得ません。

 一方、私たちに突きつけられているのは、今後どんなエネルギーの利用をしていくのかという判断です。
 ひとたび重大事故が起これば、多くの人が故郷を失う可能性があることを知ったうえで、さらなる原子力の利用を図っていくのか、それとも、量は少なくても安全なエネルギーを求めていくのか、ということです。

 いずれの方向に進むにせよ、冷静で科学的な(本当の意味で科学的な)議論を重ねる必要があるでしょう。国民一人ひとりが自分で判断する必要がある大きな問題です。 また、安全な廃炉や放射性物質の処理に関しての技術者も、今後多く求められるでしょう。そういう技術者も育成する必要があります。
 放射線に関する基礎知識を、若い学生たちにしっかり伝えていく必要があります。私たちの責任も大きいと思います。

 競馬ゴマ (柘植さん  
 
地球ゴマを製作しているタイガー商会の商品です。
 コマを回してレールに乗せると、馬がレール上を走り出します。コマが倒れずにレールを回るのが面白いです。
 残念ながら、一般向けに個別販売はしていないそうです。

 コマ部分が回ると、回転軸が接触しているプーリー(片側が大きい非対称のプーリーです)を回し、レールに乗せると走り出します。摩擦をうまく利用しています。馬が倒れないのはジャイロ効果でしょう。
 こういうおもちゃは、ぜひ後世に残したいですね。




 コマの回転軸が非対称のプーリーに接触しています。
   コマを回転させてレールに乗せます。    馬は勢いよくレールの上を走ります。
   

 つくばね(衝羽根)の種 (柘植さん  
 
 つくばね(衝羽根)の模型です。落とすと、羽根により回転しながら落下します。羽根のある種の仲間ですね。 うまく回転するには羽根の角度が大事なようです。


 <参考> weblio辞書
 つくばね(衝羽根)は、ビャクダン科の落葉低木。山地に生え、根は他の木に半ば寄生する。高さ約1メートル。披針形の葉を対生。雌雄異株。花は淡緑色で初夏、開花し、雄花は散房状につき、雌花は単生する。果実は卵状楕円形で、頂に四個の萼片が残存し、羽根突きの羽根に似ている。
   

 ニュートンの7色コマ (柘植さん  

 回すと、回転数によって色が変わって見えるコマです。

 ものごとには種々の現象が表面的にはあるが、その中に一つの真理が通っている。会議などで議論がこじれて進まないようなとき、このおもちゃは役に立ちます。ちょうどよい気分転換の機会をつくり、考え方の角度を変える一つのきっかけを与えてくれるでしょう。

 本当かなあ・・・・ 
  回すと、回転数の変化で色が変わっていく。 
 

 電離箱 (市川さん  
 手作りの電離箱です。
 青色の缶の中心に棒状電極を置き、赤色缶内のオペアンプにつなぎます。電極と缶に間に数百Vの電圧をかけてあります。
 電極間に1pA(ピコアンペア)が流れると、電圧計が1mVをさすように設計しています。 
  

   中心電極は針金。

 青色缶内にトリウム入りタングステン棒(オークションで入手!)を入れると、 電圧計の値が変化します。放射線によって電極間に電流が流れるためです。

 ところが、放射線を出していないものを入れても電圧が変動します。どうも電磁波を拾っているか、静電誘導が起こっているような感じです。
 残念ながらこのままでの空気中での測定は難しいようです。

 でも手作りで放射線計測器が作れるならすばらしいですね。
 

 林式高性能霧箱でα線を見る (林さん  

 線源なしでもβ線や宇宙線が容易に見えるようになった林式高性能霧箱です。今回はこの中に、ラドンの気体を入れました。
 いたるところα線の飛跡で埋め尽くされました。(静電高電圧をかけて雑イオンを除去しなければ使えなくなるほどです)


    ビデオカメラで霧箱内部を観察できるようにしてあります。

    α線の飛跡がいっぱい。
 
 次に、ブロワーの吹出口に脱脂綿をつけ、室内のほこりを30分程度あつめ、この脱脂綿を霧箱内にいれます。
 これを徐々に箱の下におろしていくと、ときどき太いα線の飛跡が下方に向かって出ます。
 (細いβ線らしき飛跡も見えます)
 ほこりに含まれるウラン系列のPo(ポロニウム)かBi(ビスマス)から出たα線と思われます。
 
  白い塊がほこりを吸い込ませた綿です。   
 
 空気中に浮遊するダストには放射性物質が含まれています。集塵機でダストを集めて、その含まれる放射性物質の半減期を調べる実験は、ガイガーカウンターを用いて実施されてきました。霧箱は放射線の種類を簡単に区別できる優れた特徴を持っていますが使用されていません。なぜでしょう?
 それは測定する資料がすぐ過飽和層内で結露して、α線の出方が変わって、測定が出来なくなるからです。
 その欠点を克服し、霧箱でα線の崩壊のみをカウントできる方法が上記の方法なのです。

 @資料を霧箱内の上部に待機させて霧箱内が安定するのを待ちます。
 A過飽和層が安定して宇宙線が見え始めたら(約3〜5分)、資料を過飽和層より1cmくらい上の位置まで押し下げます。
 B資料から濃い直線状のα線の飛跡が出たら、その数がα崩壊の数になるのでカウントします。

 霧箱による方法はα線だけをきちんと測定できるので、崩壊する物質を特定しやすい方法です。また、飛跡が見えるので放射線のリアリティー感が際立ちます。

 力の合成 (佐野さん  
 中学3年生に力の合成を教えています。
 物体を支えるとき、平行な2力と角度を持った2力では、必要な力の大きさが異なることを何とか理解させたい、ということで、プラスチックバネを使っての指導を考えました。
 同じおもりを吊り下げるのに、平行な場合と、角度がある場合でおもりの位置が同じになるようにします。
 写真のように、バネの長さは、角度があるほうが長くなります。
 
 バネが長いということは、弾性力が大きい。
 つまり、同じ合力を得るのに、斜めの力は平行な場合より大きな力が必要だ、ということです。

 力の合成を始めて学ぶ生徒に、どんな教え方がいいのかいろいろ工夫する事が必要ですね。
  おもりの位置はほぼ同じ。平行な場合の方がバネの長さが短い。つまり弾性力が小さい。
 次は高校生向けの話。
 このプラスチックバネで縄跳びをします。
 自然長では跳べない長さなので、回っているときはバネが伸びている、つまりバネに力がはたらいていることになります。
 遠心力の説明のひとつに使えるのではないでしょうか。
 
 

 光ピックアップの追及 (井階さん  
 光ピックアップの本質を調べました。 
 ギターの弦にレーザー光を当て、その光を太陽電池で受けます。同じ弦の振動をマイクでも拾います。
 2現象オシロでその信号を調べました。
 上が、太陽電池の信号。下はマイクからの信号。
 同じ振動数になっています。
 (太陽電池の波形がやや気になりますが・・・・)

 レーザー光でなく白色光ではどうかということでやってみましたが、オシロ感度のせいか、うまく太陽電池の信号が拾えませんでした。
  白色LEDで照らしてみましたが、太陽電池からの信号は拾えませんでした。点光源ではないせいかもしれません。
 念のため、部屋の蛍光灯の光を太陽電池で拾ってみると、右のような信号が得られました。繰り返しの波形の振動数は120Hz。
 蛍光灯は交流の1周期で2回点滅しますから、60Hz地域の名古屋で120Hzの光の信号が得られるのは理解できます。

 太陽電池への光を妨げることが信号の原因だとすると、弦の振動は対称ですから、弦の1回の振動で2回の信号変化があるはずということになります。

 単純なことなのに奥が深い?・・・・・・。

 <参考> 光ピックアップ2
 

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