2014年2月15日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   

 テスラコイルで音楽再生 (前田さん)  

 金沢工業大学の藤本さんが三重県立高校の電気部在籍時に開発した無線送電を利用したテスラコイルでの音楽再生装置を紹介してくれました。

 これは、発信器からの電流を相互誘導の現象を利用し、受信器が受け取るもので、共振周波数に合わせることで空芯であっても数p程度なら効率よく送電できます。
 長い距離電気を送れるわけではありませんが、これを無線送電と呼ばれます。
 このテスラコイルが音源になります。
 まず、無線送電の実演です。
 発信回路は、秋月電子の1Hzごとに周波数を変えられる低周波発信器とアンプ、コイルとコンデンサーを直列につないであります。一方、受信器は写真のようにコイル、コンデンサー、電球を直列につないだものです。

 低周波数から発信を始めても、効率が低く電流が十分ではないため、電球は点きません。
 振動数を上げていき、120kHzにすると電球は少し点き、124kHzになると明るく点きます。
 この辺りが共振周波数ということですね。
 共振回路が無線送電の仕組みです。
 次に、この無線送電を利用し、テスラコイルで音声に変える装置です。
 テスラコイルではコイルの上の球形の物がコンデンサーの役割をします。また、白熱電球は、電流量を確認するために直列につないであります。
 1次コイル側で、パソコンからMIDIファイルで電気信号を出力すると、2次コイル側にも相互誘導で電流が流れます。共振周波数に近づくと、テスラコイルの放電が始まり、同時に音楽が流れます。
 

 暗闇の中、独特の世界に引き込まれました。

 テスラコイルでの音声再生の様子です。


 v−tグラフは直流モーターとオシロで(石川さん)  

 速度と加速度の学習でも重要なv−tグラフですが、古くから記録タイマーと紙テープを使い作成することが一般的でした。ただこの方法は、作業に時間がかかることや、平均の速さを近似して直線にすることなどが原因で実用性には問題があります。
 近年は、速度センサーを使った理科教材なども販売され、時間ごとの変位のデータから瞬時にv−tグラフを作成できますが、一体何を調べているのかということが分からないという矛盾も出てきています。
 そこで、2つの間を取ったような手軽で仕組みの分かりやすい速度センサーがあれば便利だと考えましたが、市販品がなく、自作の装置を考案しました。
 ソーラーモーターの回転数(速度)とモーターの起電力が比例するだろうということで、ソーラーモーターに車輪をつけ指で回転させたときのデータをデジタルオシロスコープに出力してみました。
 すると、加速度(減速)が生じる際、滑らかならずノイズが出てしまいました。この理由は、ノイズの周期を考えると、モーター内のブラシが整流子をまたぐ際に回路が遮断されるためだろうと推論しました。

 そこで、コンデンサーと抵抗をつなぎ、積分回路をつくりました。
 積分回路をつくるためにコンデンサー、抵抗をつなぎました。
 これを台車に搭載することで、速度と加速度の項目で最も重要なものの1つであるv−tグラフを演示実験後に、瞬時に生徒に提示することができます。
 上のグラフのようにグラフがなめらかになりました。


 新課程「物理」の教科書(東京書籍)の問題点 (佐野さん

 佐野さんは、教科書の選定にあたり、見本を見ていたところ、不自然な図を見つけ、出版先に連絡したとのことですが、なかなか訂正してもらえないため、サークルで意見を伺おうと問題提起されました。

 まずは、p175にある薄膜による干渉の図です。薄膜中では波長が短くなるはずですが、教科書の図では干渉条件の重ね合わせに気がとられすぎたためか、光が屈折し、進行方向が変化しているにもかかわらず、薄膜中でも波長は変化していません。

 明らかな間違えということで意見はまとまりました。
* 後に、文書で再度指摘したところ、東書から連絡があり、26年度検定に訂正を申請するそうです。


 次に、p147の音のレンズの図についてです。
 この教科書では薄膜中での波長が変わっておりません。
 音のレンズとは、風船など球面のものを空気より空気の平均分子量より分子量の大きい気体で満たし、球体との境界で音を屈折させ、集音する装置です。
 教科書には「大きな風船に二酸化炭素を入れると、反対側からの音波が集まってよく聞こえる。二酸化炭素中の音速は空気中に比べて小さいので、その境目で屈折するためである。」と記述されています。

 右の図を見て、曲線が波面に見えませんか?
 レンズから出る際、屈折するはずですが...
 仮に、これが波面だとすれば、空気中から音のレンズから入るときと出るときで、曲率変化が同じはずです。しかし、図では出る際の曲率変化が微々たるものに見えます。
 図ですから、生徒がレンズから出る際、波面が変わっていないと誤解することが一番困る訳ですが、念のため、円でフィッティングし、曲率を求め、計算した結果も同様となりました。

 東書の担当者の私見では「イラスト担当が立体感を出そうとした結果、誤解を生む表現となった。」ということですが、曲線の間隔は確かにレンズ中で小さくなっているので、波面を描いたと考えるのが自然ではないでしょうか?

 生徒の誤解がなりより心配です。

 クントの実験の音を変位で拾う (林ヒロさん  

 かなり大掛かりな装置を作り上げたヒロさん。径が大きい筒が必要なのはクントの実験の音をリボンマイクで拾うためです。

 リボンマイクで拾った音をオシロで出力すると理論上、腹と思われる位置で最大の振れ幅となり、逆に節では最小となります。

 この結果から、「やはり腹でもっとも音が大きいのではないか。」とヒロさんはいじわるな先生の如く、皆に訴えかけました。
 装置が大きいのはマイクが大きいからでしたが、意外な効用も
 「音が大きいか小さいかは人が耳で直接聞くのが一番」ではということで、反論するメンバーは直接音を聞くことを提案しました。

 実際に聴診器を使って聞いてみると、予想通り、理論上の節のあたりで音の大きさが最大となり、腹のあたりで最小となることが確認できました。

 今ではほとんど使用されないリボンマイクは変位を拾うものであり、コンデンサーマイクは人の耳と同様に音圧を拾うので、結果が異なるわけですが、このような問いかけも理解を深める上では意味のあることですね。
 音を直接聞きます。この聴診器、2人仲良く聞くことができます。

 モデルを使った回転磁場の講義 (臼井さん  
 以前話題になった回転磁場について、2層回転磁場のモデルを使い分かりやすく説明してくれました。

 1つ目の交流電源に対して、もう一つの電源は90°位相をずらして電流を流します。このとき、磁場は電流に比例するので、右図の白いコイルに対して黄色いコイルの磁場は位相が90°ずれます。

 本来は、90°角度のずれた2つの磁場を無理やり2次元のグラフに表したものです。  
 やはり、モデルに目が行きます。これだけでも効果ありです。

 立体的に表すと臼井さんが手に持ったモデルになります。

 この成分ベクトルを足し合わせると、その時刻による合成磁場の向きと大きさが決まります。  
 自作の教具で立体的なイメージが掴めます。

 足し合わせると、黄色い板磁石のように合成磁場の大きさは一定になります。そして、合成磁場の角度も時計回りに等速で回転していくことがわかります。

 非常に簡潔で分かりやすく、数式なしでも理解できる名講義でした。  
 確かに磁場は等速でスカラー量が変わらず回転します。

 割りばしでウェーブマシン (西井さん  
 初参加の初々しい西井さん。学校にあるウェーブマシンが使い物にならなくなっていたとのことで、割りばしで作ったウェーブマシンを紹介してくれました。

 割りばしの太い方を交互にセロハンテープで片側のみ止めてあります。
 非常にゆっくりと波が伝わるので肉眼で観察が可能です。また、固定端反射等の反射波の実験にも使えます。

 改良のため、割りばしの重心を合わせること、テープで両面を貼ることや、タイツに綿棒をつけると張力と波の速さの関係が分かるとの指摘もありましたが、これはこれで、 よくできたものでした。

 時間に余裕が持てるなら、生徒に自分たちで作らせるのも原理の理解が進み、いいかもしれませんね。
  割りばしでウェーブマシンを作りました。

 共鳴で火を消す? (川田さん  

 共鳴で火を消すことができたと、実演してくれました。

 まず、瓶にロウソク台をひっかけ、ロウソクに火をつけます。次に、筒状のものを瓶に被せ風洞を作ります。
 これで準備完了!

 川田さんがもう一つの同じ瓶を息を吹きかけ音を出すと、風洞で守られているはずの火が揺ら揺らし始め、見事に消えてしまいました。共鳴ですね。
 続いて、違う種類の瓶を吹いてみると、音が鳴っても火は消えません。
 ロウソクの火を消す人気の実験ですが...
 同じ形状の瓶を使うと共鳴が起こります。  しかし、形状が異なると固定振動数が異なるので...

 そう思った人もいたことでしょうが、鋭い生徒の如く、奥村さんが「手の震えや息で消しているんじゃないか」と指摘!
 「そんなはずはない」と川田さんは、杉本さんに風洞と瓶の隙間を塞ぎ固定してもらい、なるべく息が当たらないように正面から角度を取り、仕切り直しとなりました。
 早速、瓶を鳴らしてみましたが、炎はかすかに揺らぐのみ、消えてくれません。焦りの色が見える川田さんでしたが、名誉挽回とばかりに強く息を吹きかけましたが、無念の結果となりました。

 やはり、共鳴で火を消すにはかなりのエネルギーがいるようですね。
 いつもはクールな川田さんにも動揺が隠せません。

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