2014年2月15日(土)愛知工業高校での例会の記録の第3ページです


 高校生による自転車のタイヤの空気とペダルの重さの研究 (伊藤政さん  

 恒例となった向陽高校科学部の研究発表。1つ目のグループは、伊藤さんの投げ掛けに対して、上記の課題について素直に研究を始めました。
 予備実験として、自転車を50Nの力でゴムひもを一定の長さに保った状態で引き、空気圧が減ったとき、加速度が減るのか確認しました。結果は、予想通り、空気が減ると加速度が明確に小さくなりました。

 次にこの原因について3つの仮説を立てました。@タイヤと地面との摩擦力が増加するため Aタイヤの変形によって熱エネルギーが発生し、運動エネルギーの増加が抑えられるため B接地面積が増え、タイヤ表面の粘着力が大きくなるため です。
  伊藤さんの何気ない問いかけから、研究が始まりました。
 まず、@についての実験として、重さ140Nの自転車をタイヤの空気圧450kPaにし、動摩擦係数の異なるアスファルトと砂の路面で予備実験と同じ実験をしたところ、動摩擦係数の大きさに関わらず、加速度は一定値の0.89m/s2となりました。

 このことから、加速度の変化はタイヤの摩擦力が変化したためではないことが分かります。
  摩擦力と加速度の関係を調べる実験です。
 次に、Aについて考えるために、タイヤの空気圧を450kPaから100kPaまで変化させ、360m走ったときの走行前後の温度変化を調べました。
 すると、夏の実験と冬の実験でかなりの違いがありましたが、どちらも空気圧の小さいものほど、温度上昇が有意に大きいようでした。

 この理由は、タイヤの空気圧が小さいほど接地面積が大きいので、熱が発生しやすくなっているのではないかとのことです。
 
  温度変化は放射性赤外線温度計で測りました。

 今後の方針として、Bの実験方法を検討するとともに、Aの実験では、アスファルトとの熱伝導や風、直射日光などの気象条件が関係するので、室内での実験を行えないか考えています。



 高校生によるペットボトルが奏でる音の研究 (伊藤政さん  

 続いて、ペットボトルの内圧を変えるとコカコーラのボトルはよく音が響くかを調べました。

  まずは、コカコーラ以外のファンタと三ツ矢サイダーのペットで波形がどのように異なるかを音声解析ソフト「サウンドモニターFFT Wave」で分析しました。
  すると、コカコーラでは正弦波が1秒以上にわたって見られました。

 次に、ソフトのフーリエ変換の機能を使い、振動数ごとの音の大きさの分布を調べました。
 ペットボトルの振動の波形はこのようになりました。コーラの減衰が少ないのは共鳴しているためでしょう。
 結果としては、コカコーラは100Hzと200Hzにピークが現れ、倍音を含んでいることがきれいな音色を生む理由と考えています。
 さらに、ハイスピードカメラでペットボトルの振動をそれぞれ底から撮影してみました。コカコーラは大きく振動していることが分かりました。
  加圧時には振動の周期が短くなり、振動する回数が音の振動数とほぼ一致することから、この振動が音の原因になっているのではないかと思われます。

  例会では、ペットボトル内に空気ではなく、二酸化炭素やヘリウムが入っていたらどうなるかと議論になりましたが、今後の研究の行方に注目です。
 コカコーラでは確かに倍音が発生しています。
 ペットボトルにはこのような振動が生じます。  ハイスピードカメラだと振動のモードが良くわかります。

 分光光度計 (井階さん  

 例会の会場として長らく使わせて頂いている愛知工業高校ですが、2015年に予定される合併に伴い、歴史ある校舎が使用されるのもあと1年程となりました。
 その事に伴って、貴重な年代物の器具が廃棄されつつあります。その中から、井階さんが分光光度計を見つけ、紹介してくれました。
 愛工のごみ捨て場には、宝が見つかることも。


 この装置の仕組みですが、光源からスリットを通った光をサンプルに当て、その透過光を回折格子で分光し、反射光を筒を通して、光電管で検出するのではないかと考えられます。
 動作原理はこのようになっているのでは

 物理サークル通信のDVD編集を終えて (奥村さん  

 古くの難波さんの書いたサークル通信を読む機会があり、「もっと昔のサークル通信が読みたい」と衝動に駆られた奥村さん。すべてのサークル通信を揃えるべく、早速行動にうつし、 初期メンバーから通信を借りたところ、古いわら半紙のガリ版刷りで、「読めない。カビで体にも悪い。さらに日付もない。揃っていない。」状態でした。
 まずは、通信をすべて揃えないと話にならないので、戸田さん、飯田さん、山岡さん、岡田さん、難波さんに持参の通信を借り、内容と万年カレンダーとサークル日程を比較し、なんとか年月順に並べることに成功しました。

 長年の作業の末、ついに完成したDVD。奥村さんも感慨深げでした。
 次に、読めない原稿をどうするかという難題がありました。最初は、手作業で汚れを1つ1つ消していましたが、データの入っていたハードディスクがクラッシュし、作業が中断されました。

 翌々、調べてみると、奥村さんが購入したコミック専用ソフトで汚れも取れることが分かり、やる気を取り戻して作業に打ち込みました。
 この原稿を読める状態にできたことに驚きです。

 元々はサークル内の必要な人のみで費用を分担し、秘蔵品のようにしようと考えていましたが、記録を作っていくうちに物理教育に携わるすべての人に読んでもらいたいという気持ちが強くなり、DVDとして希望者に配布することになりました。


 安価な3原色の実験 (飯田さん  

 これまで、 色付蛍光灯を使って行っていたこの実験ですが、100円ショップで線光源となりうる3原色のLEDを見つけ、早速作ってみました。

 今回は携帯性を重視し、非常にコンパクトなつくりにしました。これなら、ダンボールさえあれば、どこでも実験できますね。


 お馴染みの実験が行えます。

 クリップモーターの進化形 (飯田さん  

 優れた教材の改良に余念がない飯田さん。飽くなき向上心には頭が下がります。

 今回はクリップモーターの改良です。
 簡単に作れると一般的に言われるものの、生徒たちに作らせると、10分そこらですぐにできてしまう子もいる一方、なかなか回らない生徒も常にでてきてしまいます。

 この原因を、コイルで円形を作ることとクリップに伸ばすエナメル線が円形コイルの重心を通らせることがの難しさではと考え、あらかじめ、ラップの芯を1cm幅ほどに切ったものに穴をあけておき、工作してもらいました。
 これで皆できるはずだと、思っていましたが、やはり個人差が大きく、30分経っても回らない人もいました。
 対象が子供たちではなく、小学校の先生であったにも関わらずです。
 ラップの芯が重いのと100円ショップで買った磁石の磁力が弱いのが原因ではとの指摘がありました。

 飯田さんのことですから、また新たな発想で改良版を披露されることでしょう。
 期待された新作ですが...

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