2014年12月13日(土)愛知工業高校での例会の記録です。

   

 強制振動でチンアナゴ  (前田さん)  

 すみだ水族館で見て、マスコットも入手したチンアナゴ。ユーモラスなその動きに惹かれ、再現を試みました。

 超低周波も出力できるファンクションジェネレーターから発信された方形波をアンプで増幅するとともに正弦波に変換し、コイルに送ります。
 そして、交流によるコイル内の磁場の変化で、磁石(チンアナゴ)を振動させるという仕組みを考えました。

 なお、ネオジウム磁石を硬めのばねの先端に付け、アクリルパイプで振動方向を限定しています。    
 ランダムな運動がユニークです。
 力学的な振動の周期は0.8〜0.9秒程度です。

 コイルに電流を送り、強制振動を起こすと、1.29Hzで共振しました。
 次に、その半分の振動数や2倍の振動数でどうなるのかやってみました。

 まず、半分の振動数にすると、2回に1回振動を強めました。次に2倍の振動数(2.58Hz)では上向き下向き常に振動が強められました。

 理論的には、磁束Φが正弦の変化をすれば、2倍の振動数では、片道のみ強められますが、帰りは打ち消す方向に力が働くはずです。

 なぜだと白熱した議論になりましたが、どうも発信器からの変換で本当に正弦波になっているのかあやしいのではということになりました。
 案の定、原理的な説明に興味が集中しました。


 オープンエアー光電管2 (林煕さん)  

 以前にサークルで紹介され、フィリピンで発表した光電効果の実験を再び披露してくれました。

 光電効果の実験では負に帯電し、はくが開いた状態から、光電効果によって、はくを閉じた状態することが一般的ですが、閉じた状態から開かせるという特徴があります。  装置は若干複雑にはなりますが、高電圧をかけ、光電効果が起こると、箔は正に帯電したことを同時に確認できるようになっています。

 更なる工夫として、箔検電器の皿の上に大きな金網を絶縁された状態でのせ、金網側がプラスになるように電圧をかけています。
 これは、光電効果で飛び出した電子が空気中の酸素分子などにくっついてしまうと、次の電子が出にくくなるため、電圧をかけて電子を引きつけ、排除してしまうということです。

 この説明には、疑問を呈する人もいました。

 また、金網に高電圧をかけることによる静電誘導の影響を懸念する声もあったため、金網を皿に可能な限り近づけるましたが、箔が開くほどの影響はありませんでした。
 10cmほど離してあったため、距離の2乗が聞いてくる関係で、それほど影響がないのですかね。
 演示用の大型はく検電器は存在感が絶大です。
 話が進まないので、疑問もある程度(?)解消されたところで、様々な金属板を用い、光電効果の実験です。

 用意した金属は、右の写真左から順に、鉛、アルミ、銅、すず、鉄の五種類。
 さて、問題です。紫外線ランプ(水銀の線スぺクトル254nmがピーク)を照射すると、箔が開くのはどの金属でしょう?


 結果は、すべて開きました。



<参考> オープンエアー光電管 (林さん)   
 金属板は酸化の恐れがあるため、磨くことが必須です。


 ローソク温泉で霧箱の性能評価(林煕さん)  

 日本屈指のラジウム含有量を有する(約7.5Bq/cm3)という、中津川のローソク温泉にお手製の霧箱を持ち込み、調査を行いました。

 次のような手順でラドンを集め、実験を行いました。
 まず、コップ3杯分の源泉水をポリ袋に入れ、空気も入った状態で密閉しました。
 よく振った後、霧箱にポリ袋から空気を押し出しました。
 その後、霧箱の様子を観察しましたが、10分経っても飛跡があまり見えませんでした。
 そこで、高電圧をかけ、雑イオンを取り除くと、α線の嵐のような飛跡が見られ時間が経過してその状態が続きました。

 今後、空気の入れ替え方を工夫するなど改良を加え、定量的な測定につなげていければということでした。
 さすがの性能!すごい数の飛跡。次なる課題は定量化です。


 元祖?教訓茶碗 (林煕さん)  

 石垣島で400年の歴史があるとされる教訓茶碗を購入しました。
 これが元祖と言われる教訓茶碗だそうですが...
 それほど存在感がありませんが、確かに底に穴があります。構造が目に見えないように水の通路が作られているようです。

 2重構造になっており、サイフォンの原理に従って、側面に水の通路があると推測されます。
 分かりにくいですが、底の右側に穴があります。


 波の模型 (川田さん

 現在も高校で教鞭を持つ川田さん。授業で波長がわかりにくいということで、曲がるマグネットで1波長分の長さの波の模型を作りました。

 川田さんが黒板上で波を動かして波長の説明をされましたが、参加者の反応はいまいち。

 生徒が相手ではないので簡略化したようですが、私も同じようなことをしています。生徒にとっては分かりにくいのでしょうかね?
 黒板上で実際に波のモデルを動かし説明する川田さん。

 サイフォン(川田さん  

 度々、話題に上った「サイフォンの科学史」ですが、川田さんによると、「サイフォンの科学史」の絶版が決まったそうです。
 しかし、あろうことか残りの本は販売が続くそうです。内容に関して、異議を申し立てた大学教授のもとには謝罪があったものの、川田さんのもとには謝罪も非を認めることもないとのこと。

 日本の科学界でも、理化学研究所での問題をはじめ、権力を手に入れた側に驕りを感じることが多いのは偶然でしょうか?そんな人の方が権力を手にしやすいのか、権力を持つとそうなるのかは分かりませんが、科学を扱うものとして『結果』という共通のものを超えた何かがあることが本当に残念です。
 サイフォンの動作原理は大気圧で説明できます。
 ふたを閉めると、サイフォンは止まってしまうでしょうか?それとも動作し続けるでしょうか?


 まもなく、止まってしまいます。これはボトル内の水が減るとボトル内の空気による圧力が下がってしまうことにより説明がつきます。
 式で表すと、P=P0+ρgh
(止まるときのボトル内の圧力P、大気圧P0、水の密度ρ、水面とストロー最下部の距離h)

 ここで、h=20[p]であれば、P=0.98[atm]となります。
 見やすいように食紅で水に色を付けています。

 骨伝導でベートーベンを追体験 (川田さん  
 偉大な作曲家として知られるベートーベンですが、難聴を悪化させていきました。

 その折りに、彼は指揮棒を口にくわえ、先端をピアノにあて歯から音を骨伝導で感じ取り、作曲したとのことです。

  この体験を生徒にさせたいと、簡単に行えるよう実験を考えました。

 ラジオをチューニングし、紙コップにコイルを巻いたものにプラグをつけ、イヤホン端子につなぎます。ここで、歯で割りばしを噛み、紙コップに押し当てます。  
 磁石にコイルとスピーカーの共鳴板を除いた構造です。
 周りを静かにし、耳をしっかり塞ぐと、確かにラジオが聞こえます。
 このとき、唇は触れずに噛んだ方が振動の減衰が少なくなり、聞こえやすいそうです。

 奥村さんからは、紙コップが緩衝剤になってしまっており、コイルに直接頭などを当てるとより大きな音が聞こえるとの情報提供がありました。

 しかし、これはこれで、ベートーベンを追体験する面白さと、静かにしないと聞こえないという生徒の集中力を上げる効果も含め、魅力ある実験でした。  
 例会中は各々が好き勝手に話すので、しっかり
耳を閉じないと聞こえませんね。

 超簡易分光器 (飯田さん  

 回折格子を利用した分光器をごく簡単に実験できるように工夫しました。
 
 作り方も簡単!次の通りです。

@ B4の黒画用紙の長辺を4等分するように切ります。
A 切った黒画用紙の両端から目盛を3pほどつけ、長編の真ん中にパンチ穴を開け、小さく切った回折格子(1oに500本)を貼り付けます。
B 画用紙の長辺を円周とする円筒形を作り、画用紙の端を1〜1.5mm空けてセロテープかホチキスで止めます。
C 穴の両端に大きいプラカップ(510mlのクリアカップ)口を輪切りにしたものをガイドとして入れます。
  パンチ穴から覗くと、光のスペクトルがはっきり確認できます。
 パンチ穴から覗くと、光のスペクトルがはっきり見えます。太陽光のスペクトトルでは、フラウン・ホーファー線も確認できるほどの性能です。

 また、目盛を読むことでλ=dsinθを用いて、色の波長が分かるように工夫されています。

 カップの直径が82o、緑色が目盛が20oに見えたとすると、d=2×10-3、sinθ=20/82を代入し、λG=0.49μmと分かります。
  目盛が書かれており、簡単な計算で波長と色の対比が可能です。

 DVDの紹介 (飯田さん  
 「地球がもし立方体だったら」というDVDの紹介です。


 地球が立方体なら、どのような事が起こるのか、真面目に各方面の専門家が思考実験を行い、製作されたものだそうです。

 日本科学協会という団体が上映及び、講演も場所さえ提供すれば、教育機関なら無償で行ってくれるそうです。

 生徒が議論をしたそうな内容だけに、事前学習等も行えば、効果的な授業が展開できそうですね。
 思考実験をするには面白い内容です。

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