2017年3月4日(土)明和高校での例会の記録です。

   

 おしゃべりなコンピューター (名古屋工業大学 徳田 恵一教授)  

 今回は、音声ロボットの研究をされている名古屋工業大学 徳田教授を迎えて、久々の講演となりました。

 徳田教授は井階さんと小中高の友人であり、。

  人間のように自然に喋る機械目指し、統計的音声合成の研究をされています。
 音声合成の世界で、使われてきた方法にこの統計的音声合成と単位選択的音声合成があります。

 簡単に言うと、単位選択的音声合成というのは、人の音声のデータベースを大量に作り、そこから選択し、音声合成をおこなう方法です。
 一方、統計的音声合成とは、人間の音声のデータから、感情や文脈等に対応した口の形や声の高さ・大きさの変化等の様々な喋る際の特徴を機械学習させることで、限られたデータベースから最適解を作り出していくというアプローチです。

 徳田教授は日本の音声合成の研究の第1人者です。
 この統計的音声合成のメリットとしてはシステムの自動構築や小メモリサイズに携帯デバイスでの動作に加え、多言語化が容易なことが挙げられます。
 加えて、最大のメリットは柔軟性があり、データベースにない音声も機械学習から自在に作り出すことができることです。

 機械音声といえば、一昔前は抑揚のない棒読みの感情のかけらもないものでしたが、徳田教授が政策に関わった名工大のキャンパス案内に使用されているメイちゃんや、三波春夫さんの音声データから作成されたハルオロイド・ミナミも、統計的音声合成の結果、感情豊かな表現を見せてくれます。
 キャンパスの入り口にある掲示板ではメイちゃんがお出迎え。
 アナウンサー・ナレーター・声優など、声の職業がなくなるのではという意見を受けることもあるそうですが、徳田教授は、声の持つ価値が高まり、素晴らしい声を持った選ばれし人の生の声の価値が高まり、ライセンスを業者に販売する時代がくるのではないかと予想しているそうです。

 誰の声でもない創造された声の権利は誰が持つかなど、議論されるべき課題はあるものの、技術革新にともなう、起こりうるべき事態に思います。

 すぐやってくる近未来を垣間見させて頂いた講演でした。
 三波春夫を音声合成技術で再現したハルオロイド・ミナミが海の歌を歌うと...
 
 神戸大学 山田泰彦教授もされ、井階さん、山田教授(中段左から)、徳田教授と、明和の同窓生3人が集合しました。


 一様な磁場での霧箱の実験(林さん)  

 磁場中では荷電粒子がローレンツ力を受け、円運動であったり、らせん運動をするということは知られていますが、なかなかその様子を観察する機会はありません。
 林さんは、ローレンツ力でβ線の飛跡が曲がるところを見せたいと考え、一様な磁場をリーズナブルに作ることにチャレンジしました。

 まず、素材ですが、コスト面を考えフェライト磁石を用いることとし、円柱形の大型フェライト磁石(φ120)を3つ重ね、上方に10mmごとに離れるごとの水平方向の磁場の変化を調べてみました。
 すると、予想通り、磁石の近くほど磁場が強く、また中央部の磁場が際立って強くなりました。

 林さんはこれを改善するため円柱形磁石の上にドーナツ型磁石(内径120外径200)を置き、霧箱の上にも同じドーナツ型磁石を置くことで、霧箱内の過飽和層の80%以上で300ガウス以上の水平鉛直方向ともほぼ一様な磁場を作ることに成功しました。 
 検討の結果、磁石はこのような配置になりました。
 名古屋大学では磁石を数十セット揃え、生徒実験も可能にしているとのことです。
 汎用品を使っているため、磁石を1セット揃えても1万円強で済むそうです。
 ローレンツ力で曲げられた飛跡が見えました。感激ですね!


 回折格子が作る干渉の理論的考察 (杉本さん  

   
 小野さんが紹介した回折格子が作る明点が円周状に並ぶ実験に刺激を受けた杉本さんはその理由を理論的に分析しました。

 
 模型を用意した杉本さん。それでも頭がついていきませんでしたが
 杉本さんは回折光の強めあう条件を、@回折格子の隣同士の干渉条件 A1つの格子の縦方向の干渉条件 の2つをともに満たすという考えを用いて、小野さんの発表時に皆が驚いた回折格子の強めあう点が楕円を描く理由の説明を行いました。

 まず、面が光軸に垂直になっている場合を考えます。この場合、入射光はどの光線も同じ位相で回折格子に入ります。このとき、経路差のない0次の方向は図のように回折格子から回転した円の孤にできます。
 さらに、A1つの格子の縦方向の干渉条件 も考えると円周上に同じ角度ごとに明点ができることが分かります。ここで、スクリーンを置くと、距離がスクリーンに光線が入る角度により回折格子からスクリーンまでの距離が変わるため、直線状に外側ほど間隔が空くことが理解できます。
 次に、面が光軸と垂直でない場合は、回折格子に入るまでに経路差が生じるため、微小距離離れた平行な光線が強め合う点は図のように光線と回折格子の交点から円の孤を描きます。(立体感覚のない私は紙を折ってやっと理解できました。やって見てください。)
 そして、Aの条件を加えると、円錐の底面に等しい角度ごとに明点ができることが分かります。

 そのため、スクリーンを置けば、角度により、円や楕円が、そして、光線に垂直にスクリーンを置けば、楕円の一部が確認できることが分かります。
 なんだか、数学に頼らない、非常にすっきりした説明で感激してしまいました。

 ちなみに、円錐状に広がる光を斜めに投影すると楕円になることは円を表示できるレーザーポインターで容易に確認できます。スモークを使えば円錐形も見えます。数学でも使えると思います。試してみてください。

巨大フレネルレンズで実像と虚像 (深谷さん

 凸レンズや凹レンズの授業で、像を観察する際、全員で見る演示実験には大型のフレネルレンズが便利です。フレネルレンズといえば、市販のものを購入する他にOHPから取り出し、利用している方も多いと思いますが、大きくても精々30p四方。

 深谷さんはさらに大きなレンズを手に入れるため、プロジェクションテレビからレンズを取り出しました。

 この大きさなら窓に張り付け、教室全体で裕に観察できます!

 遠くの景色は上下逆に、近くの景色はそのままに拡大され、実像と虚像を同時に見ることも可能です。
 これだけ大きいと大迫力です。

振動数による音の回折の違い (佐野さん  
 波長により光の回折の起こりやすさが変化することは、教科書にも写真が掲載されており、良く知られています。
 音の回折も同様に波長に依存しますが、佐野さんは、以前行った二酸化炭素の音のレンズの実験で1000Hzほどまでの可聴音ではほとんどレンズの効果が確認できなかったことから、『回折の様子が波長が等しい音・光では同程度の回折が起こる』という仮説を立て、検証を試みました。
 これが真実なら超音波ならレンズの効果がはっきり確認できるはずです。

 40000Hz程度の超音波なら、波長が0.85cmとなり、光で言うセンチ波(SHF)衛星放送の周波帯となり、シュミレーションのように、回折の影響が限定的になるか実験しました。
 結果が変わってしまいました。
     可聴音と超音波で実験を行いましたが、勤務校での予備実験とは結果が異なることに...

 閉じられた空間での音の実験は反射等が複雑すぎて、再現性が課題となりそうです。
 音の厳密な実験を教室で行うのは難しいですね。

 アーチ橋 (山本さん  

 万能の天才呼ばれたレオナルド・ダヴィンチの名作「モナリザ」の背景にも描かれているアーチ橋を発泡スチロールで作ってみました。

 スチロールカッターで切り分けた石に模した発泡スチロール片を組み、左右に広がらないように固定します。
 
 100円ショップで調達したケースと紙で、左右の広がりを防いでいます。
 そして、欠けの部分を取り去ると、アーチができます。
 500mLのペットボトルを載せてもビクともしないアーチ橋の完成です。

 下に鏡を置けば、イソップ物語のよくばりな犬が咥えた骨を落としたような水面を再現でき、アーチ橋がつくる綺麗な円形が観察できます。  
 物語があるところに山本さんらしさがありますね。

 コンストホンテイン (山本さん  

 NHKテレビの「趣味悠々」で「コンストホンテイン」というものが紹介されていました。これは、お酒の席で余興に使われ、江戸時代に流行った自動洗杯器のことで、コンスト=続く、ホンテイン=fountain噴水という和製英語が語源です。ヘロンの噴水と言った方が知られているでしょうか? ヘロンの噴水を作ってみました。

 山本さんは紹介されていた「コンストホンテイン」に魅せられ、早速製作してみました。

 
 重箱を使い、4本足なので見栄えもよいですね。

 原理が丸わかりのものも科学的な魅力はありますが、山本さん作の重箱製の作品は、これはこれで、風流で造形の美しさがあります。
 やはり、宴会の席で使われていただけのことはあります。

 早速、数名が作り方を伝授してもらいにいっていました。  
 製作時のポイントは必要個所以外はに穴を開けないことだそうです。

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