2021年11月27日(土)向陽高校での例会の記録です。


 分属のススメ(伊藤さん 
 益川先生の寄稿と並んで掲載された伊藤さんの寄稿のご紹介でした。ノーベル賞受賞者と並んで掲載される凄さにも驚きましたが、伊藤さんの寄稿の内容が、セレンディピティー(ふと思いもよろないところでひらめくの意)を絡めたお話で、ちょうど興味をそそるところをつかれ、大変おもしろかったのです。とりわけ科学人の関心のあるところを表現されていくセンスに感心するばかりでした。  

 ナメクジのしま模様(伊藤さん 

 チャコウラナメクジが動く時、腹側でしま模様が動く様子が観察されるそうです。このしま模様について科学部の生徒が研究を進めています。しま模様は、頭から消えると尾から出てきて、本体より3倍の速さで縞が移動しているそうで、なんとも不思議です。筋肉ブロックの大きさの変化をPythonでシミュレーションした様子も見せていただきました。
 チャクラナメクジ  しま模様の動く様子  しまと間隔の長さのグラフ

 バンデグラフに紙の帽子 (林さん  

 バンデグラフの帯電の様子を表す画期的な方法をご紹介いただきました。厚紙を帽子のような形にして、ビニールひもを取り付けておきます。あとは、バンデグラフに被せて帯電させるだけで、写真のようにビニールひもが静電気の斥力で広がります。ポイントは、厚紙が導体としてはたらくところと、バンデグラフにセロハンテープが残らないところです。個人的に、いつも実験室でスタンドやバンデグラフに残る劣化したセロハンテープにイライラしていたので、今後はスッキリしそうです!(またこの帽子を被れば、髪の短い生徒でも帯電して、髪が逆立つ感覚を味わうことができる利点もあります。)   
 厚紙は静電気的には導体としてふるまいます  頭にかぶってもいけます

 電磁波(林さん  

 先ほどのバンデグラフとアース球を用いて、放電させます。両端に針金(これがアンテナになる)をつけたネオン管(右図)を少し離れた位置に持ってきて、電波を検出します。針金の向きが電場の変化の向きと平行に持つとネオン管が光り、垂直にするとネオン管は光りません。
 ネオン管  アンテナになるリード線は、まっすぐになるように固定しています
 今回のポイントは、アース球を水平に置いたことです。アース球の棒の部分がアンテナとなるため、垂直にしてしまうと電場の変化は1方向に定まりません。そこで、放電の向きとアンテナの向きをそろえたところが素晴らしいのです。

 よく見る電磁波の発生は、放電A(右図参照)の方式です。放電自体は水平方向であるのですが、放電したあとが問題です。アース球を伝ってアース球の足元へ鉛直方向に電磁波が抜けていきます。これでは電場の変化は1方向に決まりませんね。  放電Bの方式だと電場の変化は水平方向のみとなります。
アース球は水平に支持しています 従来は放電Aのようにアース球を置いていました

 エネルギー伝達 (林さん・奥村さん)  
 スマホの充電にも用いられている無接点電力輸送のモデルをご紹介いただきました。
 一次コイルと二次コイルに鉄心を入れることで二次コイル側に発生する電圧が大きくなることが確認できました。
 また、巻かれているエナメル線(売っているそのもの)を用いると巻き数の多いコイルが簡単に手に入ります!
 一次コイルと変圧器  二次コイル  一次コイルは買ったままのエナメル線で代用できます


 クリップモーター (奥村さん・林さん)  
 ファラデーモーターの針金をM字にすることで、安定した回転が得られていました。
針金の調子がいいと(=重心が安定していると)かなりな勢いで回っていました
 ネオジウム磁石で高さを確保して、その上に単一電池を置いています


 クントの実験 (杉本さん  

 気柱を伝わる音波の反射を調べるのに連続波を使うと反射波だけを見ることができません。そこで、1msくらいの波束を用いて、入射波と反射波をオシロスコープで見ました。

 右図でギザギザしている青が波束の波形です。1回めに観測している波形が入射波、遅れて検出されているのが、反射波です。スピーカーからマイクを離していくと、入射波はスピーカーからの距離が長くなるので、右に動き、反射波はスピーカーからの距離が短くなり、左に動きます。(入射波と反射波の時間差が少なくなります)開口端反射では、圧力に対して固定端反射となり、縦波である音波の位相は逆になります。(マイクでは、圧力を測定しているためです。)管の端をふさぐと、見事に反射波の位相は逆転しました。
 クント管全体像  スピーカーとマイクの位置を離すと(オシロスコープの)画面中央のギザギザと右に見切れるギザギザの間(=時間)が離れます
 管の中の定常波を測る (杉本さん)  
 次の写真は、定常波の起きている管の中にコンデンサーマイクを入れ、腹と節を検知しています。黄色はトリガーとして利用している発信機の信号で、青色はコンデンサーマイクの信号です。下の2枚の写真は隣り合うあう腹と腹の関係になります。
 2枚の写真で、黄色の波形は変わりませんが、コンデンサーマイクの位置によって青色の波形が変わります。写真ではコンデンサーマイクを隣り合う腹と節にしたときの様子です。見比べてください。


 超音波ウキウキマシン (田中さん)  
 超音波スピーカーを向かい合わせにセッティングします。その間には定常波ができて、発泡スチロールの小球が変位の腹にあたる部分で静止するのです。田中さんが作られたウキウキマシンの5cmほどの間にカラフルなスチロール球が7個浮いている姿はかわいらしかったです。(スチロール球は、ピンセットで慎重に安定する位置に持っていきます)

 スピーカーから変位が逆になるような超音波を発信したとき、中央に小球が静止することから、発泡スチロール球は、変位の節に集まる(静止する)ことがうかがえます。

 反射板を用いると、変位の腹寄りの位置で静止するそうで、まだまだ謎は深まり、研究・考察は続くようです。
 まず、センターの腹に1個  宙に浮いています


  ミリカンの光電効果実験(成相さん)  

 授業で光電効果は、箔検電器・亜鉛板・紫外線を用いて演示をしますが、教科書にあるミリカン回路を再現してみようという試みをしました。
ミリカン回路の肝である亜鉛板の入った真空管なんてありませんので、真空管は諦め、何とかして光電効果で飛び出した光電子を捕まえて電流を測ろうとしています。
電流計には、アンプ付きの検流計を使用していますが0.1μAより小さい値は測れないため、いかにしてnAを測るか、または光電子を増やすか、に苦心しているという報告でしたが…

 しかし、画期的なご意見を林ひろ先生からいただいて、後日光電流を測定することに成功したそうです。
 真空管なしのミリカンの光電効果回路模式図   紫外線を当てている様子  林ひろ先生からのアドバイス、微小電流の測定方法 


 ローレンツ変換を可視化する (臼井さん  
 いつものダジャレを組み込みながら、黒板にフリップを貼る形式でご紹介いただきました。  
 ローレンツ変換でのポイントである「光速度一定」を円周と中心の距離が一定であることに応用してローレンツ変換を説明してくださいました。(右図)
縦軸にある速度vを、横軸に時間tをとり、半径cの半円を書きます。ある速度vで動いたときの時間は、
 静止している人に比べて、速さvで移動する人の時間が進みにくいことを視覚的に表すことができました。

 等加速度運動の式の視覚化 (鈴木さん  
 鈴木先生も式をグラフにして可視化する方法をご紹介くださいました。等加速度運動の式で授業等では3つめに登場する式

 の式を縦軸v横軸tのグラフに乗せてしまおうというものです。
上のグラフの台形の面積xが動いた距離になります。
 ある時刻tを加速度aを用いて表し、ある時刻tでの速度vはそのままで用いることで次式が導けます。

 この式を導出するには結構手間取り、暗記せざるを得ないことはないでしょうか。使っているのは台形の面積や和と差の積の因数分解など小中学校で既習のもので簡単に出ます。これまで、探した限りではどの参考書にも載っていない導き方だそうです。

 電気のイメージ (井階さん  
 静電誘導を視覚的に表現する実験です。田中さんの静電気メーターを用います。その上で帯電させたアルミ箔を固めた球を振り子で振ることで、最下点に近づくたび、静電気メーターのLEDが光りました。見えない電子の動きを行ったり来たりする振り子で何回も確認できるところがわかりやすいです。

 また、静電気の実験では乾燥していることが大事で、今回もアルミ箔の球にドライヤーをあてて乾燥されていました。こういう面倒なことでも1つずつ丁寧にされるところもさすがだと感じました。
 机の上にあるのは静電気メータ(空き缶部分まで)とドライヤー、その上の白い球は発泡スチロールの振り子です

 1次コイルと2次コイル (林さん  
 前述「エネルギー伝達」で紹介された1次コイルと2次コイルを今度は大きくされました。さらに2次コイルは発泡スチロールの四角い板にエナメル線を巻き、板の上のスピーカーに繋げたキレイな作品です。発泡スチロールの板が軽い上にしっかりしており、形を保つので1次コイルの外や上や中と色んな場所に移す時に片手で動かすことができます。
 床に広げた1次コイルの内側に発泡スチロールに巻いた2次コイルとスピーカーが固定されています

 回転子 (奥村さん  
 ミニ回転台のご紹介です。回転台はあまり手元にあるものではありませんので、例えばキュウリの真ん中に糸をつけ、ぶら下げて、磁石を近づける実験をしようと思っても、キュウリの真ん中で糸をくくるのが大変であったり、糸のヨリで何もしていないのに回転してしまったりとなかなか面倒なことがあります。しかし、この台があればこんな苦労はいらなくなりそうです。
 完成品
 【作り方】① まずガラス棒の先をバーナーであぶり丸くし、板に突き刺します。(下左図)
  ② そのガラス棒に試験管を被せるだけで安定した回転の得られる 回転子の出来上がりです。(下右図)
  あとは、お好みで試験管のお尻部分に発泡スチロールの板などを付けておけば、板の上に回転させたい物体を乗せるだけのことになります。
 先を丸くしたガラス棒  試験管をかぶせた様子