2022年6月5日(土)向陽高校での例会の記録です。
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 ピンポン球の浮力(奥村さん 
 水に沈めたピンポン球はすぐに浮きます。これは、ピンポン球の下の水の圧力が、球の上の水の圧力より大きいためです。だからピンポン玉の下の水を取り去ると浮いてこないはず!そこで、図2のように切ったペットボトルの口の内側にピンポン玉をはめ込んで上から十分な水を満たすと…浮きません!というのはよくある実験。以下は奥村さんの実験です。

①まずペットボトルを上下に切り分けます。
②ペットボトルの口部分に何箇所か穴を開けます(図1参照、穴は、入れたピンポン球より下の位置になるようペットボトルの口近くに開けます)
③ピンポン球を入れた穴あきのペットボトル(上)とペットボトル(下)に水を入れて(ピンポン玉がなめらかな球ではないので、チロチロ水が垂れます)(図2参照)
④下ペットボトルの水に上ペットボトルをどんどん沈めていきますが…
⑤下のペットボトルの水面にピンポン球が入りきっても浮いてきません(図3参照)
 なぜピンポン球は浮いてこないのでしょうか。

 図1 


 図2 


 図3 

 奥村さんはもっとわかりやすいように今回のサークルの後でペットボトルを次のように改良されました。口元をスパッと切った形に進化したのです。これだとピンポン玉のおしりが見えているので水に漬かっているのがよくわかります。そして、ペットボトルの液面とまわりの液面との差が一目瞭然です。

 帯電盆(奥村さん 
 帯電盆を作るとき、導体皿や導体板に不導体の取っ手を付けるのがとても大変でした。しかし、奥村さんは100円均一で写真のようなものを見つけられました。玄関扉などに傘や鍵を引っ掛けられるようなマグネット式の取っ手です。ステンレス皿にならマグネットでいとも簡単にくっつき、しかも持ち手がプラスチックという優秀ぶりです。下敷きなどを帯電させて盆と接触、接触させたまま盆の表面に触れて表面側の電価を逃し、下敷きから引き離すと帯電した導体の出来上がりです。あとは、ビニールひものヒラヒラを浮かせるもよし、アルミ箔を引き寄せ、反発させるもよしです。
帯電盆使用イメージ

 電気伝達速度 (林さん  
 さて問題です。次のような回路を作成し、スイッチを入れたとき電球の光る順番はどのようになるでしょうか。

 思考問題として取り扱ったことはあるものの、実験は再現不能と皆が思っていたのですが、この問題を解くべく、林さんは自作の光速度測定装置を用いて実験を実現されてしまいました。光速度測定装置もさることながら、同軸ケーブルを利用したところもアイディアです。なぜならただの導線を10mも使うと電圧減衰してしまいますが、同軸ケーブルならば電場のやりとりをケーブル内で行ないながら伝導するため電圧減衰しにくいとのことでした。   
 問題の答えはどうなったでしょうか。簡単にここで申し上げるには、アイディアの凄さと実験をしようと挑まれた熱意などへの敬意が薄くなってしまうので、躊躇します。こちらもインスタDMでと、言いたいところですが、この問題は多くの方が疑問に思い、意見は割れ、今回の答えを熱望されていると思いますので、結果を書いてしまいます。答えは、AとCが同時、Bは遅れる、です。AからBへの時間遅延は、50nsでした。秒速20万kmといったところで、同軸ケーブルのプラスチックの屈折率を鑑みるとほぼ光速度ということになるようです。こちらの結果の解釈については、次の項目で石川さんが述べてらっしゃいます。  実験は、できて一旦解答が出たものの、林さんは、追試で行った各位置の電圧波形に疑問を持たれています。(図参照)例えば、f点とe点では、f点の方が電位が高いはずなのにe点の方が高いなど。今後もLEDの特性を調べるなど追試をして深めていかれるそうです。

 電場の伝わる速さは光速?(石川さん  

 林さんの電気伝達速度の測定実験の解釈を持ってこられました。まず電磁波についての話から。ご紹介いただいたのは、モーターで回せる円形コイル。オシロスコープでみると、コイルの両端には電位差(交流)が生じているのがわかります。この電位差は、回るコイルと地球磁場により生じているので、コイルの軸を伏角に合わせてみると、電位差が生じなくなります。電場と磁場の関係がわかる実験道具です。(似た道具を作成される時には、磁場の漏れにくいモーターを使用するようにしてください。)
 次に電場の伝わり方についてです。回路を作ってそこに定常電流を流したとして、導線の周りの電場はどうなるかというと、導線に直角に現れますね。スイッチを入れた瞬間に注目すると、まず電池の両端の導線に電場が生じ、電池両端に発生した電場はそのまま押し出されるようにプラス側とマイナス側の導線間に伝搬していくということでした。その伝搬速度は、音の伝わる速さの式
v:媒質中の音速 V:音速 :Δρ/ρ:密度変化率
に似ていて、自由電子密度をρ、帯電導線内の帯電量をΔρとし、cを光速とすると伝搬速度vは
(←波動方程式)と表せるとのことで、つまり電池と豆電球で作った回路で言うと、導線内を動く自由電子の速さは遅いが、電場は電磁波として光速に近い速さで伝わるので、スイッチを入れた瞬間に豆電球が点灯するということでした。

 なぜ力学を学ぶのか (飯田さん)  
飯田さんは長年、物理教育現場で積み重ねられた経験をもとに今回本を執筆されました。サークルでは、出てくる難しい理論を「つまりこういうこと?」と噛み砕いて腑に落ちるまで議論される姿をよくお見かけします。いつでも飽くなき探究心に満ちているところなど尊敬しています。まだ本を手にしていませんが、もうそろそろ書店に並ぶとのことでした。


 磁場中を動く導体棒 (水野さん)  
 電磁気分野のお馴染み実験です。磁石で作った磁場と導体棒に流れる電流が直交するので導体棒は力を受けて加速していきます、だいたい授業ではここでおしまいなのですが、導体棒の速度は終端速度に至ったとのことです。終端速度になるのも別に起電力が発生するから、という入試問題があったりしますが、よくよく現象を見てみるとそうでもないようなのです。導体棒の速度vから起電力(V=vBl)を計算しても元の電池を打ち消すほどではないそうなのです。空気抵抗を疑って、電流を流さずに導体棒だけを斜めにしたレール上で転がしたり、渦電流を疑って導体棒の形を変えたり、磁石の形状を変えたり…とさまざま試しておられるそうです。有名な実験でありながら、事実は異なっていたという衝撃的な未解決問題になりそうですが…

あの手この手の一例
 今回のサークルでの相談後、金属棒が回転したときの渦電流が原因ではないかということで、車輪を用いて金属棒が平行移動をするように工夫したらほぼ等速度となり、この問題は見事に解決したそうです!途方もない実験データの高峰と解析の戦いに、ついに終止符うたれたり!よかったです。  回転する棒を使って問題作成されていた方々、今後の出題では気を付けてくださいね。厚みのない極薄の金属棒が主流になってくるのでしょうかね…。


 アルキメデス危機一髪 (井本さん  

 水をコップにひたひたに満たしてから、十円玉をコップに一枚ずつ入れていき、水が溢れた人の負けというゲームです。表面張力で水が盛り上がっていてすぐに溢れそうなのに予想に反して何枚もの十円玉が入るのにびっくり!生徒に遊んでもらうと超盛り上がりそうです。    
 三角錐と立方体の体積 (井本さん)  
 牛乳パックを使って、(直角)三角錐を作ります。この三角錐をいくつかくっつけて立方体を作ります。さて、何個必要でしょうか。立方体の体積が底面積×高さである一方で、三角錐の体積が底面積×高さ×(1/3)であること、この(1/3)の意味が一目でわかる工作です。最後の図 のように6つの三角錐(一つ当たりの体積は6分の1)をつなぎ合わせてたためば同じ大きさの立方体になります。


 平面ルービック (井本さん)  
 これまた面白いおもちゃです。左の写真をご覧ください。この裏も同じように16等分にして色紙が貼られています。切れ目も入っていまして、山折り、谷折りを色々組み合わせて、右の写真のように色を合わせるのです。井本さんは何パターンか型を持っていらっしゃいました。皆さんも型を考えてみてください。


  回折格子(杉本さん)  

 回折格子で点光源を見るときれいなスペクトルが見えて感動します。これをチカチカと光るクリスマスのイルミネーションを使って生徒に見せるとさらに効果的。生徒の心をつかむのにぴったりです。ただ、欠点は、一人一人が見るので感動が共有されません。そこで杉本さんが着目したのがCDです。CDのコーティングをガムテープではがせば透過型の円形回折格子ができます。これでクリスマスイルミネーションを見ると写真の通り。CDを通してきれいなスペクトルがちかちかときらめきます。これなら生徒同士も共有できます。


 ファインマンの光時計モデルの鏡と回折格子 (杉本さん  
 R.P.ファインマンの著書「光と物質のふしぎな理論」の中にこんな記述があります。 「皆さんは鏡の両端は、光源から検出器に進む光子の反射とは何の関係もないと思われるに違いありませんが・・・光子の経路は何百万もあります」 光は反射の法則を満たす方向に進むと考える人はここで面喰います。しかし、本を読み進めると、ファインマンは図のAからMまでの経路からの位相の矢印を加え合わせると中心付近の反射の法則を満たす場所しか残らないことが見事に示されて納得します。  ファインマンの本での展開は光子を量子力学的に扱っていますが、杉本さんは波動現象として考えても当てはまることだと考えています。つまり、鏡の面に並ぶ原子によって反射されるため、反射の法則にしたがう経路だけではなく鏡の面全体で反射された光が干渉した結果として0次の経路(反射の法則)が残ったと考えるのです。鏡だと格子間隔が小さいために1次以上は存在しません。CDのような格子間隔が大きい回折格子だと高い次数の像も見えます。LED点光源を直接光が入らないようにするのがポイントです。0次は鏡像に、1次の像はそれとは違った方向に向いていることがわかります。反射の法則と光の干渉を普段はまったく別ものと考えて教えていますが、その橋渡しとしてCDの面での反射は使えそうです。  

 スマホレンズ (山本さん  
 最近は、スマートフォンのカメラに取り付けられるレンズがありますが、山本さんはそんなもの使いません。インカメラの状態にしておき、そのカメラに水滴を1滴置くのです。すると10倍~20倍になって見えます。山本さんは何回か実践されているそうですが、故障したことはないとのことでした。(私は勇気がないので真似できません!)