2022年11月27日(土)向陽高校での例会の記録です。
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 歯車楽器(奥村さん 
 歯車を回して歯に紙を当てると歯が紙をはじくので音が発生します。単位時間あたりのはじかれる回数が音の振動数となるので、歯の数を音階の比にすれば楽器ができるわけです。右図が奥村さんの歯車楽器。ポイントはステッピングモーターを用いたこと。静かで安定した回転を得ることができます。モーターの回転数を変えることも簡単にできます。プーリーは手作りで特大のゴム栓を削って作ったそうです。
 図1 


 続・ピンポン球の浮力(奥村さん 
 「浮力は圧力差によって起こる」のを説明できる装置です。これは前回のサークルでも紹介していただきましたが、今回はバージョンアップ版の実物の紹介です。前回の例会記録にもあるので、一緒にご覧ください。ペットボトルの下半分に水を入れておきます、これにペットボトルの上半分でさらに口部分を切り取ったものを逆さにし、ピンポン球と水を入れ、下半分の水に押し込んでいきます。少し沈めただけでは浮かびません。水位差がほぼなくなったところでピンポン球は浮き上がります。

 IHヒーター (前田さん  
  前田さん自作のIHヒーターです、卵が茹っています。鉄製の缶が2次コイル、缶の周りに1次コイルを巻いてあります。前田さんは、このI Hを作るにあたって、2つの研究をしました。  まずは、無線送電についてです。写真をご覧ください。テーブルの右端にある輪っか(コイルとコンデンサでできている)には交流電流が流れています。この交流周波数は可変です。 その隣のコイルには電源は取り付けていないのですが、根元の電球が点灯していることから、右のコイルが作る磁場の変化を隣のコイルが受け取って起電力が発生している、という構図です。つまりは無線送電です。そして、輪っかをもう一個近づけると、今まで点灯していた豆球が消えます。前田さんは、ここで共振周波数が輪っかの数になり、相互インダクタンスが関係していると説明されていましたが、一同、豆球が消えたりついたりするところに興味津々で、いつも通り収集のつかない状態となってしまいました。       そして、本題のIHヒーターです。既製品を分解してみると写真左のような部品が出てきます。こちらはセンサーのようで、1つは温度センサー、もう1つは鍋を置いた時の相互インダクタンスを測るセンサーのようです。 このセンサーのお陰でどんな鍋ででも効率良く温められるのですね。
 転がり抵抗と抗力(石川さん  

  水平面で円板を転がすとやがて止まる。いわゆる転がり摩擦について石川さんは次の条件のもとに考えました。
① 円板上の無数の点の軌跡はそれぞれサイクロイド曲線であり、床と接触するとき点は床と垂直に衝突する。
② 円板と床が接するのは1点ではなく、床や円板が少なからず変形しているため、接触点は複数あること。
③ 円板が床から受ける力は、②の各点で受ける力の合力となる。
つまり、円盤の側面と床との衝突によるトルクが転がり摩擦の原因と考えるのです。

この合力についてのバックグラウンドとして次のような実験もされました(これがまた面白いので、ご説明します)  衝突前後の力を知るための装置について右図をご覧ください。オペアンプを間にかませてオシロスコープと繋げたモーターの先に木の棒が取り付けてあり、棒は振り子のように動きます。 棒の最下点には風船などがセッティングできます。オシロスコープの信号により、モーターの起電力がわかるので、棒の時々刻々の速度がわかるという装置です。 (この工夫めちゃめちゃおもしろい!とひと盛り上がり)  右図は棒が衝突する物体が弾性衝突するプリプリの風船の場合と非弾性衝突する水入りしょぼしょぼ風船でオシロスコープの画像です。縦軸が速度です。
オシロスコープの画像のとんがり部分は、棒と風船のぶつかり始めと離れるとき、速度が0になるところが棒が風船に跳ね返される部分です。傾きが急なところは、加速度が大きい、 すなわち力が大きいということです。さて、弾性衝突では衝突前と後でほとんどグラフが対称的ですが、非弾性衝突では非対称で、衝突前の力が衝突後の力より大きいことがわかります。  この結果をふまえて本題に戻ります。転がる円板に加わる力は、床とぶつかる時の力の方が床と離れる時の力より大きいことがわかりました。床とぶつかるところは、円板の重心より前方です。 ということは、円板には回転を止める向きのモーメントがかかり続けることになります。よって、やがて回転は止まるということです。

 光電効果 (林さん)  
 光電効果の演示実験をするとき亜鉛板を使います。実験用のUV-Cを使うとしっかり磨いた亜鉛板でないとうまくいかないのですが、市販の蛍光灯タイプのUV-Cライトだとよく磨いた金属であればアルミニウムでも銅でも鉄でも光電効果が見られるという紹介から話が始まりました。ただし、目に悪いので光が漏れないようにお手製のシールド傘が必要とのことでした。
 市販のUV-Cライトとはいえ、安全に考慮した光電効果の実験はないかということで、林さんは、LEDを使 うことにしました。当てる光も受け取る側もLEDを使います。受け取り側のLEDには電子メロディーが付けられていて光電効果が起こると音楽が鳴ります。また、LEDも一種類では面白くないので、赤外線・赤・緑・青の4種類を用意(右図)、青色LEDに当てる光は青色LEDでないと音は鳴りません。では、他のLEDでは何色のLEDを当てると鳴るでしょうか。お考え下さい!


 簡単ヘルツの実験 (林さん  
 右図のように誘電コイルを使い、水平方向に放電をさせています。両側にはリード線を取り付けただけで、通常はそれぞれの先に金属板を取り付けますが省略しています。 この放電で電磁波が出ているということで、少し離れたところで、アンテナとレシーバーになるものを置いて確認します。レシーバーはLEDの両端にリード線を取り付けたものでもよいし、右の写真のようにコイルで電位差を作ることで、電磁波の電場の変化を感度良く受け取ることができます。  

 実験動画集 (飯田さん)  
  先日、本「なぜ力学を学ぶのか(日本評論社)」を書かれた飯田さん、科教協の場で本の内容と実演をしようと思っていたそうですが、7月の科教協が延期し、さらにオンラインになってしまいました。でも我らが飯田さんは負けません。本に書いた数々の実験を映像化し、CDにまとめられました。希望者は飯田洋二さんに連絡してください。


 テンセグリティー構造 (伊藤さん  

   不思議なバランスの物体の研究についてお話ししてくださいました。テンセグリティ構造というそうです。科学部の生徒さんが見つけて、一体どんなメカニズムになっているのか知ろうということで、木で再現しました。とりあえず、真ん中については、糸からばねに変更して上下間の張力を測ることにしたのですが、端の張力が、どうなっているのか、どうやったら測れるだろうか、と苦心しているところだそうです。今のところ、端の糸の上にいろいろなおもりをのせ、糸がたるみ始める重さで張力を知ろうとしているそうです。サークルメンバーは、この構造にびっくりするだけで終わらない伊藤さんの思慮深さに舌を巻くばかりでした。    
 生徒が苦手な問題の再現 (井階さん)  
  物理の入試問題などで、生徒が苦手とする問題があります、そんな問題の中から2つ再現されました。  1つ目は、台車の上ですべる物体です。上の物体と下の台車の両者間には摩擦力がはたらくんだろうな、と漠然と捉えているとわかりにくい問いです。「上の物体にはたらく力は、こちら向きにこう」などと明確にしなくてはなりません。そのためにも実物とその運動の様子を見ることが考える近道になります。写真では上の物体には滑り止めが片面に接着してあるので、摩擦力の大きさを変えることができます。  もう1つは、回転系の問題です。しかも質点ではなくて剛体の回転です。初め棒は水平になっていて(時計の3時の位置)1/4だけ円運動をして、時計の6時の形になった時、中心と切り離されてしまいます。この後、棒はどんな運動をするのでしょうか。答えはインスタ“straycatsaich”をごらんください。


 扇風機搭載台車 (榊原さん)  
 物理サークルメンバーの好物が出てきました。台車の上に扇風機が回っています。(ピヨちゃんは扇風機を台車に固定するため、挟まれています。)台車はどちら向きに進むでしょうか。という問題を解決する実験です。等加速度運動のデモとしても使える優れもの!扇風機は出力が高めでないと台車が動かないそうですが、先の飯田さんの動画にもあるネタだそうで、飯田さんが100均で買われた電動消しゴムと羽根を出されました。これでも動くはずと皆で、筒を用意したり、レールになる定規を出したり…わいわい、いつも通りの盛り上がりを見せる物理サークルとなりました。


  楕円面・放物面での波の反射(杉本さん)  

  先日、日光へ出かけた杉本さん、日光東照宮にある鳴き龍に感銘を受けたそうです。何度も反射といえば楕円面だと思い立ち、水の波紋で何度も反射する波を再現する試みを発表。
 鳴き龍は、ある点で鳴らした拍子木の反響音が鳴り続けます。杉本さんは楕円曲線内の焦点間の波の往復に近いと考え、金属でだ円曲線を作成。O H P上の水槽に金属の型を入れ、チョンと波紋を発生させると球面で広がった波紋は型の壁で跳ね返り焦点間を往復。3,4回往復するのを確認しました。(いきいき物理わくわく実験公式ホームページに動画があります)さらに真ん中に板を入れれば部屋のモデルに。床は焦点の鏡像を作りますから焦点に何度も集ますのが観察されました。鳴き龍の部屋と楕円面との関係は定かではありませんが雰囲気を伝えます。ついでに、放物面での波の反射も見せてくれました。こちらは焦点をつつくと平面波が進みます。
動画がいきいき物理わくわく実験公式ホームページhttp://ikiwakuphys2012.fancoocan.jpで見ることができます。 (私もコップを洗うときなど、水をポタポタ落として波の跳ね返りを楽しむようになりました。)


 分子模型のVR (植田さん  
  気体分子を可視化しようということで、V Rで見られるデジタル教材を作られました。ゴーグルをつければ部屋の中をランダムに分子が動き回って壁に圧力を及ぼしている様子が3次元映像で迫ってきます。壁が受ける力積なども表示するとかの条件を変えることができるのも魅力的です。物体の運動をイメージするのがこういった最先端にはおよび腰であるサークルメンバーですが、気体分子のような手作り実験の及ばないものを表現するのにピッタリという感想もありました。植田さんはFeel Physicsという会社を起業して売り出し中です。過去、三重高校などでMR(Mixed Reality)授業を行なっていて実践的な使用がされています。興味のある方はhttps://www.feel-physics.jpをのぞいてください。