2023年7月12日(日)向陽高校での例会の記録です。
 インスタグラムで写真や動画を公開しています。straycatsaichi(ストレイキャッツ愛知)です。
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 亜酸化銅セルで光通信 電磁波の重ね合わせで電磁誘導へ(石川さん 
・亜酸化銅セルによる光通信 30年以上前のこと、岐阜物理サークルの石川さんと小川さんは古い10円玉と銅を電極として水酸化ナトリウム溶液につけると太陽電池のように働くことをみつけました。これは10円玉の表面に生じた亜酸化銅が半導体であるためで、水溶液と10円玉表面の亜酸化銅との間にショットキーダイオードができると考えられます。光に反応するので普段は太陽電池で行っている光通信がこのセルを用いてできます。 今回石川さんが持ち込んだのは銅板の表面を焼いて亜酸化銅を作ったものを用いた性能がかなり改善されたものです。写真がその装置です。以前に見せてもらった装置より格段に性能は上がりました。
・電磁波の重ね合わせで電磁誘導へ 石川さんの今回のメインはこれです。 コンデンサーのような電線の図から始まります。スイッチを入れた直後、極板間に電場と磁場が生じて電磁波となって極板間を伝わります。 このとき、電線の先がつながっていると、Eの反転した反射波と重なるので、電場は0、磁場はMaxになります。つまり、定常電流による電磁石になるということです。 さて、この電磁石を速さv(《c》で動かします。観測者にはどのような電場E‘と磁場B’が見えるでしょう? ドップラー効果が生じると考えると、相対論的ドップラー効果の式を用いて、以下のようになります。 なんと、電場が復活してE‘とB’の間に成り立つ関係は電磁誘導の法則を表しています。

 単極モーター 全部剥いたら (奥村さん 
クリップモーターは電流が磁場から受ける力を生徒が試すことのできる原理丸見えの実験装置です。通常はコイルの両側に出た2つのエナメル線の一方はサンドペーパーで全部剥き、片方は半分だけ剥きます。しかし、この作業が意外と難しい。奥村さんは全部剥いても回るのではないかと考えて両方ともエナメルを擦ってはがし、回転を与えると意外や意外、ビュンビュンと回ったそうです。もちろんサークルでも実際に回転するのを見せてくれました。理屈では回らないと思われますが、何らかの非対称性がトルクを生じると考えられます。

 サイズの物理 (飯田さん  
 「人間・アリ・象」「ゾウの時間ネズミの時間」「生き物たちは3/4が好き」など、動物のサイズや寿命などの比較を題材とした興味深い著書があり、アリがなぜ自分より大きいものを持ち上げられるのか、ネズミがたえず食べ物をくいあさるのかを見事に説明しています。 この手の題材を得意とする飯田さんは多摩動物園で死んだ象の足跡と体重のデーターと自分のデーターを比較して、単純な倍率である幾何学的相似ではなく、重力のある世界での比較であることを考慮すべきだと提案しました。 重力があることを考慮するとは、豆腐のように重力でつぶれて横に広がるということです。これを考慮した相似を弾性相似といいます。右に二つの相似を比較したものがあります。 立方体の豆腐に当てはめると、図のようになります。元の一辺をa、つぶれた豆腐の底面の一辺をd、高さをℓとしています。幾何学相似だとS=V^(2/3)となりますが、弾性相似だとS=V^(3/4)となります。これにデーターを当てはめるとこのようになります。幾何学的相似だと体重が7.7tとなりとても支えきれないが、弾性相似だと人間から見積もると2.8t、ネコから見積もると3.2tで、実際の体重をよく説明すると結論しました。 考え方は面白いですが、サークルでは、ささっと進む展開に参加者は当惑気味。「弾性相似の式を前提としたもっとざっくりした話で十分面白いのでは」とか、弾性相似を飯田さんはばねでの実験を利用したが「この話は自重なのであてはまらないのでは」という意見など炎上気味でした。   

 超高性能手作りバンデグラフ 林さん  

超高性能手作りバンデグラフ 林さんは前回のサークルで手作りバンデグラフのポイントは上下のローラーとゴムベルトとの帯電列上の関係であるという発表をしてくれました。これは上のローラーには毛糸を巻き、下のローラーにはマニキュアを塗る、そしてベルトは天然ゴムを用いることで作れることを教えてくれました。 さて今回は何を見せてくれるかと思ったら、そこに現れたのはペットボトルを胴として、アルミ製のボールを2つ組み合わせた頭を持った美しいバンデグラフでした。スイッチを入れると5秒もたたないうちに写真の通り!もちろん放電実験も行いました。右は頭を四角い箱にしたもの。この太い放電を見てください! 林さんはさらに手回しのバンデグラフも開発中。次回のサークルが楽しみです。

 バイプリズムによる干渉 小野さん)  
 小野さんは物理実験室に眠っているバイプリズム(右写真)を発掘して実験しています。私はバイプリズムの名前は知っていましたが実験を見るのは初めて。レーザーに顕微鏡の接眼レンズを取り付けて広げた光をバイプリズムに入射させると10mほど離れたスクリーンには縦のきれいな縞模様が現れました。 右の図が原理図で、平行光線が2つのプリズムで屈折し、それらが干渉して縞模様となります(下写真)。昔は干渉を見せるのに回折格子ではなくバイプリズムが用いられていたようです。
小野さんは定量的にも解析し、干渉縞の暗線間隔が予想よりかなり大きな値であった原因を突き止めました。原因は、バイプリズムに入射する光が平行光線ではないことにありました。そして実験。対物レンズーバイプリム間を変えて実験をすると、暗線の間隔とこの距離が反比例しているとの結果を得ました。下図が光が球面としたときの光の道筋を表したものです。2点波源となりヤングの実験と同様に扱えます。理論式から暗線間隔Δxは光源とバイプリズムとの距離に反比例する結果になりますから小野さんの実験を見事に説明します。


 ガラス管とニクロム線で釜鳴(杉本さん  
 釜鳴の実験といえば金属棒にスタックと呼ばれる金属メッシュの塊を中に挿入する装置がメジャーです。この場合は下からバーナーで熱してスタックをしばらく熱して止めると「ボー」という大きな音が発生します。 杉本さんは長さ1mのガラス管とニクロム線で行う簡単な実験装置を紹介してくれました。ニクロム線はらせん状に巻いてガラス管の下から1/3付近に挿入します。スライダックを用いてニクロム線が赤熱するまで電流を増すと管から「ボー」という音が聞こえてきます。簡単にできるし、中が見えるので演示実験としてピッタリです。 さらに、ニクロム線の位置や形を変えて実験しました。ニクロム線が端過ぎても出ないし、中心に近づくと鳴らなくなります。中の気柱を線香の煙で見る試みもしました。共鳴前は線香はきれいな流線を描いて登っていきますが、共鳴が起きると吸収はありますが明らかに中に入る様子は異なります。

 コウモリの超音波とドップラー効果(伊藤さん)  
  伊藤さんが顧問をしている科学部の夏合宿は奥三河だそうですが、近くに洞窟があり、そこにコウモリが棲息しているそうで、そこでコウモリの出す超音波を調査した結果を報告してくれました。 実験はバットディテクターと呼ばれる、超音波を可聴音に変換する装置を用いています。右図がそのデーター。この装置でエコーロケーションするコウモリの声を(約80kHz)を観測すると2kHzほどの高低差で変動しています。これはコウモリが15km/h~30km/hで近づいたり遠ざかったりするときに生じるドップラー効果であると説明されます。


 実験で確認する受験物理 ― (井階さん  

   大学入試問題は解くだけで終わりってしまいがちですが、井階さんはそれを実験で示しすことによって現実の現象と結び付ける授業をしています。 今回は波の回折・干渉の問題でした。重要問題集(数研出版)から次のような問題が載っています。2点波源からの応用問題ですが、干渉の原理がわかっていれば解くことができますが本当に起きるのでしょうか? 井階さんは少し簡単にして3点波源で距離の比が1:2のもので実験をしました。波源の球が大きいためかあまりはっきりとは観察できませんでした。次回に期待です。 平面波が壁に斜めの向きから入射するときに反射波と干渉して壁に平行な干渉模様を作る現象も挑戦中だそうです。