2024年2月18日(日)向陽高校での例会の記録です。
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映画「ゴジラ-1.0」ではゴジラにダメージを与えるためにゴジラの体に泡発生装置を巻き付け海底に沈めるシーンがありました。
奥村さんはこのシーンを身近な材料で再現する装置を手作りしました。 大小2つのペットボトルを使っています。小さいペットボトルの底を切って泡発生器(小さい穴が多数開いているアサガオ状のもの)を差し込み、ホースからの空気が泡となって出るようにします。(図1) これを水を入れた大きいペットボトルの中に入れることにより小さいペットボトルも水で満たします。 実験開始。空気入れで空気を送り込むと泡が下から吹き出し、中に入れたスーパーボールは見事に沈下!(図2) 水中に泡があると浮力が小さくなるからかボールは沈むと説明されます。 ただ、観察していると泡の上昇とともに水の流れが起きて対流によってボールが沈んだのだと見えないこともない。 早速、泡の代わりに水道からの水を下から送るとやはりボールは沈みます。「泡をもう少し細かくしたら」「泡の出る場所を広くしたら」などアイディアが出て結論は先送りに。興味深い実験です。 |
水中シャボン玉 (林 正幸さん) |
愛知理科の会で話題となった液体中にシャボン玉を作る実験を紹介。
ビーカーに洗剤から作ったシャボン液を入れ、ストローから同じシャボン液を1滴落とします。うまくいくと液面付近に丸い空気の水中シャボン玉ができ、かなり長い間ふわふわと水中に浮かんでいます。 このシャボン玉がなぜ水中に安定して存在するのは「細胞膜(脂質二重膜)と同じ仕組み」であるということを生物を教える石川さんと伊藤さんが説明してくれました。下図がその仕組み。 石鹸分子は疎水基と親水基とからなりますが、石鹼水の表面には疎水基が上を向いて広がっていて、そこにせっけん液をたらすと疎水基と疎水基とで幕が避けあって膜を作って空気を囲むという訳です。楽しくためになる実験でした。 |
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亜酸化銅被膜の太陽電池 (杉本・石川さん) |
前回・前々回で話題になった銅の表面の亜酸化銅被膜による太陽電池の続編です。
発端は古い10円玉の表面の亜酸化銅が半導体で、水酸化ナトリウム溶液に浸すとショットキーダイオードとして働くため太陽電池になるというものです。 酸化被膜が半導体になっているのは古い10円玉だけ?という疑問で身の回りの古い硬貨で実験。1円玉、5円玉、100円玉、表面が太陽電池として働くと思いますか? 実験は10円玉のときと同じように、重曹水の中に硬貨と銅の棒を電極として浸して行われました。ラジオの音声信号で変調された光を硬貨にあてて、電極からの出力をプリアンプ、アンプと2段に増幅してラジオの放送が聞こえるかを調べました。 結果、5円玉では大きな音が、100円玉ではかなり小さいですがかすかに聞こえました。1円玉では音は確認されませんでした。 5円玉は黄銅、100円玉は白銅と、どちらも銅を含んでいるため亜酸化銅が表面にできていると推測されます。1円玉は酸化アルミがあるのですが、伝導率が高いために半導体の機能はしないと考えられます。<BR> 石川さんから送られてきた固体の半導体での実験もしました。物はMoS2です。2つのミノムシクリップで2か所を挟んであります。これに変調された光を当てるとアンプからはクリアーなラジオ放送の音がします。 液体ではないのでストレートに点接触半導体であることがわかる逸材です。 井階さんは石川さんの亜酸化銅と銅板を重曹水の中に入れた太陽電池の実験を光の波長を変えて行っています。 今回は途中経過で、演劇用のカラーフィルムを使った実験ではあまりよくわからないという報告。再実験に期待です。 |
”パルス充電でバッテリーの復活”装置の信号 臼井さん) |
パワーが弱くなった車やバイクなどのバッテリーを復活させる充電器をご存じですか?鉛バッテリーは電気を取り出すときに硫酸鉛が塊となり、この物質は電気を通さない。
これをサルフェーションと呼んでいます。そこで直流充電ではなくパルス充電をしてサルフェーションを分解しようというのがこの製品です。 臼井さんは写真左にあるパルス充電機でどのようなパルス電圧が出ているのかを観測しようと試みました。 測定はクランプメーター方式で、15㎜位のドーナッツ型のフェライトコアのドーナッツに沿って20回くらいエナメル線をくるくると巻き、簡易プローブを作り、これをバッテリーとパルス充電器を結んでいる導線の中に入れ、交流電流を検出します。(写真右)これをオシロで見ようというものです。 結果は、電圧が小さいせいかこの方式ではうまくいかないのかサイン波しか出てきませんでした。また条件を整えてチャレンジするとのことです。期待しましょう! |
手回しバンデグラフ発電機 (林ひろさん) |
前回、強烈なインパクトを与えたひろさんの手作りバンデグラフ発電機がまた進化。ひろさんはそれを手回し式にしました。この改良の意図は、モーターを使うと「電気(100V)で電気(静電気)を作る」という印象があり、それを払しょくすることにありました。仕組みは簡単で、図にあるように、2つの大きさの異なるプーリーをゴムベルトでつないで動かしています。大きいプーリーを回すとバンデグラフの下のローラーに直結する小さいプーリが約10倍の回転数で回ります。
さて、その性能は? モーター使用の場合とまったく変わりません! 少し回してアースを近づけると強烈な火花が飛び出します。それだけではありません。手回しにしたことによる最大のメリットは、電荷を蓄えるために仕事をしなければならないことが手応えでわかることです。プーリーを回すとだんだんと手応えが重くなってゆきます。貯まった電荷に逆らって電荷を持ちあげなければならないからです。ある程度電荷がたまったところでアース棒で放電してやります。すると、プーリーは急に軽くなります。 井階さんが上下のローラーにつける毛糸とセルロースをひろさんのものと上下逆にしたバンデグラフを作りました。 そのバンデグラフとひろさんのバンデグラフとで放電させる実験も行いました。案の定、凄まじい放電がおこりました。 手作りのハミルトン風車の実験も行いました。「先端から電子が放電してその反動で風車は回る」と考えがちですがそれは間違いであるとのひろさんの説明。(右図) 電子は出たらすぐに空気にトラップされます。そして、電荷を帯びた空気と風車が同じ電荷を持つので押し合って風車は回転するということです。 |
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水ロケット飛行距離の研究(伊藤さん) |
向陽高校科学部の生徒の研究を紹介してくれました。彼らは水ロケットの飛距離を伸ばす研究をしています。 水ロケットの軌道を見ると、水を吹き出して加速していく領域と慣性飛行の領域に分けられます。「翼をつければその揚力によって飛距離を伸ばすことができるのでは」というのが彼らの発想。 翼の形や取り付ける位置を試行錯誤してゴムで飛ばす基礎実験をした結果が図です。見事に飛距離が伸びています! 加速してゆく領域では翼は抵抗力となるので、加速領域では翼は畳まれていて、慣性領域になったら翼が広がるようなメカニズムを考えているそうです。 愛知物理サークルでは過去に二段式ロケットが開発されていました。それを利用したらできるかもしれません。この先の研究が楽しみです。 | |
手作り「ベルバラ」、ストローで線状の光源(村田さん) |
「ベルバラ」とは力のモーメントの分野でのトリッキーな実験装置で、いきいき物理わくわく実験2p.44に掲載されているネタです。「ベルバラ」とはベルトでバランスの略で、ベルトでバランスをとるわけです。 右図が村田さんが作った「ベルバラ」。紙粘土でできているので簡単にでき、形も自由に変えられます。指にベルバラの端を載せると当然落下しますが、2つのねじにベルトをかけると安定して指の上で静止します。 もう一つはストローを利用して線状の光源を作るというもの。光の道筋を確かめるのに線状の光源が便利です。村田さんが利用したのはストロー。ストローの先を潰してレーザ光線を通すと簡単に線状の光源ができます。 |
基礎物理シラバス(飯田さん) |
以前に短大で行った基礎物理の内容を紹介してくれました。 内容 ・「いきいき物理わくわく実験」「科学はどこにでもあり、誰でもができる」をモットーに、計算や数式とは一味違った物理の魅力に迫る。 ・身近な材料を使った実験や討論を通して、力学、光や音、熱、電磁気、原子の世界など、自然の不思議さ・奥深さを追求し、科学の真の面白さ、誰でもが心から楽しめる物理をめざす。 授業方法 身近な材料を使った実験や興味あるテーマを通して、討論を交えた授業を展開する。毎回、授業内容に対するコメントを求める。 右図にあるように第1回から第15回まで実に楽しそうです。 例会で話題にしたのは、①「磁石が鉄の壁にくっついて落ちないのは磁力が支えているから?」②「丙午での出生率」でした。 ①は簡単な実験で示すことができます。飯田さんが利用したのは鏡です。鏡にはガラスの面と裏のざらざらした面があります。 ざらざらの面では落ちない磁石がつるつるの表面に変えると滑り落ちます。磁石は摩擦力に支えられているということを明確に示してくれます。 ②は「丙午に生まれた女は気が強くて嫁に行っても夫を殺す」という迷信について。昭和41年の丙午では25%も出生率が低下したという事実があるのです。ところが、明治39年も丙午なのに10%しか減少しなかったという。マスコミの影響である。2026年に迫った次回の丙午。いかになりますか? |
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実験で確認する受験物理―水波の干渉(井階さん) |
今回の“実験で確認する受験物理”は2013年の早稲田の入試問題に関するものでした。
話題にしたのはその前半部分。スリット間隔が異なる場合の回折を扱っています。
答えは4つのスリットの間隔の組み合わせが30dから180dまで8通りありますがこれらの最大公約数15dをスリット間隔としてもとめます。0次の次に最初強め合う方向は15dsinθ=λが条件式となります。
本当に最大公約数の方向が強め合う方向になるのかを水波で検証してくれました。簡略化して3つの波源として間隔はd、
2dとします。考えられる波源の間隔はd、2d、3dです。最小公倍数はdなので1次の方向の条件はdsinθ=λとなります。 図は井階さんによるホイヘンスの原理での説明です。様々な共通接線がある中でdsinθ=λを満たす角度が卓越して強め合うことを説明しています。そしてその右の写真が水波投影機での結果です。 水波投影機で平面波が壁に斜めに入射するときの入射波と反射波との干渉で生じる強め合う線と弱めあう線ができる方向についても観察しました。 弱めあう線は壁に平行に、その間を強め合う点が移動します。説得力ある実験でした。 |
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ハンドスピナーを利用したアトウッドの装置(山本さん) |
山本さんが注目したのはハンドスピナーというおもちゃの滑らかな回転です。ボールベアリングがついているために一度回したら随分と長い時間回転しています。それを利用してアトウッドの装置を組み立てて重力加速度を測定するという試みです。 ハンドスピナーに手作りの滑車を付けたのが右図です。摩擦はほとんど0。これをスタンドに固定して糸をかけて両端におもりを付けてできあがり。これで9.8m/s2に限りなく近い値を得ようという計画でしたが、例会では糸が外れるなどのトラブルが続き後日ということになりました。 |