2024年8月26日(土)向陽高校での例会の記録です。

   2024年8月26日(土)向陽高校での例会の記録です。
今回は東レ科学振興会の方が来訪し東レ理科教育賞について説明してくれました。企画賞というのが新設されたそうです。興味ある方はぜひHPをのぞいてください。
 YouTubeで実験の動画を公表公開中! ”いきわく!物理” で検索してください。
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  • 1.おっ玉げた(臼井さん 

  •  台所にあるお玉がテーブルの上で回してみたことがありますか?うまく回転を与えるとテーブルの上でダイナミックに円軌道を描いて回ります。 タイトルは実験した臼井さんがこれを見て“おったまげた!”とびっくりしたところから来ています。さて、回転するお玉はそのうち止まりますが、どのような形で止まると思いますか? 実はお玉には2つの安定点があるのです。かなりの確率で右図のように止まりますが、たまにこれの上下逆にとまるそうな。 そっと置けば確かにその形でも静止しますが、ここで止めるのはかなり難しく、残念ながら例会では見られませんでした。うまくいけば準安定状態の説明で使えそうです。
    お玉の回るのを見ているだけでも面白いですよ。

     お玉 

     
  • 2.理科教室「いきわく!物理」(奥村さん 
     科学教育研究協議会編集の「理科教室」に「いきわく!物理」の連載が始まったことをアナウンスしてくれました。イラストはいきいき物理わくわく実験シリーズのイラストを描いた奥村さんが今回も描いています。 8月号は辻さん(岐阜)「タケコプターみたい」を掲載。図も解説もとてもわかりやすく中身も読みやすくなっています。
    この発行と並行してYouTubeチャンネル“いきわく!物理”も大好評で、村田さんの百均スリンキーで縦波・横波の動画はもう300万を突破しているとのこと、無編集でアップしているのがかえっていいらしいという話です。 このチャンネルを視聴していない方はぜひ! 。

     図1 


     3.簡単空き缶つぶし (児島さん 
    ”空き缶つぶし”とは空き缶内部の圧力を下げて外部からの大気圧に空き缶を潰させるという実験で、大気圧の大きさを生徒に強烈に印象づけます。 内部の圧力を下げるには、空き缶に水を少量入れて口が空いたまま沸騰させて缶を封じ、冷やすと蒸気が水に戻るので内部の圧力が下がることを利用します。ここで問題となるのが缶の封じ方です。 沸騰したらフタを逆さまにして水に突っ込むというのがよくやられる方法です。入れた瞬間ボンと空き缶が潰れます。 スリルはありますが熱湯が入った空き缶をひっくり返すのでリスクがないわけではありません。
    児島さんが紹介してくれた方法は安全にやりたい方に超お勧めです。 それは簡単。缶はふたがねじ式のものを使います。ふたに3mm程度の穴を開けておいて沸騰させ、その穴を防ぐだけです。後は濡れた雑巾の上にまってもよいですし、水につけるのもありです。

     冷やす前 


     冷やした後 


     4.水ロケットトビウオ型の開発 (伊藤さん  
     顧問をしている向陽高校科学部水ロケット班の研究の続報です。飛距離を伸ばすために「トビウオ型の展開翼をつけたら距離が伸びたという報告でした。 打ち上げ時には邪魔になるので途中で開くような工夫をしたいということでした。過去に2段式水ロケットを作った方式で、ペットボトルの中の圧力が下がるのを利用して開くようにしたらどうかという意見がありました。 最高点近くで開けば滑空時間が長くなり飛距離が格段に伸びることが期待されます。
    今後の展開が楽しみです。。

     これが翼つき水ロケット 


     5.光の実像実験 杉本さん  

    夏休み中に手に入れた2つのねたを演示実験。 その1 凸レンズの実像はどう見える? 凸レンズの実像は光が集まり広がる点です。そこで「ここから光が出るのでここに物体があるように見える」と説明しないですか?でも実際にレンズの実像の後方からのぞき込んでも物体はレンズの中にあるように見えます。 なぜかに答えを与える実験を台湾の周先生が実験で示してくれました。(周先生が日本へ来たのではなく、杉本が台湾へ行きました)
     右がその実験。実像の位置にすりガラスを置いて半分像を写します。そして後方からレンズ方向を見るとすりガラスに映る像と像がない位置に見える物体との区別がつきません。 すりガラスをとると再び実像の位置にあるように見えていた象は再びレンズの中へ!目の焦点が象の位置にないためではないかと解析しています。

     装置 


     スクリーンと実像 

    その2 ピンホールを凸レンズの前に置くと? これはこの夏の科教協岩手大会のお楽しみ広場で宮城の栗木さんに教えていただいたねたです。LEDを複数用意します(色が違いう方がよい)。 これをピンホールでスクリーンに映すと上下逆さま、左右逆さまに映ります。ピンホールが3つなら3つの像が、多数ならばその数だけ像が映ります。 さて、凸レンズを置いてちょうどLEDの像がスクリーンに映るようにしておきます。レンズをのけて多数穴のピンホールをこの位置に置きます。 当然スクリーンには多数の像が映っていますが、このピンホールの後ろにレンズを置くとスクリーンには何が映るでしょうか?答えはレンズのみを置いた時と同じ1個の像が映るです。 これは、ピンホールを通る光はレンズを通る光の1経路だということです。レンズの性質を示すいい実験です。
     装置の全体図 


     6.60Hz LC電気共振 (林さん)  
     コンデンサーとコイルの電気共振回路は面白い実験です。LとCとが電気共振回路を作り豆電球でも回路に入れておけば電流の流れが見てわかります。 電気共振がおこる周波数の電力を供給するとLC回路に挿入された電球は明るく点灯します。このとき、電力供給側にも豆電球を入れておくとこの電球は光らないという一見不思議な現象が起こります。 この実験、通常は発振器の周波数を変えて行いますが、林さんの実験は家庭用の60Hzを使おうというものです。周波数が変わりませんから、LなりCなりを変えることになります。 林さんはコイルの鉄心の位置を変えてそれを実現しました。
    共振周波数60Hzの回路はコイルの電気容量を50μFとするとコイルのインダクタンスは およそ0.14Hとなります。結構な巻き数になりますが細いエネメル線ではコイル自体の抵抗が大きくなってしまいます。 極太のエネメル線でコイルを作るのがポイントです。 図のように回路を組み、スライダックで50Vほどの電圧を加えます。最初はコイルの鉄心は閉じておらず、このときは4つの電球は明るく光っています。 次にコイルの鉄棒を載せて鉄芯をロの字状に閉じていくにつれてLC回路内の電球は光ったままですがスライダック側の2つの電球は消えていきます。 電流を測定してみたら、LC内の電球の両端は6V、消えた電球には0.4Vしかかかっていませんでした。また、コイル両端の電圧は30V、コンデンサー両端の電圧は40V、電圧供給側の電圧は16Vでした。 位相のちがいによるものです。

     共鳴していない 


     共鳴中 



     7.手回し回転台(井階さん  
    廃棄された手回し回転台を使った実験を紹介してくれました。電動回転台はよくありますが、手動だと相当早い回転速度まで自由に変えることができるのでとても便利です。 この上に実験装置を置けば様々な円運動の実験ができます。演示してくれたのは、これまた廃棄された光の屈折の実験装置のプラスチックの水槽を利用して見事な水面の放物面を作りました。
    この様子はYouTubeチャンネル「いきわく!物理」で公開しています。

     手回し回転台 


     放物面実験 


    8.文献紹介「科学をどう教えるか」「物理を教える」(丹羽さん)  
    「科学をどう教えるか」(丸善出版)と「物理を教える」を紹介してくれました。 この本はメリーランド大学のエドワード・F・レディッシュ教授が書かれた“Teaching Physics with Physics Suite”が訳された本です。日本物理教育学会の会員有志が翻訳し創立60周年にあたる2012年に発行されました。 発行前後にはかなり評判になって私も購読しました。丹羽さんは最近購入して面白く読み進めているとか。私も久しぶりに紐解きましたが実際的な題材を用いている問題例の数々は読んでいるだけで面白く、 また詳しく読んでみたい気になりました。
     
     



     9.吹き矢(チョーク)式モンキーハンティング(飯田さん  

     手作りモンキーハンティングの装置には様々なものがあります。一番普及しているのが電磁石でサルを吊り下げ、吹き矢が飛び出すときに回路を切るようにしてサルを落とすものかと思われます。 飯田さんは電流を使わないことにこだわり、いきいき物理わくわく実験3に吊り下げ式のモンキーハンティング装置の記事を書きました。今回はそれをもう一度見たいとのリクエストに応えたものです。 この装置もやはり吹き矢式で、矢が吹き矢の口を通過したときにサルを自由落下させるのですが、電磁式に比べてはるかにサルを吊り下げるタコ糸の端を吹き矢の口にクリップでひっかけ、 矢(チョーク)が吹き矢の口を通過するときにクリップを押し飛ばしてサルを自由落下させる形にしています。 「確かにカンタンかも」という声がありましたが、「的が大きすぎる」との声もあり。電磁式を作っていない方にはお勧めです。    図3は壁に蝶番で固定された棒を糸でつる問題の実験装置です。

     吹き矢の先 


     全体図 


     10.「同時到着」の実験装置と「私たち1分後に到着します」の振り子(山本さん  


       「同時到着」これをテーマとした実験
    その1 ガリレオの斜面
     梅酒や梅干を干すための大型プラかごのふちを利用した実験装置。図のように針金を7本ほど張ります。それぞれの針金に穴の開いたおもりを通しておきます。 おもりを円周上から同時に落とすとそれぞれのおもりはどう着くでしょう?答えは「同時」です。 球の加速度はa=gcosθ、経路の長さはx=2rcosθなので落下でのx=1/2at2に代入するとcosθが消えてどの経路でも同じ時間となります。
    その2 サイクロイド振り子
    ①サイクロイド曲線のくぼんだ場所に振り子の糸を固定して振らせると糸の一部が面に沿うように振れます。このとき、振り子の周期は振幅によらず一定です。「単振り子」でも一定ではと思われるかも知れないですが、単振り子は振幅が大きいと等時性はなりたちません。 これを利用して2つのおもりを下げ、左右のちがう高さから振らせ、最下点で同時に衝突するのを検証しました。
    ②今度はサイクロイド曲線のレールです。これまた2つのビー玉を左右ちがう高さから落とすと見事に最下点で衝突しました。
    その3 3つの斜面
    3つの異なる斜面があります。ビー玉を転がすとどの斜面が一番早いでしょう?最初に加速した方が速いような気がしますが、真ん中の斜面がサイクロイド曲線なので、この斜面のビー玉が一番早く到着します。 実験は微妙な差なので難しいですが、スローで見るとサイクロイド曲線が一番早く着いていました。 「私たち1分後に整列します」の実験
    NGKサイエンスサイトでの「私たち1分後に整列します」の再現
    振り子の長さは42.22cm,40.45cm,…29.54cmとしてゆくと周期が1.30s,1.28s,…1.09sとなるらしく、1分間あたりの振動回数が46回、47回、…55回となります。 10個の振り子を同時に振らせるとすぐに位相がばらばらになりますが、ちょうど30秒後に互いに逆向きに振れ、1分後には再び位相がそろいます。なかなか見事です。

     11.宇宙線と雷との相互作用(林さん  
    京都大学、金沢大学が中心となるグループが市民サポーターと連携して雷発生の謎を解明するための「雷雲プロジェクト」を行っています。 これは金沢市の5地点で市民と協力して雷雲から放射されたガンマ線観測するというものです。論文では、観測の結果雷が発生すると地上でガンマ線が観測されるというデーターを得たとしています。 このガンマ線発生までのシナリオは、 宇宙からのエネルギーの高い粒子が空気に衝突して電子を含めたたくさんの粒子を作り出す(空気シャワー)→その中の電子が雷雲中の電場で加速されて相対論的な速度になって空気分子と衝突したときにガンマ線を発生する。というものです。
    放射線が雷発生のトリガーとなっていることを霧箱のスペシャリストの林さんが実験してくれました。ベータ線の発生源には一昔前のキャンプ用ランタンのほやが使われています。 ほやをハッポ―スチロール板の先に取り付けて霧箱に近づけてベータ線が出ているのを確認。これを高圧発生装置(コッククロフト・ウォルトン回路)を使って放電ぎりぎりにしてある電極に近づけるとパチパチと放電します。 確かに放電のトリガーになっていることがわかります。これが大気中で行われているとはスケールの大きい話です。

     霧箱でベータ線を確認 


     ハッポ―スチロールの先にほやが付いています 


     12.「N=mgcosθ」ではない例について(井階さん  
    “斜面上の物体が受ける垂直抗力はN=mgcosθ” 問題演習に慣れている生徒は反射神経的に答えます。でもそれは斜面が静止し、斜面に沿って物体が動いているときの話。井階さんは斜面が動く場合をN=mgcosθとはならない例として紹介してくれました。  図は井階さんが用意してくれたプリントです。「30°の斜面の上をすべる物体を静止している人から見たら45°で落下しているように見えた」という設定です。計算の結果、 N=(√3-1)mgとなりますから√3/2 mgとはまったく異なる値となります。

     装置 


     井階さんの計算 


     


     13.CDの構造(飯田さん  
    CDの表面での反射を見るとスペクトルに分かれてきれいに見えます。これはCD表面が反射型の回折格子であることは周知のこと。 しかし、トラック溝の縞模様がその役目をしているとは知っていてもどこが回折格子になっているかは意外と知っていないものです。 みなさんは回折光を反射しているのは溝か溝と溝の間かどちらだと思いますか?因みに、私は回折格子とのアナロジーでくぼみは乱反射し、飛び出しているところが回折光を出していると思っていました。  図が飯田さんが調べた結果です。飛び出ている部分をピット、へこんでいる部分をランドといいますが、ピットは光を反射しない突起、ランドは光を反射する平らな部分と書かれています。 という訳で、回折光を反射しているのはへこんでいるランドという部分でした。

     ほぶしい CD/DVDのススメより