虹プロジェクターの製作  (PDF版295KB

湘南台高校・山本明利

 YPCニュースNo.110で解説した「CDが作る虹の理論」にしたがって、電球とCDを素材にして壁面に円形の虹を投影する虹プロジェクターを試作してみました。

【材料】

不要なCD(オーディオ用でもCD-ROMでも可)1枚
100Wミニクリプトン電球(クリヤー球) \400ぐらい
E17型磁製ソケット コード付き\800ぐらい
ソケットを支える支柱金具または木の棒
黒い紙(直径10cmに切り抜く)
おかず用アルミケース(お弁当におかずを詰めるときに使う仕切容器)1枚
ベニヤ板
組み立て用のビス・金具類
塗料(艶消し黒)

【虹プロジェクターの構造】

 一辺約20cm程度の箱をベニヤ板で組み立て、一面には直径18cm程度の穴を開けておきます。図1のように電球を穴の中央にくるように箱の中に向けて取りつけます。箱の内部は反射を押さえるために黒く艶消し塗装しておきます。電球と向かい合う面にはCDを貼りつけます。CDの中央部は直径10cmに切り抜いた黒い紙で覆っておきます(写真1)。外周の幅1cmの部分だけを回折格子として使います。これは隣り合う領域からのスペクトルの混色を避け、虹の色をより鮮やかにするための工夫です。
 箱の奥行きも20cm程度ですが、CDと電球の距離が調節できるような構造にしておくと「ピント合わせ」ができます(写真2)。虹を投影する壁面に合わせて焦点もどき(pseudo-focus)の位置が変えられるからです。
 外虹は犠牲にして内虹だけを開口部から外部に導きます。また、電球の根元には黒く塗ったアルミケースをとりつけてフードとし、直接光が外部に漏れないようにします(写真1)。100Wクリプトン球は非常に熱くなるので、火災と火傷に注意する必要があります。場合によっては箱に換気ファンを取りつける必要があるでしょう。

図1 虹プロジェクターの構造

写真1 虹プロジェクター正面写真1 奥にCDが見える

写真2 虹プロジェクター側面・背面写真2 CD部分はスライド式。

【虹の投影】

 暗室で電球を点灯すると壁面には期待通り虹が投影されます。直接光と0次の反射光はフードや箱にさえぎられて出てきません。壁面には円形の虹だけが投影されます。
 CDと光源の電球とがある程度遠いときは、図2のように内虹は箱のすぐ外側で収束し、像を結びます。電球のフィラメントの形がはっきりと壁に映ります(写真3)。大きな色収差がありますから、わずかの位置の違いで単色の像の色が激しく変わります。
 像点よりも箱に近いところでは虹の順番は赤が内側、紫が外側ですが、遠いところでは順番が逆転し赤が外側に来ます。ただし電球やフードによる内側のケラレができるため、赤の光が一部欠けてしま
います(写真4)
 光源とCDの距離を適当に選ぶと(約13cm)、図3のように内虹をほぼ平行に出すことができます。虹円錐ならぬ虹円筒になるわけですが、この状態では壁とプロジェクターの距離が変化しても、壁に映る同心円の虹はあまり変化しません。ケラレも少なく、ベストポジションと言えると思います。虹の順番は赤が内側、紫が外側です(写真5)
 光源とCDをもっと近付けると、図4のように虹は半径を広げ、中心の暗部が拡大します(写真6)。箱の開口部の半径で制限される外側(紫側)のケラレも生じてきます。しかし、興味深いことにさらに光源とCDの距離を短くしていくと、中心の暗部のそのまた中心から次の虹が沸き上がってくるのです。フィラメントの像もはっきり見えます(写真7)。これは2次のスペクトルによる内虹なのです。

図2〜4 虹の焦点合わせ写真3のサムネイル写真3(クリックで拡大)

写真4のサムネイル写真4(クリックで拡大)

写真5のサムネイル写真5(クリックで拡大)

写真6のサムネイル写真6(クリックで拡大)

写真7のサムネイル写真7(クリックで拡大)

【実験上の注意】

 100Wミニクリプトン球のガラス球付近は非常に熱くなります。アルゴン電球の比ではありません。紙などを触れると焦げてくすぶり始めるほどです。したがって火傷や火災に十分配慮して実験をする必要があります。2次の内虹の観察のためにCDを接近させる観察は短時間にとどめます。近付けすぎるとCDが変形したり融けたりする恐れがあります。熱には十分注意しましょう。


【関連文献】
CD表面に眼視で直接スペクトルを見る観測法については以下のすぐれた実践があります。

「CDで見るレインボー・リング」倶知安高等学校・佐々木淳さん(BUTURIサークルほっかいどう
「コンパクトディスクを用いた光の観察グッズ」元京都府立工業高校教諭・水巻守代さん

YPCニュースNo.111掲載】 (PDF版295KB

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