PETボトルの諸性質  (PDF版213KB)

湘南台高校・山本明利

 PETボトルは、耐圧性に優れた容器として、また加工しやすい工作素材として、理科実験でも多用され、今後もますます用途が拡がると予想されますが、耐圧性などの物理的諸元については成文化されたものをあまり見かけません。それもそのはずで、PETボトルについては日本工業規格(JIS)などの公共規格がなく、ボトリング会社などの要求水準に従って、各PETブロー成型メーカーが個別に設計し、製造している現状なのです。

 そこで、ある大手のPETボトル製造会社にご協力をいただいて、具体的なデータを示してもらいましたので参考にしてください。


市販のPETボトルは3種類に大別される

1.炭酸飲料用PETボトル
炭酸飲料を充填するためのPETボトルで、耐熱温度は50℃と低くおさえられているが、飲料が発生する内圧(後述)に対して耐えるように設計されている。
2.耐熱PETボトル
清涼飲料水を85℃の温度で加熱し、殺菌を行いながら充填するために用いられる。耐熱温度は85℃と高いが、耐圧性はほとんどない。
3.一般用PETボトル(アセプチック用PETボトル)
清涼飲料を、限界濾過法により細菌を濾過し無菌化するか、または、高温短時間殺菌法により瞬間殺菌し、常温充填する(アセプチック充填)のに用いられる。耐熱温度は50℃、耐圧性はほとんどない。

各PETボトルに共通した性質

1.耐薬品性
強酸・アルカリ性薬品への耐性はない。絶対に入れないこと。PET樹脂は、強酸・アルカリによって加水分解される恐れがあり、これら の薬品を入れることは危険である。耐酸性は食酢程度まで。
2.耐有機溶剤性
本的には有機溶剤への耐性はない。絶対に入れないこと。焼酎用に使用されるボトルの20%アルコール程度が限界。高濃度のアルコールに触れるとエステル交換反応が起こり、ボトル強度が低下するおそれがある。

炭酸飲料用PETボトルの耐圧強度

 炭酸飲料は保存温度によって以下のような圧力を発生する。これに耐えるよう に設計している。

   20℃ → 4kgf/cm2(約4気圧)
   30℃ → 5kgf/cm2(約5気圧)
   50℃ → 8kgf/cm2(約8気圧)

 この圧力は炭酸飲料を製造した直後の理論圧力である。店頭に並ぶ炭酸飲料の内部圧力は上記圧力より2〜3割減圧となっている。実験の結果からは、炭酸飲料用のPETボトルの耐圧性は6kgf/cm2程度と推定される。したがって、PETボトル入り炭酸飲料の保管温度は30℃以下にするよう、使用者には要請している。温度が50℃以上になる環境下での放置は、PETボ トルの耐圧性・耐熱性の限界を超えるばかりでなく、キャップの性能も限界を超えるので非常に危険である。
 理科実験に炭酸飲料用PETボトルを使用する場合、使用するPETボトルの種類に十分注意し、炭酸飲料用PETボトルを使用する場合は、使用温度は30℃以下、かつ内部圧力4kgf/cm2以内で使用すること。


 いかがですか。みなさんはこの限界内でPETボトルを使用していましたか?


YPCニュースNo.134('99/05/15)に掲載】 (PDF版213KB)


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