例会速報 2001/11/14 慶應義塾高等学校


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私学研修会報告 水野さんの発表
 水野さんが、私学の研修会で仕入れてきたネタを報告してくれた。まずは、配線用カバー(マサル工業:テープ付きミニモール)で作る、ジェットコースターモデル。「やってみよう何でも実験」にも出演された、武蔵野市第一中学の辻本昭彦さんから伝授を受けたという。レールが容易に継ぎ足しできる構造になっていて、いろいろなコースを工夫することができる。


 左は紙コップのアルコールロケット。空き缶にアルコールを入れてよく振り、蒸気を充満させた後、紙コップをかぶせて空き缶の側面下方にあけた小穴から点火する。「ポン!」と大きな音がして、紙コップが天井まで飛び上がる。よく見かけるネタだが、何度見ても楽しい。

 次は、左巻健男さんの得意ネタ。活性炭を液体窒素やメタドラ寒剤で冷却して、空気を吸着してしまうという真空実験。水銀が見る見る上がっていく。これが本来の意味の吸着なのか、活性炭に助けられた凝縮なのかが議論になった。ともかくも管内は真空に近い状態になる。
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ころころリング 車田さんの発表
 カードリングをつないだ並列連鎖をつるして、一番上の輪を手放すと、ころころと上から下まで落ちていくように見える。左右交互に行うと、まるで魔法のようだが、実はひとつの輪が落ちていくのではなく、順次交代しているのだ。実物を見ないとイメージしにくいが・・・。車田さんは、この不思議な連鎖の簡単な作り方を会得したという。
 全国を巡回している北大の展示企画、「かたちと数のワンダーランド−数学と遊ぼう−」の「さわってためせる定理と証明」より。

立体模型 工藤さんの発表
 初参加の工藤さんは数学の先生。正多面体の内接関係を表す立体模型をいろいろ披露してくれた。まず立方体の中から正四面体が、さらにその中から正八面体が取り出されていく模型。入れ子構造がよくわかる。


 お次はプラ板で作ったスケルトンの正十二面体と、正二十面体。竹ひごで内接立体を示している。子供でも簡単な工作でできそうだ。


発泡スチロールの型枠 徳永眞由美さんの発表
 前回の例会で高杉さんから紹介のあった、発泡スチロールの原料「スチロポール」。顆粒を型枠に入れて熱湯で温めると、ふくれあがり型枠の形の発泡スチロールになる。
 徳永さんは、実家の鉄工所に依頼して、いろいろな型枠を製作して実演して見せてくれた。ハート形の茶こしは市販品。


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リモネンで発泡スチロールリサイクル 徳永眞由美さんの発表
 柑橘類の皮から抽出されるリモネンは、発泡スチロールを溶かす性質がある。溶かした後、リモネンだけを揮発させると、スチロール樹脂が回収できる。発泡スチロールのリサイクル法として注目されている。リモネンを手のひらにつけて、発泡スチロールに押しつけると「手形」ができる。ただし、子供など肌の弱いひとが直接触れると、かぶれるという指摘もあった。手にじかに塗ったり、大量の蒸気を吸ったりはしない方がよい。


雲発生実験 渡辺さんの発表
 大阪府和泉市立伯太小学校 十河信二さん(オンライン自然科学教育ネットワーク ONSEN)ご考案。科学共栄社の村田直之さんに教えていただいた実験の追試。ちびれもんの容器に、「炭酸抜けま栓」をとりつけ、空気を圧縮したのち、急にふたをあけると、断熱膨張で温度が下がり、霧ができる。渡辺さんはサーミスタ温度計をとりつけたボトルで、温度変化を実測した。


ダイソーの「永久運動」おもちゃ 鈴木さんの発表
 ついに出た!!これも100円!!ダイソーが発売した「ミニバランス」。モビールや磁力ゴマ(トップシークレットなど)でおなじみの回路が内蔵されている。磁石の運動を電磁誘導でとらえ、フィードバック増幅して磁石を加速する。このおもちゃはくるりくるりと宙返りするだけだが、この回路はいろいろに応用が利くのでぜひGETだ。


虹の謎?! 金子さんと山本の発表
 左の写真の出典は「Internetホームページ用素材集・Photoコレクション」(インプレス)\2500 Copyright(C) XS Software Inc. USAである。フリー画像データだ。舞台はナイアガラの滝(カナダ滝)だ。瀑布の水しぶきに美しい虹がかかる。壮大な光景である。

 しかし、現地で実際に虹を見たことがある金子さんは、この写真に疑問を抱いた。写真のアングルはほぼ北、或いは、北北西方向から見たものである。虹は太陽を背にしないと見えないので、このアングルで虹がかかるのは奇妙だ。よく見るとメイド・オブ・ミスト観光船の影も、写真に向かって左手側に伸びているように思われる。影が長く、光の方向は夕方だと思われるが、虹との位置関係がやはりおかしい。

 同じ本にあるイエローストーン公園の間欠泉の写真。湯気の陰影や右下の岩の影は、太陽光が右から射していることを示唆するが、この虹はカメラの背後に太陽がないと見えないはずだ。

 つまり、これらの写真は合成画像だろうというのが結論。Webページ用の素材写真またはアートとしてはそれでよいのかもしれないが、作者は虹の原理など知らないにちがいない。

格安ストロボスコープ 益田さんの発表
 東急ハンズで販売されているストロボライト。わずか数千円のお手ごろ価格だ。ディスプレイ用の照明器具のため、発光間隔がやや長めで可変範囲も狭いが、本体がスケルトンなのが教育的だし、見たところ、コンデンサーの容量を変更する程度で発光間隔は変えられそうだ。改造して、物理実験に使えるかもしれない。


しし座流星群情報 宮崎さんの発表
 しし座流星群の日が迫った。青少年センター天文課の宮崎さんが、デビッド・アッシャー博士らの理論に基づく予測について解説してくれた。今年は日本が当たり年で、11月19日未明、最大で一時間に15000個もの流れ星が見られるかもしれないという。YPCも特別観測態勢を組むこととなり、各方面に散って観測に臨むこととした。

 写真は横浜こども科学館で開かれたアッシャー博士の講演会に出席した宮崎さんと博士のツーショット。この写真は宮崎さんのWebページで見ることができる。

流星観測の新兵器 山本の発表
 写真はワテック株式会社(山形県鶴岡市)の超高感度CCDビデオカメラWAT-100N(\46800)である。モノクロ38万画素ながら星が写る。右はフジノンズームレンズ75mmF1.2で撮影したプレアデス星団(すばる)の映像である。明るい藤沢の市街でもこれだけの星が写る。明るいレンズを使えば肉眼より感度をかせげる。市街ではカブリが出て一般に天体写真の撮影は難しいが、ビデオカメラのリアルタイム映像ならカブリはほとんど気にならない。肉眼で見える星は動画に撮れるので、流星など動きのある天文現象にはもってこいだ。ズームレンズで動きが加えられるのも天文教育には大きなブレイクスルーになる。
 山本はこの新兵器と広角レンズの組み合わせでしし座流星群を迎え撃つ予定である。カメラについての詳細は下記へ。観測の成果は次回例会のお楽しみ。
 ワテック株式会社のWebページへ


物理階梯のアンチョコと寺子屋教科書 徳永恵里子さんの発表
 下の黒い本、片山淳吉著『改正増補物理階梯』(明治8年出版)は文部省から出された小学校の教科書で、物理という言葉を定着・普及させた。片山は福澤諭吉のもとで学び、慶応義塾で教鞭を取ったこともある洋学者である。「階梯」はR.G.Parker著『First Lesson in Natural Philosophy』を基に書かれ、広範に普及したため、『物理階梯字引畧注』(明治9年)や『物理階梯字引』(明治9年)など、今の教科書ガイドに相当するような本も出版された。黄色い本と右の写真が「略注」である。

 こちらは、福澤諭吉著『啓蒙手習いの文』。明治4年3月(1871年)慶応義塾出版の寺子屋の手習い本である。内容は、いろは四十七文字、数字、十干(甲乙丙・・・)、十二支、大日本国尽(東海道十五ヶ国・・・)、天地の文、地球の文、窮理問答の文などで、各教科にわたっている。窮理問答中に、光線と月食・日食、水の循環などの記事があり、詳しく知りたいときは『窮理図解』を読んで勉強するように書いてある。これが当時、5〜6歳の子供向けの教科書として使われていたというから驚くほかはない。
 明治初期には「物理学」は「窮理学」と呼ばれていた。福澤は幕末にアメリカからQuackenbosの『Natural Philosophy』を大量に持ち帰り、慶応義塾でこの本を講読・輪読し、明治元年、新しい科学の内容や精神を盛り込んだ科学啓蒙書『訓蒙窮理圖解』を出版した。その後、『啓蒙手習の文』を出版し、寺子屋の手習本の中にも近代科学の内容と精神を盛り込む努力をして、科学の普及に努めた。つまりこれは物理の児童書の原点になる貴重書だ。
『訓蒙窮理圖解』についての喜多さんの発表(2000年5月17日YPC例会)

 

マクドナルドのシート 喜多さんの発表
 ハンバーガーのマクドナルドの宣伝に使われている、植田まさしさんの四コマ漫画「マクドナルド劇場」の吹き出しを「伏せ字」にして出席者に当てさせるという趣向。

 キャッチフレーズは「おいしさを○○的に考え、方法を△△化する。だからいつでもおいしい。」である。さて○○、△△にはそれぞれどんな言葉が入るだろうか。正解は全国のマクドナルドで確かめよう(^^)v。

海外の科学実験本 竹内さんの発表
 初参加の竹内さんが、海外で集めた理科実験本やおもしろ絵本のコレクションの数々を披露してくれた。おなじみの実験もあれば、お国柄を感じさせるユニークな実験も紹介されている。以前の例会でも話題になった、ポップアップ実験書などもしっかりコレクトされていて、共通の趣味を感じてうれしかった。もっとゆっくり鑑賞したかったが、時間がなくて残念。

二次会 日吉駅前「とらや」にて
 空前の20名が参加してカンパーイ。客員で来日中のプレトリア大のブラウン教授も交えて、インターナショナルに盛り上がった。


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