例会速報 2001/12/08 中村理科工業自由実験室
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高性能データロガー「イージーセンス」学習会
例会に先立ち、13時から英国製の高性能データロガー「イージーセンス」の学習会を行った。中村理科の渡辺さんらのご指導で、参加者は各自一台ずつパソコンやロガーを使わせていただき、測定やデータ処理の操作を実際に体験した。
イージーセンスは6つのポートにオプションで多数用意されているセンサーを接続するだけで、本体がこれを認識し、簡単なボタン操作だけで自動計測を行って、本体内メモリーにデータを蓄えてくれる。測定間隔は最短35μ秒、測定可能期間は最長30日間。バッテリー内蔵。
データはRS-232Cポートを通じてパソコンに取り込むことができ、グラフ処理などが可能。専用のアプリケーションソフトも大変よくできている。複数の時系列グラフ(左写真)を描くことはもちろん、任意の2ポートを選んでリアルタイムx−yプロットとすることもでき、特性曲線などがその場で描ける。右の写真はデジカメのストロボの発光を光センサでとらえたもの。下の低い山は蛍光灯のフリッカーによるバックグラウンドで周期的な波形を見せている。鋭いスパイクがストロボによるもの。トリガー機能を使うと、このように非周期現象や、瞬間現象も的確に捉えられる。
物理教育分野で一番目を引くのはこの「力センサー」だ。ストレインゲージを内蔵していて、押し・引きどちらも測定可能で、時間的な追従性もいい。力学分野では待ち望まれていたセンサーだ。これと加速度センサーを組み合わせると、運動の法則が直接検証できてしまう。処理ソフトの積分機能を使うと、「力積」も簡単に数値化でき、運動量の原理が実験的に検証できる。研究してみたいアイテムだ。
止まる水滴 塚本さんの発表
左は塚本さんの「チョッパー」改良版。回転スリットを塩ビ板にマスキングテープを貼ったものにし、スリットを扇形にすることで像の歪みを改善した。このチョッパーを用いて放物運動する水滴の動きをストロボスコープのようにして観察しようというのだ。
ピペットのノズルの先から流れ出る水流を、手前のゴム管を偏心モーターで動く振動板にはさんでたたくことで、水流を細かに切断する。これをチョッパーで周期を合わせて観察する。うまくタイミングがあうと切断された水滴が止まって見え、わずかにずらすと、水滴がゆっくり進んだり戻ったりする。
蛍光灯の色 塚本さんの発表
同じくチョッパーを通して蛍光灯を観察すると、発光間隔とチョッパーの周期が近くなったところで、白色以外の色が見られるようになる。チョッパー開発当初から報告されていた現象だ。蛍光灯は100Hzで点滅しているが、極性が切り替わる瞬間は蛍光体の残光によって光っている。このとき蛍光体の色によって緩和時間が異なるため、ホワイトバランスがくずれ、黄色や緑や茶色に見えるのだと思われる。右はブラックライトをチョッパーで観察したようす。やはり色の違う縞が見られる。なお、この現象は周波数の高いインバーター式蛍光灯では観察できない。
インバーター蛍光灯は放電周期が緩和時間より短いため点滅しないのだ。
いろいろな色の見えるRGB板 塚本さんの発表
これも塚本さんの発表。RGBの三色に塗り分けた円盤を回転させるといろいろな色が見えてくる。スリットを目の前に置いて動かしたり、手を動かしながら指の隙間からのぞいたりすると、また違った色が見える。色を感じる視神経細胞の色による興奮時間、緩和時間の違いによるのだろうか。おそらくは視覚生理学的な現象なのだろうが、ご覧のようにデジカメのスローシャッター画像でも色が混じって中間色が見えるのが面白い。
トリチェリーチューブ 山本の発表
ジュニアサイエンスクルーズ洋上実験で行った、10m水柱実験の再現を中村理科のビルの階段でやってみた。22mの耐圧ホースに水を満たし、両端を水槽に沈めて、中央をつり上げる。端を封じる必要もなく、ごく簡単にトリチェリーの実験が行える。水面は4階に達し、水柱の高さは10mを少し越えた。もちろんその上は真空部だ。水面付近では水が沸騰しているのが見られる。
ホースをゆっくりとおろしていく。左の写真で指さしているあたりが水面。溶存気体による気泡があるため、最後の数センチはつながらない。10mつり上げた状態で、下のホースの一端をそっと水面から持ち上げてみる。勢いよく水が落ちるかと思いきや、水は動かない。ホースの口で大気圧と水圧がつりあっているためだ。「逆さ試験管」の状態になっているのだ。
真空でもつぶれないこの肉厚の透明ホースは一般にはなかなか入手しにくい。中村理科工業が取り次ぎをしてくれるので、「22mのトリチェリーチューブ」といって注文するとよい。お値段は6000円ほどだ。実験についての詳細は山本による記事「大気圧による10m水柱実験」を参照されたい。
シンチレーションのビデオ観察 山本の発表
前報の高感度CCDカメラ、ワテックのNEPTUNE100はしし座流星群の観測でその威力を世に示した。夜空の星が肉眼と同程度にリアルタイムで写る感度である。明るいレンズなら肉眼では見えない星さえ写る。これをα線によるシンチレーション現象の観察に用いようという試みだ。
左は内田洋行製の教育用放射線源UN−A(アメリシウム241)である。棒とキャップを取り外したところだ。シンチレーション観察用蛍光体(付属品)がかぶせてある。線源はその下にある。これに接写リングとフード付きレンズをとりつけたNEPTUNE100をかぶせて暗黒にし、 蛍光体にピントを合わせる。すると画面にはチカチカとまたたく星のようなものが現れる(この写真では確認できない)。これがα粒子に衝撃されて生じた光、シンチレーションである。線源を取り除くとまたたきは消え、確かに放射線によるものだったことがわかる。霧箱と並んで放射線を視覚的にとらえることができる観察法だ。
高圧線の鳥 喜多さんの発表
直径2.0mmの針金に二本に交流100Vをつなぎ、100Wの電球をつなぐ。100Wの電球を点けて,1Aを流している状態で一方の針金に触れても大丈夫。これで「高圧線に停まっている鳥」が大丈夫なのを示す。次に,二本にまたがって触れると・・・こちらはシャーペンの芯に身代わりになってもらう。
ただしこの実験は、身体全体が電気的に絶縁されていることが前提である。身体の一部がアースされたものに触れていると感電の恐れがある。知識のない人は安易にまねをしてはいけない。
豆電球を点けるには? 喜多さんの紹介と追試
今年の夏,日英物理教育ワークショップの日本側のデモンストレーションの折、岐阜県立飯南高校の森井先生の紹介してくれた実験の追試である。
「40Wの電球と豆電球を直列につなぎ、それに100Vをかける。 そのままつなぐと豆電球が切れておしまい。両方を点ける方法は・・・」
答えは「豆電球の方をショートさせておき,40Wの電球を点けて少ししてから、ショートを外す」である。森井先生は30Wの電球と6.3Vの豆電球で演示されていた。
ゴム布製ウェーブマシン 鈴木さんの紹介
宮崎の足立冨男さんからYPC宛に送られてきた実験器具の紹介だ。幅3cmのゴムひもに1.25cmピッチで3mmφ長さ14cmのアクリル棒を100本ほど突き刺してある手作りウェーブマシンだ。ゴムひもを引き伸ばして張力を与え、アクリル棒をはじくと波が伝わっていく。張力を変えると波の速さが変わるのがスグレモノ。例会の席では、アクリル棒は蛍光のものに知ると断面が光って印象深いだろうとか、水平でなく天井から垂らして、下におもりをつるしたらよかろうとか、さっそく改善意見が出ていた。今後の発展が楽しみである。
「エッフェル塔と虹」CMYバージョン 鈴木亮太郎さんの発表
すずりょうさんのおなじみのベストショット。以前に小河原さんがやっていたように、これをPhotoshopでシアン、マゼンタ、イエローの3原色に分解し、トラペンシートにプリントアウトした(左)。これらを重ねると、右の写真のようにカラーの虹とエッフェル塔の美しい写真となる。色分解したときはほとんど目立たなかった虹がはっきりと浮かび上がるのが興味深い。
タッチャブルバブル 平松さんの発表
博品館で購入した粘性の極めて大きなシャボン玉。普通のシャボン玉のように吹いて飛ばすが、漂っているうちに乾いて、さわっても割れなくなる。ちょっとべとつく感じだ。PVAをアルコールに溶いてあるのかもしれないと言うが、成分など詳細は不明。
マッキーノ 奥野さんの紹介
「マッキーノ」は教科書の用語を使ったビンゴ形式の知識定着法である。仮説社の「楽しい授業」などに紹介されている。開発者の牧野英一氏の名前なのだそうである。
やりかたはまず、教科書のある範囲内で、重要語22語を書き出したB5の「用語プリント」と1〜22の番号札を用意する。生徒は4×4のマス目が印刷された書き込み用紙に22個中16個の単語を任意に選んで記入する。先生がカードを引いて当該の重要語の意味を解説し、生徒はその語が自分の書き込みにあれば○をつける。あとはビンゴと同じ要領である。直線に4個○が並んだら勝ち、というわけだ。完成したら「マッキーノ」と声を上げる。
ガラスグレーティング 徳永恵里子さんの発表
レプリカではないガラスグレーティング2枚。左は1000本/mm、右は500本/mmである。これらをクロスに重ね、レーザー光を透過させて天井に投影すると、下左の写真のようなパターンが観察できる。もちろん格子間隔の狭い方が、光点の間隔が広い。二枚を平行に重ねるとどうなるか。下右の写真のように、一つおきに明るい点が現れる。ちゃんと重ね合わせの原理が成り立つわけだが、ちょっと面白い現象ではなかろうか。
理科年表ジュニア 徳永恵里子さんの発表
丸善から理科年表のダイジェスト版が出版された。ジュニア版と称し、定価1000円。暦・気象・天文の部の抜粋で地図、表、グラフを多用し、学生にも使いやすい編集となっている。カラーのデジタル版もあり、Webリンクなどを活用してさらに面白い使い方ができる。
「理科年表ジュニア・eBook版」は丸善のサイトからオンラインで購入できる。AdobeのeBookReader2.2が必要だが、これも無料ダウンロードできる。
八木博士の児童書 徳永恵里子さんの発表
家庭用テレビ受信用アンテナにも使われている魚の骨のような形状のアンテナは「八木アンテナ」といい、東工大の総長も務めた日本の八木秀次博士の発明だ。この八木博士が子供向けにしたためた左のような絵本があることはあまり知られていない。徳永さんは4種類ある八木博士の児童書の1冊を古本屋で発見した。1949年発行。終戦後仕事がなくなり、生活のために書いたもので、異色で貴重な児童書である。
二次会 末広町「大江戸」にて
20名以上の参加で、会場はすし詰め状態。今年の忘年会も兼ねて「カンパーイ」。世相は暗く、景気も悪く、教育界もいやな話題ばかりの一年だったが、YPCはこれからも明るく盛り上がろう!!
平松さんの余興に応えて、鈴木さんが「スプーン曲げ」のお手本を見せてくれた。超能力?!研究家だけにその手並みはあざやかなもの。
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