例会速報 2002/01/09 慶應義塾高校


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デビッド・アッシャー博士「しし座流星群」を語る 理科部会物理研修会・天文講演会
 例会に先立って、会場に隣接する慶應大学理工学部矢上キャンパス創想館にて、しし座流星群の流星雨予報で有名な英国の若き天文学者、デビッド・ジョン・アッシャー博士の講演会が開かれた。神奈川県理科部会物理研修委員会が主催し、ブリティッシュカウンシルおよび日本スペースガード協会の協力で実現した夢のような講演会だった。100人にのぼる空前の聴講者を集め、大好評だった。
 公演後、アッシャー博士を囲んで記念撮影するYPCメンバー。博士が持っているのは、宮崎さんが撮影し、プレゼントした写真だ。

しし座流星群の写真 広瀬さんのビデオ・写真販売と宮崎さんの発表
 昨秋11月19日未明のしし座流星群は、おそらく一生に一度のすばらしいスペクタクルだった。YPCメンバーも各地に散って、貴重な記録を残した。今回の例会はそれらの成果を持ち寄って交換し合う機会となった。
 まず、前回の例会で宮崎さんが紹介し、注文を受け付けてくれた青少年センター科学部天文課広瀬洋治氏が西臼塚で撮影した記録ビデオ(NEPTUNE100使用)と写真(左の4枚)が販売された。流星痕の写真が見事だ。右上は車田さんがコミケで入手してきてくれたもので、5分間露出の1枚の写真に20個もの流星が写っている。宮崎さんが八ヶ岳観音平で撮影し、アッシャー博士にプレゼントした写真は、次回予約販売される。
 右はカラープリンタの発色が、フォトプリント用紙の種類によって異なることを説明する宮崎さん。気に入った発色が得られたら、ペーパーの種類を変えてはいけないという。
 

友紀効果 車田さんの発表
 MeSci実験工房の中川友紀子さんが超伝導体でネオジム磁石の浮上実験を行っていたところ、ネオジム磁石が液体窒素の中に誤って落ちて偶然発見した現象である。液体窒素に円柱状の金属を入れると自然に転がる。容器の壁にぶつかっては転がり、箱の中で往復運動を繰り返す。磁石である必要はなく、銅、アルミの円柱状のものでも同じ結果が得られた。液体窒素を金属円柱が全部つかるくらいの深さにしてもよく転がる。完全に冷えきって熱平衡に達すると転がらなくなる。
 詳細な機構はまだ解明されていないが、円柱に触れて気化し、立ち上る窒素の泡がトルクを生じていることは間違いなさそうだ。


 

液体窒素による霧箱? 車田さんの発表
 容器に液体窒素をいれ、容器からの窒素蒸発の気流が安定すると表面に無数のVの字状の飛跡が見えてくる。横から光を当てて観察すると見やすい。空気中のラドンの崩壊による放射線の飛跡だという説もあったが、例会の席で放射線源を脇に置いて観察するなど、検討を加えた結果、どうやら放射線ではなく、液体窒素の飛沫が描く放物線らしいという結論に達した。それにしても、幻想的な光景である。液体窒素にこういう楽しみ方があるとは知らなかった。 

タマゴ落とし 井上徳也さんの発表
 運動量と力積の授業の中で、4階の高さから落としても生玉子が割れないように包装するという課題を生徒に課したところ、実に奇抜なアイデアや、個性豊かなデザインのものが登場した。使用してよい材料は、新聞紙、ストロー、画用紙など。パラシュート型とショックアブソーバ型に大別されるという。写真はいずれも合格作品。
 

SONYのICカード 車田さんの発表
 好奇心旺盛な車田さんは、発売になったばかりのJRの「Suica」(Super Urban Intelligent CArd)を分解した。分解しないと見られないSONYのロゴが現れた(分解することを見越したつくり?)。左上の黒丸の所にICチップがモールドされているようだ。プリントされたコイルとコンデンサーと思われるくし状の部分が見られる。技術の詳細は不明。
 

ルーローの四面体最終バージョン 車田さんの発表
 車田さんの「ルーローの四面体量産計画」が最終局面を迎えた。精密金属バージョンから型取りした大量生産タイプだ。左がハイキャスト、右がリゴラックという樹脂を使用している。販売が楽しみである。

 

 定幅図形と思われていたルーローの四面体は、実は厳密には定幅でないことが車田さんによって報告された。板書で説明する車田さん。約2.5%の膨らみをどう定幅にするかが今後の課題であるという。詳しくは次号YPCニュースの記事を。

電流と電圧の教え方 宮田さんの発表
 中学生に対して、電流と電圧の概念をどう教えるか。前回例会の市江さんの水流モデルを用いた教授法の発表を受けて、宮田さんは授業で実践しているビー玉モデルによる教授法を紹介してくれた。ピンボールのような多数の釘がうってある斜面が抵抗に見立ててある。
 モデルの当否をめぐり、前回に引き続き熱い討論が展開された。結局、どちらのモデルも、並列・直列などにあまり深入りすると無理が来る。モデルは、その限界を踏まえつつ、初学者のイメージ作りの助けとして適切に用いるべきだという結論に達したが、もっと時間をかけてこのような教育論を深めたいものだ。

物理で使える100円パズル 鈴木健夫さんの発表
 ダイソーのマジックコーナーで見かけたパズル。「不思議な十字架」と「ノアの箱船」。物理の授業でもツカミに使えそうなグッズだ。

 

 「不思議な十字架」は内部でスライドする2本の棒が、掛け金のようになって縦にしても横にしてもはずれない。しかし、「ある操作」を行うと、ご覧の通り。内部の棒が手も触れないのに引っ込んでしまい、十字架が分離する。買えばタネあかしがついてくる。

 中央のくぼみに落ち込んでいる二つの鉄球を、両端のゴールに入れたい。透明塩ビのふたがかぶさっていて、直接手を触れることはできない。傾けると一方が転げ落ちてしまう。しかし、「ある操作」を行うと、二つの鉄球は同時にゴールに入る。こちらはポピュラーかな。

知恵の輪 徳永眞由美さんの販売会
 暮れに、車田さんの紹介で、YPCの楽屋でちょっと話題になった知恵の輪。スタンダードなものだが、意外と解き方を知っている人は少なかった。徳永さんは、この知恵の輪を自作して例会で分けてくれた。まるで本物の製品のようなできばえだ。右の写真のようにボタンホールに通して・・・さあ、はずしてごらん。ちなみにひもは伸びないし、とりはずせない。
 

大阪日本橋みやげ 鈴木亮太郎さんの販売会
 亮太郎さんが大阪の電気街で見つけたOAタップ。一見、どこにでもありそうなシロモノだが、よく見ると電流計がついている。何かに使えないかなあ。
 

トゲヌキレンズ 平松さんの発表
 平松さんが100円ショップ(ダイソー系ではない)で仕入れてきたルーペ付きトゲヌキピンセット。ちょうどピンセットの先にピントが合っているので使いやすい。老眼が増えてきたYPCでは、人気商品になるかも(^^;)。¥580じゃ買わないけど、¥100ならGETだね。
 

 こちらは同じシリーズのミニマイクロレンズ。15倍のルーペだ。これと偏光板を組み合わせ、簡易鉱物顕微鏡を作る実践がある。

浮沈子用たれビン 奥野さんの発表
 浮沈子用のたれビンにとことんこだわる奥野さんが今回見つけてきたのは、ドラエモンのたれビン。トイザらスで3個入りが250円。他に、キティちゃんのたれビンは、サンリオショップで4個入り300円。

コミケのお土産 車田さんの発表
 車田さんがコミケすなわち「コミックマーケット」で仕入れてきたものを披露してくれた。入場するだけでも大変という人気のイベントだ。各方面の「オタク」たちの出色の作品が広い会場いっぱいに並ぶという。

 写真は「ロボフェスタ川崎大会」CD。格闘ロボットの開発から競技模様がMpegとして記録されている。

 こちらは「モデルロケットの大会」のCD。大会の模様と龍勢祭り(10月14日)がMpegで記録されている。かなり大型のアマチュアロケットや、デザイン懲りまくりのロケットが大空をめざすようすが多数収録されている。

エネルギー授業実践報告 小沢さんの発表
 小沢さんが科教協関ブロ川崎大会(2001.11)で発表したものを、例会の席で改めて発表してくれた。
 小沢さんは、毎年エネルギーの単元から生徒が離れていく感じがして、それは明らかに授業がまずいのだろうという課題意識があった。そこで、今年は(1)力学の初歩の授業、(2)エネルギーの導入、を丁寧におこなうよう計画した。今回はそのうちの(2)の発表だ。
 例会の議論の中で「手に持ったものを水平に動かしても仕事はゼロってどういうこと?」「負の仕事って何?」という生徒の素朴な疑問に、物理的な意味がすっと入るような伝え方で答えるのは難しいが、それにチャレンジしていかなければならない、という新たな課題を得た。議論していると、メンバーそれぞれの「手の内」が明らかになってくる。これも収穫である。これからの例会でも議論を大切にしていきたいものだ。
 左はゴムひもを引き伸ばし、弾性エネルギーを実感させるシーン、右はおもちゃの吹き矢で仕事が距離に比例することを示しているシーン。

 

物理学史断章 徳永恵里子さんの紹介
 徳島の西條敏美先生の新著『物理学史断章――現代物理学への十二の小径――』恒星社厚生閣、2800円。いろいろな学会誌、雑誌に掲載された西條先生の科学史論文を集大成したもの。サブタイトルのとおり、現代物理学の形成につながった12のエピソードが綴られている。原典に当たりながらの緻密な研究だ。巻末の山本義隆論、広重徹論も、他書では読めない興味深い記事だ。ぜひ座右に置きたい一冊である。

二次会 日吉駅浜銀通り「龍行酒家」にて
 日吉の「いつもの店」で16名がカンパーイ。2002年の新年会となった。YPCはことしも元気だ。


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