例会速報 2003/11/15 慶應義塾高校
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ボウリング玉で衝突球 水野さんの発表
10月の例会で、鈴木さんが発表された「体感する力学的エネルギー保存」の実験で使われたボウリング球をさっそく自作してみた水野さん。作り方は以下の通り。
ボウリング球にドリルで6.5mmの穴を開け、それに直径8mm、長さ40mmのマルカンボルトを素手でねじ込む。それに直径9mm、長さ3mのビニロン製のロープを取り付ける。これを5個作って衝突球にした。例会での実験は、なかなかの迫力だった。ゆっくりとゆれて重々しくはね返るので観察もしやすく、生徒の目をひきそうだ。
例会では、共振の実験にも使えるのでは、という意見があってさっそくその場でやってみたところ、見事な共振現象が見られた。
ちなみに、この実験で使用したボウリング球は、ボウリング場に捨てられてあった個人のものをボウリングセンターにお願いしてもらってきたものだという。ボウリング場に相談すると分けてもらえるらしい。
150円ラブメーター 山本の発表
このごろ百円ショップ「ダイソー」のおもちゃ売り場で見かけるラブメーター。通称ハンドボイラという昔ながらのガラス細工である。管内は減圧してあり、握ると手の熱で蒸気圧が上がり、内部の液体(メタノール?)が上昇する。下の液体が尽きると蒸気が管を上がり、ボコボコと沸き立つように見える。それにしても、これが¥150円とは・・・(絶句)。
100円万華鏡 山本の発表
同じく「ダイソー」のおもちゃ売り場に並んでいる万華鏡。こちらは¥100である。さぞちゃちなものだろうと思うとさにあらず。ガラス鏡3枚、流動パラフィン入りチューブ、反射型回折格子とぜいたくな作りで、非常に体裁良くできている。個別に材料を買い集めたのでは絶対に百円では作れない。
下はこの万華鏡をのぞいた一シーン。無限に広がる幻想の世界だ。反射型なので明るい方に向けるのではなく、光を背負うようにしたほうがきれいに見える。ダイソー畏るべし。
150円電波受信器 山本の発表
驚くべき「ダイソー」ネタはさらに続く。これも最近見かけるようになった150円商品。机上で携帯電話を立てかけておくホルダーである。着信があると電波に感応して3つのLEDが点滅する。
回路部分は簡単に取り外せる。ボタン電池2個と3つのLED、モールドされたICチップとプリントパターンのアンテナが見える。着信時に携帯電話が発する応答信号をキャッチして光るが、近い周波数帯の適当な強度の電波であれば何でも感応するだろうと思われる。つまり150円という低コストの電波検知器として使えそうである。
下右の写真は、ダイソーのザルの中にこの回路を入れ、静電遮蔽の実験を行っているところ。この程度のザルや茶こしでも電波はしっかりシールドできることがわかった。
らせん式波動説明器 原田さんの発表
初参加の原田さんが持ち込んだのは、自作の波動説明器だ。一つの軸の周りにらせんを描くようにプラスチックのコイルを張り巡らせたもので、その軸を回転させると黒板上で進行波が提示できる。位相のずれた円運動の正射影(=単振動)が波動の正体であることがよく分かる。遠くから(生徒の視点で)見ると、まさに正弦波が進行していくように見える。
材料費は\2,000弱で、すべて東急ハンズで購入できる(店舗によっては一部取り寄せの必要がある)とのこと。作り方を含めた詳細は原田さん自身のWebページに紹介されているので下記を参照されたい。
http://homepage3.nifty.com/forest_notes/science/namio/namio.html
なお、原田さんは半完成キットの通販も行ってくださるという(2003/12現在)。
例会参加者がさらに驚いたのは同装置の格納方法。ご覧のように波状のボール紙で巻き寿司のようにくるりと巻く。装置はハンドルがついている板の内側に磁石で付くようになっていて、そのままキャリヤーに早変わり。原田さんは実に工作がお上手だ。
ドイツ製LightMill 徳永さんの発表
徳永さんが見せてくれたのは、ドイツの工房で作られたという手作りのラジオメーター。ガラス球に装飾が施されていてしゃれたインテリアになっている。自宅で優雅に物理を楽しむというヨーロッパのセンスが香る逸品だ。新宿の伊勢丹(文房具売り場)で10000円(大)と7800円(小)とのこと。大の方はつり下げ式でスタンドもガラス細工である。。
模様やガラスの色が違うものもあるそうだが、写真はクリスマス限定のインテリアで、衝動買いしたそうだ。
ビン詰めテニスボール 車田さんの発表
硬式テニスボールを直径より小さい口径のジャム瓶に入れるためには、数気圧を加える必要があり、手で握り縮めることはできない。JAMSTEC(海洋科学技術センター)の訓練用高圧チャンバーに入って、4気圧位かけると手で凹ませてジャム瓶に押し込むことができる。これは有名なJAMSTEC見学のお土産だ。
車田さんは、JAMSTECに行かずにビン詰めテニスボールを作る方法を考えた。裏技として「液体窒素」を使う。ゴムは極低温では硬くなるので、テニスボールをホースバンドでジャム瓶に入る太さまで絞め、そのまま液体窒素に漬け形状を固定する。
凍っているうちにホースバンドをはずしてジャム瓶に押し込み、自然解凍すればパンパンに膨らんだテニスボール入りジャム瓶の出来上がり。
飛ぶおもちゃ 高橋さんの発表
YPC例会は初参加の高橋和光さん。日頃自分の実験教室でやっている実験の数々を披露してくれた。「飛ぶ」をテーマに子供にいろいろ試行錯誤をさせる。
左は飛行リング。トラペンシートに両面粘着テープを貼って下ごしらえがしてあり、子供でもすぐに作れる。長さや投げ方を変えてよく飛ぶ条件を探す。
右はアルソミトラなどグライダー系の実験の際に行うダイナミックな演示。発泡スチロールの巨大な「タネ」を飛ばしてみせる。
熱平衡の実験 高橋さんの発表
中学の熱の単元では「熱平衡」の概念形成が重要だ。銅板とスチレンボードにそれぞれ手を触れると銅板が冷たく感じるが、裏側に貼ったサーモテープを見ると温度は同じなのだ。熱伝導率の差が温度の体感を誤らせる。続いて赤外線放射温度計で部屋の中のいろいろなものの温度を測ってみる。人間の体や照明器具のような発熱するもの以外は±1度程度の範囲で温度が一致している。つまりほとんどのものは空気と熱平衡状態になっているのだ。
さらに高橋さんが取り出したのは二つのステンレス魔法瓶。中をのぞいても一見同じような水筒だが、お湯を入れると一方はたちまち持つ手に熱が伝わってくる。実は外壁に小さな穴をあけて真空を破ってあるのだ。空気がどれほど速やかに熱を伝えているかがわかる。右は昔のポットの内側に使われていたガラスのデュワー瓶。今では手に入りにくくなっているので大切にしているという。今の魔法瓶は割れない。筆者も含め、氷を乱暴につめたりしてこれを破裂させた経験がある人は、もう「お歳」なのかもしれない。
ヘキサフレックス 車田さんの発表
車田さんが文化祭で展示した数学ネタの出し物の一つ。数学Bのベクトルで「ねじれの位置」がきっかけで、以前どこかで見たものを記憶をたどって作ってみたという。
基本は四角形で向かい合う一辺が同じ長さで平行でねじれの位置にある針金を6個つないだリングだ。リングなので裏返していくと元に戻る。正三角形・正六角形と変化する様が面白い。例会の席では、これをシャボン液に漬けて膜の様子を見ると面白いかもしれないというアドバイスもあった。
爆発ロケット 山本の紹介
11月に東京で開かれたサイエンスレンジャーの研修会で、長野県の池田淑恵先生から教えていただいた工作・実験を例会で伝達講習した。
使い古しのチャッカマンの火口の金具をとり、スパーク用の配線をほどこし、フジのフィルムケースの底に穴をあけてさしこむ。穴のまわりはホットボンドで密封・補強して発射機とする。燃料はエタノールをアトマイザーでフィルムケース内に一吹きする。量が多すぎると点火しにくくなるばかりか、炎が残ったり、ロケット自身が燃え出したりして危ない。
画用紙で作ったロケットや、ダイソーのスポンジロケットなどを筒先にはめこみ、点火すると、「ポン」と軽い爆発が起きてロケットが飛んでいく。決して人に向けて発射しないこと。
バイオメタルファイバー 渡辺さんの発表
バイオメタル・ファイバー(BMF)は、形状記憶金属を改良した素材で、筋肉のように自分で緊張収縮−弛緩伸張する金属繊維だ。通常はナイロンのように柔らかく、しなやかだが、電流を流すと硬くなって強い力で収縮する。電流を止めれば再び柔らかくなり元の長さまで伸びる。ジュール熱以外の加熱法でもよい。約70℃以上で収縮し、それ以下で伸びるという。写真はBMFを使ったチョウチョのおもちゃ「パピヨン」\4800。指さしている羽根の付け根にBMFのアクチュエータがついている。右の写真の茶色の針金のようなものがそれだ。リモコンで通電すると緊張して羽根を持ち上げる。
こちらはBMFを使ったシャクトリムシのような二足歩行ロボット。まるで生き物のようなユーモラスな動きだ。
BMFについての詳しい情報は開発製造元のトキ・コーポレーション株式会社のWebページへ。
計算尺 大谷さんの発表
国立天文台・三鷹キャンパス特別公開で、配布されていた計算尺。円形で、かけ算用と、割算用の2種類がある。両方とも、天文台らしく、土星と木星、衝突銀河(NGC4567,4568)の写真がバックになっていてしゃれている。
計算尺は、対数目盛になっており、かけ算は対数のたし算に、わり算は対数のひき算で表されることを利用している。円形にすると桁上がり、桁下がりが自然に処理できる。
音の可聴域とCD650MBの関係 鈴木亮太郎さんの発表
音の単元で「ヒトの可聴周波数は20〜20000Hz」という話をするとき、音楽CDのエピソードを紹介する。すずりょうさんがまとめてくれた要点はこうだ。
サンプリング定理(ナイキストの定理)により、最大周波数f(Hz)のアナログ信号をA-D変換するには最低2f(Hz)のサンプリング周波数が必要なので、可聴域を若干上回るf=22050Hzを基準に、録音の際のサンプリング周波数は44.1kHzと決められた。毎回サンプルした音のレベルを2バイト=16ビット=25536段階で記録する。これから1秒あたりのデータ量は
2バイト×2ch(左右)×44100=176400バイト
となる。カラヤンの助言により第九がおさまるようにと74分の録音時間を確保した規格では、CDの総容量は
176400バイト×60秒×74分÷1024÷1024=747MB
という計算になる。
ところで、CDでは2352バイトを1単位のデータとして記録するが、パソコンなどのデータCDではそのうち2048バイトがデータ領域で、残り304バイトをエラー訂正用のヘッダとして用いている。したがって、CDの総容量747MBのうち、データ格納に使えるのは
747×2048/2352=650MB
になるというわけだ。なーるほど、勉強になるなあ。
色彩検定受験体験談 鈴木亮太郎さんの発表
すずりょうさんは「色彩検定」という検定試験を興味半分で受けてみた。本来はカラーコーディネータや服飾系の資格試験らしいが、問題を見ると、物理の光単元っぽいところや、情報の画像認識っぽいところもあり面白い。カラーセンスを問われるところ以外は物理系の人でもけっこういけそうだ。
二次会 日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
久しぶりに日吉の行きつけの店に集う18名。例会初参加の高橋さんや、佐藤さんを囲んで歓迎パーティとなった。はじめまして、よろしく、カンパーイ!
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