例会速報 2003/12/13 中村理科工業


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授業報告:中三の理科シラバス 水野さんの発表
 水野さんから、中学三年の理科の授業計画について実践報告があった。以下、水野さん自身によるコメントを掲載する。

  本校の中3は、化学の分野を前期におこない、後期の前半は電気、後半は天文になっています。例会で報告したのは、前期の電気の分野の生徒実験のプリント(実験の結果と考察と感想を書いて実験した日に提出)でした。
 授業は静電気から入って、電気回路、電流と電流計の扱い方、電圧と電圧計の扱い方、電流と電圧の関係(オームの法則)、合成抵抗、金属線の長さ・太さと抵抗との関係、電流の発熱作用、磁石の磁界と電流の磁気作用、磁界中を流れる電流が受ける力、モーターの原理までの範囲でした。
 例会では電圧の概念をどう生徒にイメージとしてつかませるか、ということが議論になりました。私は家庭用の水流ポンプを使って電圧(ポンプ)と電流(水流)をイメージとしてつかませようとしています。また、金属線の抵抗のところで、パチンコ玉を使った演示実験(板の長さ、広さを色々変えたものに釘を打ち付けて、その間をパチンコ玉が転がっていくもの。釘が金属原子でパチンコ玉が電子のつもり。)を行い、電流=パチンコ玉の坂下り、このパチンコ玉の移動が実際の回路では電子の移動になっているということ、坂の高さが電圧(この場合は電圧降下になる)で、この高さを作るのがポンプであり、電気回路では電池の電圧(起電力)になっていると説明しています。
 例会では、上のような説明で生徒は納得しているか、ということが質問され、「生徒はそんなものか」程度には分かっているのではないか、とお答えしましたが、はっきり言って自信はありません。いい実践があれば御紹介下さい。
 なお、授業進度としては遅れており、電磁誘導は1月にずれ込んでしまっています。

EP-ROMの観察 山本の発表
 たまたま、会場でゴミとして処分されそうになっていたものの中に、古いEP-ROM(128〜256KB)があったので急遽観察会を行った。書き込み・消去可能なメモリー素子で電源がなくても内容が保持されるので、プログラムを格納する素子として、マイコンとセットでかつて大いに活用されたが、今はほとんど使われなくなった。消去時は紫外線を照射するため、丸窓が開いており、メモリーチップが直接観察できるのが教材として好都合である。顕微鏡下で観察すると、よく教科書に載っているような大規模集積回路のプリントパターンが観察できる。写真右は20倍の双眼実体顕微鏡で撮影したもの。できれば100倍ぐらいの倍率が見やすい。上から照明して反射光で観察する。
 かくして、ゴミはたちまち人気のお土産になった。
 

デジゴマ 渡辺さんの発表
 最近パルボックスから発売された新しいタイプのデジタルゴマ。市価¥800程度。回転させると遠心力でスイッチが入り、デジタルで回転数が表示される。表示のタイミングをはかったり回転数を数えるために地磁気を利用している。磁石を近づけると数字の表示位置が変化する。かなり弱い磁気にも感応するらしく、ACコードに近づけてもカウントしていた。
 

 デジゴマを分解してみたところ。中心部の黒いものがフェライトコアに巻いたコイルで、ここで磁場を感じ、電磁誘導で生じるパルスをカウントしているようだ。右側が処理部のLSI、左が増幅用のオペアンプのようだ。上方の赤い部分がLEDのアレイで、回転の動きが加わることで文字として読める。

p.a.(パーソナルアデステーション) 渡辺さんの発表
 非常に簡単なパソコン計測キット。写真のセットは、スターターキットで光センサーを用いて様々な実験やゲームができる。計測は、本体をマイク端子につなぎ、ソフトを立ち上げるだけ。標準のサウンドボードがインターフェースなので、どんなパソコンにでも接続できるのが強み。製造元のアデスト・テクノベーションはシンガポールの会社で、日本向けに製品開発をしている。今回の例会には同社の佐藤さんも特別参加された。
 

 付属ソフトの画面をご覧いただこう。簡単な操作でオシロスコープのようにリアルタイムで波形を見ることができる。左は蛍光灯の点滅による毎秒100回の明るさの変化。マイクをつなげば、音声波形もきれいにとれる(写真右)。ゲーム感覚で楽しく利用できる計測キットだ。販売は中村理科工業で扱っている。

 

エコログのニューモデル 渡辺さんの発表
 データロガーの草分けとなったエコログが新しくなって新登場。写真は右から初代、二代目のエコログで左端が新発売のエコログXL。
 エコログXLは従来の不満足な部分を改良し、本体に2列の液晶がつき、待望のUSB接続となり、3タイプのモードが追加された。もちろんパソコンにデータを送ることができるが、液晶表示が搭載されたので、本体だけでも十分使える計測器となった。
 また、ソフトも新バージョンとなり、使いやすさが向上したことはもちろん、カメラを利用すれば、実験の様子を撮影しながら、データを計測して、保存しておくなどの応用が可能になった。
 中村理科の取り扱いで、発売は来春から。

スライム電池とポカリス電池 高橋さんの発表
 フィルムケースの内側に銅の電極を入れ、PVAのりで作ったスライムをつめこんで、マグネシウムリボンをさしこんだふたをとりつけると立派な電池のできあがり。起電力は1.6Vぐらい、電子メロディが何とか鳴る。スライムはゲル状なので、横倒しにしても液漏れしない。

 電池の起電力は正極と負極の金属の組み合わせで決まるから、実は電解質は何でもいいのだ。イオンたっぷりのポカリスエットなども、良質の電池液になる。

飛びたかった人たち 越さんの発表
 たくさんのふしぎ傑作集・「飛びたかった人たち」佐々木マキ著(福音館書店 1990年)。体裁は子供向けの絵本だが、登場人物がいきいきと描かれていて、内容が詳しく、図や写真も多いので一見の価値あり。残念ながら絶版のようだ。

 今も昔も人は、「鳥のように空を飛びたい」と願っていた...鳥の格好を真似して高い塔から飛び降りたタワージャンパーズ、モンゴルフィエ兄弟の熱気球、シャルルのガス気球、飛行船、リリエンタールのグライダー、そしてライト兄弟の動力飛行機...シャルルが登場するので、授業でも「気体の法則」のところで紹介しているという。

輪ゴムのバックスピン 越さんの発表
 越さんは井の頭公園の大道芸でやっていた小さな芸を会得してきて紹介してくれた。
 小指に輪ゴムをかけ、親指のところで内側から外回りに1回巻き、人差し指に引っかける。このとき人差し指の下側のゴムが強く伸び、上側は余り伸びないようにする。床や地面(土か砂地がいいらしい)に沿って発射させると、数メートル進んだところで戻りはじめ、輪ゴムが回転しながら手前に転がってくる。うまくいけば、元の位置よりも手前まで戻ってくる。
 なお、普通の輪ゴムでもできるが、少し幅の広いものの方がよりうまくいくという。ビリヤードの引き玉などと一緒に、力学の小ネタに使えそうだ。

光を吸い取るLED(?) 小沢さんの発表
 7月の例会で山本が発表し、11月の例会でセット販売した、紫外・青緑橙赤のLEDライト。それぞれ光を蓄光シート(ダイソーで購入)にあてて、シートの発光の明るさを比べる実験(11月例会)を追試した。波長の短い(光子のエネルギーの大きい)紫外や青の方が、橙や赤で照らしたときに比べて明るくなることを確かめる。ここまでは常識通り。
 

 この実験を繰り返していくうちに、小沢さんは意外な現象に出くわした。ほんのり光っている程度の蓄光シートに、赤や橙のLEDを照らしたところ、むしろ黒くなるのだ(写真左の右側の黒い部分)。まるで蓄光シートの光を吸い取っているようだ。ふしぎでたまらなくて、何度も実験していくうちに、LEDの光に含まれる赤外域のスペクトルによるものではないかと考えるようになった。テレビのリモコンで試すと、やはり黒くなる(右)。誘導放出の一種なのだろうか、というのが今のところの推測である。

 

分子模型 大谷さんの発表
 おりしもクリスマスシーズン。大谷さんはツリーのオーナメントとして出回っている金銀の球に目をつけた。これを原子に見立てて分子模型を作る。とりつけ金具があるので「結合の手」として使える。複数の「手」が必要なら、金具の部分だけ付け替えて簡単な工作でに増設できる。キラキラしているので発泡スチロール球よりウケがいいとか。

2001年のDVD 大谷さんの発表
 スタンリー・キューブリックの不朽の名作SF映画「2001年宇宙の旅」のDVDリプリント版が、\1500で限定販売中。
タイトルは、STANLEY KUBRICK'S 2001:a space odysseyとなっているが、英語音声で、英語・日本語字幕(選択)だ。
理科教員としては必ず手元に置いておきたい一本だ。

紅いも粉でpH 山本による徳永さんの代理発表
 【理科の部屋】10周年オフの時に徳永さんから教わった実験を授業にかけてみたところ好評だったので代理で紹介した。

 沖縄産の「紅いも粉」はpHにより呈色の変化する色素アントシアニンを含み、ムラサキキャベツなどと同様pH関係の実験に使える。乾燥粉末として長期保存ができる点でムラサキキャベツより便利である。今回使用した写真のものは、稲垣具郎商店の製品でフレーク状になっている。これを乳鉢ですりつぶし、ダイソーの「使い捨てパレット」の各穴に耳かき一杯ぐらいずつ入れておき、pHの異なる試薬を一滴ずつ垂らす。つまようじなどで軽く混ぜるとよい。すりつぶして微粒にすることで反応が早まり、呈色も鮮やかになる。
 右の写真はpH=1(右端)からpH=13(左端)までの身近な薬品による色の変化を並べて比較したもの。指示薬は上段から、万能試験紙、紅いも粉、フェノールフタレイン、メチルオレンジである。中央付近の数個が試薬の順番をまちがえたため入れ替わっているがあしからず。

 関連文献:瀧口公夫「紅いも粉を利用した身近な実験」,化学と教育,48,264-265 (2000)
 

波動説明器の販売 原田さんの即売会
 原田さんが前回の慶應例会で好評だった自作の波動説明器をキットとして販売してくれることになった。
気になるお値段はケース込み\4,000(ケース無し\3,000)。とりあえず数セットが持ち込まれたが、希望者多数で瞬く間に完売。当分受注生産状態が続きそうだ。波動説明器の詳細は2003年11月例会の報告を参照されたい。

カーバイドランプ 平松さんの発表
 平松さんが昔懐かしい「アセチレンランプ」を購入してきて披露してくれた。以下、平松さんによる解説文。

 化学の授業で、有機を扱う際、炭化水素はあまり面白い実験もないので、何か変化のあるものは、ということで、「アセチレンランプ」を探した。教科書などでは「アセチレンはランプの燃料としても使われている」というのは書かれているのは知っていても、実際にアセチレンのランプなる物体は見たことがなかったので興味を持っていた。
 近所のホームセンターや釣具屋、金物屋を当たったのは数年前、しかしなかった。あきらめていたところ、今年の夏休みにふと思い出し、楽天市場の検索をかけたところ発見!「カーバイドランプ」というそうで。

 ある年齢層から上の先生方からは「懐かしい?」という声が聞かれたが、初めて目にする、という方が多数派だったようである。私も購入したとき見たのが初めて。購入した翌日、同年齢の同僚(化学)と、互いに「聞いてはいたけど、初めてみたー」といいながら「点灯式」をした(取扱説明書を見ながら(^^ゞ)。ちなみに別の化学教員(年齢は私より少し上・女性)は、「何それ?聞いたこともない」とのことなので、生育環境や高校時代の授業などで知っているかどうかなんでしょう。。。。

炎は明るい黄色で、蛍光灯のような白色ではないので、やわらかい感じでである。暖房にも使えるので釣りマニアやケイバーには一定の需要があるらしい。

 下の器にカーバイド、上の器に水を入れ、調節ねじをゆるめて水を滴下すると、発生したアセチレンガスがノズルから吹き出してくる。しばらく放置して内部の空気が完全に追い出された頃に点火する。

二次会 御徒町駅前「菜魚味や」にて
 16名が参加してカンパーイ!一年をふり返りながら忘年会です。遠くシンガポールから参加の佐藤さんも交えて楽しく鍋を囲んだ。今年はYPC関係者の異動が多かった年だった。来年はどんな年になるかな。


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