例会速報 2005/07/16 慶應義塾高校
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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月上旬発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムはここ。
授業研究:物体の運動 黒瀬さんの発表
物理Iから「物体の運動」を中心に、今年度の前期の授業報告が行われた。
上昇する気球からのボールの投げ上げの問題で、速度が合成されることがしっくりこないという生徒が多いという発言があり、このことについて議論が深められた。速度の合成や相対速度を扱うときには、「観測者の視点」がどこにあるのかを生徒にしっかり意識させることが大切だということが確認された。
関連して慶應高校が見せてくれた発射装置(左)とジャンピングトーイ(右)。
スターリングエンジンあれこれ 喜多さんの発表
喜多さんは、これまでにもスターリングエンジンをいくつか紹介してくれているが、さらに新しいコレクションを披露してくれた。
まず「スターリングエンジン自動車」。ケニスより販売されているビー玉スターリングエンジンで走る車である。取扱説明書によると「本実験器は宇都宮大学の戸田富士夫先生にご指導頂きました。」とある。しかし、取扱説明書通りに調整しても(何か足りない点があるようで)うまく動かない場合があるとのこと。
皆の見守る中、「以前動いていたものをそのままの状態で保存してあったので、動くと思っていた」という喜多さんの期待は裏切られ・・・往復運動はするのだが・・・一方向に進まず。
次に学研から発売されている「大人の科学」のスターリングエンジン。車を動かす、LEDを点ける、プロペラを回すの3つの使い方ができる欲張りものである。YPCのメンバーのかなりが購入しているもの・・・しかし、未だ作っていない人も多い(^^)。
開発に関わった小林義行先生(土浦工業高校)のお話しによると、最初は、ガラス製のシリンダーであったのだが、膨張によって割れてしまうため、金属製のものになったとのこと。学研のホームページによると、最終的な調整に達するまでの物語はプロジェクトXなみの感動のドラマである。
左は「低温度差型スターリングエンジン」N社からも同型のものが発売されている。この日は、お湯の温度が最初80℃くらいから始めて、50℃位まで動き続けた。
台北101ビル見学記 鈴木亮太郎さんの発表
すずりょうさんは、5月2日に台湾旅行で取材した「世界一高いビル−TAIPEI101」のビデオを披露してくれた。高さは、509mで、今年1月に公開されたばかり。すずりょうさんは、そこで使われている「世界最速のエレベータ」を体験し、「世界最大の免震装置」も見学した。
エレベータは、5階(25m高)から、89階の展望台(約380m高)間の移動用で、速度のデータは下記の通り。エレベータ内には、表示装置があり、動き始めからの時間、現在の階、高さ、速度(m/分)の表示が見られる。
最大速度 時間(5−89階)
上昇時 1017m/分(約60km/h) 37秒
下降時 600m/分(約35km/h) 45秒
風による揺れに対する免震装置は、展望台付近に設置され、吹き抜けになっていて89階から自由に覗くことができる。直径は5.5m、660tの金属球が、長さ45mのワイヤー8本でつるされ、この金属塊の下側とビルの床との間にも、ダンパーが取り付けられている。風のエネルギーを、40%減少できるらしい。このような、構造等の説明の他、工事の過程のビデオも見られるようになっている。
参考URL: http://www.kumagaigumi.co.jp/n_nw000/nw_030807_1.html
浮沈ビーズ 高橋さんの発表
前回の例会で紹介した「浮沈ぶどう」の発展版。手芸用のビーズをコップに入れて、炭酸水を注ぐと、二酸化炭素の気泡がついたビーズが浮いてくる。ぶどうのように比重がほとんど1に近いものと違い、ビーズは水よりかなり重いが、体積が小さいために「泡の効果」が大きくなってよく浮かぶ。泡が外れると一気に落ちるので、動きがあわただしくなる。
高杉さんから「スパゲティでやった例がある」とうかがいwebで調べたところ、アメリカの教育関係のページで多数見つかった。ただし炭酸水のかわりに、重曹とお酢を使っていた。 また、テレビの「トリビアの泉」の2004年10月27日放送分で、《干しぶどうをシャンパンに入れると浮かんだり沈んだりする 》として紹介されていたこともわかった(66へぇ)。
気柱共鳴 水上さんの発表
水上さん得意の黒板実験。気柱共鳴装置も黒板に取り付けられるようにしてしまった。「発振器ソフト(発音)」と「オシロスコープソフト(振駆郎)」(ともに『理科ねっとわーく』からダウンロード)を用い、発振器の1000Hzの音→アンプ→共鳴管上のスピーカーから音を出す→共鳴音を管口付近のマイクで拾い→オシロスコープで観察する、という要領。共鳴の位置を1o単位で特定できる。実物による演示と、デジタルコンテンツのプロジェクターによる提示を巧みに組み合わせている。
音波の干渉 水上さんの発表
これも、黒板上で行う演示実験。信号の流れは上記気柱の共鳴と同じ。違いは、アンプを通してスピーカー30W×2をドライブしている点。スピーカーはもちろん黒板に張り付けられる。振動数は1100Hz程度が適当で、波長が30pになるようにその日の気温にあわせて調整するという。細やかな配慮だ。片方のスピーカーの結線を逆にすれば「逆位相」も実現できる。
運動量変化と力積 喜多さんの発表
「同じ大きさのスーパーボールと弾まないボールを、木片にぶつけたとき、木片を倒すことができるのはどちらか?」この問題、事前に生徒に予想させると、圧倒的に弾まないボールに票が集まるという。実際は運動量変化の大きなスーパーボールの方が、力積が大きいのだが、そのミスコンセプションを突くことで、運動量と力積の関係の学習効果を高めることができる。
問題なのは、直径47mm大のボールの質量は、スーパーボールは50gくらい、弾まないボールは80gくらいと質量の差が大きいことである。昨年S先生が二つのボールをつなげてみたらと発案・作製してしてくれたという。一本のねじを間に入れてつなげてある。裏返せば材質が切り替わるが、質量は共通というわけだ。
これで、『大体同じくらいの質量と考えよいよ』という少し気になる言い方(言い訳?)をする必要がなくなったという。グッドアイデアである。
自作凹面鏡によるミラージュ 堀内さんの発表
山梨県立科学館の『土曜科学クラブ』で堀内さん・加藤さんが行ったネタが披露された。
二枚の凹面鏡を向かい合わせて、その中に置いた物体の立体実像を浮き上がらせる「ミラージュ」を自作したいと考え、簡単に凹面鏡を作れる方法として、時計皿に銀鏡反応でメッキする方法を思いついた。洗浄・乾燥の後、析出した銀の上にラッカースプレーを吹きかけ保護する。凹面に付いてしまったよけいな銀は希硝酸で拭き取る。直径7.5cmの時計皿で、焦点距離は8cm程度だった。
当初、覗き穴になる部分に『穴』を空ける必要があると考えたが、ガラスに手軽に穴を開ける方法がなかなかなくて困っていた。しかし、ここで発想を転換して、「その部分だけメッキが着かないようにマスクをして透明な『ガラス』を残しておけば良いのではないか」という考えに至った。
このすばらしいアイデアは、実際に上手くいき、そのまま採用したという。この、時計皿に銀鏡反応をほどこす方法は、凹面鏡、凸面鏡の実験にそのまま使えるのではないだろうか。
なお、例会では高杉さんから、反応液は爆発性を帯びるおそれがあり、適切な廃液処理を行うこと、とのコメントがあった。
サンプリングキーボード 越さんの発表
86年にカシオから発売され、ヒット商品となった「サンプルトーン・SK−1」、現在では製造中止だが、越さんは、音の教材として、今でも使用している。
色々な楽器の音色、エンベロープ、シンセザイジング機能(倍音を重ね、音色を作っていく)などの基本機能とともに、「サンプリング」ができる。すなわち、内蔵のマイクから拾った音を元に、音階が弾ける。授業では、音の3要素(大きさ、高さ、音色)、うなり、などをオシロスコープを用いて観察する。
さすがに古くなり、困っていたところ、フリーのサンプリングキーボードソフト、「Claviwave(クラビウエーブ)」を見つけた。「ドレミファ」のカタカナと「・」などの記号で楽譜を入力できる。音声をまるで宇宙人のような声(?)に変換できる「ボコーダー」のソフトも公開されていた。音の授業の小ネタに使える。ブルー・スエード・ソフトウェアから提供されている。
LINE TRACING SNAIL KIT 竹内さんの発表
タミヤのかたつむり型ライントレーサー工作セット、LINE TRACING SNAIL KIT
エレクラフト シリーズNO.20。モーター2個で駆動、回路は6石トランジスタで完成済。裏に2つのセンサーの目があって黒いラインをトレースして走る。かたつむりの、角もモーターからのリンクで動く。回路をサイコロ基板にして電子工作教室にするのも面白い。マイコンプログラム練習用の走行メカとしても転用できそうだ。お値段も2000円と手頃でおすすめのキットだ。
二次会 東急東横線日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
11人が集まって、カンパーイ。慶應高校が会場の時はお定まりのこの店で今宵も楽しく飲む。例会の知的興奮をアルコールで冷ましつつ、情報を脳裏に固定する作業である・・・ホントかよ(^O^)。
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