例会速報 2008/09/23 多摩大学附属聖ヶ丘中学・高等学校
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授業研究:作用反作用と垂直抗力 水上さんの発表
水上さんは、本年度の2年生に好評だったという、作用反作用の法則およびそれに続く斜面上の物体に働く重力の分解と垂直抗の授業を再現してくれた。授業シナリオやその他の演示の詳細はYPCニュースをご覧いただきたい。
写真は、傾きtanθ=3/4の斜面上にm=0.20kgの台車を置き,斜面方向にmg×sinθ=0.12g〔N〕,斜面と垂直な方向にmg×cosθ=0.16g〔N〕の力を加えると,斜面を取り去っても姿勢が変わらないことを示す演示。垂直抗力と同じ大きさ、向き、作用線を持つ力を糸で加えれば斜面はもはや不要。
写真下左は、Wyを求める際に『θの「従辺」)=(斜辺)×cosθ』を忘れた生徒にヒントを与える図。こういうちょっとした工夫が生徒の理解の助けとなる。
写真下右は、重さWの台車を上向きに力Fで引くと垂直抗力N(上皿秤の指示値)が小さくなり,N=0(F=W)で台車が上皿から離れることを示す演示。上の斜面の実験と合わせて示せば効果的だ。離面の条件は問題解答上も重要なキーポイントになるので、印象づけは大切である。
生徒に「教科書を辞書代わりに使えば問題が解ける」自信を持たせ,黒板上の演示で「教科書の図が動き出す」ように感じさせて理解を助ける授業を心がける。これが水上さんの一貫したコンセプトだ。
討議の中で、石井さんから重要なコメントがあった。斜面上で抗力(摩擦力と垂直抗力に分解できる)を受けて静止している物体のつり合いを考えれば、抗力の作用線は重力の作用線と一致しなければならない。したがって、垂直抗力の作用点は接触面の中央ではなくなる。作図にあたってはそういう細かいところまで配慮したい。
ところで、上の写真のように「なめらかな斜面」上で、糸で支えている物体の場合、垂直抗力の作用点はどうなるだろうか。糸の張力の作用線が重心を通ることをヒントに考えてみてほしい。摩擦で静止している場合とは微妙に異なるのである。
DVD「小惑星探査機はやぶさの挑戦」 山本の発表
JAXA−ISASのビデオ・DVD『宇宙へ飛び出せシリーズ』の第12巻「はやぶさの挑戦」がこの夏から販売されている。下記サイトから通販申し込みできる。DVD(カラー56分) 定価 3,000円(税込)。
http://www.spss.or.jp/promotion/video.html
「はやぶさ」探査機の製作・運用から小惑星イトカワに接近し、サンプルの収集を行うまでのプロジェクトの解説、および「はやぶさ」が懸命に孤独な旅を続けるヒーリング系の物語映像「祈り」を収録している。付録として名場面の静止画像を収録したCDもついている。
2010年6月の帰還に向けてミッションは現在も継続中。満身創痍ではあるが、けなげにがんばっているはやぶさ君を応援しよう。
くるくるいろいろ 加藤さんの発表
左の写真は、最近よく実験教室などで作られている、くるくるレインボー。こちらは商標登録されているオリジナルである。右の写真は、加藤さんがこの夏休みに見つけた、くるくるレインボーの類似品。ブンブンゴマにして回すもの、ねじった針金に沿って回すものなど回転の手段もいろいろ。くるくるレインボーが紹介されてから数年経つので、いろいろなところで工夫されて、発展しているようだ。
ちなみに、右の写真の右の方、デジカメのあたりに写っているのは、ダブルクリップ5つとネオジム磁石で作ったかざぐるま。科教協石川大会の物理第三分科会で休憩時間に教えていただいた。
エントロピー体験ゲーム 加藤さんの発表
加藤さんが例会の当日、ダイソーに行って発見したというゲーム。密閉された容器に入っているオレンジと水色の玉を左右の部屋に分けるだけ。たったそれだけの単純なゲームなのに結構大変。ものすごいエネルギーを使います。エントロピーを減少させるにはエネルギーが必要だということを実感してみてはいかが?
まちがいさがしを一瞬にする方法 水野さんの発表
2つの絵を横に並べて、立体視する。すると間違っているところ(絵がずれているところ)は、他の場所とは明らかに異なり、感覚としてはまたたいている(?)ように見える。このことはガリレオ工房の滝川さんが指摘されているし、例会でも知っている人がいた。
落雷の痕跡 水野さんの発表
9月7日(日)午後6時15分頃、水野さんの学校の校舎屋上の手すりに落雷があった。そのときの写真である。幸い、日曜日で生徒も職員もいなかったので人的被害はなかったが、エレベーターは動かなくなり、非常装置の電気系統が使えなくなった。例会では、壁のタイルがはがされている箇所は、雷が落ちたところか、それとも手すりに落ちて、壁から屋内に雷の電流が入り込んだ箇所かが議論になった。確信はないが後者ではないかという結論になった。
平面鏡とハーフミラーを使った無限鏡像 水野さんの発表
文化祭で、中学3年のあるクラスが、「錯覚」をテーマに取り組んだが、そのとき展示した作品の一つ。平面鏡とハーフミラーとの間隔が狭いが、それでもかなりの奥行きを感じさせるものに仕上がっている。平面鏡(ポリカーボネイト製)の意図しないゆがみによってLEDの像がきれいなカーブを描いているのが面白い。なお、このクラスは全校生徒が投票する生徒賞第1位に輝いた。学校からも特別賞をもらっている。
光ファイバー結束線 水野さんの発表
同じ文化祭で理化部の生徒が作った3m(光ファイバー本数210本)と1m(同本数285本)の光ファイバー結束線である。全反射の例として、また光通信の媒体として、光ファイバーを身近に感じてもらうために作ったもの。10年ほど前の例会で水野さんが製作し発表したときは、長さは50cm足らずで、本数が2600本余りのものであった。今回は理化部の生徒2人で結束線を作り上げた。作り方は、以前と同じであるが、今回はファイバーが長いため、1人で作製するのはちょっと難しいと思う。。
断熱変化 田代さんの発表
フラスコにサーモテープを入れ、穴あきゴム栓をして50mLディスポーザブル注射器ですばやく加圧・減圧する。それぞれ空気の断熱圧縮・膨張で2度ぐらい温度が上下するのが観察できる。
少し水を入れたペットボトルを両手で思い切り握って圧縮しておき、急に手をゆるめると、ボトル内が白く曇る。水蒸気で飽和した空気が断熱膨張で温度が下がったため水が凝縮して霧ができたのである。田代さんは中学校の気象の分野でこれらの実験を取り入れている。
転向力(コリオリの力)の演示 田代さんの発表
これも気象分野の話題。自転する地球のような回転座標系内で運動する物体には、その速度ベクトルに直角な見かけの力「転向力(コリオリの力)」がはたらく。北半球で台風や低気圧が左巻きの渦を巻くことはその効果として説明される。そのデモ実験としては「フーコーの振り子」が有名だが、こんなお手軽実験でも転向力が体感できる。
中程に小穴をあけたペットボトルに水を入れ、吹き出す水流をトレーで受ける。これを両手で持ったまま、自分の身体ごと水平に回転する。このときトレーの中央線に対して水がどちらにそれるかを観察する。水流の向きをいろいろに変えて実験し、その法則性に気づかせたい。
「透明」と見えること 宮崎さんの発表
8月例会で鈴木さんが紹介してくれた「消える水玉」の正体は紙おむつなどにも使われている高吸水ポリマーである。消臭剤をしみ込ませて直径5mmほどにふくらんだ粒だった。今回宮崎さんが紹介してくれたのは植物栽培用高分子吸水球「プランツボール」。水を吸わせると直径15mmほどのビー玉ぐらいの大きさになる。球はほとんど水だから水と屈折率が変わらないので、水に沈めると見えなくなる。ガラスが透明でもその存在がわかるのは、水や空気との屈折率の違いで、光の進路が曲げられるのでその境界が「見える」ためである。
左側のビンには口のあたりまでいっぱいにプランツボールが入っているが見えない。比較のために底に沈めてあるガラスのビー玉は透明だが見える。青く着色されたプランツボールはもちろん見えるが、水にとけているような透明感がある。
右のビンは平野さんがイタズラして水に石けんをまぜて縣濁したもの。水が濁ると濃度にムラを生じ、プランツボールの存在がわかるようになる。
テントウムシ 石井さんの発表
塩ビ管のてっぺん近くにテントウムシがとまっている。塩ビ管を逆さにするとテントウムシはくるりと向きを変えて新たに上になった方へ登っていく。仕掛けは水入りの塩ビ管(外径18mm)に発泡ポリスチレンの「浮き」が仕込んであり、それに小型のネオジム磁石がついているのだ。
クライマーは磁石につくものなら何でもよいはずだ。画鋲やホチキス針でも可。スチールウールはトトロの「まっくろくろすけ」みたいでユーモラスだ。ゼムクリップの一部を伸ばしたものは塩ビ管を斜めに構えるとくるくるプロペラのようにスピンしながら登っていく。
テントウムシを甲虫のキマワリのように幹を回りながららせん状に登らせる工夫は、千葉の大村さんや群馬の宇敷さんのアイデアと改良により実現された。浮きに斜めの溝を掘って旋回しながら浮き上がるようにしたのである。
素朴なおもちゃであるが、浮力、磁力、摩擦、流体の圧力と粘性などいろいろな要素が複雑にからんで、思い通りの動きをさせるには数々の調整が必要で面白い。
ミニキャノン砲 喜多さんの発表
喜多さんは、昨今YPCで流行のピンポンキャノン砲に触発されて、手軽にできるミニキャノン砲を作成した。仕様は以下の通り。
打出す球:プラスチック製、直径25.5mm、パイプ:透明アクリル製(外径30mm、内径26mm、長さ37cm)、三方栓、ゴム栓、発泡スチロール円柱:直径35mm、厚さ8mm、サランラップ
プラスチック製の注射器を用いた真空ポンプで空気を抜くだけで、それなりの速さで打出すことができる。三方栓を用いて、ポンプと分離できるようにしたのは空気を抜く前と後の重さの差より、内部の圧力を求めるためである。
実験レポートの書き方指導 山田さんの発表
山田さんは、生徒実験にあたり、実験ノートのとり方とレポートの書き方を丁寧に指導している。それは将来自分が研究を進めていく立場に立ったときの基本的なスタンスを育てる大切な教育だ。
ノートのとり方の解説プリントには、ボールペンで書く、書いたことは消さない、データを取りながらグラフをかく、表の書き方など、例を挙げて丁寧な記述がある。報告書の書き方では、一般性、独自性、客観性、などの観点が示され、独りよがりや先入観を排除するように注意書きがある。
右は参考文献にあげられた栗山次郎著「理科系の日本語表現技法」朝倉書店\2730(税込)
SPPの広報 岩堀さんの発表
岩堀さんは、現在、独立行政法人科学技術振興機構(JST)に出向中で、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト(SPP)事業などを担当している。例会の席でSPPの事業概要の紹介と、申請のポイント・注意点などの解説があった。詳しくはSPPのWebページへ。
二次会 小田急永山駅前「おっけい永山店」にて
17名が参加してカンパーイ。今回は鈴木さんの新しい勤務先、多摩大学附属中高のお披露目だった。会場の最寄り駅、永山での二次会も初めてだ。毎回会場を変えていろいろな学校を巡ることは実験室作りにも大変に参考になる。
指ハブ 越さんの紹介
二次会の席上でも、発表は続く。越さ持ち込んだのは、お得意のかみつきヘビと元祖「指ハブ」。左の写真、一番上が腕用のジャンボかみつきヘビ、その下の2つが歌舞伎紐で作ったかみつきヘビ(片口、両口)、以上が越さん作。下の4本が、沖縄、読谷高校の金城先生から送っていただいた本物の「指ハブ」。沖縄伝統のうちわや傘作りに使われるクバ(シュロの木)の葉で作られていて、土産物として売られている。
右の写真は、5本の指にお気に入りの指ハブと、腕にジャンボかみつきヘビをはめ、怪しくほくそ笑む越さん。
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