例会速報 2009/01/18 三浦高校


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授業研究:玉田泰太郎先生の授業ビデオ DVD視聴による研究
 故玉田泰太郎さんの授業ビデオ「ばねの両端にはたらく力」を見た。教師は課題をだし、それについて自分の考えをノートに書かせ、発言させ、討論を構成する。教師による説明はほとんどないが、児童は、自分の考えを書くこと、ひとの考えを聞くこと、再び考えることを通して、教師のねらいに導かれていく。なぜこんなに集中して授業に参加できるのか。でも実験結果を見たときに歓声があがらないのはどうしてか。さまざまな興味や疑問が沸いてきた。
 2月の例会では滝川洋二さんとともに「混合気体」の授業ビデオを見て、さらに玉田さんの授業について探っていく予定だ。なお今回の授業記録(テープ起こしを含む)は雑誌「理科教室」1986年1月号に掲載されている。
 

ヤングの実験・音波版 水上さんの発表
 水上さんはヤングの実験の導入演示実験として、音波によるダブルスリットの干渉実験を開発した。波長λ=10pの音を口径2.5pに絞って球面波にする。これを複スリットで回折させて干渉の様子を確認する。原理図に節線と腹線を描き、各線上における音の大小が理論通りになっていることをマイクとオシロスコープで示す。続いてヤングの実験を見せてから理論の学習に入る。
 

 次は発展として入試問題の演示である。写真は球面波源を複スリットから2λと2.5の位置に置いたときの様子である。スリットを出る波は逆位相になり,節線と腹線が逆になっている。写真は水上さん提供。

飛び出るメガネ 大和田さんの発表
 昨年公開されたSF映画「センター・オブ・ジ・アース」(すでに劇場公開は終了)は、最新の3D技術を駆使したジュール・ベルヌの「地底旅行」のリメイクである。大和田さんは、上映後観客が捨てていく偏光メガネをたくさんもらってきた。もちろん教材として活用するためである。
 ところで、このメガネの性質を探るうち、大和田さんはあることに気がついた。二つのメガネの偏光板を重ねると90°回転するごとに明るくなったり暗くなったりするのは当然として、前後を入れ替えたり。裏表を逆にしたりすると、明るさが変化するというのだ。例会ではさっそく解明のための実験が始まった。

 普通の偏光板を同じ向きでレンズの向こう側(左写真)とこちら側(右写真)にかざしてみると、重ねる順序によって背後からの光の透過率が変わる。これは単純な偏光だけでは理解できない。

 これは旋光がからんでいるに違いないということになり、メガネの偏光板をはずして「解剖」することになった。はたせるかな、偏光面を回転させる性質(旋光能)をもつ薄いフィルムが偏光板に貼り合わせてあった。フィルムをはがした部分(写真左上に注目)は光の通り方が違う。フィルムが、偏光膜の保護のためのものか、メガネの複製防止のためのものかはわからない。

 この映画の専用3Dメガネ4個付DVD(初回限定版:税込4935円)が3/25(水)に発売になるのだが、家庭用のテレビでどのように3Dを実現するのか注目したい。

DinoLite 加藤俊さんの発表
 サンコーから発売されているデジタルマイクロスコープDinoLite。レンズ交換なしで20〜200倍連続可変、高輝度白色LED光源内蔵、USBでパソコンに簡単接続。税込8400円。元々は頭皮チェック、ヘアケア用品として宣伝されたものらしいが、微生物観察など理科の観察にも使えそうだ。別売のフレキシブルスタンドも用意されている。右の写真はお札のマイクロ文字を拡大撮影したもの。
 

デジタルヘルスメーター 山本の発表
 ヘルスメーター(家庭用体重計)といえば、一昔前はテコの原理に基づく機械式のものが主流だったが、このごろデジタル表示のものががぜん普及してきた。体脂肪計機能を搭載したものでも3000円台から店頭に並んでいて、お値段も手頃である。写真はケーヨーD2で1380円で購入した体重計機能のみのシンプルタイプ。天板は強化ガラスでできていてシースルー。機械的構造などなさそうに見えるが、仕組みはどうなっているのだろう。安いので分解したくなって衝動買いした。
 

 裏側の15本のタッピングネジをはずすと内部の仕組みが丸見えになる。分解前の推理のとおり、4つの足の所にそれぞれ取り付けられたストレインゲージで、金属ばねの変形を電気的に検出し、4つの測定値を足し算して表示しているのだった。写真右は力センサー部分の拡大。中央のブリッジの部分に押す力が加わると、その下の板ばねがたわんで、そこに接着してあるストレインゲージが伸びるのを検出している。LSIがモールドされた専用基盤一枚と4つの力センサーを配線しただけの比較的単純な構造だが、うまく作るものだと皆で感心した。これがわずか千円あまりで販売できることも驚嘆に値する。

重力加速度と電子天秤 加藤竜一さんの発表
 加藤さんが授業の話題として出したプリントの紹介。『重力加速度が、地球の自転による遠心力のために、地域によって違う』という話は授業で話題として取り上げるが、実際にデータを示したことはなかった。このことを加藤さんが時々見ているWebページ、hirax.net(平林 純さんのページ)で取り上げていたので、生徒に紹介した。記事はABC朝日放送の『探偵!ナイトスクープ』で取り扱われたものの紹介なので、ここでの紹介は孫引きになる。
 番組内で、北緯45度25分に位置する稚内と北緯25度20分に位置する那覇では、重力加速度がそれぞれ9.8062273m/s2と9.7909942m/s2で、0.155341%ほど違っている。だから、40kgの人が稚内から那覇に行くと体重は62.136gw軽くなる。質量40kgのマネキン人形を稚内から那覇へ移動させ、電子天秤でその体重を計り、マネキン人形の体重が減るさまを見せていた、というのが主要部分。そこまでの精度ではかれる電子天秤がすごいね(「1.6トンの車に、おちょこでお酒を1盃と少しかけた時の重量の違い」がわかるくらい。と紹介されている。)という部分と合わせて話題として取り扱われている。
 ちなみに、この記事を紹介するにあたり、加藤さんからWebページ作成者の平林純さんにメールしたところ、『YPC の長く続く活動は以前より尊敬しておりました。というわけで、少しでもお役に立れば幸いです。』という返事をいただいたとのこと。

新指導要領案のここがヘン 鈴木亨さんの発表
 昨年末に文部科学省が高等学校学習指導要領案およびその関係資料を発表した。平成21年度中に周知徹底を図り、総則、総合的な学習の時間、特別活動は平成22年度から、数学及び理科は平成24年度入学生から学年進行で実施、他の科目も平成25年度入学生から学年進行で実施とされている。

 鈴木さんは「総則」の理科、特に物理分野について、その問題点を指摘した。鈴木さんの発表のパワーポイント画像でその一部を紹介する。

 

 

ソーラーモンキー 加藤俊さんの発表
 エレキットシリーズの新製品、ソーラーモンキー。太陽電池を背中に背負い、光が当たると両腕を交互に動かして綱渡りをするサルのおもちゃ。はんだ付け不要で1時間以内で組み立てられる。定価税込み1260円。

ふしぎな鏡 加藤俊さんの発表
 ミラーシートを円筒形にして立てた凹面鏡。のぞき込むと右の写真のような像が見える。普通の平面鏡だと左右が逆(正しくは上下左右はそのままで前後が逆転:鏡像反転という)になるが、この鏡は右の写真のように左右が逆にならない(正しくは上下はそのままで前後左右が反転)。写っている撮影者の小指が立っている方の手は右手である。焦点線の外側からの撮影なので水平面内で考えれば光路は一度収束してから発散する。つまり実像の条件を満たすのだが、鉛直面内で考えると平面鏡と同じで鏡面の後ろに虚像があることになる。こういう像は何と呼んだらよいのだろう。
 

世界天文年に参加しよう 加藤竜一さんの発表
 今年は、ガリレオが望遠鏡で宇宙を見てから400年目。世界天文年だ。そこで、世界天文年企画を2つ紹介する。
 一つ目は、『君もガリレオ』プロジェクト。ガリレオが作ったのと同じ、口径4cmの望遠鏡を手作りして、観察をしようという企画だ。今年中なら、20セット以上の注文で、望遠鏡キットを一セット1050円で入手できる(写真左、もっと高いものもある)。安価ながら、色消し組み合わせレンズになっている優れものだ。学校で作って、スケッチをして、ガリレオの追体験してみてはいかが?
 もう一つは、『めざせ1000万人!みんなで星を見よう!』プロジェクトです。星を見たことをWeb上で報告すると、写真のような参加証明書をもらえる(JPEGデータで配付、プリントアウトは自前)。2月9日現在まだ1万9千人くらい。1千万人にはまだまだ遠いので、ぜひ協力して運動を盛り上げたい。ISSを見た後の報告でも良いし、プラネタリウムでもかわない。少しでも星を見たら報告を!。
 

小笠原丸で皆既日食を 車田さんの紹介
 今年7月22日に起こる皆既日食は、皆既帯が中国大陸から奄美大島北部、屋久島を通り、母島南方海上に至る。久々に日本の領土・領海内で起こる皆既日食なのだが、残念なことに陸地はほとんど含まれていない。奄美大島や屋久島ではすでに宿泊施設は予約で満杯、交通機関の確保もままならないと聞く。
 そこで、陸地がだめなら海上で、というわけで小笠原海運の定期船「おがさわら丸」で父島に向かい、同島に宿泊しながら、おがさわら丸を皆既帯に突入させるという特選ツアー「おがさわら丸で行く北硫黄島海域で見る皆既日食クルーズ」が企画されている。
 梅雨時でもあり、陸地での観測はそこが曇ればアウトだが、船なら気象衛星情報を頼りに晴れ間をめざして位置を変更することができる。船体が揺れるので望遠鏡を固定しての観測は無理だが、眼視での観望なら見られる確率は高い。応募者多数の場合は2/13締切で抽選だがYPCからは何人が出かけるのだろうか。

ザ・ムーン 越さんの紹介
 人類月面着陸40周年記念、世界天文年2009公認のドキュメンタリー映画「ザ・ムーン」が公開された。米国資料保管所蔵出しの大量の未公開映像を含むNASAオリジナルフィルムをデジタルリマスターした実写映像と晩年を迎えた宇宙飛行士達の重みのある言葉でで構成されている。
 灰色の荒涼とした砂漠のような月面の向こう側、漆黒の宇宙空間にポツンと浮かぶ脆く美しい地球。その対照的な光景を目の当たりにした宇宙飛行士たちは、「この美しい地球に生まれ、人生を謳歌することができて幸せだ」と口々に言う。
 教材としても非常に価値の高い映画である。映画の公式サイトもアポロ計画などの解説があり興味深い。ヤフー、映画の作品ユーザーレビューでのコメントも参考になる。また、原題の’IN THE SHADOW OF THE MOON’も意味が深い。
 残念ながら2月中旬で上映はほとんど終わってしまい、国内版DVDの発売もまだだが、輸入盤DVDなら現在も入手可能。

水平投射の写真 水上さんの発表
 カシオEX―F1で水平投射の連続写真を撮影してみた(写真は水上さん提供)。データ:30fps(1秒に30枚)、シャッタースピード1/60秒、グラフ黒板の線は3.0p間隔。ここでは一枚おきにコマを取り出して示した。
 比較的スローシャッターにすると、物体が線状に写り、このままで各々の時刻における速度を計算できそうだ。位置と速度の情報が一目で読み取れる。

 速さが増すにつれ像のずれが長くなっていることがわかる。ベクトルの方向も一目瞭然だ。水上さんは現在授業での利用方法を模索中である。

二次会 衣笠駅前「お太幸衣笠店」にて
 14名が参加してカンパーイ。三浦高校は初会場とあって、みんな楽しみにしていた。当初神奈川県の南端に近い遠隔地という印象があったが、JR横須賀線衣笠駅からわずか5分というロケーションの良さは、優良条件だ。駅前商店街には飲食店はもとより実験材料を仕入れられそうな商店がいろいろ並び、工業科も併設しているとあって、YPC的には大いに魅力を感じた。


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