例会速報 2009/10/17 多摩大学附属聖ヶ丘中学・高等学校


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授業研究:中一の力学 益田さんの発表
 益田さんは、中学1年生の「力」から「圧力・浮力」までの約8時間分の内容について発表した。
 8時間の制限の中、「力の表記」や「力のつり合い」を省き、「圧力と力の違い」をメインに、気圧や浮力の大まかなイメージが持てるように授業を考えた。
 例会参加者からは、「力をもっとしっかり扱った方がよい」、「つり合いのイメージを獲得させ、ばねの話につなげるべきである」とのコメントがあった。
 益田さん自身、もっと高校物理を意識して最初の「力」の導入を行うべきだと考えるに至った。また中高一貫校の中学理科として各単元をどのように扱ったらよいのか、しかっりと見通しを立て授業を展開することが大事であると改めて実感した。
 充実した授業研究の場にとなったが、益田さんが論じたかった圧力については時間切れとなった。また次の機会に論じたい。

龍勢祭り 車田さんの発表
 車田さんは10月11日に行われた龍勢祭り(りゅうせいまつり)を取材し、映像で紹介してくれた。
 この祭は椋(むく)神社例大祭の付け祭として、仕掛け花火のような手作りロケットを打ち上げて奉納する。高さは500mまで上がるものもある。今年は30機が打ち上げられた。

 以下、車田さん自身のレポートを引用する。

 横浜から始発電車で3時間ほどかけて秩父へ。現地で前泊の越さんと合流し、無事桟敷席を確保して見学することができました。1本目から打ち上げ失敗で爆発炎上でしたが、30本中17本が打ち上げ成功しました。8本が打ち上げたもののパラシュートが開かず、5本が爆発炎上でした。
 鈴鹿にF1を見に来たような興奮と歓喜で見ごたえのあるものでした。試しうちもできないぶっつけ本番の打ち上げながら、成功すると仕掛け花火が炸裂し、パラシュートが開き、15mもある竹ざおがゆっくりと舞い降りてきます。大人のモデルロケットのような規模が大きいものです。なかには、パラシュートが開かず、民家の裏山に落ちて出火するものもありました。いずれは種子島の射場に行きたくなる光景でした。

プラズマボールのしくみ 鈴木さんの発表
 多摩大学聖ヶ丘中高の物理室にはプラズマボールが展示してある。プラズマボールは、今までもYPCの例会で話題になってきた。鈴木さんは「理科教室」2010年1月号の「理科室に置きたい科学おもちゃ」欄にプラズマボールをテーマに記事を書いたので、その内容を例会で話題にした。さらに他にできることがないかいろいろやってみた。
 

 プラズマボールにオシロスコープのプローブを近づけてみると、50μsの周期で振動していることがわかる。その逆数が周波数なので、20000Hz(20kHz)ということになる。手に持った蛍光灯を近づけると、プラズマボールのガラスに触れる前に蛍光灯が光る。蛍光灯の途中を持つと、持ったところまでが光る。この光を高速度カメラで撮ると点滅が映らないので、高速度カメラのコマ数(1秒間に1200コマ)以上の振動数であることが確かめられ、オシロスコープの観察と整合する。

 さらに、アルミ箔でプラズマボールを覆い、そのそばに蛍光灯を近づけてみる。アルミ箔に手を触れてアースすると、蛍光灯はつかないが、アースなしだと、アルミ箔がないときと同様につく。まだまだ面白いことができそう。「理科教室」1月号の記事もご覧いただきたい。

ビオ・サバールの法則 田代さんの発表
 ビオ・サバールの法則 dB=kIdl sinθ/R^2 でRが単位長さ、注目点へのsinθが1(θが90°)のままdlの積分値(加算値?)が単位長さになるようにしたいと考えて、田代さんは図のように弧の中心角が1ラジアンの装置を作った。
 こうすれば、dBの積分値は kIになる。k=1ならばcgs電磁単位系で、k=10^-7 ならばMKSA単位系である。
 この装置の注目点に磁極を置くと、磁極に力が作用する。導線には反対向きの力が作用している。磁石を固定するとそのことが観察できる。弧でなく、円形コイルならば普段使い慣れているが、田代さんはあえてこのような装置を作ってみた。

 1Aの定義に2×10^7 が登場する。定義だからそのまま受け入れなければならないと考える人もいるだろうが、なぜ「2」が現れるのかが気にならないだろうか。実はこの「2」はビオ・サバールの法則を積分して求まる値なので、ビオ・サバールの法則を大切にしたいというのが田代さんの主張である。

交流の実効値 細谷さんの発表
 交流の実効値を直感的に理解させる実験として、交流・直流のそれぞれで光らせた電球の明るさが等しくなることで電力が一致することを示す方法がある。物理Tの冒頭の電気単元では、交流の瞬時値の最大値が実効値の√2倍であることを理論的にわからせることはできないので、この方法が有効だ。
 

 ところで、二つの電球の明るさが等しくなったことを視覚的に確認するのは意外と難しい。そこに工夫の余地がある。細谷さんが紹介してくれたのは、紙の中ほどにロウをたらして一部半透明にしたスクリーンだ。上右の写真のように、表裏の照度に差があるとロウの「しみ」がくっきりと見える。表裏の明るさが等しくなると下左の写真のように「しみ」が見えなくなる。透過光と反射光をうまく隣接させてコントラストをつけるのだ。
 明るさが等しくなったら、交流・直流それぞれの電圧をオシロスコープで測定すると、ちゃんと√2倍になっている。 

ビースピを用いた力学的エネルギー保存の検証実験 市江さんの発表
 昨年と今年の夏に麻布高校で行われた物理基礎実験講習会で紹介された実験の一つにビースピを用いた力学的エネルギー保存則の検証実験があった。啓林館の教科書にも同様の実験が載っている。YPCを基点に広まったビースピを用いた実験は、立派に市民権を得たと言えよう。
 写真のように板に木片を固定し、そこにテグス糸を通しておもりをつるす。おもりがビースピの中心にくるように糸の長さを調整して、糸を通した木片の穴につまようじをさして固定する。この板と木片があることで簡単なガイドになり、振り子の振動面が鉛直になるように生徒でも簡単に調整できるよう配慮されている。今回市江さんは、板と木片をダイソーで調達をして工作の手間を省いた。おもりを含んで1セット300円ほどでできたという。
 

 とかく抽象的で解かりにくいエネルギーの計算も実験を通して行うことで、生徒もより実感を持ちながら取り組むことができる。

 写真は(株)ナリカが新たに発売した「ビースピV」改良版ビースピである。m/s表示が加わったのがなによりうれしい。操作ボタンも2個になって使いやすくなった。耐衝撃性も増したので、この実験のように振り子がぶつかる恐れがある実験でも安心だ。

二次会 永山駅前「新撰組」にて
 12人が参加してカンパーイ!。今日の例会は残念ながら出席者が少なく、発表件数も上記のとおり少なくて寂しかった。常連さんがたまたま用事が入って忙しかったようだ。でも、二次会には4人の応援が駆けつけて盛り上がった。


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