例会速報 2009/11/22 電気通信大学
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授業研究:光の学習 鈴木さんの発表
鈴木さんは2年ほど前の電通大例会でも、同じテーマで授業研究の発表をしたが、今回は異動先の現任校で、実験ネタも増やして行った授業後のアンケートを中心に、光の分野の学習について話題提供があった。
波動分野は、実体験させる教材をふんだんに用意し、現象を目や耳で理解することを中心にすえるべきで、当たり前と思われるもの、こんなことはすでに体験しているはずというようなものも、可能な限り見せるべきだ、というのが鈴木さんの最大の主張だ。
「見えてくる×印(紙コップの底に×印を書き、片目で見てコップの縁で×が見えないような持ち方をして、水を注ぐ)」や、「シャボン玉の観察(黒いプラスチック板の上に直径10cm程度の半球状のシャボン玉を作り、消えるまで観察する)」などは、小学校でもやるような実験だが、生徒は嬉々として取り組む。概して単純な実験の方が生徒の印象度が高い。
ただ、残念なことに、教員側の期待に反して、法則を確認するような実験(レンズの実験、ヤングの実験など)の印象度が低いという。法則の理解が不十分のまま、実験に取り組んでいるからだろうか。このあたりの検証が必要だと感じる。
惑星の自転説明器 倉田さんの発表
太古、恒星のまわりで回転するガス円盤から原子惑星系が生まれたとき、全体の回転角運動量が分散して、個々の惑星は自転するようになったと考えられる。だから、多くの惑星では自転と公転の向きが同じなのだろう。倉田さんは公転運動の回転が自転運動を生み出すことをわかりやすく示すモデルを考案した。腕木の両端に惑星に見立てた「地球ゴマ」をとりつけ、腕木を手で回転させる。しばらくして腕木の回転を止めてみると、二つの地球ゴマは腕木の回転と同じ向きに回転している。この場合、角運動量の伝達は軸の部分の摩擦力を介して行われるが、原始惑星系では構成粒子の衝突や気体の粘性抵抗によるのだろうか。重力による収縮を表現できるとさらによいモデルになる。
ジャイロのモデル 田代さんの発表
広江克彦氏のWebページ「EMANの物理学」に、数学を使わずにジャイロ効果を扱っている記事があった。田代さんはその考え方を紹介した。
「EMANの物理学」の説明はこうである。左の写真の図のように今まで水平で反時計回りに回っていたコマを右に倒すと、AとBの部分の運動方向は水平でなくなるが、AとBの部分は回転軸の向きが変わっても慣性の法則に則り、元の運動方向を保とうとするだろう(赤の矢印:田代)。斜め下に向かうように強制された部分Aが、周りを引きずってでも無理やり水平に進もうとすれば、この部分一帯は上にせり上がる。逆に上に向かうように強制されたBは、その部分一帯を下に押し下げる。つまり全体が図の奥の方へ向かって倒れこむことになる。これがジャイロ効果だというのだ。
田代さんはさらにモデル実験を加えた。写真下左のようなこまのモデルを作って赤矢印に相当するようにひもで引くとどうなるだろう。おもりをつけた紐で軸を傾けた状態にし(写真下右)、更にA,Bの赤矢印に相当するように両側からひもで引く。写真ではまだ、おもりが机上に触れているが、装置を持ち上げると確かに全体が写真下右の手前側へ倒れ込むのが観察される。参考:「EMANの物理学」 の記事「もっと簡単なジャイロ効果」
弦の振動の工夫 武捨さんの発表
武捨さんは教科書にも載っている記録タイマーを振動源に用いた弦定常波の実験の、ちょっとした工夫を紹介してくれた。
記録タイマーをそのまま使用すると打点の音がとてもうるさい。そこで、記録タイマーの振動板をビニールテープで持ち上げてみたところ、打点の音を消して静かに実験することができた(写真左)。糸の他端は滑車とすることが多いが、某教科書では木片にトタン板を組み合わせた調整コマが紹介されていた。100円程度で売っているL字金具でも代用できた(写真右)。これなら班の数だけ用意しても重ねてコンパクトに収納しておける。
張力を発生する機構には分銅を使うことが多いが、武捨さんの実験では滑車を介してバネばかりで上に引いていた。これなら任意の張力が作り出せる。さらに例会では越さんの新しいハイスピードカメラで定常波の観察会となった。
単振り子の等時性について 小林さんの発表
振り子の等時性は小学校の理科でも登場する。新学習指導要領では小学校5年生の「振り子の運動」の項に「ア 糸につるしたおもりが1往復する時間は,おもりの重さなどによっては変わらないが,糸の長さによって変わること。
」とある。厳密には周期は振れの角度に依存し、振れ幅がごく小さいときに限って振幅によらないと近似できる。
しかし、小学校教員対象の研修などでは雄大にスイングさせた振り子の周期を測って、振幅による周期の違いを「摩擦」や「誤差」で片付ける指導が行われていると、小林さんは警鐘を鳴らす。摩擦は周期に影響しないので、この説明は明らかに誤りだ。
龍勢祭のスローモーション 越さんの発表
10月の例会の車田さんの発表に続き、越さんは「龍勢祭り」のEX-F1によるスローモーション映像を紹介した。
速さ1/20のスローモーション映像によると、長さ15m程の竹の尾が左右にしなりながら上昇しているのがわかった。その反動により噴出されるガスの向きが微妙に変化し、龍勢(竹ロケット)本体がやや蛇行していた。秋空に突き刺さっていくロケットを見上げるのは心地良いものだ。最高点付近でパラシュートが開かれ、本体のピンク色の大パラシュートと、緑とピンクの小パラシュートに分かれて、ゆっくりと落下してきた。(写真右)
越さんの通常撮影のYou tube映像へのリンクはここ。スローモーション映像はここ。
ソーラーバルーンでスイカの引き上げ 櫻井さんの発表
櫻井さんは理科大教授の川村さんと共に、「所さんの目がテン」に出演。番組の中の実験で、黒いゴミ袋を貼り合わせて巨大なソーラーバルーンを製作し、太陽熱だけでスイカを持ち上げることに成功した。使用したゴミ袋は80cm×65cmの45Lタイプで厚さ0.015mm。気球のサイズは高さ24m、幅14mだった。映像を記録したブルーレイディスクを再生できる環境が会場になかったため、実際の様子を見られなかったのは残念。
3Dテレビ 竹内さんの発表
家庭用のテレビでも、画像のダブりなどの違和感を伴わずに立体映像が楽しめる方法がある。竹内さんはかつてソニーに在社した頃そんな研究もしていた。写真左は片目だけサングラスをかけて左から右へ一方向に流れる映像を見ると奥行きが感じられる「プルフリッヒ効果」を用いた映像。
写真右は「2D/3Dコンパチブル立体映像」。裸眼で見ても違和感のない画像だが、両眼に円偏光メガネをかけて見ると立体的に見える。TVカメラのレンズを左右に並んだ二つ穴のシャッターで覆い、ひとつのイメージセンサで交互に左右の映像を撮影する。再生するテレビ側では画面の前の円偏光シャッターで左右の画像を交互に切り替えながら見せる。左右の画像の視差はフォーカスの「ボケ」に埋もれるので裸眼で見ても違和感を感じないのだという。
衛星放送の受信 竹内さんの発表
アジアサット(香港)など、国外の放送衛星の「海外衛星テレビ」は日本でもいくつか受信できる。必要な機材はパラボラアンテナと受信機だけ。後者は汎用のものが比較的安価に手に入る。その気になれば「海外衛星テレビ」はタダで見られるのだ。
立体演奏サウンド 竹内さんの発表
電通大80周年記念館の2階に展示されている竹内さんの作品。バンドやアンサンブルなど複数楽器の演奏を楽器ごとにマイクを配置して多チャンネル録音し、それぞれの音源を球形スピーカーで再生する。名付けて「マルチスピーカー原音演奏方式」。まるで、その場で生演奏を聞いているような臨場感のある広がりをもった音場が実現する。
下左は再生用の球形スピーカー。実際は正十二面体に組み合わせたスピーカーだ。右は調整用のミキサー。スピーカー群の中に入るとまるで自分がバンドの一員であるかのような位置感覚だ。特定の楽器の音だけ消して、その位置に自分が立ってその楽器を鳴らせば、一人でバンドやアンサンブルの練習ができる。
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