例会速報 2010/04/18 関東学院高等学校


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授業研究:授業開き みんなの発表
 益田さんの中学校2年生化学分野授業開きは、「物質の分解」の導入としてカルメ焼きをした。科学の祭典で慶応幼稚舎の先生がされていた方法で、砂糖液はヤカンで、重曹は卵白に溶いて用意した。重曹の撹拌がポイントだが、各クラスとも11班中9班以上が成功し、まあまあ楽しい授業開きになったと益田さんは自己評価している。砂糖液の温度が120度以上になり、生徒が各テーブルで加熱すると目が行き届かない恐れがあるが、この方法なら成功率も高く、砂糖液をこちらでコントロールでき安全に作業させることができる。カルメ焼きが膨らむところから、重曹の存在、そして重曹の変化に着目させ、次の重曹の加熱分解へと進む。
 

 小沢さんの3年生の授業開きは2年生の復習から。ストロボ写真のような図から、速度と加速度にあたる量を読み取り、物体がどんな力を受けているのかを考えさせる。あえて式を使わずに、力学の根本の考え方を復習することをねらった。考え方さえわかってしまえば、たとえば、円形レールの内側に沿って運動する物体が受ける力の向きを、円運動が未習でも考えることができる。また、発問(レールが切れたところからどう運動するか?)に対し、班ごとに画用紙のパネルに書いて答える形式を取り入れて、双方向の時間が増えるような工夫をしてみた。
 

 鈴木さんは、最初の授業プリントを持参した。授業開きは授業ガイダンス(授業ノートのやり方など)と信号機の色当てクイズから理科を学ぶ意味の話、そして自己紹介代わりのスプーン曲げパフォーマンスという展開。もう何年も前から行っている授業開きのパターンである。今年の改良点は、これまでB4判にしていたプリントをB5判にしたこと。理由は、今年購入したドキュメントスキャナ(FujitsuScanSnapS1500)が、A4判までの紙を40枚程度でも1,2分でスキャンできるので、生徒に予想や考えたことを書かせたプリントを回収し、すべてスキャナで取りこもうと考えているからである。

 水野さんの中3理科1の授業開きは、爆鳴気の実験である。中2で学習した内容の復習も兼ねて、水素と酸素の化合によって水ができることを大規模に演示した。科教協愛知大会で購入した長さ20m(外径7mm、内径5mm)のビニールチューブを使い、水素と酸素をそれぞれの缶からポリ袋に適当に入れて(正確に2:1でなくても可)チューブに注入した。
 ユージオメータ−での実験では管の中に上昇してきた水を、合成によってできた水と勘違いする生徒がいる。この実験ではチューブ内ははじめ乾燥しているので、実験後チューブ内にできる曇りは合成によってできた水であると納得してくれる。20mの長さがあるので、教室をぐるっと囲んで全生徒にチューブを持たせ、部屋を暗くして実験すれば反応時の光と音に歓声が上がる。強烈なインパクトがあり、授業最初の実験として好適である。点火シーンの動画(AVIファイル4.1MB)はここ
 

 車田さんは今年度は化学Uを担当、化学Tの残りから授業開きだ。有機化学の導入で、レゴブロックを使った。炭素原子は4×1ブロック、水素原子は1×1ブロックを使う。メタン、エチレン、アセチレンの分子のブロックを生徒に渡し、長方形ができるように作らせる。丁度長方形ができると4×1ブロック同士を繋ぐところが、順に単結合(1ブロック)、二重結合(2ブロック)、三重結合(3ブロック)となる。
 

 数学も計6時間持つことになった。「数学基礎」の授業開きは「漢数字」。名前に漢数字を使っているのは、日本独自の文化だそうだ。例えば、一郎、二郎、三郎のように生まれた順番が名前になってる。苗字に漢数字が来ると、「一」は漢数字の一二三の順から「にのまえ」と読み、「二」は上の横棒が下の横棒より長いことから「したなが」と幾何学的な読み方をする。「十」は書き順から「よこだて」または、個数のひとつ・ふたつ・みっつという数え方から「つなし」というような、数にかかわる文化としての遊び心を紹介した。

 高祖さんの高2理系物理選択の授業開きは「自己紹介、シラバス、授業形式、評価方法、物理を学ぶこと」をプリントにまとめ生徒に伝えた。
 特に強調したことは「物理を学ぶこと」について。信号機のランプの配列を例にとり、起こっている現象や公式などを覚えていくのではなくそれを支配している原理や原則を理解していくことが重要だ、と伝える。
 一部のクラスではものさしを落として反射神経を計測する実験を行った。目的は緊張した雰囲気をなごやかにすること。結果は成人平均0.2秒のところ0.18秒。目的は十分達成できたので来年度以降も続けていくことにした。
 最後にこれまで行った真空落下、エアパック、摩擦力によるスーパーボールの意外な現象など演示実験の実施報告があった。
 

鞭の衝撃波 海後さんの発表
 2010年2月例会の続編。安いベルト素材を編み上げて本格的な牛追い鞭を作った(写真左)。まともに買えば1〜3万円もする。写真右も自作品でオレンジ色のベルトがグリップに格納できるようになっている。音声付動画(AVIファイル3.6MB)はここ。海後さんは爆発、キャビテーションなど、さまざまなシーンで発生する衝撃波に興味をもって事例収集や実験をしている。
 

スピリットキャッチャー 海後さんの発表
 ネイティブインディアンが狩りの時に使用したといわれる民族楽器「スピリットキャッチャー」を海後さんはホームセンターで入手可能な安価な材料で製作した。写真右端はコンクリート打ちで使う硬質ウレタンの目地棒と、ブルーシートを張るのに使う幅1cm×厚さ1mmの平ゴムベルトで80円程度でできる。低音でよく響くいい音がする。左端は携帯できる小型版。木の棒とプラダンが材料。組み立て式で、使用時47cm、格納時37cm。中央は自信作のライトセーバータイプ。スターウォーズのライトセーバーの効果音がこの楽器の音によく似ているので思いついた。グリップのところに色つきマグライトを装着して暗い部屋で振り回すとリアル(写真右)。音声付き動画(AVIファイル18.3MB)はここ
 

ぶんぶんまわし 海後さんの発表
 紐と板の組み合わせで3種類の遊び方ができるおもちゃの提案。写真左は「ぶんぶんごま」(松風独楽)。レインボーシートが貼ってあるので、回転すると虹の輪が浮き上がる。写真右は「うなり板」(Bullroarer)。動画(AVIファイル7.9MB)はここ。紐をはずして長軸のまわりに回転するように投げるのが「ぶん飛ばし」。水野さんによるぶん飛ばしの動画(AVIファイル3.1MB)はここ
 

IHグラインダー 小林さんの発表
 小林さんは、永久磁石を高速回転してIH調理器のように誘導加熱ができないか、回転数11000rpmのグラインダーに小さなネオジム磁石をNS交互に並べた円盤を取り付けて挑戦してみた。1号機では約5gのネオジム磁石を半径約7cmの円盤ではさんで回転させたところ、3重重ね張りしたガムテープを簡単に突き破り破壊した。弾丸のように飛び散った磁石で小林さん自身も手に軽傷を負ったという。この実験は非常に危険である。計算してみると磁石1個あたり約50kgwの遠心力がかかるようだ。あなどってはいけない。
 2号機では写真のようにネオジム磁石を厚めの樹脂板に埋め込んで強度を増した。3mm離したステンレス容器内の20mlの水温が10分間で13.4℃から26.2℃上昇したが、そのあとなぜか水温上昇が止まってしまった。原因はステンレス容器が大きすぎるための放熱か、周波数が足りないため発熱不足か、詳しくは不明。宿題となった。追試の際は安全に十分配慮してほしい。
 

大科学実験 水野さんの紹介
 3月31日から始まったNHK教育テレビの「大科学実験」(毎週水曜19時40〜50分、再放送金曜10時45〜55分)の紹介。10分間で1つのテーマの実験をする。第1回目のテーマは「音の速さを見てみよう」。1.7kmに86人を等間隔に並べて、大きな音を鳴らし、聞こえたら旗を揚げるという実験だ。音源はシンバル、人の声、ビッグホーンの3種類。測定結果は、どれも約340m/sになっていた。これだけの規模の実験は授業ではなかなかできないし、10分という放送時間も授業で見せるのに手頃だ。放送予定は下記の通り。詳しい情報はここ
 第2回目:「空飛ぶクジラ」(4月7日)
 第3回目:「コップは力持ち」(4月14日)
 第4回目:「太陽で料理しよう」(4月21日)
 第5回目:「高速で止まるボール!?」(4月28日)
 第6回目:「リンゴは動きたくない!?」(5月5日)
 第7回目:「人力発電メリーゴーランド」(5月12日)
 第8回目:「声でコップが割れる?」(5月19日)
 第9回目:「大追跡!巨大影の7時間」(5月26日)
 

PETボトルの破裂 車田さんの発表
 日本科学未来館より理化学研究所一般公開で真空の実験教室をしていたときの出来事。YPC簡易真空ポンプでペットボトルつぶしをしていたときに、大きな音がして見てみるとペットボトルが加圧ではなく減圧で内側に破裂していた。小学生が実験をしていたので特別なことをしたわけではない。容器はお茶系ですが、破裂箇所は上側部分の注ぎ口の根元からだった。
 PETボトルはもともと陰圧を想定した容器ではない。大気圧は平方センチあたり1kgwを越えるので容器の破壊は大きな危険を伴うことになる。あなどらないようにしたい。

作用反作用・その2 石井さんの発表
 まず力のつり合いについての話。「斜面上で静止している物体にはたらいている力を矢印で示せ。」石井さんは前回の例会の席でそんなアンケート調査をした。昭和56年出版の高校物理の教科書では物体の重心から重力、垂直抗力、摩擦力の3本の矢印が描いてあるものが多かった。平成18年出版の本では垂直抗力と摩擦力の作用点を重力の作用線と交わる斜面上の点に移したものが多くなった。しかし重力と同じ作用線上に、つり合う力として「抗力」を一本だけ逆向きに描く「正解」を載せている教科書は1社だけだった。ちなみにYPCでは16名の回答者中4名がこの描き方をした。垂直抗力と摩擦力は抗力の分力であるが、力の分解の方法は無数にあるので慎重に扱わなければならない。
 一方、作用反作用については、「一方の力と他方の力の種類が違っていてもよい」(法則と定数の事典・岩波)など、文献にも間違った記述が見られ、根深い誤解がある。
 

韓国科学祝典など 竹内さんの発表
 竹内さんからは、ビデオで日頃の科学普及活動の実践報告があった。韓国科学祝典は2009年8月4日〜9日、ソウル郊外で開かれ、10万人の来場者を数えた。日本の科学の祭典と違うところは小中学生や高校生が実験講師として活躍していることだ。子供達を前面に出すことでモチベーションアップをはかっている。これには日本も学ぶ必要があるだろう。
 

二次会 黄金町駅前「養老乃瀧」にて
 13人が参加してカンパーイ!。本日の例会参加者は20人。半数以上がここに集まった。この二次会はYPCの名物かもしれない。これを楽しみに集まってくる人も少なくない。盃をかわしながら尽きない科学談義に花が咲く。


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