例会速報 2010/05/16 筑波大学附属高等学校


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授業研究:素朴概念としての「光線」 鈴木亨さんの発表
 今回の会場校、 筑波大学附属高校の鈴木さんは高2物理T,2単位授業の導入単元として6〜8時間,光の学習を行っている。そこから明らかになってきたのは,「光線」について生徒たちのもっているいくつかの素朴概念である。たとえば,「教科書の図をリアルなものと受け止め,光線は横方向から見え,光跡をたどることができる」「大きさをもつ物体からは,光線が平行な光束として放出される」「虚像もスクリーンに写る」などである。これらは,「凹レンズの焦点距離を測ってごらん」という課題であぶり出される。
 今年の授業で鈴木さんは,光線を「波面の進行方向を表す想像上の直線」であることを強調した。その延長として,屈折,結像公式,ホイヘンスの原理,干渉などを統一的に理解することを目指した。
 「仮想すると便利な概念」に過ぎない「光線」を未定義に用いているのが大半の教科書であり,そのために,「幾何光学を教えるために幾何光学を教える」になっていないだろうか。出席者からも「教えていて自分の中で位置づけがはっきりしない」という発言があったが,その辺りを指していると思われる。
 

静電モーターとハミルトンモーター 石井さんの発表
 石井さんは小型高圧電源装置(写真左)を用いた回転実験の数々を披露してくれた。まずは静電モーター。ピンポン球の表面に銅箔を貼ったものを回転子とする(写真右)。銅箔に乗った電荷が同極の反発を受け、他極には引かれてトルクを生む。
 

 ところが電極など何もつけないピンポン球でも同じように回転が起こることが判明(写真左)、発泡スチロールも無電極で回転する(写真右)。電極なしでも回転子の表面には電荷が付着するようだ。 

 続いてミニ・ハミルトン風車。左の写真はゼムクリップを加工したもの。とがった先端部分に特に強い電界ができ、空気中の気体分子がイオン化して反跳するときに、回転子は反作用を受けて上から見て反時計回りに回転を始める。
 右の写真は、細い銅線、アルミフォイル、紙、植物の葉、焼き海苔等で作ったいろいろな形の回転子。安定した回転には熟練を要するが、回転子の素材は金属でなくてもよいという結論である。 

金属線の抵抗率 鈴木健夫さんの発表
 金属の抵抗率を測る実験ははニクロム線を使うのが一般的だが、鉄や銅やアルミニウムの抵抗率を測るには、その素材の長いものを用意しないといけない。銅は、エナメル線やリード線の長いもの(数十メートルで巻いたままのもの)を用いれば測定可能である。しかし、針金を用いて鉄の抵抗を測ろうとしても、絶縁されていないと巻いたままでは測れず、引き伸ばす面倒がある。
 そこで見つけたのが「カラーワイヤー」、ダイソーで100円で様々な径のものが40mや20m程度の長さで売られている。材質も、鉄・アルミニウム・ステンレスなどがある。色つきでコーティングされていて都合良く絶縁されている。巻かれたまま両端を剥いてテスターの抵抗測定モードで測ることができる。剥いた場所の外径をノギスで測り、長さはラベル表示を信頼して抵抗率を計算すると、理科年表にある数値とほぼ一致した。
 

指のりトンボ 鈴木健夫さんの紹介
 重心の位置をくちばし(トンボの口)の下に来るようにして、指先に乗るようにする紙工作。神奈川理科サークルの八木一夫さんに20年近く前に教わったデザイン(設計)だという。1つ作るのに5分程度。ちょっとした工作教室などに最適だ。台紙(設計図)はYPCニュースに掲載予定。
 

等速円運動の簡単な実験 小沢さんの発表
 実際に授業で使っている等速円運動の簡単な実験2例の紹介があった。
 まず、円すい振り子。直径20cmの円を印刷した紙と、ナットに糸をつけたものを渡す。糸の長さを20cm(印刷された円の直径にあてて測る)として、ナットをこの円周に沿って回させる。メトロノームを持ち出し、モデラート(96回/分程度、周期0.63秒)に合わせて回せと指示するが、誰もできない。ではアンダンテ(72回/分程度、周期0.83秒)なら? これならば全員ができる。その理由を計算で確かめていくという授業展開。
 

 次に、透明半球内での等速円運動。透明半球の直径は20cm。これを直径10cmのコーヒー缶の上に載せて、缶の縁に沿って、ホワイトボード用のペンで円を描く。この円周に合わせてビー玉を等速円運動させ、ストップウォッチで周期を測る。そのあと、計算で求めた周期と比較する。実験条件はあらかじめ計算しやすい数値に設定してある。このような簡単な実験を通して、生徒はいつの間にか典型的な練習問題を解いたことになる。

益川さんの本 越さんの紹介
 「科学にときめく」 益川敏英著 かもがわ出版 1500円+税 ISBN978-4-7803-0280-6
「ノーベル賞受賞記念講演」、「科学的方法論」、「平和と科学者の責任」など、科学雑誌や新聞に掲載された文章やインタビューなどが収められている。氏の研究に対する考えや人となりを知る事ができる。


EX-FC100によるマルチストロボ写真 越さんの発表
 左の写真はカシオEX-FC100の「マルチモーション」機能により撮影した振り子。40コマ/秒で連写した映像のうち、5コマ分の写真を自動的に合成し、1枚の写真にしてくれる。 周りが明るい状態で、手軽にストロボ写真が撮れる。
 右の写真はマルチストロボスコープによる振り子のストロボ写真。発光間隔0.1s、シャッタースピードは1s程度で撮影。教科書に載っているストロボ写真の撮り方を知ってもらうため、授業中実際に撮影し、すぐにプロジェクターで投影して観察している。その他、人の動きなどを撮影すると面白い。
 

EX-FC100によるPETボトルロケットの発射 車田さんの発表
 宇宙少年団で実施したペットボトルロケットの発射(国立天文台内広場)をハイスピードムービーで撮影(420fps)したものの数コマ。まず、ほぼ真上に向かって打上げたシーン。ほんの1m余りで水柱が途切れ、霧状の噴煙に変わっている。ここでペットボトルの中の水が出きったのだ。意外と早い。
 

 発射の角度を浅くした場合のシーン。発射後すぐに軌道が下向きに折れ曲がっている。水の噴射が2段階に変化しているようだ。圧力をかけた空気が最後の水が出るときに霧状に噴射する模様が良く見える。最初の水柱の噴射で急加速し、あとはそのときの速さで慣性飛行をするように見える。

「飛び出せ!科学くん」の無重力実験 車田さんの紹介
 4月24日放送の無重力実験。ダイアモンドエアサービス社の実験機によるパラボリックフライト実験である。機内で宙返り、魔法のじゅうたん、カエルのジャンプ、雑巾しぼり、生卵割り・・・しょこたんと田中直樹が面白実験を紹介する。
 

 カエルは無重力状態になるとなぜか手足を広げてのけぞる。面白い反射だ。

 番組では、雑巾をしぼるとき雑巾に回転を加えるので加えた田中直樹の体が逆方向に回転したと間違った解説をしていた。科学考証のつたなさは民放といえども許されるものではない。反省してほしい。

「飛び出せ!科学くん」の真空砲実験 車田さんの紹介
 5月1日放送の真空砲の実験。YPCでは小河原さんが紹介されたピンポンキャノン(3m)を喜多さんが硬球キャノンに発展させたが、番組では4mで硬式テニスボールと軟式野球ボールで実験していた。製作は日本工業大学の学生。慶応日吉には取材がなかったらしい。
 

 下は硬式テニスボールをスイカに向けて射出したシーン。ボールはスイカを貫通し、スイカは一瞬にして粉々に砕け散る。

 軟式野球ボールをブロックに向けて射出。ボールはブロックに当たってはね返り、ブロックは真っ二つに割れる。

 クライマックスは、バッティングセンターに真空砲を持ち込み、居合い抜きの達人が真剣で対決。見事真っ二つとは行かなかったが写真の通り一部を切ることができた。番組ではスピードは時速約500kmと解説していた。達人の動体視力には感服!
 しかしながら、真空砲実験のエスカレートぶりには危険なものを感じる。十分に殺傷能力があるので面白半分に取り扱ってほしくない。大型化は極めて危険であると警鐘を鳴らしておく。
 

二次会 茗荷谷駅前「さくら水産」にて
 13人が参加してカンパーイ!。今回は例会がかなり早く終わったので、明るいうちからの二次会となった。会場を東京にするといつもと違う顔ぶれにも会え、久しぶりに旧交を温める。

野口さんが乗っているISSを見よう 
 本日は二次会を早々に済ませ、13人の二次会参加者一同で、駅前交番の向かい側でISS(国際宇宙ステーション)観望会を行った。ほぼ予報時刻通りに現れたISSは、前日朝打ち上げられたスペースシャトル「アトランティス」をすぐ後ろに伴いながらランデブー飛行し、池袋方面から本郷方面へと上空を横切り、地球の影に入って消えた。 「アトランティス」のおまけ付きに一同大感激。道行く人がいぶかり、道の向こうから三人の警察官が見守る中、歓声をあげて見送った。「アトランティス」は同夜11時27分に長期滞在中の野口宇宙飛行士らの誘導でISSへドッキングした。
 折しも西空には、金星に近づいた三日月があり(写真の左上隅)、ちょっとした天体ショーも楽しむことができた。
 「アトランティス」は今回のフライトを最後に退役する。最後の姿を見られてよい記念になった。なお、野口さんはこの二週間後の6月2日 12時25分、ソユーズ宇宙船(21S/TMA-17)で地球に無事帰還した。


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