例会速報 2011/06/19 関東学院中学校高等学校


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授業研究:電磁誘導の授業 益田さんの発表
 益田さんは例会直前に行った「電磁誘導」について、レンツの法則を扱った後の授業4時間分の報告をしてくれた。
 イージーセンスを使った誘導起電力の表示、コイルと磁石によるコイルの動き(写真左)など演示実験中心で授業を展開。誘導起電力、誘導電流を実感してもらうことから、コイルの自己誘導へと進む。自己誘導では、コイルの誘導起電力によってネオン管を光らせる実験(写真右)をグループで実験させた。

  左は相互誘導の実験。手に持っている方のコイルをMP3プレーヤーのイヤホン端子に、もう一つのコイルをラジカセのマイク端子につなぐと、磁場を介してラジカセから音楽が流れる。

 例会では参加者も実際に実験に加わりながら改良案を出し合った。磁場中を動く導体に発生する誘導起電力とローレンツ力の関係についても活発な議論がなされた。特殊相対論の領域に踏み込んでいて、どう教えたらよいか教科書執筆者も授業者も悩む単元だ。

 「生徒の理解に実験がどれだけ有効であったか、期末試験で確認できるところだと思っています。今回の報告で、磁場の中を金属棒を動かす際の誘導起電力の大きさの求め方について活発な議論が出来たことは自分にとって有意義な時間になりました。」とは発表者の益田さんの声。

ゼロバランス人形 海後さんの発表
 4月例会で紹介したデッサン人形の支点はボールペンの先だったが、海後さんはより重心の移動が少なく可動範囲が広くなるように、縫い針の穴が開いたほうを先にして挿してみた。針先を支点にしないのは、人形の150グラムの重さで針がたわんで重心がわずかにずれてしまうためだそうだ。
 

マクスウェルのコマ 海後さんの発表
 コマの軸の支点と重心を一致させると、歳差運動をすることなく斜めのまま回転するのがマクスウェルのコマだが、支点と重心が一致していれば上のゼロバランス人形と同様、コマを回転さなくても任意の角度で静止するはずだ。海後さんはそのことを確かめるためにフルーツゼリーのカップと爪楊枝で試作してみた。ちなみにCGCのゼリーが美味しくて、カップの中心には穴を開けるのに都合の良い目印があるのでお薦めだという。動画(15MB)はここ
 

バランストンボ 海後さんの紹介
 茨城県ひたちなか市で科学の祭典実行委員や少年少女発明クラブの指導員をされている四元弘志さんの考案されたバランストンボの型紙の紹介。デザインを優先したためクリップでバランスをとる必要がありますがトンボらしくて良い。折り方が少し難しいが、ハサミで切る方向を矢印で示しているのが親切。ちなみに海後さんは口の部分に針を付けて良く動くように工夫した。
 

クロマデプス3Dメガネ 海後さんの発表と即売会
 1月例会で発表した百均メガネを改造した街歩き用の3Dメガネ。朝日新聞が今春読者に配付したクロマデプス3Dメガネのレンズ部分をはずし、苦労してフレームにフィルムを貼ったもの。百均のメガネケースとセットにして希望者に販売した。これなら街中でも怪しまれずに3D物件を探せる。
 

ベンハムのコマ 海後さんの発表
 山口県の寺田さんがYPCのMLで話題にされたベンハムのコマの色の見え方について、例会の参加者にも検証してもらった。やはりカメラには写らない主観色であって、見え方にも個人差があることが確認できた。左の大王ゴマは3波長蛍光灯の光を当てると、色が見えてカメラにも写るということだが、例会会場の蛍光灯では色が見えず、検証できなかった。残念。
 

モアレ 海後さんの発表
 網目のカゴでは網パターンのモアレが(写真左)、丸穴のパンチング板では丸パターンのモアレが見える(写真右)。素材によっていろいろなパターンのモアレ模様が見えるのが興味深い。海後さんは、素材の穴の形がモアレの形に表れると考えた。ということは星形の穴が開いた板を重ねると星パターンのモアレが見えるのでは?と思って試作中だそうだ。期待しよう。
 

最密充填パズル 海後さんの発表
 数学パズルで、たとえばコインの大きさを1として、10×10の枠には最大何枚のコインを敷き詰められるか?という思考問題があるが、海後さんはそれを誰でも気軽に楽しめるように、9.5mmの鉄球を使ったコンパクトサイズの充填パズルとして試作したものを紹介してくれた。自作だがまるで既製品のようによくできている。
 格子状に詰めると当然100個詰めだが、一列ごとに10個、9個と互い違いに詰めていくと隙間が広がって11列入るので10個×6列、9個×5列で105個を詰めることができる。これが最密と思ってしまいがちだが、球はまだ一個残っている。
 

 実はあと1個入れて106個を詰めることができるのだ。種明かしは左の写真のとおり。上にわずかの隙間があったのがミソだ。なまじ最密充填などという知識があると逆に騙される、人を食ったパズルだ。

電子親和力 石井さんの発表
 石井さんは得意の「三段アンプ」を使ってイオン化列を検証した。10円玉(銅)と1円玉(アルミニウム)を指にはさんで持つだけで、指が電解質の役割をして起電力が発生する(写真左)。ボルタ電池と同じだ。一円玉とファックス原紙の裏紙(炭素)では原紙の方が正極の電池になる(写真右)。こうして二種の物質を並べて次々にチェックしていけばイオン化列が得られる。電子親和力が相対的に比較できるわけだ。
 

 墨汁(炭素)を塗った板とファックス原紙の裏紙では、炭素同士のはずなのに墨汁側が負極になる(写真左)。炭素電極2本に色々な液体をしみ込ませたティッシュを巻いてみる。オキシフルが+でエタノールが-など、興味深い結果が得られる(写真右)。石井さんは植物の葉を電極に巻いて光合成の影響が現れないかも調べている。 

 お次は光電池。LEDに光を当てると電圧が発生する。光電池として機能するのだ(写真左)。10円玉(表面は酸化銅)に縫針(鉄)を立てるとダイオードになるが、三段アンプでチェックすると縫針の方が正極になる(写真右)。化学電池にすると逆に10円玉が正極なので、この現象は光電池となっている可能性がある。 

斜面上の力のつり合い 水上さんの発表
 斜面上の物体に働く重力W=mgの斜面と平行な成分がWx=mgsinθ,垂直な成分がWy=mgcosθおよび斜面の垂直抗力がN=mgcosθであることを実感するための演示実験である。
 (左写真)黒板上にtanθ=0.75の傾きの斜面を作り,質量m=200g(手製)の台車を滑車を介してmsinθ=120gのおもりを吊して斜面と平行に引けば台車を支えることができる。なお110gでは台車が下がり,130gでは台車が上がってしまう。(右写真)実物の隣で書き込み式スクリーン上に映像を写す。生徒に質問しながら直接作図し,(同じ写真付きのプリントを配布)「右側のおもりの質量はmsinθ=120g」を導かせる。
 

 (左写真)斜面の垂直抗力N=mgcosθ=0.16gなので,Nの代わりに滑車を介して160gのおもりを吊して斜面と垂直に台車を引けば、斜面を取り去っても台車は姿勢を変えない(右写真)。

クネクネ・シカイダーマン 小林さんの紹介
 単眼錯視の原理については過去の例会でも紹介されているが、首振りドラゴンと違い、後ろに細長い台を付けたことにより、シカイダーマンの首が手のひらやバックスクリーンから浮き上がって見えるところが手品的で面白い。
情報ソース→http://shikaiderman.blogspot.com/2010/11/blog-post_15.html
使い方→http://www.youtube.com/watch?v=gkaCUbb9tGg
 フォトペーパー紙など堅い紙に印刷した方が折れ曲がらず扱いやすい。自分でパソコンで作ればいろいろなバージョンが作れそうだ。
 

凸レンズが作る実像 田代さんの発表
 虫眼鏡を持った腕をいっぱいに伸ばして遠くの景色を見ると倒立の実像が見える。実像は凸レンズより手前(左写真の左手付近)になるはずだが、レンズの縁で切り取られて見えるので、レンズに貼り付いているように思ってしまう。そこでトイレットペーパーの筒を実像ができる位置に置いてそれを通して覗くと(右写真)、レンズの縁に惑わされず筒の位置に実像が見える。
 

放射線測定器GAMoV 成見さんの紹介
 株式会社K&F Computing Research社製「スマートフォン向け放射線カウンター GAMoV」の紹介。大きさ 65mm x 45 mm x 25 mm, 約 50gと超小型の携帯式放射線カウンター。検出した放射線情報は、オーディオケーブルによってスマートフォンへ音声信号として送り、データ処理はスマートフォン側で行う仕組み。ソフトはフリーで供給される。フォトダイオードをセンサに使ってコストを下げているので、やや感度は低いものの安価(現在8400円)。製造が追いつかないほど売れていて、今現在、注文から納品まで約1ヶ月とのこと。現在はiPhoneのみ対応だが、他社スマートフォンやWindowsPC用も開発中。
 

 左はiPhoneに接続したところ。右は専用ソフトの表示画面。μSv単位に換算し時間変化をグラフ化して示してくれる。最初の計測には約10分かかる。価格の安さと手軽さが大変魅力的だ。WindowsPC用の発売も待たれる。

歩行の物理 小河原さんの発表
 昨年度末、小河原さんが着任して初めて、慶應義塾高校物理科全教員が物理Ⅰ、物理Ⅱで同じ授業アンケートを実施した。個人的には、教育実習から欠かさずアンケートをとっていたが、他教員と同じ形式や数字回答を実施するのは初めてで、かなり参考になったということである。その結果を踏まえ、物理Ⅱにおける実験項目を増やすという目標を掲げて導入した実験を紹介してくれた。ヒントにしたのは医系の物理第1巻力学(上)p.122、吉岡書店。

 まず、数名の生徒の歩行について、右足着地から右足着地までの時間を測定する。平均を取るため、3歩分から5歩分ほど測定すると良い。次に、股下の長さを測定し、足の付け根から重心までの距離を類推する。足先に比べ、太ももは重いので、股下の半分よりは上に足の重心が位置すると考えられる。これを単純な振り子とみなすと、足の付け根から重心までの長さから、単振り子の周期を求めることができる。1歩の時間と比較すると、歩行のリズムが適切かどうかの目安になるということである。
 物理Ⅱのクラスでは、身長の高い生徒、低い生徒で測定したそうだが、例会では小学生や犬猫などとの比較が面白いのではという意見が出た。また、剛体振り子とも比較したいところである。実施してみた方々からの追試報告を期待するとのこと。みなさん、チャレンジして報告を。
 

頭部CT画像 三宅さんの発表
 三宅さんは先日、自宅の階段を踏み外し、後頭部を強く打った。念のため脳神経外科にてCTスキャンをしてきた。幸いにも大事には至らず、鞭打ちで済んだ。医者からUSBメモリを持っていたら差し上げると言われ、丁度持参していたため、「撮りたての頭部CT画像」が手に入ったので、例会で発表した。左は本人と自分の頭蓋骨のツーショット。
 

  画像にはcm単位でのスケールが入っており、後頭部の骨は厚さが2cmもあるのが分かる。医者の話しはハンマーで思いっきり叩かない限り普通は割れないそうだ。また、内出血している場合白く映るそうだが、今回の事故では内出血していないことが分かる。縦横のスライス画像も見ることができる。X線の教材として有効に活用できないものだろうか。生物や保健の教材にもなりそうだ。 

「余剰次元」と逆二乗法則の破れ 山本の紹介
  立教大学准教授、村田次郎氏の新刊。「余剰次元」と逆二乗法則の破れ(講談社ブルーバックス)900円(税別)。
 マイクロメートル以下の距離での万有引力の測定により、逆二乗法則の破れが見つかる可能性がある。電磁気力、強い力、弱い力は大統一理論によってひとつの力にまとめられるが、重力だけが桁外れに弱いのはなぜか。それはこの世界が実は3次元ではなく「余剰次元」があるからで、近距離重力実験によりその存在を確認すれば四つの力を統一する突破口が開く可能性があるというのだ。
 この意欲的な実験に取り組み、着々と成果をあげつつある著者が、難解な最先端物理の世界を実にわかりやすく整理して語ってくれる。目からウロコの必読書だ。
 ちなみに村田氏は山本の教え子で、本文中2箇所に授業のエピソードが登場する。教師冥利に尽きる。

113 山本の紹介
  2004年7月、理化学研究所中央研究所の森田浩介専任研究員のグループが世界に先駆けて「113番元素」の合成実験に成功した。この新元素には「ジャポニウム」の命名が期待されている。その感動のドラマを綴った千田灰司の作画による漫画「113 新元素発見に至る20年の戦い」を理化学研究所が発行した。非売品だが、6月に各高等学校に一冊ずつ送付されているはずなので、見つけ出して、図書館に置くか理科室の蔵書にして生徒に読ませよう。

フラフープ 高橋さんの紹介
 スポーツ用小型カメラGoProをフラフープに取り付け、内側の回している人間を撮影した映像。人間の方がフラフープに沿って回るように見えて面白い。運動の相対性を説明する教材になる。
動画のURL→http://www.youtube.com/watch?v=3GVrO1VYAOI
 

待機電力3 伊藤さんの発表
 

授業で使える映像「力のつり合い」編 水上さんの発表
 ばねの伸びが次の3つとも同じであることを示している映像である。(上左)両側からおもりで引く、(上右)片側だけをおもりで引く、(下)他のばねと直列にして片側だけをおもりで引く。ばねにはたらく力はどれも同じであり、したがってのびも同じになる。
 

  よくある問題であり、実物を見せるのが一番だが、こうして動画にしておくと、授業中にすぐに検索して復習できるので便利だ。

 下はNarikaの「水圧測定実験器」の実験動画である。授業では板が落ちる瞬間で映像を静止させて重力mgと水圧による力F=ρhgSを直接書き込み、これらが等しいことを説明している。スクリーンへの書き込みを使うと実物よりも理解しやすいようだ。

 上皿はかりに載せた水(容器との合計300g)に,単一電池(体積48cm3、質量110g)を浸すと上皿はかりが348gwを示し,電池を吊したばねばかりは約60gを示す。授業では電池が完全に水に浸った状態で映像を静止させ(写真)、これに重力、浮力、その反作用などを直接スクリーンに書き込みながら状況を説明している。

二次会 黄金町駅前「わたみん家」にて
 10人が参加してカンパーイ!一足早く暑気払い。授業の問題点や職場の悩みも、酒の席なら気軽に話し合える。夏休みの活動計画も話題に上り始めた。


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