例会速報 2011/09/23 湘南高校


前の月の例会例会アルバム目次次の月の例会


YPCホームページ(本館)へすたのページ(別館)へ天神のページ(別館)へ他のサークル・団体等へのリンク次回例会のご案内


MOBILE SEM 新日本電工さんの新製品デモ
 大阪の新日本電工株式会社が開発した超小型走査型電子顕微鏡MOBOLE SEM(MSK2000-A)が、この日の例会で東日本で初めて公開された。真空ポンプ部と本体、電源・コントローラー部を全部合わせても14kg未満という軽さで、両手で持ち上げて簡単に移動できる。円筒形の部分が鏡筒、赤いキャップ内にフィラメント部がありプラグインで簡単に交換できる。真空ポンプは粗引き用ダイヤフラムポンプ(赤い大きな箱の部分)とターボ分子ポンプ(鏡筒の後ろの銀色の角柱部分)の二段構成。
 

 制御および資料画像の観察は普通のPCで行う。Windows用ソフト(XP以上対応)が登録ユーザーには無償提供される。鏡筒内の真空度や加速電圧がビジュアルに表示されわかりやすい。右は試料ステージを取り出したところ。およそ10mm四方のステージに載るものなら複数個同時セットできる。

 ステージはつまみでXYZ方向に微動でき、チルトも可能。試料には帯電防止のため「イオン液体」をスプレーする。前処理はこれだけ。10分ほどで観察に取りかかることができる。

 プラグインのフィラメント部。ワンタッチで交換可能。右は本機で観察した資料写真。普通のPC用プリンターでプリントアウトできる。
詳しいお問い合わせは、同社生産事業部へ。

授業研究:考える物理Ⅰ 右近さんの発表
 本日の会場校、湘南高校の右近さんの久々の発表である。以下、右近さんのコメントで解説する。
 今回新たに物理Iの授業にクリッカーを用いたピアインストラクション(PI)を導入したので報告する。PIはハーバード大学のマズールによって15年ほど前に開発された授業法である。その授業の流れは以下の通りである。
(1)選択肢を示して問題の提示 (2)1回目の投票 (3)集計結果の表示 (4)生徒同士による話し合い(教員は干渉せずに巡回するだけ) (5)2回目の投票 (6)集計結果の表示 (7)解説,必要に応じて演示実験
 紹介したものは力学のはじめの運動学に関する部分である。問題提示はパワーポイントを使用した。生徒はすでに運動学の経験を積んでいるとはいえ,1回目の投票で全員が正答にたどり着けることはない。どの問題も1回目の正答率は4割~6割程度で推移していく。しかし2回目の反応では確実に9割以上が正答にたどり着ける。
 

 左がスクリーンに提示される問題の例。右は使用したクリッカー、Response Card。生徒が回答ボタンをクリックするとパソコンのUSB端子に接続した受信機と集計ソフトにより、直ちに回答数が画面表示される。

 生徒がPI以前に学習してきた運動学は距離センサーを用いた双方向型演示授業(ILD)を中心に展開されているが,おそらく伝統的な授業であっても,PIを実施すれば,こうしたよい収束性が期待できるだろう。それは,各グループに確実に何人かは存在している「わかっている」生徒の活躍が期待できるからである。運動学に限って言えば,力や運動方程式のときに教師が遭遇するような多くの困難と比較して,その困難さの度合いが比較的少ないのではないか。しかしそれでもILDの有効性は疑えない。やはり伝統的な授業だけでは,通常の生徒はv-tグラフの理解に多くの困難を感じていることが,物理教育研究(PER)によって明らかとなっているからである。

 しかし作用反作用の法則に関しては,PIはそれほど有効ではなさそうである。写真左は作用反作用の問題の例。回答はクラス毎にばらつき、正答(5番)の正反対の誤答が最も多いクラスも。ILDによってかなりきめ細かい授業を展開していたにもかかわらず,PIの収束性は悪い。

 また,定期試験に作用反作用の法則に関する類題を出したが,1クラスあたり2~3名が正解,という惨憺たる結果に終わっている。写真左は試験問題の一部。
 写真右は台車を二段重ねにした慣性の演示例。動画(3.2MB)はここ

注射器とトランプ 市原さんの発表
 市原さんは夏休みにお茶の水大学主催のサイエンスリーダーズキャンプに参加した。そこで教えてもらった実験ネタの紹介。
 下の2枚の写真は、静岡城北高校の原田先生の教材で、注射器にストッパーをつけ、軸の切り込みを引っかけて圧縮したり膨張させたりした状態を維持できるようにしてある。これを電子天秤で量ることで、空気による浮力を導き、空気の分子量を求めることができる。
 

 トランプは、江東区立第三亀戸中学校の馬場先生の教材で、トランプに取っ手をつけたら取りやすくなるか、というもの。実際にはかえって持ち上げにくくなる。身近な素材で大気圧を体感することができる。

逆浮沈子 車田さんの発表
 ペットボトルと醤油さしを利用した浮沈子はよく見かけるが、普通はボトルを強く押すと浮沈子が沈むが、これは押すと浮き上がる浮沈子である。平たいスリムなペットボトルを利用する。(実はこれが最近なかなか手に入らない。)

 ぎりぎり沈む浮沈子を用意して水を満たしたペットボトルの中に沈ませておく。ボトルの断面は長方形だが、対角に力を加えて、断面を円に近づけるようにペットボトルを押す。するとボトルの容積が増え、中の圧力が下がり、浮沈子内の空気が膨張して浮力が増すため浮沈子がゆっくりと浮き上がってくる。

ウィスキービン楽器 車田さんの発表
 ブラックニッカ ・クリアブレンド 180ml 37度 コンビにで300円くらいで売っているウイスキーのビン。これに水を適量入れ棒で叩く。ビンの傾け方で音程が変わる。
 車田さんはまず、音楽の先生に「ド」の音を決めてもらい、ビンを側面(面積の小さい細長い面)を上に傾けて、「レ」「ミ」「ファ」「ソ」の音の水面をマジックで引いた。「ラ」「シ」「ド」は側面(面積の大きい方)を傾け印をつけました。これで1オクターブの音階が作れ、練習すれば「ドレミの歌」を演奏できる。忘年会ネタにいかが?音と動画(28.7MB)はここ

文化祭「3D」 水野さんの発表
 水野さんが勤務する神奈川学園では、9月18日、19日に文化祭が実施された。理化部は「3D」をテーマに研究発表した。「人間がものを見るのは目を通して見ているが、目で見ているのではない。脳で見ている」。だから平面の絵や写真を立体と錯覚してしまう。その意味で「3D」は「錯視」に通じる。「3D」で欠かせないのが「両眼視差」である。これを利用した立体視に「アナグリフ」「ランダムドットステレオグラム」「パララックスバリア」「レンチキュラーレンズ」などがある。また少し変わった立体視に「クロマデプス」、「プルフリッヒ効果」などがある。これらの3Dを実物で展示した。理化部は、この研究発表で特別賞に輝いた。
 なお、ランダムドットステレオグラムの作成ソフトは右のサイトのものを利用した。http://www.vector.co.jp/soft/win31/art/se012191.html
 

 「パララックスバリア」の作成と「レンチキュラーレンズ」の作成実習は東京都市大学の包教授とそのゼミに参加している学生・院生にお願いした。レンチキュラーレンズを使った作品は、「ステレオフォトメーカー」というソフトを使っている。レンチキュラーレンズはオーテックという販売会社から購入した。

 左はレンチキュラーレンズ方式のパズル。右は3D映像で動画・静止画の撮影・再生が可能なKenkoのビデオカメラVS70-3D。液晶画面がレンチキュラーレンズになっている。

 左はYPCではおなじみ、朝日新聞の付録にも付いてきた「クロマデプス3D」のメガネ。右も有名な「片眼立体視」の型紙。これらも展示して実際に体験してもらった。

 最近のテレビには3D技術を使ったものがあるが、大別すると眼鏡ありと眼鏡なしに分類できる。眼鏡ありにはアクティブシャッター眼鏡方式とパッシブ方式があり、眼鏡なしにはレンチキュラーレンズを使ったインテグラルイメージング方式がある。東芝のレグザには眼鏡なし3Dテレビがあり、12インチのものを東芝科学館からお借りして展示した。3D映画には、おおよそ5種類の方式があるが、今の主流は円偏光眼鏡を使用する「RealD方式」だ。3D映画の問題点も展示した。
 最後に3D技術の未来の利用例として、岐阜大川崎教授の高臨場感3Dハプティックディスプレイシステム(写真左)と、岐阜県情報技術研究所が所持する「COSMOS」(写真右)を紹介した。前者は将来乳がんの触診や、テレビショッピングで商品に触ったような感覚に応用できる。後者は車や建物等の設計に利用できる。自動車会社では一部実際に使われているそうだ。

PENTAX Optio WG-1 GPS 佐々木さんの製品紹介
 PENTAXから、理科分野で“使える”デジカメが発売されている。防水・防塵、耐寒、耐衝撃・耐荷重で野外での使用に強く、インターバル撮影で定点観測ができ、GPS搭載モデルであれば位置情報つきの観測などもできる。そして、別売のワイヤレスリモコンも防水と気が利いている。これだけでもかなりモノだが、さらに、1cmマクロとズームを利用した、デジタル顕微鏡モードが良くできている。レンズ周りのLEDライト5灯と、レンズフード状のマクロスタンドにより、簡単に顕微鏡撮影ができる。
 

 試しに、PC画面上にカラーバーを表示させ、色の境界部分を撮影したところ、3色の液晶の点灯パターンの違いが良くわかった。CASIOのハイスピードカメラとこのカメラの2台があれば、かなり多くの理科ニーズ対応できそう。

青少年のための科学の祭典・東京大会 佐々木さんの報告
 9月11日(日)東京学芸大学小金井キャンパスで青少年のための科学の祭典東京大会が行われた。来場者数は、昨年の8000人には及ばなかったようだが、YPCをはじめ、交流のある理科サークルのメンバーが出展したブースはどこも盛況だった。左は車田さんのブース「数学アラカルト・立体紙パズル」、右は古田さんのブース「手作りエネルギーの旅を作ろう」」。
 

 下の写真は世界最大の万華鏡。頭がすっぽり入る大きさだ。右のような世界が展開する。
 

 他にも、学芸大の地震研による津波モデルの実演(写真左)など、興味深いものが多数あった。

ドアスコープ魚眼レンズ 佐々木さんの製品紹介
 8月例会での海後さんの発表の関連情報。主に、昆虫のアップを撮影したり、昆虫目線での撮影をするための魚眼レンズが、「虫の目レンズ」という名称で知られている。昆虫写真家が使う、鏡筒部分が数十cmある本格的なものもあるが、かなり高価なため、簡易版としてドアスコープを応用した自作例が登場したようだ。
 そして、ドアスコープサイズのものも実際に市販されている。今回佐々木さんが持ってきたのは、レンズ会社が制作した「魚露目8号」というもの。一眼レフのレンズ径に合わせたリングアダプター(写真左)や、コンパクトデジカメ用の汎用アダプター(写真下)もある。CASIO EX-F1が苦手とするマクロ撮影や、昆虫のハイスピード撮影などにも利用できそう。

 

中学理科の履修漏れ 車田さんの発表
 越さんが主宰するCPCリカックマクマクラブの9月例会で、千葉科教協の菅原さんから紹介のあった記事である。内容は下記URLを参照されたい。
http://kakyoukyoutiba.blog85.fc2.com/blog-entry-444.html

二次会 藤沢駅前「北海道」にて
 18人が参加してカンパーイ!本日は初めての会場だったので新鮮だった。初参加の人たちも加わって楽しい交流会。食欲の秋。鋭気を養おう!


前の月の例会例会アルバム目次次の月の例会


YPCホームページ(本館)へすたのページ(別館)へ天神のページ(別館)へ他のサークル・団体等へのリンク次回例会のご案内