例会速報 2011/10/23 慶應義塾高校


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授業研究:運動のコマ送り分析から公式を導く 水上さんの発表
 カシオのカメラは映像をQuicktime形式で記録する。この映像はコマ送り(「→」キーを1回押すごとに1コマ(1/30秒)進む)ができるので,物差しと一緒に映せば時刻と位置の情報が得られる。水上さんはこれを利用して運動の分析をし、公式を導く授業を紹介した。なお,「物差し」は手製であり,1㎝の最小目盛りが映像にはっきり映るように工夫した。授業の流れは以下のとおりである。詳細は今月のYPCニュースに掲載されている。
1.動摩擦力
①机上をすべる木片の映像の3コマ(0.1秒)ごとの位置を読み取ってυ―t図を描かせる。→直線になる。→すべっている間,加速度aが一定なので速さυが減少しても動摩擦力F´=maは一定である。
 

②同じ木片を2個重ね,質量mを2倍にして机上をすべらせる映像のυ―t図を描かせる。→傾きが①と等しい直線になる。→ 動摩擦力はF´=2m×aと2倍になる → 動摩擦力F´は垂直抗力Nと比例する。(F´=μ´N)

2.終端速度
薄紙(弁当のおかず用アルミカップの仕切り紙)1枚及び2枚重ねが落下する映像の6コマ(0.2秒)ごとの位置を読み取ってυ―t図を描かせる。→1枚は0.6秒後に,2枚重ねは1秒後以後は等速運動するようになる。→「終端速度」を確認する→終端速度のときには(空気の抵抗力f)=(重力mg)→なぜ2枚の方が終端速度が大きいか考えさせる。

3.摩擦角の公式μ=tanθ0
板の傾きθを増していくと上に載せた物体が滑り出す映像→滑り出すときの傾斜角θ0を摩擦角と言う(コマ送り再生すると滑り出す瞬間が分かる)→最大摩擦力F0=mgsinθ0,垂直抗力N=mgcosθ0 →公式F0=μNに代入して整理するとμ=tanθ0となる。→「mとgが消去されたことから,mにかかわりなく摩擦角は一定になるはず」→映像で確認

4.エアートラックの斜面上をライダーが往復(2回跳ね返る)する映像の3コマ(0.1秒)ごとの位置を読み取ってυ-t図を描くとほぼ1直線状になる。→2回衝突する間の運動に注目すると,「上り→下り」の間の加速度は同じ値である。つまり,上りと下りは別々の運動でなく速度をυ=υ0+atの式で表せる一つの運動である。

ポップアップヘキサゴン(科学の祭典より) 車田さんの紹介
 科学の祭典全国大会にて、カライドサイクルの工作出店をしていた佐賀県北茂安中学の渡部泰道先生に頂いた3軸直交・4軸交差パズル。組み込んだのち、パッと開いたり、閉じたりがスムースになる様に紙をラミネート加工している。一般には名刺を3枚直交にするパズルが有名だが、これらは正五角形、正六角形、円と多彩でカラフルなところがオシャレ。
 渡辺さんによると、六角形のものはポップアップヘキサゴンと命名されたとのことで、同様に形に合わせてポップアップスター、ポップアップサークル、ポップアップトライアングルと呼ぶ。http://www.geocities.jp/edq56789/rika/rikaにいくつか例が載っている。

ネコバスとハム太郎(科学の祭典より) 車田さんの紹介
 これも渡部さんのネタ。市販されているカミカラという工作を改良したものだそうだ。カミカラは全部紙で作るため、フックの部分がすぐ壊れた。このフックの部分をストローにして改良した点がアイデアだ。工作も紙のフックよりも手軽だ。

真夏の方程式より 車田さんの発表
 「真夏の方程式」(東野圭吾)のガリレオシリーズ最新作の冒頭で、湯川博士と電車に乗りあわせた少年がキッズ携帯をめぐってやり取りをする。少年が食べたおにぎりのアルミ箔を博士が取って携帯を包み「これで電源を切っていることと同じ」というくだりがある。電波が金属で遮蔽されるので着信しなくなると言うのである。
 車田さんはちょうど1学期の授業で電気分野を教えていたので、授業でやってみたが、ポテトチップの袋に入れて密封しても携帯はつながってしまった(ドコモ、AU,ソフトバンクの三社ともつながった)。例会ではアルミ箔で包んだら遮蔽できた。箔の厚さの問題か、電波強度が違うのか、原因はまだ定かでない。
 

蛍光印刷(韓国科学の祭典より) 車田さんの紹介
 韓国の科学の祭典で、檀上さん(四天王寺高校)の実験ショーでいただいたというネタの紹介。一見真っ白で、何も描かれていないような紙(写真左)にブラックライトの紫外線を当てると、右のような鮮やかなカラー写真が浮かび上がる。トリックポスターとういブラックライトで光るインク専用サイト(http://trick-poster.com/)が出典で、プリンターに蛍光インクを装填するノウハウが詳しく載っている。画像を蛍光インク用に色変換するソフトもダウンロードできる。ほかにも色々楽しめそうなサイトだ。
 

飛行球体 水野さんの紹介
 日本科学未来館で10月に行われた「デジタルコンテンツEXPO2011」で発表された「近未来飛行球体」。開発したのは防衛省技術研究本部の佐藤文幸技官。飛行体は直径42cm、重さ350gで、プロペラを内蔵し、コントローラーで操作する。上下左右に自在に飛行でき、地上は転がって移動する。室内など狭く障害物がある空間も飛行できる。将来的には災害現場での情報収集にも応用が可能となりそう。使い方によっては軍事目的の情報収集も可能ということでもある。製作費用は11万円とのこと。費用を抑えるためにプロペラのカバー部分はペットボトルを使うなどしているそうだ。
 

折紙の球体 竹内さんの紹介
 筑波大学情報工学研究科准教授の三谷純さんはコンピュータを活用した立体折り紙設計の研究をしている。三谷さんのホームページには多数の作品の写真と共に、展開図エディタや立体折り紙設計ソフト、曲線折り紙設計ソフトなどが公開されている。写真は竹内さんが入手した作品の一例。いずれの作品も一枚の紙から立体を折りあげる。HPのURLは http://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/pukiwiki/
 

3D写真 竹内さんの発表
 中国で入手したというトラの立体写真。シリンドリカルレンズが縦に並んだレンチキュラー方式だが、角度を変えて撮影した5~6枚の像がなめらかに切り替わるため、自然な奥行きと立体感が得られる。

睡眠時無呼吸症候群 竹内さんの発表
 いびきで悩んでいた竹内さんは専門医の診断を受けたところ「睡眠時無呼吸症候群」と診断された。睡眠時に計測したところ呼吸が30秒以上にわたってくり返し停止していた。竹内さんが指さしている青色の部分がそれを示している。呼吸が止まると当然ながら血中酸素濃度が下がり、苦しくなって大きく息をするため大いびきとなる。

 治療法はある。竹内さんが医者に処方されたのは下の写真のような装置。レスメドという医療機器メーカーのCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)、商品名「スリープメイト」である。下右の写真のような鼻マスクと接続して、人工呼吸器のように鼻から強制的に空気を送りこむ。竹内さんはこの装置のおかげでいびきがなくなり、安眠できるようになったという。

 

ファイバースコープ 小河原さんの発表
 小河原さんが昨年購入し、授業で使っているという光ファイバースコープを紹介してくれた。イヤースコープGⅢという商品名の、見ながら耳そうじできる耳かきなのだが、理科教材会社の製品に比べて数分の1程度の価格で購入できたとのこと。9,450円と少々高かったが、耳かき部分を外して細い管の中や物体の細部なども観察できる。
 

 調べてみると、今はネット通販で同じものが送料込8,800円で販売されている。面白い使い方があったら、ぜひ小河原さんに提案してあげよう。

光の三原色 小河原さんの発表
 小河原さんが最近授業で行っている、光の3原色を生徒に体験させる実験を披露してくれた。方法は簡単で、生徒各自の携帯画面を100倍の簡易顕微鏡(写真はNaRiKa製)で観察させるだけである。携帯の機種が違えば、RGBの並びや光源1つの大きさも異なるので、比較観察しても面白い。例会の場では、iPhone3と比べてiPhone4の光源が小さく、画面の解像度が上がっていることが確認できた。
 三原色を観察するだけなら、30倍の簡易顕微鏡でも可能である。こちらの製品は、ケニスから1,029円で販売されている。

しかけポストカード 加藤俊さんの発表
 加藤さんはオランダのパズル仲間からいただいたという3種の仕掛けポストカードを紹介してくれた。仕込まれた厚紙の取っ手を下に引くと女性の服装が変化するもの。その変化する境のバーは手を引くスピードの半分の速さで下にも上にも移動できる。どのような機構が仕組まれているかを考えてみてほしい。
 

 下は一見カクテルの宣伝のようで、裏側にも特に絵はないが、明るいライトにかざすとカードの内側に隠された隠し絵のシルエットがあらわれる。二枚の紙が貼り合わせてあるようだ。

 左はロバのしっぽで天気がわかるというポストカード。といってもただの毛糸が貼り付けてあるだけだ。曰く、しっぽが乾いていれば晴れ、湿っていれば雨、動いていれば風、見えなければ霧、凍っていれば寒波、といった具合でただのジョーク。ちなみにしっぽが落ちるときは・・・

砂鉄表示ポイントカード 伊藤さんの発表
 以前、生協のポイントカードに使われていた砂鉄表示。磁化された部分に砂鉄が残り、数字が見えるようになる。消磁すれ文字が消え、書きかえることも自由だ。なお、ビジュアルシートで観察すると、カードの裏側にはテレホンカードやかつてのオレンジカードのように磁気のバーコードが記録されていて、こちらが処理に使われているようだ。表の砂鉄表示はあくまでも人間が視覚的に認識できるようにするためのサービスというわけだ。
 

西湘高校のH24年度教育課程表 山本の発表
 以前の例会で、各高校のH24年度教育課程表を持ち寄って、理数科目の先行実施への対応を比較し合おうという提案があり、例として西湘高校の新カリを紹介した。西湘高校では理数コース(普通科専門コース)では1年で生物基礎、化学基礎を、2年で物理基礎、地学基礎と化学をそれぞれ必履修としている。一般コースでは2年で物理基礎か地学基礎の選択となるほか、進路に応じた選択が行われる。
 左の図をクリックするとPDFイメージが表示される。

 次回以降、他校の情報も交換されることを期待している。

ISSを表示するAndroidアプリ 高杉さんの紹介
 ISSを見るのに便利なスマートフォン用アプリケーション。Androidマーケットで350円。
以下、アプリケーションの「解説」からの引用。

ToriSat AR-国際宇宙ステーションを見よう
 TorisatはAR(拡張現実)技術を用いた、直感的に操作できる人工衛星観測支援アプリケーションです。風景にかざすと、ISSやスペースシャトル、ハッブル宇宙望遠鏡などがどのように空を通過していくのかを、現実の映像に重ねてシミュレーションします。
 人工衛星だけでなく、恒星、銀河、ブラックホール、惑星探査衛星(ボイジャー、IKAROS等)、地球の向こう側の都市などもあわせて表示されます。(以下略)

 詳しくは http://andronavi.com/2010/12/66278 へ。

コカ・コーラ・ゼロCM『Zero Gravity』篇 車田さんの紹介
 中田英寿出演のコカ・コーラ・ゼロCM『Zero Gravity』。授業で使える無重量の映像だ。メイキングビデオでは、ダイヤモンドエアサービスのパイロットが無重量の作り方としてパラボリックフライトについて解説している。角度マイナス10度くらいで機首を下げ、最大速度が出るまで降下し、最大速度が得られたら、今度は上向きに機首を引き上げ45度の上昇姿勢をとる。この姿勢から放物線を描くように飛行して機首が35度下向きになるまでの間の20~25秒が機内無重量になるそうだ。
 

コカ・コーラ・ゼロCM『Zero Gravity』 http://www.youtube.com/watch?v=c44gsV0on0U
中田英寿 「コカ・コーラ ゼロ」『Zero Gravity』篇 メイキングムービーは http://www.youtube.com/watch?v=NRTYOcQYtt4
オフィシャルページ http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20100128_01.html 

バラの折紙 高杉さんの発表
 高杉さんのこどもが友達のお母さんからもらってきたという折り紙。かなりリアルにできているが、拡げると普通の正方形の一枚の折り紙。ついていた折目から再現し、何とかコピーを作れるようにはなったが、本当の折り方の手順や原典はまだよくわからない。折り紙博士として有名な川崎敏和氏考案の「川崎ローズ」が原型のようだが、真相をご存知の方は教えていただきたい。
 参考になるサイトをあげておく。
折りバラふくやま:http://www.fukuyama-th.hiroshima-c.ed.jp/link/oribara/index.html
Setareのおりがみのぺーじ:http://cgi.hustle.ne.jp/anet/origami/
 

二次会 日吉駅前「かまどか」にて
 18人が参加してカンパーイ!YPCの二次会はいつも人数が読めなくて幹事が大いに気をもむ。今回も急に人数が増えて幹事の喜多さんはうれしい悲鳴。お隣の席の人に移動していただいて座席を確保する騒ぎに。お隣さん、店員さん、わがまま言ってごめんなさい!m(__)m 事ほどさように、初めての方でもお気軽に参加できるフランクな会だということだ。


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