例会速報 2011/11/23 三浦学苑高校


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三浦学苑高校の工業科紹介 車田さん・清水さんによる校内紹介ツアー
 例会に先立って、会場校の三浦学苑の工業科を見学した。神奈川県では、工業課程がある私立高校は三浦学苑だけだ。機械・電気・情報の3つの技術コースが併設されている。以下、工業課程の生徒の課題研究の一部を紹介する。
【マイコンカーラリー】光センサーのノーズでラインを探りながら疾走する。ノーズの制御はサーボモーター、本体のモーターはマブチモーターだ。写真は「ベーシッククラス」でキットを利用している。「アドバンスクラス」はモーターの数は4個という規制の中でオリジナリティーでスピードを競う。プログラムはC言語で組む。三浦学苑は「ジャパンマイコンカーラリー」に出場した。動画(15.9MB)はここ
 

【ETロボコン】(写真左)レゴマインドストームNXTによるライントレーサー。2輪のみの倒立型のライントレーサーで、セグウェイのように前後のバランスもとりながら黒線をたどって走る。動画(9.9MB)はここ
【ジャイロカー】(写真右)ジャイロ効果により倒れずにレールの上を走る、綱渡りカー。内部のジャイロが回転している様子が見られる。

【ホバークラフト】生徒の課題研究作品。掃除機のモーターを利用し、空気を船底に三箇所に分けて噴出して浮上、座席後方の大型扇風機(清掃業務用)を利用して推進する。

【スターリングエンジン】すべて生徒の課題研究の作品。金属部分の部品は全て工場での自作だそうだ。工作の完成度はさすがである。

 

【スチール缶潰し】機械科の「引っ張り試験機」を逆に稼働し「圧縮試験機」として、スチール缶を潰す。ゆっくり潰していくと底面から潰れていく。タルク缶は、ほとんど底面が正六角形に潰れて、側面は「氷結」のダイヤモンドカットの折り目のようになる。底面がフタのものはなぜか正五角形に潰れる。潰すスピードにより上部から潰れる場合もある。この「圧縮試験機」は加圧する速度と荷重(ニュートン)が測れるので、今後生徒の課題研究になるかもしれない。

授業研究:中学3年の運動学 益田さんの発表
 益田さんは距離センサーを運動の導入に用い、v-tグラフから加速度の理解につなげようと考え、記録タイマーとの併用で授業を行った。例会では「運動学を記録の解析からじっくり扱うために打点式タイマーも大事」といった意見、「生徒に直感的に伝えるためにセンサーでもよいのでは」といった意見もあった。また、「仕事」に関して、中学校と高校での扱い方に微妙なズレがあることも例会会場での討議の中から分かり、益田さんは中高一貫校に勤務する身として今後もいろいろ試しながら研究したいと意気込む。
 

パラメトリックスピーカー 越さんの発表
 科学館や美術館などで、展示物の前に立つと解説が聞こえてくる所で使用されている超指向性スピーカーで、40000Hzの超音波にAM変調により音声信号を載せている。つまり、超音波の振幅を音声信号に合わせ変化させるとその包絡線を可聴域の音として聞き取る。詳しくはここ
 性質としては直進性の強い超音波だが、可聴域の音として聞こえるので、音の反射の実験に使える。例えばこのスピーカーを鏡に向け鏡の角度を変えると、鏡にスピーカーが見えた観測者には、大きな音が聞こえる。音も光と同様に、反射の法則が成り立つ事を示す事ができる。
 秋月電子でキット11800円と少々高い。細かいハンダ付けがあるが、工作時間2~3時間程度。ACアダプターがあった方がよい。
 

超音波距離計 越さんの発表
 0.5~15mの距離を1cmの精度で測定できる。主に部屋の広さなどを測定するために用いられる。越さんは授業で、「パスポート」の距離センサーを使用する実験の時、超音波で距離を測れる事を生徒に知ってもらうために、まずこの距離計を見せている。千石電商で1750円(+税)とお買い得。


簡易ガラス管切り 車田さんの発表
 車田さんは桐山製作所の見学で教わったガラス管の切り方を披露してくれた。デモに使用したのは欠けたメスシリンダー。ガラス切りで切りたいところに傷をつけ、電熱器のニクロム線を引き出してひっかける。ニクロム線に電流を流してメスシリンダーを回転させると切りたいラインが加熱される。最後に濡らしたティッシュで加熱部分になぞればきれいに切断できる。
 

 例会の時は、濡れティッシュで冷やす前に自然に切断できた。温度が高かったようだ。試験管もこの方法で簡単にきれいに切れる。桐山製作所での実習では、ニクロム線で加熱後に濡らしたティッシュの上で試験管を回転させると加熱した部分が白い線になり、きれいに切断されたそうだ。

ムーアモーター 石井さんの発表
 静電気で導体球を正負交互に帯電させながら転がすムーアのモーター。これまで電極にはアルミテープを用いることが多かったが、群馬理科サークルの福田利明さんは蛍光ペンで電極を描いた改良型を発表した(写真左)。ちなみに蛍光ペンに高圧での導電性があることを見いだしたのは千葉の大村吉郎さんである。そこで石井さんは一計を案じ、白の油性マーカーで電極を描いてみたところ、これもうまくいった(写真右)。
 

 ローター(ランナー)は発泡スチロール球に墨汁を塗ったものである。実験前に実験セットの各部をドライヤーでよく乾かすことが成功の秘訣だ。塩ビ管の摩擦ではコンデンサーの充電に200回程度こすらなければならないので、小型高圧電源を補助的に使っている。高圧電源はプラス側をアースする。なお、右の写真でコンデンサーとしているピンクのプラカップは、少量の水を入れた外側のカップに半分ほど水を入れた内側のカップを重ねてあり、カップで絶縁された水が電極の役目をしている。動画(6.0MB)はここ

懐かしいビデオ 山本の発表
 昔のビデオを整理していたら懐かしい映像が出てきたので披露した。1997年3月28日にパシフィコ横浜で開かれた「かながわサイエンスフェスティバル」のトークセッションで会場内で上映されたビデオで、一般にオンエアはされていない。約15年前の「若い」YPCメンバーが理科離れを食い止めるために今現場で何をすべきかを熱く語っている。今は社会人として活躍しているであろうそれぞれの教え子たちの生の声も収録されている。右は懐かしそうに映像を見る例会参加者たち。
 

西湘高校のSSH生徒発表会 山本の発表
 今年10月5日に西湘高校で開かれたSSH生徒発表会の模様が11月18日にTVKのニュースハーバーで放送された。発表会場の様子のほか、生徒が課題研究で行った実験のシーンも映像化されてオンエアされた。
 右は校舎の模型にドライアイスの霧を流して校内の風の流れを観察する実験。実際の風向風速の測定と比較し、教室棟の風通しの悪さが建物配置に起因することが実証されたという。
 

 下はおなじみ「ガウス加速器」の実験。入射、射出速度の測定の他に、鉄球とネオジム磁石の間の磁気力を詳細に測定して、位置エネルギーの見積もりをし、現象が力学の理論通りに起きていることを検証した。この研究は全国SSH生徒発表会で「ポスター発表賞」を受賞している。 

安価な放射線測定器の性能 山本の紹介
 国民生活センターは9月8日に「比較的安価な放射線測定器の性能」という報告を発表している。福島第1原発の事故以来、放射線計測への関心が高まっていることにつけこんで、粗悪な計測器が出回っているという警鐘である。調査時点で1万円~10万円の価格で市場に出回っている小型計測器9銘柄と、参考品として検定済みのサーベイメータを比較しながら性能検査している。
 結論として参考品を除き9銘柄すべてで通常の環境程度以下の自然放射線を正確に測定できなかった。 測定値は総じて正味値が低く、ばらつきも誤差も大きいため、正確な測定はできなかった。左の図は周囲を鉛箱で覆い、バックグラウンドをほぼ遮蔽した状態での測定値で、本来0であるべきもの。環境測定でも0.1μSv/h程度を測定しようというのにエラーカウントがこれほどあっては使い物にならない。食品検査にはさらに二桁上の性能が求められる。
 センターでは今回テストを実施した放射線測定器では、食品・飲料水等が暫定規制値以下かどうかの測定はできないので、こうした目的で購入・使用することは避けるよう勧告している。
報告書本文[PDF形式](471KB)→http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20110908_1.pdf

縦波とエネルギーの映像 水上さんの発表
縦波の映像(写真左)
(上段)「波動実験用つるまきばね(縦波用平線巻きばね180回巻き)」を蛍光ピンク色の糸をV字で10㎝間隔18か所で支える。
(下段)これを疎密波が伝わる様子を毎秒300コマで高速度撮影した。糸が映っていることで疎密と媒質の変位の関係が分かりやすくなった。詳細が今月のYPCニュースに掲載されている。

力学的エネルギーの導入映像
教科書の「物体が持つ仕事をする能力をエネルギーという」を生徒に説明する際に用いる映像を撮影した。授業では「物体Aが他の物体に力Fを加えて力の方向に距離x動かしたとき,物体Aがした仕事はW=Fxである」ことを確認してからこの映像を見せる。
①運動エネルギー(写真右):動いている台車が止まるまでに赤い箱を動かす。台車の速度υを大きくすると動く距離が増す。
 

②重力による位置エネルギー(写真左):高さhの所にある鉄球は高さが0になって静止するまでに木片を動かす。その高さhを大きくすると動く距離が増す。
③弾性力による位置エネルギー(写真右):自然長よりx縮んだばねが自然長に戻るときに赤い箱を動かす。縮みxを大きくすると動く距離が増す。

BB弾でモデル化した炭素の原子量 三宅さんの発表
 三宅さんは化学の授業で、BB弾1万発を利用して炭素原子をモデル化し、原子量を求める実験をした。炭素原子の存在比は質量数12が98.93%、質量数13が1.07%である。そこで、質量数12の炭素は0.12gのBB弾(黄色)を使用し、質量数13の炭素は0.15gのBB弾を削って0.13gを作った。ちなみに0.13gのBB弾は市場に出ていないようである。
 

  0.12gのもの(オレンジ色)を9893個、0.13gのもの(白色)を107個用意し、一緒に混ぜて柿ピーのプラスチック容器に入れ、そのまま電子天秤で量れば、1201gが表示される。こうして平均相対質量としての原子量12.01を印象づける教具として活用できる。
 授業で使用したところ生徒の反応やつかみは良かったという。授業展開を工夫すればいろいろ応用できそうだ。

中小企業展から 佐々木さんの発表
 「江戸・TOKYO 技とテクノの融合展2011」で見つけた商品の紹介。
 まずは「照照球(てるてるボール)」落ちた衝撃で明るく点滅するボール。夜間の地震の際、棚から落ちたボールが補助照明になる・・・らしい。構造上電池の交換などはできそうにない。
 

 「日食グラス」従来品と同等の安全基準をクリアする低価格品(1/3くらいの価格)。2012年5月21日の金環日食に向けて大量調達するのによさそう。

 「超撥水風呂敷 ながれ」耐久撥水加工で、洗濯機で洗濯を繰り返しても強力な撥水効果を保つ。袋状にしてバケツのように水を運ぶこともでき、その直後でも払えばサラッとしている。逆に水を貯めた状態で絞ると水を通す。気密ではなく、表面張力によるパスカル圧以上の圧力を加えれば繊維の間から水が押し出されるわけだ。展示製品は風呂敷だが、濡れない雨具としても使える。カット生地も販売されており、アイデア次第でいろいろ活用できそうだ。

日本賞 佐々木さんの紹介
 「日本賞」(NHK主催の教育コンテンツ国際コンクール)に参加した佐々木さんの報告。ネットで見られるお勧め作品と、受賞作品の放送予定の紹介だ。放送予定のうち、チェルノブイリに関するフランスのテレビ番組は要チェック。ヒトがいなくなった街は動物の楽園と化し、放射線も克服しているような話だったそうだ。

「Refraction(ゲームでまなぼう分数)」ワシントン大学の考案した「分数」のオンラインゲーム。宇宙船へのエネルギー供給を通じて、分数の概念や計算方法を楽しく学べる。
http://games.cs.washington.edu/Refraction/refraction.html

「The wheat we eat(私たちの食べる麦)」南西ドイツ放送協会の農作物を題材にしたテレビ番組。ハイスピード撮影とインターバル撮影が見事。
http://www.planet-schule.de/sf/php/09_suche.php?&psSuche[m]=kl&psSuche[page]=0&suchw=Weizen

12月24日から27日にかけて、Eテレで以下の番組の放送がある。
(1)12/24(土)16:00~17:00 「日本賞presents 世界のとっておきテレビ」 (受賞作品を中心に今年の「日本賞」を振り返る。)
(2)12/25(日)1:20~3:15 (24深夜) グランプリ受賞・福祉教育カテゴリー最優秀作品 「アメリカを振り返る 人種隔離バスへの抵抗」(アメリカ)
(3)12/26(月)1:20~2:51 (25深夜) 生涯教育カテゴリー最優秀作品 「チェルノブイリ  再生の歴史」(フランス)・・・・・・・・要チェック!
(4)12/27(火)1:05~1:49 (26深夜) 幼児向けカテゴリー最優秀作品 「みいつけた!」(日本)、青少年向けカテゴリー最優秀作品 「真実は嘘をつく秩序」(アルゼンチン)

ドイツの映画3本 越さんの紹介
 2011年10月5日(水)‐8日(土) 東京赤坂のドイツ文化会館ホールで「未来のエネルギー」と題してドイツの原発・新エネルギー関連の映画3本の上映会と監督のパネルディスカッションが行われた。

http://www.goethe.de/ins/jp/tok/ver/ja8105404v.htm 

 パネルディスカッションでは3人の監督から、福島原発事故後の日本へ、「今後日本はどうするか、今、世界が注目している。日本、しっかりしろ、頑張れ!」と、熱いメッセージが送られた。

 以下は3本の映画の紹介。

 「アンダーコントロール」 監督:フォルカー・ザッテル

 ドイツの原子力発電所を巡り、定期検査中の炉内、一度も稼働されなかった高速増殖炉の現状、最終処分場...など、まるでフィクションのような職場風景、無菌状態のコントロールルームや銀色の防護服をまとってこの世で最も危険な物質を扱う従業員たちの姿が映し出される。こういった原発の現場の日常を、善し悪しの評価は抜きにカメラは追う。

http://www.imageforum.co.jp/control/#

渋谷 シアター・イメージフォーラム にて 上映中。年内上映予定。


 「第4の革命」 監督:カール-A. フェヒナー

 再生可能なエネルギーの時代への出発を記念する作品だ。クリーンで持続可能な脱化石燃料の長所を100%生かした国際的なプロジェクトと新しい経営モデルが続々と紹介される。2010年、ドイツ国内外で上映された同作品は、各地で大反響を呼び、この年のドキュメンタリー映画で最も多くの観客数をドイツで記録した。

http://www.4revo.org/

 12月17日(土)~12月30日(金)までヒューマントラストシネマ渋谷 で上映予定。

 「イェロー・ケーキ ― クリーンなエネルギーという嘘」 監督:ヨアヒム・チルナー

 イエローケーキとは、粗製錬工場の最終製品のウラン精鉱のことである。詳しくはここ。この作品は、これまでのウラン採掘の65年の歴史に焦点を当てる。そこにはプロパガンダあり、間違った情報あり、そして秘密あり。ウラン採掘がもたらした環境汚染や健康被害の問題を追うカメラは、ナミビア、オーストラリア、カナダへと時代すらさかのぼって行く。

http://pandorafilms.wordpress.com/roadshow/yellow/

 2012年1月28日(土)~渋谷アップリンクにて公開予定。


二次会 衣笠駅前「お太幸」にて
 13人が参加してカンパーイ!今日は工業高校のものつくり教育の現場が見られたのが収穫だった。工作好きなYPCのメンバーはずらりと並んだ工作機械や試験機に生唾を飲んでいた。案内してくれた清水先生に感謝!


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