例会速報 2012/06/17 東洋英和女学院中学部高等部
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授業研究:熱力学の学習における問題整理 鈴木亨さんの発表
小学校から高校物理Ⅱに至る熱力学の学習過程の指導目標の第一は「熱力学の第1法則の正しい理解」である。そして熱に関する前近代的な経験的・感覚的概念を乗り越えて、近代的な科学的・論理的概念へと到達することだ。鈴木さんの授業実践の骨子は、①分子運動以前にマクロな熱現象や物質の熱的性質の整理をしっかりと行う、②熱素説をあえてとりあげる、③状態量と区別のない「素朴な熱概念」の排除をめざす、ことなどである。その際、とかく因果関係にとらわれやすい認知構造を意識して教える。
理解教育MLで、温度上昇→体積膨張(シャルルの法則)に対し、体積膨張→温度下降(断熱膨張)が矛盾するようで理解できないという生徒の疑問に「感覚的にすっきりと」答える方法はないかとのスレッドが立ったが、結局結論を見なかった。質問者は理論的考察を求めているのではない。
小学校4年生の教材で「空気は温めるとふくらむ」ことを教えるのに、かつてはフラスコの口に石けん膜をつけて、圧力一定の条件をうまく作っていたが、今はPETボトルにジャガイモの栓をして、温めると栓が飛ぶことでこれを示そうとする。これではシャルルの法則の説明になっていない。
熱力学の導入では熱と温度の違いを経験的におさえる事からはいる。この際、素朴概念に合致する「熱素説」をあえてきちんと教えた上で、その矛盾に気付かせる。それがランフォードの気付きである。
状態方程式の段階までは温度は経験的に温度計で測られるものでしかなかったが、気体分子運動論を学んで初めて絶対温度の物理的意味合いが明らかになる。これらの気付きの過程に教育的意味がある。
経験的な熱・温度概念からの脱却には「等温変化」と対比しながらの「断熱変化」の観察・考察が有効である。この際、「圧気発火器」の実験は有効だが、その説明でうっかり「仕事が熱になる」とか「分子の衝突で熱が発生」などとしないことにも注意したい。「熱」は物体間を移動するエネルギーの一形態であって、「そこにある」ものではないからだ。その意味では「断熱膨張」の方が本質的な理解を導きやすいとも言える。
最後に「エネルギーは保存するのになぜ不足することを心配するのか」を考えさせる。熱機関で廃熱は不可避である。ミニ地球「エコスフェア」の例などをあげながら熱力学の第2法則を紹介するが、オープンエンドの話題としてしめくくる。
ベネッセの「ロボットを作ろう、動かそう」講座 長舩さんの発表
会場校の長舩さんが自校で実施したロボット講座の報告をしてくれた。以下、長舩さんによるレポート。
講座の流れとしては、組立→動かす→仕上げる→ロボット競技という順序である。最初はベネッセさんの講師に実施していただいたが、2年目、3年目は私が講義している。本校の実施状況は、次の通り。
○高校二年生、物理Ⅰの選択者で実施(2011年度は28人・3人×8グループ+4人×1グループ)
○実施時期と期間(1月20日1コマ・組立/25日2コマ・動作テスト、プログラミング/27日1コマ・プログラミング/2月08日2コマ・校内発表会、タイムレース)
四足歩行ロボットのキットがあり、ドライバー1本で組み立てられる。グループごとに1体のロボットなので、3時間もあれば完成する。組立てられたロボットに対して教員側で動作テストプログラムを実行して完成となる。その後プログラミングの基礎を約1時間ほど学び、あとはチームワークにまかせてプログラミングしてロボットに動きを与えていく。PCとプログラミングについては次の通りである。
○PC:winXPのPCをベネッセさんからレンタル。ASUSのSSDタイプで軽量のものを提供していただいている
○プログラミング:MicrosoftのVB2008を使用。ベースとなるプログラミングは、先方で組み上げ済み。生徒はモーター(足)の動かし方だけをプログラミングしていく。
プログラミングの時間は、ロボットPR発表と直線タイムレースに備えて動けるように仕上げていく。コンパイルができないときには対応していくが、やり方や考え方、どうすれば理想の動きに近づけるかは指導していかないのがこの講座の意図である。予定外の動きをしたとしても保存しておき、後々に組み合わせて興味深い動きにしたり、ロボットPRで魅せる動きに使ったりするように促す。歩けるようにしながら、ロボットPRのプレゼンでユニークな動きをさせることやプレゼンテーションスライドも同時並行で作成していく。実習形式により自発的に学習し、楽しみながらリーダーシップやコミュニケーション能力を培うことも大きな目的である。動画(AVIファイル4.0MB)はここ。
圧気発火器 小沢さんの発表
「いきいき物理わくわく実験2」(日本評論社,http://www.nippyo.co.jp/book/1877.html)で紹介されている飯田式圧気発火器を真似して作ってみた。アクリルパイプは長さ25cm,外径15mm,内径9mm。木の棒は長さ27cm,直径8mm。ピストンヘッドはシリコーン極小栓No.S-10(コグゴeネット,http://www.kokugo.co.jp/index.asp)を利用し、栓をアクリルパイプにはめて、外に飛び出た部分をカットして作る。
これにワセリンを塗って滑りと気密をよくして、勢いよく木の棒で押す。安価に作れるので、授業では2人に1セット準備して、全グループに体験させた。生徒実験が少なくなりがちな熱力学分野で、生徒をいきいきさせる貴重な教材である。ハイスピードカメラによる動画(AVIファイル0.37MB)はここ。
ハーフスーパーボール 越さんの発表
越さんは、以前ダイソーで売っていたハーフスーパーボールで、鉛直投げ上げの生徒実験をやってみた。直径が約2.5cmなので、ビースピを用いて初速度が測れる。脇に定規を立て、最高点の高さを実測し、初速度から求めた計算値と比較する。
新しい物は比較的すぐに飛びあがり、初速度も大きい。古い物は少し柔らかくなりしばらくたってから飛び上がり、初速度も小さい。初速度は5m/s程度、最高点の高さは1m程度の物が多い。ジャンピングトーイでビースピで初速度を測れる大きさの物は他にはあまりない。ダイソーでは欠品だが、「チカトーイ」の通販http://narichikaya.co.jp/SHOP/4975887565699-B.html?prd=google_ps&bid=56000000 などで購入できる。7個入り105円、まとめて買うと安くなる。動画(AVIファイル4.4MB)はここ。
授業で使える映像(電磁気編) 水上さんの発表
左は回転する直流発電機(島津理化製)とその出力電圧のオシロスコープ画面。右は整流子とブラシの機能を説明するための映像。いずれも毎秒300コマで撮影したハイスピードカメラの映像。
左はコイル面の法線の回転角ωtとコイルを貫く磁束Φの変化を示すパワーポイント画面。
授業では,映像をコマ送りして次の3点を確認する。①コマ送りでコイル面が磁場と平行になる瞬間(写真)に誘導起電力が最大,垂直になるときに電圧が0 ②コイルの回転速度が大きい方が誘導起電力が大きい ③ブラシと整流子により出力電圧は常に正。(このときに整流子とブラシの映像を使う) 次にパワーポイントで「Φ―t図」が ①正弦曲線になる ②誘導起電力V=⊿Φ/⊿tの式を学んだのち,コイル面が磁場と垂直のときは接線の傾き(⊿Φ/⊿t)が0であり電圧(オシロ画面)も0,磁場と平行な時には⊿Φ/⊿tの大きさが最大であり,電圧も最大であることを確認する。
授業で使える映像(力学編) 水上さんの発表
水平投射版モンキーハンティングの毎秒300コマの映像。黒板(又は書き込み式スクリーン)に投影して利用する。両者が運動を開始すると同時に電磁石に並列接続されたネオン管が逆記電力によりピカッと光る。(この瞬間がt=0)以後右側の写真のように30コマ(0.1秒)ごとの位置をチョーク(マーカー)で記録して分析し,鉛直方向は自由落下,水平方向には等速直線運動していることを確認する。
プラレールに沿って等速で転がる鉄球の普通速映像。これも黒板や書き込み式スクリーンに投影して利用する。物理Ⅱの平面運動では、速度ベクトルの向きは運動経路の接線の向きであること、加速度ベクトルは速さが一定でも運動方向が変化するので0ではないことなどを強調する。
授業で使える映像(光学編) 水上さんの発表
白色光の分散と単色光について実感させるためのパワーポイントファイル。まず白色光をプリズムで分光し、虹色のスペクトルに分かれることを観察、続いて、分散した光をシリンドリカル凸レンズで再び一点に集めると白色になることを見せる。装置の右端のところはスクリーンの紙を折りあげて立ててある。ちょっとした工夫が効果的な画像を作り出す。
一方、赤色レーザー光線は単色光なので、同様にプリズムに入射しても分散しない。全く同じ装置同じレイアウトで見せて比較するところがミソ。
回折格子でも同様の実験を見せる。白色光は虹色に分散するが、レーザー光は単色のままである。
下はヤングの実験の導入用のパワーポイントファイル。スクリーン上の明線・暗線だけでなく,スリットとスクリーンの間の光線を写したところ、生徒は二つの円形波の干渉と同じ原理であることを自然に受け入れるようになった。
二次会 六本木駅前「土風炉六本木店」にて
10人が参加してカンパーイ!山口県からはるばる参加してくださった防府市青少年科学館ソラールの寺田館長を囲んで大いに盛り上がった。六本木通りに面したお店。こんなにぎやかな場所での二次会は初めてだ。
ネコミミ 加藤さんの予告編
頭部にヘッドホンのように装着すると、人間の脳波をキャッチして、耳の部分が感情に合わせて動くというneurowearの ネコミミ型コミュニケーションツール
“necomimi” http://bit.ly/MdHJXp
ニコニコ動画で話題になってベストセラーという話題のアイテムを加藤さんはさっそくゲットした。次回以降のレポートを期待しよう。
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