例会速報 2012/07/22 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:物理の指導を通して育成する能力 志賀さんの発表
 物理の授業を通して、生徒のどのような力の育成を目指すかを意識した授業実践である。将来日本を背負う科学者の育成という目標のもと、「情報を整理する能力(小目標を設定する力・分割して考える力)」「具体化する能力(演繹的思考力・小モデル設定力)」「仮説を検証する能力(批判的思考力・検定能力)」の育成に主眼を置いている。
 また、一般的な教授法では「定義」で片付く問題に対しても、なぜそのような定義が導入されているのか、自然な定義であることや、有意義な定義であることにまで生徒の思考が及ぶ(議論できる)ことを目指している。
 今回とりあげた授業の具体的な展開は、(i)本時のねらい→(ii)縦波を2次元に表現する方法の検討→(iii)縦波の画像(理想的な計算値) (下図右)を横波として表現するという流れである。
 縦波を横波として表現する方法が「媒質の本来の位置(つりあいの位置)に、本来の位置からの変位を素直に(正は正の向き、負は負の向きに)プロットする」ということが自然な定義であることを議論した上で、(iii)の問題に対して「情報を整理する」事の重要性をヒントとして与える。今何をすべきなのか考え、「本来の位置(つりあいの位置)」を明確にさせることを小目標として設定すべきである事を示唆する。そこで、どのようにすれば本来の位置が明確になるのかを考えさせる。検証に関しても「具体化する」ことの重要性を説き、「密の中心」とは具体的にはどのような点なのか考察させ、検証させるという形で志賀さんは授業を展開した。


 志賀さんの学校では、独自の共通副読本を編纂して生徒に与えてあり(下の写真)、これが事実上の教科書で生徒はこの教材により自学自習する。授業は生徒の考える力を引き出すという形で進行する。科学者の育成ということをはっきり意識しているのだ。
 例会では授業のねらいが「○○の能力の育成」となってしまうと、「お勉強」になってしまうのではないかという指摘があった。学問を追及することと、能力の育成をテーマとすることのバランスについて考えていく必要がある。

BB弾原子核モデル 喜多さんの発表
 鈴木さんが2012年2月の例会で、BB弾で作る原子核模型を紹介された。それに触発された喜多さんはいろいろ試行錯誤した結果、木工用ボンドとごみネットで核模型を作製した。左図は左から235U、139Ba、94Krである。右図は左下の中性子が235Uに吸収され、不安定な236Uになり、それが分裂して139Ba、94Kr、そして中性子3つを放出したことを示している。236Uはごみネットに入れてあるだけでボンドで固めていない。分裂寸前の不安定な核を表現している。
 

コロイド溶液を使った夕焼けシミュレーション 車田さんの発表
 千葉のリカックマ物理研究会で浜田さんに教えてもらった実験の追試。水槽にチオ硫酸ナトリウム(ハイポ)水溶液をいれ塩酸を垂らすとゆっくり反応し、白濁する。そこにスライド映写機の光を透過させるとコロイドの散乱により夕焼けが再現される。
 

 例会の実験では、市販のハイポを使った。園芸ショップや熱帯魚コーナーで一袋500円位で手に入る。水の量と入れるハイポの量で白濁するコロイド粒子の量が調整でる。水10Lにハイポを大さじ1杯入れて塩酸を2~3滴加え、映写機の光を透過させた。水溶液は最初は透明だが、次第にコロイド状の硫黄が生成し白濁が進む。そこに光を当てていると、光は白から黄色がかってきてやがてオレンジ色になり、夕焼けが時間の経過とともに再現される。写真でも次第に透明度が低下し、透過光の色が変化しているのがわかる。ハイポの量で演示時間を5分、10分と調整できそうだ。
 硫黄のコロイドを生じる化学反応式は以下のとおり。
Na2S2O3 + 2HCl −→ 2NaCl + S + SO2 + H2O
 なお、この実験は10年以上前の日本学生科学賞で高校生が受賞している。以下、参考URL。
http://socyo.high.hokudai.ac.jp/more_html/buturi/NEWS/bsn9908/a8.htm
http://www.hyogo-c.ed.jp/~rikagaku/jjmanual/jikken/omo/omo10.htm 

科学をどう教えるか 右近さんの書籍紹介
 エドワード・F・レディッシュ,日本物理教育学会監訳,「科学をどう教えるか」,丸善,3990円税込。”Teaching Physics with the Physics Suite”(Wiley, 2003年)の翻訳本である。右近さんも出版に携わった一人。
 著者エドワード・レディッシュは、メリーランド大学教授で、もともと長い経歴を持つ原子核物理の研究者でもありつつ、今日のアメリカの物理教育研究の中心的な指導者として国際的にも有名である。
 本書はアメリカにおける近年の物理教育研究の目覚ましい発展とその実践的成果の全体像を知る上で、最適な本だ。アメリカの近年の物理教育研究の最大の特徴である、信頼性の高い実証的な多くの調査と、アクティブ・ラーニング型あるいはインタラクティブ型の授業方法を概観し、それぞれの特徴をわかりやすく紹介している。著者自身が授業者として授業改善に取り組んできた経験を交えながら、講演のような言葉づかいでなされているために非常にわかりやすい。

図鑑NEO 岩石・鉱物・化石 萩谷さんの発表
 萩谷さんはこのほど小学館から岩石鉱物図鑑を出版した。図鑑NEOシリーズ「岩石・鉱物・化石」\2000(税抜)である。子ども向けの図鑑仕立てだが内容、特に写真には専門家としてだいぶこだわった。写真は手持ちの写真の他、科学写真家の伊地知国夫氏に撮影を依頼した。
 

 岩石の密度の違いを写真でビジュアルに示す工夫として、萩谷さんがかつて特注で製作した10cm角の岩石ブロックを使った。ばねにつるすと密度の違いが一目瞭然。左から花崗岩(大陸地殻)、斑糲岩(海洋地殻)、橄欖岩(マントル)、鉄(核)である。地球は中心から重い順に階層構造になっているわけだ。

特別展・石の世界 萩谷さんの発表
 東大駒場博物館で2012年9月17日まで特別展「石の世界~地球・人類・科学~」が開かれている。同館所蔵の貴重な岩石鉱物標本などが展示される。岩石にはそれぞれ生まれてきた理由があり、そこに至るまでの歴史が刻まれている。私たちの足もとを見つめ直す機会としてはいかがだろう。開館時間10時~18時、火曜休館。入場無料。

天プリ解答 市江さんの発表
 市江さんは http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/library.htm に公開されている教材を使用して夏期講習を行った。以下、市江さん自身によるコメントを紹介する。

 WEBで公開されている天神さんの授業プリントこと、「天プリ」を夏期講習で使わせていただき、エネルギーの部分のみですが、解答をつくってみました。授業プリント自体は一見オーソドックスにまとめられているように見えますが、計算問題がさりげなく体系的で、生徒が問題を解きながらステップ・バイ・ステップで理解できるように配慮されています。この単元では、力学的エネルギーと保存力、非保存力の関係など、とかく講釈を並べてしまいがちですが、平易な計算でその概念形成の下地ができるようになっていてとても重宝しました。
 

算法少女 山本の書籍紹介
 現在学校で学ぶ数学は明治以降の輸入品の西洋数学だが、日本には江戸時代に栄えた和算という数学文化があった。「算法少女」とは安永4年(1775)に書かれた実在する和算書である。和算史上有名な吉田光由の「塵劫記」から約150年、関孝和の「発微算法」から約100年後の出版で、原則として漢文で書かれていた当時の和算書の世界にあって、一部漢字かな交じりの和文で書かれており、書名の通り数学好きの女の子が医師であった父親と共著でしたためたという仕立てになっている。しかし著者の千葉桃三と娘の平章子は歴史に名を残す人物ではなく、その存在自体が謎めいている。
 このミステリアスで異色な和算書「算法少女」にモチーフを得て、遠藤寛子が1974年に出版したのが同名のジュニア歴史小説である(右)。江戸下町の数学好きな少女を主人公にフィクションが展開する。岩波からの初版は絶版となっていたが、2006年にちくま学芸文庫から再刊(¥900)されてベストセラーとなった。
 これを受けて和算研究科の小寺裕が原書「算法少女」に現代語訳と現代の数式表記を添えて、初心者にもわかりやすく解説したのが「和算書『算法少女』を読む」(2009年、ちくま学芸文庫¥1300)である(左)。中高生や教員向けの絶好の和算入門書・解説書である。先の小説と合わせて読むとよい。

科学教育映画復興 長谷川さんの発表
 長谷川さんは通信制の高校に勤めている。同校では教材として短編の科学映画を作りたいと考えている。お手本は往年の名作「岩波科学映画シリーズ」である。同シリーズは「たのしい科学教育映画シリーズ」としてDVDで復刻されている。右は鎌倉学園所蔵のライブラリ。良質の映画教材は通信教育の強力なツールになるだろう。
 

しんかい6500内部映像 市原さんの紹介
 市原さんの大学の恩師にあたる道林先生(静岡大学)が、しんかい6500に乗船した際の映像記録。乗船から海底での作業、そして帰船までの様子がコメント付きでまとめられている。海底作業中のしんかい6500の船内映像は珍しく、研究活動の一端を垣間見ることができる。
 

 ていねいにテロップをいれて編集されており船内での活動が詳しく説明されている。記録ビデオとしての完成度も高い。

科学教育イベントの案内 加藤さんの紹介
 加藤さんから科学教育関係のイベント2件の紹介があった。

●教員のための博物館の日 (左)
 8月24日(金)、25日(土)に、上野にある国立科学博物館で、毎年恒例となった「教員のための博物館の日」が開催される。この日は教員の方は常設展が無料になるほか、授業に活用できる博物館の学習資源が数多く紹介される。
http://www.kahaku.go.jp/event/2012/08mdayt/

●世界トップレベルの科学を愉しむ (右)
 11月25日(土)に、つくば国際会議場で、先端研究に関するシンポジウムが開催される。7名の研究者が、専門的なトピックを中高生向けにわかりやすく解説する。入場無料。
http://www.nims.go.jp/mana/jp/events/hdfqf10000004cmk.html

 

『いのちのかんさつ』シリーズ・アゲハ・メダカ・カエル 加藤さんの書籍紹介
 少年写真新聞社の新刊紹介。小学校などでよく飼育するアゲハ、カエル、メダカの生態や飼育法を、精緻なイラストで丁寧に解説している。学校での飼育や自由研究の参考にどうぞ。
アゲハ:http://www.schoolpress.co.jp/book/inochi/inochi1.htm
メダカ:http://www.schoolpress.co.jp/book/inochi/inochi2.htm
カエル:http://www.schoolpress.co.jp/book/inochi/inochi3.htm
 

ロータリーエンジンモデル 佐々木さんの発表
 ロータリーエンジンに格別の思い入れがある佐々木さんが、ロータリーエンジンのミニチュア原理模型を紹介してくれた。13B型という2ローターのエンジンのフロント側ローターを、前から見たイメージで作られている。まゆ型(ペリトロコイド曲線)のシリンダ内で、おむすび型(ルーローの三角形)のローターが回転する様子を、シャフトを手回しすることで再現できる。あくまでもロータリーマニア向けの趣味のモノであったが、予想以上の反響に驚いた。佐々木さんはさらに複雑なモデルも物色中で、入手次第、第2弾として紹介してくれるそうだ。
 

金環日食のオリジナルDVD 鈴木健夫さんの発表
 5月21日の金環日食については、すでに例会で報告が何件もあったが、多摩大聖ヶ丘での日食の報告である。多摩大聖ヶ丘は、学校全体で観測会を企画し、全校生徒の半数以上が参加した。ビデオ映像会社の撮影や、テレビ局(テレビ東京)の取材もあり、条件的にも雲はほとんどかからずにきれいに金環を見ることができた。
 

 ビデオ映像会社がその観測会の記録をDVDにまとめたので、それを例会で視聴した。これは配布自由なので、ご希望の方は鈴木健夫sutaypcatw3.dion.ne.jp(atは@)までご連絡を。生徒が喜んで興奮している様子も映っている。なお、学校の天文台に固定したビデオカメラにフィルターをつけて、太陽をずっと追った映像(2番目がその一シーン)はきれいに撮れていて、それを見るだけでもこのDVDの価値はある。

二次会 大船駅前「あじたろう大船店」にて
 14人が参加してカンパーイ!大船のいつもの店で暑気払い。科教協鳥取大会への派遣要員の打合せなど、夏休みの話題で盛り上がる。YPCメンバーにとって夏はかき入れ時。全国を飛び回って情報交換を行う。次の例会での報告が楽しみだ。


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