例会速報 2012/08/25 八王子セミナーハウス


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八王子セミナーハウス 今回の宿泊例会会場
 年に一度のYPC夏季合宿例会は初めての会場「八王子セミナーハウス」で行われた。いくつかの大学が出資して作られた合宿研修施設で、一般の人も利用できる。山の斜面を利用した広大な敷地に宿泊施設を伴ったいくつもの研修棟が分散して建てられており、貸別荘のようなたたずまいである。新しい施設ではないが部屋はきれいでインターネットも自由に使える。研修室が夜まで使えるのでYPCの合宿例会にはもってこいだ。神奈川や東京から比較的アクセスしやすいのも好条件である。
 

土肥さんのピタゴラ装置 水野さんの紹介
 今年の科教協鳥取大会のお楽しみ広場で、広島の土肥さんから購入したもの。NHK教育の人気番組「ピタゴラスイッチ」に登場するピタゴラ装置NO.4「磁石」のはじめの部分の再現実験装置だ。動画(mp4ファイル9.9MB)はここ

 板は、鉄球が転がり落ちていくように緩やかに傾斜がつけてある。磁石は100均にある磁力の弱いU字型磁石(強いと鉄球がくっついて止まってしまう)で裏に滑り止めが貼ってある。鉄球は直径14.28mm。パチンコ玉だと磁石にくっついて止まってしまう。鉄球が最後にあたる「ゴールの的」はネオジム磁石。

 この装置の面白いところは、磁石の置き方をいろいろ変えられる点だ。ネオジム磁石の「的」にうまく当てるための途中の磁石の置き方は一通りではない。「正解」は幾通りもあるので結構楽しめる。水野さんが物理室に置いたら、生徒達が早速、磁石を色々動かして遊んで楽しんでいたという。

味噌カップで全反射 田代さんの発表
  空になった味噌のカップに水を満たして机の縁ぎりぎりに置く。そのカップの水面より下から水面を見上げる。水面に指を入れると、水面下に突き出た指と水面で全反射した指がつながってウインナーソーセージのように見える。釣りの「浮き」などを浮かべると面白いだろう。
 また眺めている反対側のカップの側面近くに消しゴムなど物を持ってくると水面で全反射して見える。味噌カップは生徒実験用として大きさが手頃で、何よりタダなのがミソ。

コンデンサースピーカー 田代さんの発表
 「ハエ・蚊一撃キャッチ」という商品名の高電圧ハエたたきを分解すると、小さな変圧器を使った発信回路と倍圧回路が2段組み込んであった。3Vが1000V以上になると説明書には書いてある。
 クリアファイルとアルミ箔でコンデンサーを作り、その両極板に「一撃キャッチ」をつなぐと、小さくてすごく高い音が聞こえた。発信回路で作る脈流でコンデンサーがコンデンサースピーカーとなったのだろう。
 あまりにも高い音なので、例会参加者でも、若い人は聞こえて高齢者には聞こえなかった。健康診断の聴覚検査みたいだ。
 なお、電流はわずかだがかなりの高電圧なので追試では感電に十分注意しよう。

大型電気の葉っぱ 越さんの発表
 越さんは広島の土肥さんに教えて頂いた「電気の葉っぱ」(左の写真の手前側)を作ってみた。
 アラザンを導体球としてストローに入れ、両端にアルミホイルを丸めたものを詰め、少しはみ出させ電極とする。なおアラザンはダイソーのケーキ材料のコーナーで3mmと4mmのものが売られているが、より小さいものの方が動きが良い。片方の電極を葉っぱの形にしたアルミホイルやアルミカップを広げたものに貼りつけて完成。
 ダイソーのスチレンボード(商品名は「カラーボード」)を適当な大きさに切ってサランラップで包み、ティッシュペーパーなどでこすり、帯電体とする。詳しくは、青森の野呂さんのHPにまとめられている。
 「電気の葉っぱ」はYPCの2011年2月例会で紹介した電気ストローと起電盆を組み合わせた実験と同じものだと気付いた越さんは、さらに電気ストローとダイソーのアルミトレーやアルミホイルを葉っぱに形にした物を組み合わせた「大型電気の葉っぱ」(写真右)も作ってみた。
 電気ストローの情報はこちら。http://www.kagakunosaiten.jp/convention/pdf/2011/027.pdf
 

 左は「電気ストロー付電気アルミ缶」。原理は同じだ。
 2本の電気ストローの片方の電極同士を別のストローで固定してコの字型にし、真中のストローをアルミホイルでくるんで電気ストローの2つの電極を導通させる。このコの字型にしたストローの両端を写真のようにアルミ缶にとりつける。コの字型の取っ手を持ち、アルミ缶にサランラップを巻きつけて勢い良く引っぺがすと剥離帯電によりアルミ缶が帯電し、電気ストロー内の導体球が激しく往復して電荷を運ぶ。電気ストローは1本でも良いが、こうするとアルミ缶を保持し易い。

JAXAのエッグドロップ 越さんの発表
 7月27日(金)、28日(土)の2日間、JAXA相模原キャンパスの一般公開が行われた。一般公開は、普段見られない施設の公開や講演など盛りだくさんで、2日間で1万人以上の来場者があったという。越さんはそこで行われたエッグドロップコンテストに参加した。以下、越さん自身のコメント。

 予想はしていたが、参加者20名中大人は2人、子どもたちに交じって、真摯に競技した。当日は東工大モデルの円錐型のもの(写真左)と、風車の下に小さい円錐を吊るしたもの(写真右)の2つ用意していった。いずれも円錐内の下部に生卵を入れる。
 高さ12m程のビルの屋上から落下させるが、当日は風が強かったため、その影響を受けにくい東工大モデルを使用した。また紙製のため30g以上という規定に合わず、急遽手持ちの消しゴムなどを先端付近に付けた。重くなった分、頂角が小さめの円錐に修正し、衝突時に受ける強い衝撃に耐えられるようにした。参加20人中、成功は10人ほど。観客の投票で、デザインやアイデアが優れた小学生の物が選ばれ優勝となった。子どもたちの発想は豊かで、デザインの優れた物が多数あり感心させられた(勤務校でも、生徒から学ぶ事は多いのだが...)。
 

電磁気の単位 田代さんの発表
 同じ電荷量をCGS静電単位でq、 CGS電磁単位系でQとして比較する。 q=cQ となる比例定数cの精密な測定が ウェーバーとコールラウシュによって1856年に行われた。cは速度の次元があり、精密な測定結果と合わせると c=3×1010cm/s、即ち光の速度、という驚くべき結果であった。マックスウェルはこの結果に啓発されて研究を進めたと田代さんは考えている。田代さんのプリントには、その測定に使った「絶対電位計」(右の写真、上の図)と電荷を一気に流して測定する「衝撃検流計」(同下の図)の略図が載っている。
 MKSA単位系はCGS電磁単位系と同じ扱い方が多いが、20世紀初頭の通信技術に使われていた「実用単位」、例えば 「1ボルト=108CGS電磁単位(ダニエル電池の起電力にほぼ等しい)とする」などとの関わりで1Aの定義に2×10-7 が登場する。このあたりの事情は下記のサイトに詳しい記述がある。
「FNの高校物理」http://fnorio.com/0096Electromagnetic_unit_system1/Electromagnetic_unit_system1.html
 

世界一行きたい科学広場in宗像 佐々木さんの発表
 8月11日福岡県宗像市にて開催された、科学イベントの報告。
 東海大学教育開発研究所と各地の附属高校、ガリレオ工房が中心となって展開する地域連携型のイベントで、ミニ「科学の祭典」といったイメージ。今年で3年目となる宗像では、4000名近い来場者があり大盛況だった。
 

 出展は主に福岡県内の企業、大学、高校だったが、目玉となったのは、人気TV番組「ほこ×たて」出演企業によるブース出展と番組裏話のトーク。ドリルとの対決で連勝中の超合金メーカー「日本タングステン」、時速370kmの剛速球ピッチングマシンの「共和技研」と対戦相手となったハイスピードカメラの「CASIO」から、番組出演者本人が登場した。日本タングステンの中川内氏は番組の顔らしく、記念撮影に快く応じていた。また、“敵”であったはずの共和技研の田中氏とCASIOの西坂氏はすっかり仲良くなったようだ。
 

 今後、同様のイベントが千葉県浦安市(11月)、静岡県清水市(12月)で計画されている。浦安についてはYPCメンバーの学校でも出展があるかもしれない。
 

SSH全国生徒発表会 佐々木さんの発表
 8月8~9日パシフィコ横浜にて開催された、SSH全国生徒発表会の報告。YPC関連では、それぞれ以下のような独創的な研究を発表していた。
・横浜サイエンスフロンティア高校:「燃料電池カートの製作」・・・科学技術振興機構理事長賞
・西湘高校:「ダイラタント流体の性質」
・神奈川総合産業高校:「フリーズドライ製法の食感に関する考察」
・市川学園:「ドライアイスによる金属板の振動」
 また、大阪・生野高校:「圧力鍋による麺容器の膨張・圧縮メカニズムの研究」では、参考文献として、高杉さんの「ふくらむ容器」(2007YPC例会報告)が紹介されていた。他にも、鹿せんべいをいかに遠くへ飛ばすか、Wiiリモコンで短距離走のフォーム解析など、ユニークな研究が多く、見てまわる時間が足りないほどだった。
 

 最優秀賞の文部科学大臣表彰を受賞したのは、広島国泰寺高校:「水噴流による水輸送倍増効果」。水面下から発射した水が、水面の水を巻き込んで輸送量を増すことを発見し、流速や粘性による輸送量変化を解析した。海面に流出した原油の回収への応用を提案し、実用化が期待できる内容であった。

水陸両用バス 佐々木さんの発表
 10月14日まで「東京湾の水辺活性化」社会実験として運行中の水陸両用バスの紹介。4トントラックの車台に大型バスの車体を載せ、後部にスクリューをもつ独特なスタイル。車輪が小さいので、陸上走行は最高時速90kmまでだが、スロープを下りて水中に入ってからも車輪は引っ込めずにそのまま航行する。ユニークな外観に加え、バスガイドのユニークなアナウンスも窓がなく筒抜けなので、陸上走行中は注目の的だ。
 なお、陸上走行時には大型二種免許、水上航行時には二級以上の小型船舶免許が必要なので、運転手と船長が途中交代するのも特徴のひとつ。
 

BB弾の原子核模型 喜多さんの発表
 2012年2月の例会で鈴木健夫さんがBB弾の原子核模型を発表した。喜多さんはそれに触発され改良を重ねている。その第二弾。
 左の写真で一番大きいのがU235である。これに中性子が入ったものが真ん中にあるU236(これは流し用のごみネットに入れて不安定核を表現している。それが分裂して上の方のBa139と、下のKr94、そして三つの中性子に分かれた状態を示している。ダイソーのBB弾(D017-No155)は、赤・緑300発入りで100円なので、2つ購入すれば、この模型が作れる。
 右の写真は、接着剤として、木工用ボンドを使用したもの(上)と、チカバルーン(ダイソーD017-No321)を使用したもの(下)が示されている。チカバルーンを用いると木工用ボンドより早く作ることができる。
 

波の屈折率の導入 水上さんの発表
 さまざまな授業展開の一つとして「①現象の観察や実験(演示も含む)とデータの収集→②データの分析(規則性を見出す)→③理論で裏付けし、公式(法則)とする。→④同じ内容が教科書にあることを確認する。」がある。水上さんは2012年1月の例会で「水波の屈折」の映像とプリントでの授業を提案したが、授業時間がかかりすぎた。そこで①,②の部分をお料理番組的に紹介するパワーポイントファイルを作成し、③と④に力点を置くようにした。
 

 映像をキャプチャーした写真の上に必要事項を書込み,「花子」(描画用ソフト)で自作した分度器や物差しを当てて入射角や屈折角を測定する点が目新しい。

薄膜の干渉 水上さんの発表
 「薄膜の干渉で,空気→薄膜の反射では位相がπ変化(反転)し、薄膜→空気の反射では位相が変化しない」ことが「どうしてわかるの?」という疑問を持つ人は多いと思う。水上さんはこの理解の助けになればと考え、この映像を撮影した。
 コップの口に石鹸膜を作り、ナトリウムランプから出る単色光の反射光を観察する。重力のため膜の厚さdは上が小さく下が大きい。時間がたつと(膜上部のd)≪(光の波長λ)とみなせるまで薄くなる。これが最上部の暗部である。d≪λにおいて暗くなるのは、光路差がほとんど0だが、反射による位相の変化が一方のみ起きているからだ。ただし、この映像だけでは表裏どちらの面で位相がπ変化するのかは判断できない。
 なお暗い部分をつつくと膜が割れることで膜の存在を示している(下右の写真)。

 下左の画面は赤色セロハン紙を通した光をコップの口の石鹸膜に当てたときの反射光の写真と、薄膜の干渉で明るく見える場合の説明図である。
 右の写真は赤・緑・青色セロハン紙と白色紙を通した光の石鹸膜での反射光を観察写真である。多くの教科書では石鹸膜にあてた白色光の反射光が色づく理由を、強めあった色(厚いところでは複数の色が強めあう…加色混合)が見えるとしているが、この写真を見る限り、弱め合った色の残りの色が見える(減色混合)と考える方が妥当だと思う。例えば図中①の厚さのところでは青色だけ弱めあっているので残りの赤+緑=黄色、②の厚さでは緑色が弱めあっているので残りの赤+青=マゼンタ、③の厚さでは赤色だけが弱めあっているので残りの緑+青=シアンという説明になる。
 

円環上の定常波 水上さんの発表
 ボーアの水素原子モデルの学習で、量子条件+ド・ブロイの物質波長の式(リング上の定常波の式)2πr=nh/mυ=nλ を印象付けるための映像である。リングの一点をスピーカーで振動させて定常波を作っている。リングが固定されているため、条件が異なってしまうが、水上さんは「無いよりはまし」と割り切って見せている。
 例会では「薄いプラ板のリングを固定せずに直接スピーカーにとりつけて定常波を作る」などの提案がなされた。

ミラクルシャボン玉 市江さんの発表
 市江さんはテレビ等でも紹介されたミラクルシャボン玉をでんじろう先生の実験コーナー(http://www.denjiro.co.jp/corner/2/2.html)の記事を参考にクラブの生徒と再現してみた。以下、市江さんのコメント。
 静電気でシャボン玉を帯電させ、静電気の反発力を利用してバランスを取りながら、シャボン玉の水分を蒸発させる。ほどよい粘性になったときにシャボン玉が割れると、何とも奇妙な形に変形する様子が観察できる。はじめに小さな穴が空き、その穴が大きくなっていく。さらに穴の縁が少し縮まり蛸壺のような形になる(写真右)。
 

 その後全体的に平らになっていき、麦わら帽子を逆さにしたような形(写真左)を経て、最後は平らな円盤(写真右)になる。動画(aviファイル18MB)はここ
 この実験は室温、湿度、帯電の程度などが非常に微妙で再現性に乏しい。学園祭などのイベントで何とかライブでできないかと生徒とともに再現性の向上に努めた。シャボン液をつくるときの水は、精製水60g,、砂糖はグラニュー糖30g、洗剤はチャーミーVクイック4gとすると、条件の悪い夏場でもかなり成功率が上がった。しかし、ライブでやるにはさらに再現性を上げる必要がある。
 奇妙な形になるのは、粘性と表面張力だけで説明ができないかと考えていたが、例会の参加者から帯電が大きな要因であると指摘を受けた。割れる前にシャボン玉外側表面に一様に分布していた電荷が、割れた後に外側だけでなく、内側にも一様に分布するため、あのような形になると考えられる。しかし、そのことをクラブで伝えると帯電させなくても同じように割れたこともあるという生徒もいた。今後も探求を続けたい。
 

光通信ダイオード 喜多さんの発表
 これは2010年6月に報告したものの再実験である。写真左は音声信号で変調したLED(上)の光を、同じLED(下)で受信しているところ。受信専用アンプスピーカを作った。写真右は、左から3A整流用ダイオードを焼いたもの、削ったもの、何も手を加えていないものである。このPN接合部分でも光信号が受信できる。
 

 写真左は、削ったダイオードのPN接合部分に音声信号を乗せた青色LEDの光を当てているところ。喜多さんは今回新たに、受信側の素子として 検波用ダイオードで有名な1N60が使えることを発見した。写真右のように1N60は透明ガラス容器に入っている。そのゲルマニウムにタングステン線が接触している部分(PN接合部分)に青色LEDの光を当てると同じように受信できることが確かめられる。受信機はLEDである必要はない。一般的に「ダイオードが光を受ければ、電圧を生じる」ことを示す例として使える。
 

2時間で行った原子力の授業 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんはこの夏の科教協鳥取大会物理分科会と、物理教育研究会(APEJ)夏期研究大会で発表した「2時間で行った原子力の授業」を、授業報告として発表した。授業プランとしてはすでにYPC2012年2月例会で発表されている。以下、鈴木さん自身のコメント。

 授業プランは、非常にオーソドックスで、原子や原子核の基礎知識から始め、放射線の性質や内部被曝などの知識や原子力の原理などを科学的知識として学習していくという形にしている。さらにその後に霧箱の実験で放射線を見るという流れである。その中で、放射線を浴びる危険性や、どの程度の内部被曝で年間の被曝線量としてどうなるのかなどの計算をさせる。生徒の声として、放射線を霧箱で実際に見ることで、「怖さがわかった」などの感想が書かれていた。
 

 これに関し、例会では怖がらせることや被曝の怖さをどう教えるかについて、議論があった。このあたりはどうしても授業者の主観が入る、と改めて思う。客観的に科学的に扱うつもりでも、どの程度怖いのかという点は万人の共通認識とすることが難しい。その点で客観性を欠いてしまうのかもしれない。しかし、その中でもどう扱い、どう怖がらせるかを、我々自身がきちんと整理し、授業で避けることなく生徒に考えさせていく必要がある。それがまさに今求められているのだと思う。

手回し発電タケコプター 越さんの発表
 小学館は「ドラえもんのふしぎのサイエンス」シリーズを刊行した。これはその第一巻の付録「空飛ぶドラえもん・手回し発電タケコプター」。何といってもドラえもんのキャラクターが魅力。冊子の内容は子ども向きに書かれていて親しみやすい。1号は特別価格で1500円(税込)。10号まで刊行予定。

 学研の「科学のタマゴ」シリーズでは、2軸のクロスコプターがあったが、本製品は同軸反転ローターで、本体(ドラえもん)の回転を抑えている。動画(mp4ファイル18MB)はここ

ガラス球に見られる復屈折 小宮さんの発表
 小宮さんは生徒の課題研究授業のテーマを紹介してくれた。
 偏光板を偏光軸が直交するように設置(クロスニコル)すると、光は通過しなくなる。だが水晶球をクロスニコルの偏光板の間に置くと、明瞭な干渉圏と黒い爪のような模様(アイソジャイアー)が観察される。これは、複屈折という現象に起因すると考えられている。複屈折は結晶・非結晶にかかわらず、構造に異方性のある物質に起こる。水晶に入射した偏光は、半径方向とそれに直交する方向の速度の異なる2つの偏光に分かれ、球から出た光はそれにより位相がずれ、手前の偏光板を通る偏光成分が生じる。
 水晶球は、干渉圏の中心(以下、目と呼ぶ)が中心軸のようで、水晶球を回転させると、目も動く。また、水晶球のかわりにガラス球で同様のことを行った場合、球に十字(または双曲線)の暗線が入った模様を観察することができる。ガラス球の場合は、十字のものは、どのように動かしても常に十字の暗線が見え、双曲線の場合は、動かし方によって、十字になったり双曲線が離れたりする。
 「ガラスに見られる複屈折」(古山勝彦・松崎琢也)、「石英ガラスの世界」(葛生伸)、「金沢大学・石渡氏のサイト」によれば、光が通過する複屈折現象は、水晶球やガラス球の内部の構造の異方性に起因し、暗線の部分は外形に起因する。論文によれば、ガラス球を焼き鈍しすると、温度上昇とともに全域が暗くなるようである。つまり、焼き鈍しするほど、構造が等方的になり、複屈折が起こりにくくなると考えられる。
 

 また、実際に本校の生徒が、ガラス球の直径を100回測定して比較したところ、誤差があるガラス球ほど暗線が双曲線になり、かつ双曲線が離れていく傾向にあるようであった。また、誤差が少ないほど、十字が崩れにくいようであった。

 今回生徒がガラス球を観察していた際に、十字や双曲線の暗線に加えて、干渉圏も観察できるガラス球が観察された。さらに、干渉圏が観察できるガラス球は、暗線が十字や双曲線でなく、複雑な模様が浮かび上がった。画像は、白色光で見たガラス球(写真左)と、単色のナトリウムランプで見たもの(写真下)である。

 論文等にはこのようなケースは記されておらず、生徒が興味を持った。製造元を調べ、製造方法のなかで生じるものなのか、成分によるものなのかを、調べると、生徒は言っており、今後の展開に期待したい。

 

二次会 八王子セミナーハウス食堂にて
 12人が参加してカンパーイ!食事は本館4階の食堂で食べる。ビールは入口の自販機で調達。180人収容の食堂がほぼ埋まるほどたくさんの学生さんたちが合宿していた。この一画だけ平均年齢が高いような・・・。食事は18時からなので例会を一時中断し、宿泊しない数名はこの時点で日帰りとした。
 食後19時からの第2部では喜多さんの「BB弾原子核模型」以降、さらに22時に部屋に帰った後、越さんの「手回し発電タケコプター」以降の発表が行われた。


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