例会速報 2014/04/13 関東学院中学校・高等学校
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授業研究:授業開き みんなの発表
毎年4月の例会では、学年始めの最初の授業をどのように展開したかを披露し合うことになっている。
始めは鈴木健夫さん。今年も「超能力」マジックで授業開きをした。定番のスプーン曲げ(写真左)、浮かぶ千円札(写真右)など、お得意の技を披露。生徒の興味をひいて、なぜだろうという気持ちを抱かせ、科学の世界へと誘う。簡単に種明かしはしない。疑問を持ち、考えることから科学は始まる。スプーン折りの動画(movファイル5.3MB)はここ。
市原さんの授業開きは数量的感覚の話から。コップ1杯で200リットル、などと言ってしまう生徒が居たりするが、物理を勉強する上で、1kgや1mなどの数量的感覚も身につけて欲しいと思っている。放射線等も、○μSVなどと言われているが、それがどの程度の量なのかわからなければ意味がない。授業は次のように展開した。
・まず生徒に記録テープを渡し、「自分が1mと思う所で切ってごらん」と伝える。
・実際の1mと比較させると、誤差率が50%近くある生徒もいる。
・その記録テープは無駄にすることなく、そのまま運動を記述する練習に使う、と言って、力学台車の実験に用いる。
宮崎さんからは「NASAゲーム」の紹介があった。産業能率大学経営学部小林 昭文教授(元埼玉県立越ヶ谷高等学校教諭)に紹介していただいたもの。クラスで,討論をする雰囲気が乏しいときや討論をさせる前に行うとよい。また,担任ならLHRで行うのも今後のクラス運営に資すると思う。このゲームは社会心理学者のジェイ・ホールが1971年に提案したゲームで、個人の回答とチームの回答を比較して、ポイントが高くなったか低くなったかを見ることによって、グループディスカッションが有効であったかどうかを判断する。実際に行った人の話では,グループの議論はいろいろと出てきて,生徒はとても楽しんでいるようだとのことだ。
例会の席でも参加者に実際にやってもらった。わいわいガヤガヤ楽しそうだった。
小沢さんは、まず、討論中心の授業(学習課題方式)の進め方を書いたプリントを配って説明した。最初の課題「原子1個の絵を描いて、説明を加えなさい」に対して、ほとんどの生徒が教科書通りの図を描けた。そこで、「原子1個なんて見えないはずなのに、なぜそんなことわかるの?」「最初に見つけた人は、どうやったのだろう?」と問いかけて、単に覚えるのではなくて、「どうして?」「本当?」って疑ってみようと呼びかけた。
車田さんは授業の最初に自己紹介カードを書かせる。その中に「乾電池の電圧は?マグネシウムの燃焼を見たことは?一円玉の直径は?」など、理科の簡単な問題が含まれる。次に授業規律と授業ノートの説明をする。授業ノートはYPCに最初に来た頃、鈴木健夫さんが実践していたものを真似て自分の授業改善や、長期入院の生徒、他の教員との意見交換に利用するもので、最近若手の教員が真似てくれるようになった。
そして最後にパフォーマンス。化学の授業では、コーラのペットボトルに赤、黄、青、無色と色をつけイソジンでコーラ色にして、色変わりの実験を見せる。物理の授業では、皿回しの要領でトレー回しを見せ、物が回転している中心付近に重心があることを見せる。
中野さんは、新採用となって初めての教壇。初回はアイスブレイクとしてチーム対抗で「ペーパータワー」を実施(参考:http://atsuhino.blogspot.jp/2012/04/blog-post_15.html)。作戦を立てて実行し、結果を確認して改善策を立てる、という一連の活動が科学的なやり方そのものなんだよ、と解説。2回目以降は高校物理の学習範囲のゴールであり、東日本大震災以降身近な物理トピックであるところの「原子核と放射線」からスタート。「Powers
of Ten」のDVD視聴、ガイガーカウンターで放射線を測る実験から、物理の研究が見えない世界を明らかにする仕事であることを伝えた。授業づくりの参考にイギリスGCSEテキストの「New Physics for You」・「New AQA Science GCSE Physics Teacher's Book」、「教室で教えたい放射能と原発―子どもと考える授業のヒント」を使った。
水野さんが今年度高2選択物理(受講者12人)の最初の授業で強調したことの一つは「世間の常識は必ずしも物理の常識ではない」ということたった。
例えば、世間では「集合時間は○時」とか「開始時間は○時」というが、正しくはない。正しくは「集合時刻○時」、「開始時刻○時」と、「時間」と「時刻」を使い分ける必要がある。
他にも「今日は発熱のため休みます」「熱があるから休みます」とよく言うが、これも物理的には正しくない。人間は常に熱を発しているし、熱は「ある」ものではなく、高温物体から低温物体に「移動する」もの。回りくどいけど、正しくは「今日は通常より体温が高いので休みます」と言う。
このように物理では言葉の使い方に注意が必要だが、日常生活であまり物理的な正確さを要求すると、周りから変人扱いされたり、煙たがられたりするから、その点も注意するように、というようなことを話して授業を始めた。
定年してこの春から第二の人生を歩み始めた山本は、大学の教職課程の講座を担当することになった。中高の教員をめざす若者を育てるのだ。土曜日に講座が集中していて、90分授業5コマ連続という過酷な時間割をこなしている。それよりも大きな悩みは、実験ができる講義室がないことで、中学・高校なら理振法で当然そろっているような当たり前の実験機材もない。それでも、実験のできない理科教員を世に送るわけには行かないので、百均ネタの実験や、録りためてあったビデオなどを持ち込んでとりあえず授業を始めた。NHK教育の「考えるカラス」は学生にも評判がよい。
600Vで箔検電器 市原さんの発表
1個3Vのボタン電池を200個直列に並べ、積層電池のようにすると箔検電器の箔が開く。そうやって帯電させた箔検電器で、帯電棒の正負を判断する材料とする。600Vはとても危険なので、うっかり素手で両端に触れないように注意する。生徒には絶対に触らせてはいけない。
市原さんの勤務校では、以前はカメラのフラッシュ用の0340(510V)の電池(写真左)を使っていたが、古くなっていて電圧が取れなくなってきたため、秋葉原でバルク品ボタン電池を購入した(写真右)。1個あたり30円。一列に並べるのは手間だし、感電注意だが、電源装置や昇圧回路等のブラックボックスをはさまないで生徒にプラスマイナスを判断させる点では、良い材料だと思う。
抵抗値と温度 喜多さんの発表
温度が上がる抵抗値はどう変化するのか、という視点で気になる物として、準備したものは左から ①電子工作で用いられる抵抗、②電球のタングステン線、③導電性のある黒い紙、④シリコンウエハー、⑤半分削ったダイオード である。それぞれの両端をテスターにつなぎ、室温での抵抗値を測定する。その後、ヘアドライヤーで温めたときの抵抗値を測定する。
それぞれの抵抗値はどのような変化をするだろうか。選択肢は、1.増える、2.変わらず、3.減る の三択である。結果は、②のタングステンフィラメントだけ増え、その他は減った。
④⑤は半導体なので、温度が上昇すると励起されるキャリアが増えるということで納得できるが、①③は意外だった。
力学的エネルギー保存の法則の映像 水上さんの発表
振り子の運動で力学的エネルギー保存の法則(mgh=1/2・mv^2)が成り立っていることを確認するための毎秒300コマの映像である。図の方眼は5cm間隔。
おもりを最下点より1目盛り高い(h=0.05m)位置から手ばなし、コマ送りで、最下点の左右一目盛分、すなわち10cm移動するのに30コマ分(時間は⊿t=0.10s)要することから、最下点を通過する速さは0.1m÷0.1s=1m/sと求まる。おもりの質量をm〔kg〕とすれば、mgh=m×9.8×0.05=0.49×m〔J〕。また1/2・mv^2=1/2×m×1^2=0.5×m〔J〕で両者はほぼ等しい。
以下、h=0.2m(最下点より4目盛り上、⊿t=0.05s)、h=0.45m(9目盛り上、⊿t=10.5/300〔s〕)から手ばなしたときのシーンでも同じことを行う。今月のYPCニュースに詳細が掲載されている。
精密板金加工の自転車 佐々木さんの報告
佐々木さんは、4月9日~11日に開催された医療機器の展示会「MEDTECH Japan 2014」の報告をした。 医療機器ブースの他に、医療分野に活用されている中小企業の技術展示ブースもあり、
そこで静岡の企業、オノックスエムティーティーさんによる精密板金加工の自転車のアクセサリー(写真左)をいただいた。車輪の直径は1cmほど。同社は、一点モノの設計製作から小中ロットの多品種製品制作を得意としていて、この自転車には高速レーザ加工という技術が使われている。いただいてきた自転車は、いつも通りのじゃんけんで5名のもとへ。
宇宙エレベーターロボット競技会 佐々木さんの紹介
第2回宇宙エレベーターロボット競技会の開催が決まった。前回は実行委員と関係の深い学校に限定しての試行的な大会だったが、今回は広く募集する。本物の宇宙エレベーターも、夢物語から実証実験開始の段階へと移ってきた。身近なレゴ社・マインドストームを使って小学生から高校生のチームが交流するイベントを通じ、宇宙エレベーターがさらに広く認知されればと思う。佐々木さんの勤務するアルファ企画も、レゴ・エデュケーションさん、ナリカさんと一緒に実行委員会のメンバーとして協力している。皆さんの学校でも是非、参加をご検討いただきたい。詳しくは、http://space-elevator.narika.jp/ へ。案内チラシのPDFファイルはここ。
12kgの隕石 関東学院理科室の展示品
例会会場の関東学院理科室にさりげなく置いてあった隕石の標本。大きいものはハンドボールほどの塊で、12kgの表示通りずっしりと重い。磁石を近づけると吸い付くところと、付かないところがあった。小さい標本はカットされていて、断面にウィドマンシュテッテン構造がかすかに現れていた。成分のニッケルによる結晶構造で、100万年以上の時間をかけて溶融状態からゆっくりと冷えたことを物語る。
二次会 黄金町駅前「華の舞黄金町店」にて
10人が参加してカンパーイ!。今回は例会参加者も、二次会参加者も比較的少なかったが、多くのメンバーの授業開きを聞くことができ、ゆっくりと議論を深めることができた。例会参加者の中から4人もの新採用者が出たこともうれしい。教員としての門出を祝して乾杯!
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