例会速報 2015/08/22 八王子セミナーハウス


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ネット上のデマ 市原さんの発表
 ネットに「烏龍茶にCCレモンを入れてみたら、スゴイ事になった。」という記事があった。「烏龍茶」と「CCレモン」で検索してみると、2012年に投稿された動画が元ネタのようである。烏龍茶の色がきれいに消える動画なのだが、それに関してtwitterやブログで解説している人もいた。解説として、CCレモンに含まれるクエン酸で色が消えるという情報もあったが、ブログで検証してみた人は実際にやってみたところ、色は消えなかったようである。
 例会でも市原さんが色が消えるようすを実演して見せてくれたが、これは実は烏龍茶に見せかけて薄めたヨウ素溶液(イソジン液など)を使った、有名な酸化還元化学マジックである。ヨウ素分子がビタミンCで還元されてヨウ化物イオンになると色が消えるのだ。
 マジックをそれと断らずにさも事実のように映像で報じることにも問題があるが、それを真に受けて自身では確かめもせずに引用して記事にし、誤った解説を加えて「夏休みの自由研究のネタに・・」などとは、まことに無責任なことである。

錯視と光 舩田さんの発表
 舩田さんは科学の祭典などで各種の子ども向けの工作を指導している。今回、小学校の先生方を対象に行った実験工作指導の報告である。そのレパートリーは次第にチューンナップされている。
 
1.「見守っている羊」
 昨年の合宿例会でも紹介があった錯視の紙工作だが、これがおそらく最終版になるだろう。「理科の探検」自由研究号にも舩田さん自身の記事が載っている。

2.ブラックウォール工作
 ブラックウォール(左)を作りなれた子どもには白黒反転した(両側黒く中央が透明)のホワイトウォール?(右)をみせて、どうやって作る?と問いかけると、けっこう悩む。
 

3.ウラカエセル?
 詳しくは2010年1月例会の越さんの紹介記事を参照。牛乳パックを切って作成するので材料費は0。科学の祭典では「祭典終了までに質問に来ればいくつかある解のうちわかりやすいものを教えます。」といって渡している。 

4.「風独楽」は工作用紙にホログラムテープを貼るだけでできる。きれいで子どもにも簡単に作れて評判が良い。小学校の先生方にも作ってもらった。
 

5.三原色のLEDで2色混合を見せたあと、回折格子シートで混合した2色を分ける観察をする。
 

 さらに、電球や蛍光灯、自然光を分光して比べる。次いで太陽スペクトルの話をして太陽大気の組成の話で結んだ。

LED電球と高抵抗 田代さんの発表
 安価なLED電球に高抵抗の抵抗器を直列に入れると、なぜか点滅する。動画(movファイル232KB)はここ。発見の引き金は、田代さん宅のLED電球が数分ごとに点滅するようになったこと。壁面埋め込みスイッチが油と水分で汚れたためと思い、スイッチ部分を新品に交換したらなおったとのこと。そこで高抵抗の抵抗器を直列に入れたら点滅した。理由はよくわからないが、多分コンデンサが関わっていると思われる。LED電球2個を直列にしても点滅する(写真左)。動画(movファイル699KB)はここ
 写真右は交流と直流の違いを示すLEDの装置。100Vで計算した抵抗値で、数VでもLEDは点灯した。
 

 交流100Vで直列12個の豆電球を点ける。12個が同じ明るさで点く(写真左)。「電気がだんだん使われてなくなっていく」というミスコンセプションを正し、どこも等しい電流が流れることが示せる。一つ一つの豆電球に加わる電圧が等しい(約8V)という説明にも使える。
 電流の一部だけ枝分かれさせると、その部分だけ豆電球が暗く点灯する(写真右)。ただし明るさは電流に比例するわけではないので、見た目に発光しない場合など、最初の方の授業では扱いきれない部分もある。
 

DVDで光の三原色 越さんの発表
 写真左のように、DVDのレーベル面と記録面の間にカッターの刃を差し込み、2枚に分け記録面だけにすると、透過型の回折格子として使える。中心のイルミネーションフルカラーLEDはRGBの単色LEDとICを1つまとめたLEDで、ホワイト、イエロー、レッド、マゼンタ、シアン、ブルー、グリーンと自動的に変色する。
 

 透明なDVDの中心の穴越しにこのLEDを見ると、LEDの直接光と、DVDでの回折光の両方を観察できる。つまり、元の色と、光の3原色のうち、どの色が合成されているかを、一緒に見られる。連続的に色が変化し、イルミネーションとしてもとてもきれいで、見ているだけでも癒され、ちょっとした卓上の置物にもなる。科教協大阪大会で教えて頂いたものを越さんが改良した。
 

エッグキャプチャー 越さんの発表
 越さんは、8月に東京お台場のビッグサイトで開催されていた「MAKER FAIR」で「科学ノート」が行っていた「エッグランディング、エッグキャプチャー」を紹介した。
 決められた材料で作った構造物を卵に取り付けて落下させるのがエッグランディング。構造物を床の上に置き、そこへ卵を落とすのがエッグキャプチャー。構造物の中に卵を落とすこと自体が難しいので、こちらの方が難易度が高い。ただし、糸の先におもりを取り付け鉛直に垂らし、それを参考に卵を落下させる位置を決めることができる。ルールは以下の通り。

材料:A4厚手コピー紙、ストロー4本、輪ゴム10本、チャック付ポリ袋(卵を入れる)、生卵(例会では割れても食べやすいように、温泉卵を使用)、セロテープ、ハサミ
製作時間:15分、高さ:4m程度(2階のベランダから)から、落下させる。

 例会での成功者は、エッグランディング、5人中2人、エッグキャプチャー、3人中1人だった。
 

弾性レポート 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんが科教協大阪大会で発表したレポートの説明があった。
 「抗力や張力の原因」を弾性変形の結果と説明するのは誤りである。「変形したから押し(引き)返す」と言う論理では作用反作用の同時性と矛盾してしまうからだ。
 「抗力を弾性では説明できない」ということを認めながらも「生徒の理解のためには弾性で教えたほうがよい」という立場もあるが、初めて力を学習する段階でのこの教え方は、当面わかった気にさせるだけで、誤概念をずっと持ち続けることになるので避けるべきだ。たとえ、理解しやすいように見える「モデル」でも、真理とは違う誤概念に結び付く教授法は避けたい。
 もうひとつ、「弾性は力の可視化のためのツールであり、すべての物質が弾性を持つことを学習の軸にすべきだ」という論理もあり、多くの小中学校で実践されている。鈴木さんは、この点については異論はないが、「弾性から力を見つける」ことと、「弾性が原因で力が発生する」(←これは誤り)ことは全く違うことに注意しなければならない。いつの間にか後者の論理で授業をしている実践が数多くある。鈴木さんは今回のレポートで、この点を強く主張した。

音と科学館 水野さんの発表
 水野さんはこの夏、科学館を3館(静岡科学館、浜松科学館、大阪市立科学館)と浜松市楽器博物館、NTTコミュニケーション科学基礎研究所を訪問した。理化部が今年の文化祭研究発表テーマを「音」にしたので、その参考にするためだ。このうち、静岡科学館、浜松科学館、浜松市楽器博物館、NTTコミュニケーション科学基礎研究所は生徒と一緒に訪問した。今年は部員が35人とほぼ1クラスに相当する人数にふくれあがり、大部隊での1泊2日の合宿となった(合宿参加は33人)。
 NTTコミュニケーション科学基礎研究所では、無響室を体験した。自分の発した声の反射音がまったくしない部屋というのは貴重な体験になった。
 

 静岡科学館、浜松科学館、大阪市立科学館では、それぞれ音に関する実験展示を中心に見て回った。特に静岡科学館では、真っ暗な無響室で様々な音を立体的に聞くという体験ができた。
 

 浜松市楽器博物館では、およそ1,300もの楽器が展示してあり、また実際に楽器に触って楽しめるコーナーも用意してあった。その他、どの科学館でも実験器具や展示の工夫など、大いに参考になったとのこと。部員たちにとっては大きな刺激を受けた訪問になったことと思う。秋の文化祭が楽しみだ。
 

採用試験の問題をどのようにすべきか 金子さんの発表
   金子さんは私学の教員採用試験について提言をした。
 現在の採用試験は、大学入試や模試のコピペなどが殆どで、これでは大学で本当に勉強したかどうかが分からない。金子さんは、学部で物理教育を受けたと言える最低限のラインは『ガウス積分』ができるかどうかだと考えている。
 例会の席での、「たとえば具体的にどのような出題でいくのか」という質問に対する、金子さんの回答は以下の通り。
    問1 積分の名前が言えるか
    問2 ガウス積分の計算ができるか
    問3 ガウス積分は物理のどのような場面で登場したか
 例会出席者からは、「ペーパーでは分からないので採用してからの伸びに期待」や「人間力」や「そこまで課すと合格者がいなくなる」、「ガウス積分は専門的過ぎる」といった現実的な感想が多かったが、ガウス積分を課した程度で合格者がいなくなるようであれば、日本の大学教育自体が体を成していないと考える方が自然だと金子さんは考えている。
 金子さんは今年で教員2年目だが、『教えることは大好きだが、学ぶ事は嫌い』な教員が多いように感じている。ちょっと耳の痛い話である。

静電気モーター工作会 市江さんの発表
 市江さんが今年の科学の祭典で出展した静電気モーターを、市江さんの指導のもと、参加者全員でつくってみた。静電気の実験は本当に奥が深く、これで完璧と思ってもうまくいかないことがよくある。特にイベントで何度も繰り返しやっていると突然動かなくなることがあり、今回その原因がわかった。今までのYPCで判明している「汚れをアルコールでふき取っておく」「セロテープは静電気を通す」という留意点に加え、ローターのフィルムケースが帯電してしまうとうまく回らないことがある。こういうときは、帯電した塩ビパイプをフィルムケースに近づけて帯電状態をリセットするだけでウソのように動き出すことがある。また、2本のアルミホイル帯は、フィルムケース側を近づけ、塩ビパイプ側が少し離れるように固定して、ショートをさせないようにすると再現率が格段に上がる。
 

二次会 八王子セミナーハウスにて
 12人が参加して、カンパーイ!飲みながら、食べながら、楽しく語らいながら、時間を気にせずに科学談義ができる。これが合宿例会ならではの楽しみである。年に一回の恒例イベントだが、今後も続けていきたいものである。


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