例会速報 2015/07/12 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:物理基礎「力と運動」 西村さんの発表
 西村さんは、今年度1学期の力学分野の授業実践について報告してくれた。西村さんは、いわゆるクリッカーのような聴衆応答システム(ARS)を活用したピア・インストラクション(PI)を取り入れた授業を実践している(2013年7月例会2014年1月例会同9月例会の報告参照)。今年度は、ARSで得られる生徒個別の回答データから、同僚の秋山教諭が開発した分析ソフト(2014年11月例会報告参照)を用いて、生徒個別のARSについてのフィードバックを与える学習票(ARS個別学習票)を生徒に配布し、形成的評価の実施を試みている(2015年5月例会同6月例会報告参照)。
 

 西村さんたちは、8月21日(金曜日)14:30~17:30に、コンファレンス東京 横浜会場(横浜駅みなみ西口から徒歩6分)で、「アクティブラーニング型授業研究会」を開催する予定だ。今回の発表はその予告編を兼ねている。詳しい案内は http://ars-class.sakura.ne.jp/AL_study_group.pdf/ を参照してほしい。多くの参加を期待する。
 

 今回の例会では動力学の範囲のPI問題を取り上げ、議論した。参加者からは次のようなアドバイスやコメントがあった。
◎PI問題は演示実験を題材にしたものにすると、問題文の意味がわかりやすくなり、かつ生徒同士の議論も焦点化されるのではないか。回答結果から、問題文の意味をよく理解しないまま回答している生徒が一定数いるように感じた。
◎PIは直前までの授業内容が生徒にある程度身に付いていないと成立しない。講義や生徒実験で、教師が生徒に学んでほしいことをきちんと学べているかをチェックし、適切にフォローする手立てを考えたい。そうすれば議論はもっと効果的になると思う。
◎これまで授業研究で西村さんが発表してきたものに比べて、今回はだいぶわかりやすくなったと思う。

 西村さんは、「今後もこうしたアドバイスを生かして、ARS個別学習票による形成的評価を実施して、生徒の学習状況を把握した、より確実で質の高いアクティブラーニングの実践についての研究を進めていきたい。」と意欲を燃やしている。
 

真空調理器の定量実験 小河原さんの発表
 小河原さんが、真空調理器を使った定量実験について報告してくれた。定性的な実験は数多く紹介されているが、安価で高性能な器具であり、ぜひ定量的に実験してみたかったということである。実験には、Vacucraftと加藤産業製を使ったが、最高で前者は460hPa、後者は170hPa程度まで減圧可能であり、加藤産業製がおすすめとのこと。
 

 圧力センサー内蔵スマートフォンや、前月例会で紹介のあったデータロガーなど、内圧を測定できる機器はいくつもあるが、班実験にはもう少し安価な測定器が欲しいところ。そこで、3千円程度の気圧計を購入して使ってみた。圧力の値は1分に1度、温度は30秒に1度しか更新されないが、減圧しながら測定するにはそれほど不都合というわけではない。ポンプの1回あたり空気吸引量がそれほど多くないため、圧力が減っても予想に反して温度はほとんど下がらず、内部気体の膨張はほぼ等温変化とみなせるようだ。
 

 次に、内部気体の分子量を求めてみる。まず、少しだけ減圧して状態方程式にP,V,R,Tを代入し、内部気体の物質量を求める。その際、体積には「表記容量」を代入してはいけない。水を満たして測ってみると、Vacucraftは70oz(2.07リットル)表記だが実際は2.2リットル、加藤産業製は1.8リットル表記だが2.1リットルほどである。ここで、容器を含めた全体質量を測定しておく。そして、さらに減圧して再度全体質量を測定し、内部気体物質量を計算する。すると、減った全体質量と減った物質量の比較から、減った気体の分子量が測定できるというわけである。何度も減圧し、その都度質量と物質量を記録すると、おおよそ29前後の結果が得られている。
 同様の実験を、二酸化炭素とヘリウムで行うと、多少空気が入った結果になるものの、質量や物質量の差で有効数字桁数が少ない割に、前者が42、後者が4.6前後の値を得る。
他にも、真空調理器と気圧計の組み合わせで定量実験が可能ではないかと思われるので、みなさんぜひ挑戦していただきたい。
 

杉並の小学校でミニエクスプロラトリアム 竹内さんの発表
 ワゴン車に展示品一切を詰め込んで、ミニエクスプロラトリアムを全国に出前している竹内さんは、杉並区の小学校で開かれた同展の様子を報告した。子どもたちが生き生きと活動し、目を輝かせている様子が伝わってくる。
 

大気圧体験器具リニューアル 天野さんの発表
 天野さんは、神奈川県立教育センターで展示されていた「ゴムピタくん」(埼玉県の石井登志夫さん考案)を見て、同様のものを百均グッズで作れないかと考えた。その結果できあがったのがこれ。厚さ10mmぐらいの丸く切ったフロアマットに、2個百円の鍋ぶたつまみをとりつける。ねじが抜けないように裏側に大きなワッシャ(これは百均ではない)をはさむのがポイント。机の上などに置くと、大人の力でも持ち上がらないぐらいだ。「大気圧の偉大さ」が体感できる。
 

弾性力論争の論点整理 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは、数年前から抗力を弾性で説明すべきではない、と科教協のレポートや『理科教室』への投稿などで主張してきた。その元は、YPCでの議論にあるし、改めて論点を整理しなおして、今年の科教協大阪大会で発表しようと考え、リハーサルを兼ねて例会で時間を取って議論した。
 新しい論点は、過去の『理科教室』の記事を洗いなおして、様々な授業実践でどう扱われているのかを見直してみた。それらを見ると、弾性に注目させることを強調する実践は多くあるが、それはあくまで力を見えるようにするのが目的で、力の原因を説明するところまで踏み込んでいるものは少ない。
 実は、この日が大阪大会のレポート締め切り日。鈴木さんは例会での議論を経て、「力の「原因」を弾性で説明するのはやめましょう」という題でレポートを申し込んだ。大会での議論の様子はまた次の機会に報告したい。
 

二次会 大船駅前「あじたろう大船店」にて
 13名が参加してカンパーイ!大船のいつもの店で暑気払いに一杯。今日は例会の発表数は少なかったが、その分、丁寧な討論ができた。科教協大阪大会や、理科関連諸学会も近い。どれも8月に集中しているので、互いにかぶったり連続したりとスケジューリングが大変である。YPCのメンバーにとって最も忙しいシーズンが始まろうとしている。


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