例会速報 2013/07/21 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:力学の模擬授業 目黒さんの発表
 今は数学を教えているが、物理教員をめざしている目黒さんは力の合成の『平行四辺形の法則』の模擬授業の導入部分を発表した。
 授業の狙いは体感的な実験を取り入れて、生徒の予想を打ち砕き、実験と理論の両面から生徒の感動を得る展開だった。例会参加者からは次のような指摘があった。

・何を生徒に予想させるのかを明確にすべき
・10分で生徒の心をつかみとる授業をすべき
・作用点や作用線を意識してプリントや実験をすべき
・体感的な授業を通して何を修得させたいのか明確にすべき

 一方、実際に模擬授業を体験した目黒さん自身にも気付きがあった。それは今の若い物理教師の知識が薄っぺらなこと、机の上で学んだことがそのまま実験で使えると思っているということ、そんな教師が教壇に立って、間違った概念を生徒に教える可能性があること、だという。「若い世代はそのことに自ら気づかなくてはならないということに気がついた。」と目黒さんは自戒する。

 目黒さんは神奈川県の採用試験にチャレンジする。熱意ある若者の健闘を祈りたい。今、高校教員は世代交代の大量採用時代を迎えている。目黒さんのような若い教員候補に期待が寄せられているが、反面、教育技術の継承の危機も懸念されている。物理の教員が職場に一人しか配置されておらず、新採用教員が孤立しているという状況は珍しくないからだ。地元の教科研究会や、地域に根ざした自主研修サークルの役割は重い。理科の若手教員の皆さんや、教員をめざしている人達は、ぜひ地元のサークルを訪ねてみてほしい。
 

新科学映画紹介 長谷川さんの発表
 長谷川高士さんから「イメージでわかる たのしい物理学入門・(1)力は時間と一緒にはたらく」というDVDの紹介があった。仮説社から販売されるとのことである。
 このDVDは、力の学習の初歩として使うことを想定して制作されており、力の概念を新しい切り口で扱う野心作とのことだが、法則・原理のとらえ方や物理用語の使い方、力の矢印の扱いなど、物理教育に携わる者の立場から見ると重大な誤用や問題点があるという指摘が例会出席者からなされた。
 実験の映像などはとても苦労して制作していることがわかるし、生徒の素朴な予想の声などはよくできているので、今後、しっかりとした物理専門の監修をつけて制作が進められることを期待したいという声が出た。
 

もじもじモアレ 市江さんの発表
 市江さんは、1月の神奈川学園例会で加藤さんから紹介のあった文字が現れるモアレをこの夏の科学の祭典全国大会に出展することになった。祭典の参加者に手軽に楽しんでもらえるよう多少の工夫を加えた。windowsの外字エディタを利用し(写真左)、自分で描いた文字や絵でモアレができる。詳しくは前回ニュースNo.304の記事をご覧いただきたい。
 

 外字エディタでオリジナルフォントをデザインし、ワープロソフトを用いてその文字だけを規則正しく並べて紙に印刷する(写真右上)。これにOHPシートに「・」(ナカグロ)の文字を白黒反転して同じピッチで規則正しく印刷したマスクシートをかぶせると、フォントのデザインが大きく拡大されたモアレ模様が浮かび上がる(写真左下)。右下の写真は「★」の文字で作ったモアレパターン。
 

自作フライングカーペット 越さんの発表
 越さんは、2013年4月の例会で紹介したテンヨーの「魔法のじゅうたん」を自作してみた。黒模造紙に青色の丸いシールを円周上に20枚ほど貼り、バックシートとする。じゅうたんはダイソーの蛍光ペーパーのレッドを用いた。クロマデプス3Dメガネは日本地図センターhttp://www.jmc.or.jp/map/jmc/digital_hyoko.html で入手したもの。

魔法の○○○○ 佐々木さんの発表
 佐々木さんが大阪に出張した際、昼食に入った店で出会ったという小ネタを紹介してくれた。注文後、何やらラムネのようなタブレットと、シロップピッチャーのようなものが登場、シロップと思われた液体をかけてみると・・・
 

 ムクムクと伸び上がってビックリ、拡げてみると紙のおしぼりだった(写真左)。名づけて「魔法のおしぼり」。ピッチャーの中味はただの水。レジでは、お土産モノとして販売していたため、迷わず購入(写真右)。客を楽しませようとする気質、最後は稼ぎを上乗せする商魂、さすが大阪!
 

eラーニング教材制作 佐々木さんの発表
 佐々木さんが勤めるアルファ企画では、eラーニングのシステムを活用し、初任理科教員向けノウハウ教材、学生向けの参考資料などの映像教材制作をスタートする。
 従来、映像教材の制作パターンは、出版社などからの依頼に基づいて制作するか、年度予算に余裕が出た、補助金が決まったなどの予算ありきでの制作だった。先生方に作りたい教材があっても、制作費を捻出することは困難だったと思われる。アルファ企画でも、これまで先生方のお手伝いレベルのことはしていたが、本格的な教材制作にはコストや販路がネックとなっていた。
 アルファ企画では今回、eラーニングシステムを持つ会社と連携し、新たな方式に挑戦する。それは
 ①コンテンツ・ノウハウ提供する先生
 ②撮影・編集を担う映像制作会社
 ③eラーニング・課金システム提供会社
の3者が各々の得意分野を持ち寄り、初期費用0で制作を開始、販売収益が上がってから3者に分配するというビジネスモデルだ。
 

 先生方にとっては、長期にわたって副収入を期待することができ、いい教材を作ることが収益につながる、書籍の印税のようなイメージとなる。システム提供会社は、既存のシステムの活用により開発費用回収に充当、映像制作会社も、販売収益分配による早期の制作費(人件費)回収を目指す。
 先ずは、地学オリンピック教材、化学実験講座の制作がスタートするが「物理分野は是非YPCで!」と佐々木さんは呼びかけている。
 佐々木さんのプレゼン資料のPDF版はここ

ピア・インストラクションの実践 西村さんの発表
 西村さんは第12回アジア・太平洋物理国際会議(The 12th Asia Pacific Physics Conference)で発表した「予習と振り返りを導入したPI型授業」について、ポスターを持参して報告してくれた。
 本報告は、従来のPeer Instructionに基づいた物理授業に、新たに「教科書の予習」と「授業終わりでの振り返り(授業でわかったこと・まだよくわからないこと)の提出」を導入した授業実践についての報告である。今年度の1学期力学分野の実践結果から次の二つの結論が得られた。
(1)授業一時間当たりに実施するPIの回数が多ければ多いほど、生徒が書く「振り返り」の文字数が多くなる。
⇒生徒にとってPI問題は印象深く、授業終わりでのメタ認知を促進していると思われる。
(2)概念調査の結果、予習状況、振り返りの文字数や内容の深さといった指標で、クラスごとに差が見られた。そしてその差は教師の「PIの時の議論の活発さ」と一致していた(議論が活発→それぞれの指標の数値は高い)。
⇒「予習」や「振り返り」は物理概念形成に本質的に関わる学習活動であることが示唆された。さらにこれらは、クラスの状況を掴むために有効な手段かもしれない。
 

 今後の課題としては、「振り返り」を更に詳細に分析し、PI一問一問の学習効果を定量的に示したり、授業が進むにつれて「予習」をしてくる生徒の割合が減少してしまったので、その改善策を考えていきたいと西村さんは考えている。また例会参加者からは、「物理の授業で生徒に予習をさせることの是非」について多くの意見が出た。西村さんは実践結果に基づき、この問いにも答えられるように研究を進めていきたいと語る。
 西村さんは2学期の波動分野、3学期のエネルギー分野についても、同様の実践を行う予定だという。またYPC例会での実践報告を期待したい。
 

二次会 大船駅前「あじたろう大船店」にて
 15人が参加してカンパーイ!初参加の人もうちとけて楽しく暑気払い。明日からの夏休みの計画を話し合う。夏は各地で教育研究大会が開催されるのでYPCメンバーは全国を飛び回って大忙しだ。教員採用試験にチャレンジする人もいる。がんばってほしい。8月は丹沢大山の麓で合宿例会、9月は慶應高校での例会となる。


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