例会速報 2015/12/13 株式会社ナリカ


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授業研究:アクティブラーニング実践の試み 西村さんの発表
 西村さんは昨年度より、聴衆応答システム(ARS)を活用した授業実践を試みている。昨年度はMazur氏が提唱した講義と生徒同士の議論を交互に行うPeer Instruction(PI)型授業を行ったが、生徒の学習観と授業形態の不一致や、生徒の学習における実態把握がうまくできなかったこと、授業と各設問のねらいが明確になっていなかったことなどが原因で、うまくいかなった。
 

 そこで今年度は、次の3つの点を改善した授業を実践したので、報告した。単元は力学である。
1. 授業形式…毎回の授業でPIを行うのではなく、単元のまとめで数問連続して行った。単元の前半は講義と実験を行い、知識を獲得したところで、後半でその知識の確認・定着を目指したPIを実施した。
2. 授業を行う場所…講義は普通教室、実験とPIは実験室で行い、学習への構えを作りやすくした。
3. 学習フィードバックとグループ編成…ARSによる質問・回答活動の結果を生徒個別にフィードバックするシステムを新たに作った。また学習上の特徴が異なる生徒同士でグループ編成することで、議論の活性化を図った。
 

 例会参加者からは、次のようなコメントがあった。
・生徒へのフィードバックコメントは、もっと前後の問題とのつながりを意識したものにすると良い。またフィードバックコメントで内容が理解できたかどうかを生徒にインタビューできると、改善につなげることができて良い。
・知識の確認のための問題は、選択肢が「Aの方が大きい」のように簡潔に書かれているが、「~~だからAの方が大きい」「○○だからBの方が大きい」と根拠もセットにして選択肢とすることで、生徒同士で議論するためのPI問題にすることができる。使い分けると良いだろう。
・西村さんの単元構成は、生徒同士が議論できるようになることが目的になっている気がする。科学の授業は、自然界を探究し、物理を理解させることが目的ではないのか。
・単元を通して一つの見方・考え方を身につけさせる授業展開・ストーリーになっていない。網羅的に教えようとしているように感じる。生徒は何をどのように考えなければならないのかわからず、混乱してしまうのではないか。
 以下は、例会発表後の西村さん自身の感想。
 「授業研究で発表すると、毎回とても勉強になる。今年実践している授業も、昨年の例会で発表したからこそできているのだと感じている。しかし、発表するたびに、自分の考えがまだまだ足りていないことを思い知らされ、生徒に申し訳なくなる。それでも、少しずつではあるが、前に進んでいるようにも感じている。これからも、ベテランの先生方の温かい言葉に甘え、同年代の仲間と切磋琢磨しながら、よりよい授業の実践をめざして、頑張っていこうと思う。」
 

エタノールロケットなど 舩田さんの発表
 舩田さんは、おなじみの持ちネタ4件を披露してくれた。
(左)エタノールロケット:エタノールピストルを使っているうちに容器が変形しフタを装着できなくなり使えなくなった。フタの代わりにロケットにしたら使えるようになった。大音量でなくなり、実験もしやすくなった。
(右)風独楽:科学の祭典等で十字形の風独楽を紹介してきたが、もとは壊れた下敷きの破片で作ったものである。いろいろな形があるが、長方形を良く作った。
 

(左)簡単なモーター:安全を考えたらマンガン電池を使い、導線はアルミホイルを折ったものが良い。クギの頭と同じサイズのネオジム磁石を用いる。電池は単独で袋に入れて配布すること。持ち帰り時にショートさせないように配慮する。
(右)ハートのモーター:マンガン電池を使う。フェライト磁石は1個で可能。フェライト磁石をアルミホイルで包む。側面は滑らかにし、電池はプラスを下にして立てる。適度に離れるように銅線はハートの形にしてセットし、電池の回りを巻かないようにする。必要ならば電池の上に落下防止のワッシャーを置くと良い。
 

四角のP-V図を作りたい 市原さんの発表
 市原さんは、広島の土肥健二さんが夏の科教協で発表していた「ペットボトルの内圧を音で測る」を追試してみた。
 ペットボトルの圧力が高くなると、叩いたときの音程も高くなっていく。おそらく、ティンパニが張りで音程を変えるように、ペットボトルの張りが強くなると、音程が上がるのだと考えられる。その音程からペットボトルの内圧を判断できると考え、実際に内圧を圧力センサを使って測ってみることにした。
 圧力センサを単独で用いると横軸は時間になる。せっかくだから、教科書などで見かけるPV図にするために、体積を測定するにはどうしようかと問いかけたところ、注射器と距離センサを併用してはどうかと教えてもらった。ちなみに、ペットボトルをつなぐ道具は、初めは自作を試みたが、すぐに空気がリークしてしまい上手くいかず、慶應高校の喜多さんの紹介で、YPCの徳永真由美さんがかつて分けてくれたPETボトルコネクタ(写真)を使うことにした。YPCのアイデアを結集した研究は現在進行中である。乞うご期待。動画(movファイル2.4MB)はここ
 

ライトセーバー即売会 海後さんの発表
 映画スターウォーズの新作公開に合わせて、以前に海後さんが自作したゴムバンドのうなりを利用したライトセーバーの改良型をケース付きで限定数販売した。カラーフィルター付きで白、赤、青、緑の4色の光を楽しめる。主な改良点は、アクリルパイプをポリカーボネイトに変更してバトルも可能にしたことと、LEDライトをグリップが細長いタイプに変更して、アダプターや部品類も目立たなくて細身のものに改良したこと。
 しかし、肝心のうなりを発生させるゴムバンドは輪ゴムのバンドから、暗闇で目立たなく強度もあると思い黒いゴムバンドに変更したが、発表中にバンドが切れるハプニングが発生。購入者には対策品を提供するとしたが、その時点では切れた原因が分からなかった。
 後日海後さんが原因を調べたところ、強く引いた状態ではアメ色のゴムのほうが伸縮性が良いので黒ゴムよりも切れにくいことが分かった。さらに軟質のアメゴムのほうが音質も良くて、うなりを発生させるのには向いていることも分かったので、対策品はアメゴムをライトセーバー専用に加工して提供することにしたとのこと。
 

宇宙ガラス 海後さんの発表
 海後さんが昨年、多くのクラフト作家が出店した水戸のイベントに行ったところ、「宇宙ガラス」という神秘的なガラスアクセサリーの出店を見つけた。銀粉入りと人工オパール入りのペンダント(写真左)を購入したが、本当はガラスの中の宇宙にオパールの惑星が浮かぶもの(写真右)が欲しかったが、3万円以上もして、予約しないと買えないようなのでなかなか手が出ない。詳しくはここ→ https://twitter.com/plusalpha_glass
 

磁気浮上実験セット 山本欧さんの発表
 山本さんは東京電機大の担当講座で学生一人ひとりに製作実習をさせている回路を紹介してくれた。コイルの磁力で直径5mmほどの鉄球を空中に静止させる。静磁場では安定的な浮遊は実現できないが、フィードバック制御で、磁場の強さを短時間に微妙に変化させて、つかず離れずの位置に鉄球をとどめる。キット化しているが、抵抗などのパラメータは学生が各自計算して決める。動画(movファイル2.4MB)はここ
 

車輪てつぼうくん 越さんの発表
 2014年度「日本おもちゃ大賞」を受賞したおもちゃで、子供から大人まで楽しめる。定価3980円+税。
 選手の脚を屈曲させることで重心移動し、体が次第に大きく振れるようになり、タイミング良く重心移動させ続けると大車輪させることができる。更に回転速度を上げ、適当な速さに達したところで赤いボタンを押すと(押し続ける)と、鉄棒の回転軸が定点でロックされ、体全体が回転しながら、斜方投射される。うまくいくと、正立した状態で着地する。足裏と着地マットは、マジックテープになっていて、ある程度傾いた状態でも、倒れずに着地成功できる。スローモーション映像はここ。→https://www.youtube.com/watch?v=KlICRjzTyO4
 単純だが難易度が適当で面白く、その仕組みを探求することも興味深い。おもちゃとして完成度も高く、開発者の苦労が偲ばれる。例会当日の動画(movファイル3.7MB)はここ
 

格子虫 成見さんの発表
 成見さんは、「紙の工作所」の「格子虫(コウシムシ)」という不思議な紙製のおもちゃを紹介してくれた。紙が格子に組んであるだけだが、つついたり、まわしたり、はじいたりすると、紙の虫のように不思議な動きをするおもちゃだ。色も形も不思議に変化する。動画(movファイル2.3MB)はここ
 詳しい情報はここ→http://www.kamigu.jp/category/select/cid/355
 

手づくりワインボトルホルダー 成見さんの発表
 成見さん手づくりの「ワインボトルホルダー」のご紹介。「重心」の教材にうってつけ。穴の部分を利用した絵をつけて工夫している。その場で即完売した。すでに予約注文も・・・
 

オリンパス STYLUS TG-3 Tough 加藤さんの発表
 少年写真新聞社の加藤さんは取材用にも使っているというコンパクトデジカメ、オリンパス STYLUS TG-3 Toughを紹介してくれた。防水、耐衝撃といった機能も魅力的だが、マクロ撮影に強いのが決め手となって昨年購入したという。被写体に1cmまで近づけて撮れるので、ズームと合わせて使うとちょっとした顕微鏡くらいの倍率で撮影できる。お札のマイクロ文字もくっきり(右)。また、ピントを少しずつずらしながら連写し、手前から奥までピントが合うよう自動的に合成する「深度合成モード」もあり、昆虫などを撮るのに適している。別売りのアクセサリであるLEDライトガイドレンズ前に取り付けると、LEDの光を拡散させてリングライト代わりになる。現在では、最新型のTG-4が販売中。
 

 下は加藤さん提供の、TG-3でマクロ撮影した「カラー印刷の網点」(左)と、「深度合成モードで撮ったタマムシ」の写真。倍率もさることながら被写界深度が深いのが素晴らしい。
 

ミラクルロケット 益田さんの発表
 ポリエチレンのネットでできた鉛筆ほどの太さの筒(左)を、手で包むように長さ方向に押し縮めてから手を放すと、意外に高く飛び上がる。例会では格安即売会も行われた。動画(movファイル1.9MB)はここ
 

磁石をテーマに 水野さんの発表
 10月31日(土)に実施した神奈川学園でのオープンキャンパスの際、同校理化部は「磁石」をテーマに、おもに本校中学校を受験希望の小学生相手に実験をした。
 

 砂鉄集めから始め、鉄くぎの磁化、磁界説明器で磁力線を見る、粉状にした磁石は磁力を持たないが別の磁石で磁極をそろえれば再び磁石の性質を持つ、ガウス加速器、電流の周りに作られる磁界、電磁石、モーターの仕組み、リニアモーター、磁石とコイルと振動板があればマイクとスピーカーは使い方が違うだけで同じ仕組み、ふりふり発電・パチンパチン発電、2台の手回し発電機で、一方を回転させればそれは発電機になり、その時流れる電流をもう一方の手回し発電機に流せばそれはモーターになる、つまりモーターと発電機は同じ仕組み、渦電流とコイン選別器、IH調理器で電池はなくても豆電球は点灯する、磁石と超伝導体を使った実験など。
 

 来てくれた小学生は、理屈はよくわからなくても現象の面白さで磁石に少しは興味を持ってくれたのではないかと思う。そして何より、企画と説明を担当した理化部の生徒のはげみになっただろう。
 

生徒が作った加速度測定アプリ 喜多さんの発表
 喜多さんは昨年4月、円運動の授業で、等速円運動をしている物体にはたらく力が中心に向いていることを、加速度センサーを使って定量的に示した。この授業を聞いていた生徒のO君は、「先生、それ、スマホのセンサーを使えば、簡単にできますよ」と、一週間後に作成したアプリをもってきた。 その後、「開始遅延」、「自動終了」の機能を付けてバージョンアップ。今ではAndroidスマホ・タブレット用のアプリとして”Playストア”に”AccelerateGraphic”のタイトルでフリーソフトとして公開されている。
 加速度センサーはスマホを縦位置で持ったとき、短辺の右向きがX軸の正、長辺の上向きがY軸の正、画面に対して表から裏がZ軸の向きである。X軸が緑、Y軸が赤、そしてZ軸が黒で表示される。
 右の図は、液晶面を鉛直面に平行になるようにして落としたときの記録である。落とす前にY軸の値は重力加速度を示している。手離した後、それが0になることが分かる。
 

 次に振り子の実験。左下のように板にスマホを付け、板の上部に回転軸の穴をあけ、棒にさして振り子にした。この場合、Z軸は水平方向になるので、0となる。そして手離す位置は鉛直に対して、45度傾けたところにした。その結果、X軸方向とY軸方向に対する重力加速度の値が同じになる。手離した後は、Y軸方向の値が大きく変化し、X軸方向の値は小さく変化することが分かる。
 それにしても、これが「生徒作品」とは!後生畏るべし。
 

人物でよむ物理法則の事典 右近さんの書籍紹介
 昨年11月、朝倉書店より「人物でよむ物理法則の事典」という本が出た。米沢富美子総編集/辻和彦編集幹事で、右近さんもアンペール、フランクリン、ヘルツなど、8名ほどの記事を執筆している。物理学の法則や現象について、発見等に貢献した物理学者358名の「人物」を軸に構成、法則の理論的解説を中核にすえつつ、法則発見につらなる人物・時代・歴史まで包括的に解説している。
 授業で使えそうなネタが多く詰まっており、決してWeb等では得られない内容だ。少々値が張るので図書館などに備えてもらえればきっと役に立つだろう。

A5/544ページ/2015年11月25日/ISBN978-4-254-13116-1 C3542/定価9,504円(本体8,800円+税)

詳しい情報はここ→ https://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-13116-1/

グリフィスの電磁気学入門から 宮崎さんの書籍紹介
 米でもっとも使われていると言われるグリフィスの電磁気学の教科書。方程式を記述するとき、原因と結果という因果律を意識してしまう書き方でなく、「相関して」生じる関係であるから、記述の仕方を工夫しているとグリフィスは書いている。昨今、物理教育学会で議論になってる「変位電流」に関連して、鈴木亨さんがAPEJで紹介した本だが、宮崎さんは「たまたま」自宅にあったとYPCで紹介してくれた。因果律でなく、相関関係である物理量は他にもあるので、気をつけたい。
 

二次会 御徒町駅前「まつうら」にて
 22人が参加してカンパーイ!毎年恒例だった12月のナリカ例会。社屋改築工事のため昨年はお休みだったが、この夏新装なって例会も復活。なじみのこの店でこれまた恒例の忘年会となった。ナリカはアクセスがよいので参加者も多い。例会本体の参加者は40人超。二次会にはその半分以上が参加していることになる。来たる年がよい年になりますように。


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