例会速報 2015/11/15 関東学院中学校・高等学校


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授業研究:仕事とエネルギー 勝田さんの発表
 勝田さんは仕事とエネルギーの単元について、次のような戦略をとった。
 エネルギーに対して「仕事をする能力」というような無理やりな定義を与えるのではなく、「なんだかうまく定義できないが、次のような性質を持つもの」とする。
1.総和は常に一定
2.仕事を通してやり取りできる
3.他のエネルギーに変換できる
 このすべての性質は力学に話題を限定しても学ぶことができると宣言。ジェットコースターの例を通して、仕事とエネルギーに定性的な描像を与える。教科書のように、定義→活用という形式ではなく、現象から入って新しい量の定義に必然性をもたせる。そして、単元を通して可能な限り実験結果を出発点として筋の通った展開を実現する。
 

 授業はワークシートを使用し、生徒活動(実験結果の予想、議論、振り返り)に多くの時間を割き、演習はほとんどやらない。扱う課題は生徒の誤概念に焦点を当て、認知的葛藤による克服を目指す。(仕事とお金のような)例え話はしない。
 欠席した生徒やテスト前の学習のために、授業の録画をYouTubeにアップし、ワークシートのPDFと共にウェブ上に公開している(但し、アクセスできるのは授業クラスの生徒のみ)。
 

 発表を終えて、勝田さんは次のように感想を述べた。「YPCで発表すると、いつも率直な意見をもらえるのでとてもありがたい。今回一番驚いたのは、「ビースピは個体差が大きい」ということ。そしてそれを当然のようにみんな知っている会員諸氏。なんなんだこの団体、、、と思った。」(^^)
 例会で配布したワークシートと授業ノートは、下記リンクにて公開中。
授業研究:仕事とエネルギー20151115 勝田(中大附属)
<https://www.evernote.com/shard/s382/sh/34e6f49c-8548-4e5a-b576-0b35c999dd82/894b3f6d2b9f8b116943f07c18b2c1f5>
 

ソーラー・オーニソプター 海後さんの発表
 オーニソプター(ornithopter)とは「羽ばたき飛行機」のことである。海後さんは、数年前に大田区の展示会で見て、欲しいと思っていた羽ばたき機構を持つオーナメントをついに購入した。永久ゴマと同じような原理だが、コイルに対して磁石を回転させるのではなく往復運動で推進力を発生させる構造が特許技術となっている。ステンレス製の羽根は交換可能。軽い鳥の羽根をカットしたものでも良く進む。動画は(movファイル4.4MB)はここ
 

手づくりレーザーソード 海後さんの発表
 12月にスター・ウォーズの新作が公開されるということで、海後さん自身が7年前の例会で「スピリットキャッチャー」として紹介してくれた自作のライトセーバーの光源をLEDライトからレーザーポインターに変えて、レーザーソードを気取ってみた。グリップ部分にレーザーポインターを使用している。
 

 幅広の長いゴムひもを剣の部分に沿って張り渡してあり、凧の「うなり」のようにしてある。振り回すと風を切ってブンブンという音を出す。これがライトセーバーの効果音とそっくりなのだ。動画で音も確認してほしい。実演動画は(movファイル5.7MB)はここ。今回も欲しいと言う参加者がいたので、海後さんは改良型を何本か試作して次回例会に持参予定だという。
 

ピンホールの影 海後さんの発表
 2015年9月例会で海後さんが発表した「ピンホールと単スリットの直接観察法」において、ピンホールを覗いていると自分のまつ毛の影が、ピンホールの穴の中に倒立に映って見えるのは何故なのか分からなかった。そこで海後さんは「光と色と」の桑島さんにメールで質問したところ「フーコーテスト」と同じ現象では?とすぐに回答があり、その確認方法もアドバイスしてもらった。
 さっそく、ピンホールと目との間に、細い針金をかざして前後に動かして見た。すると針金がピンホールに近いと影は大きくボヤけ、目に近付くと影は小さくクッキリと見えたので、影は網膜に投影されているということが確認できた。視覚はレンズによって網膜に映じた倒立像を脳内処理で正立として認識する。上から下りてくるまつ毛の影はピンホールの手前側では倒立像の上側、つまり正しく見た像の下側を隠すので、まつ毛が下から上がってくるように見えるのだ。
 ピンホールを覗いて自分のまつ毛の影が下から上がってくるのを見たら、穴に影が映っている錯覚に混乱するのは皆ほぼ同じであることが、例会参加者にも体験してもらって確認できた。錯視実験としても面白いと思う。
 それにしても、錯覚であることを確認するための実験方法として、実験スタンドにLEDライトとピンホールを設置して机上に投影する方式が、例会発表中に参加者のアイデアが集まってすぐに形になるところが、いつもながらYPC例会の素晴らしいところである。実験中の動画は(movファイル7.8MB)はここ
 

CEATEC2015のレポート 櫻井さんの発表
 櫻井さんは毎年,アジア最大のIT /エレクトロニクス総合展であるCEATEC JAPAN(Combined Exhibition of Advanced Technologies)に行き、定期試験後のお楽しみ授業として最新技術のプレゼンを行っている。今回はCEATEC JAPAN 2015の報告である。
 

 今年の展示やカンファレンスでは、昨年までの8Kテレビ、燃料電池自動車、5G通信に加え、今年はIoT(Internet of Things)やCPS(Cyber Physical System)についての展示がクローズアップされており、ITとヒトの関わり方の変化を感じたという。数年後には社会に出る生徒たちが、このようなチャンスに積極的に参加し、先見の明・先見の識を養えるようになれれば嬉しいと櫻井さんは思っている。
 

モンキーハント装置 天野さんの発表
 天野さん自作のモンキーハンティング装置。落下装置の方は、残留磁化の影響でタイミングが遅れるのを避けるため、永久磁石で吸い付けておいて、電磁石で一瞬逆向き磁場を発生させて打ち消す方式だ。これだと、長時間電磁石に通電しなくてすむ。
 

 弾丸の射出機は吹き矢方式。アクリル管の内径と、廃品の単三電池の外装をはずしたものがちょうどぴったりのすりあわせだったという。電池が飛び出すときに吹き筒の先端の電極をショートし、上の写真のコイルに一瞬電流が流れる仕組みだ。

伸縮式気柱共鳴装置 天野さんの発表
 新旧のリソグラフのマスターロール芯が、偶然にもちょうどぴったりはまるサイズだった。左手で持っている方は閉管になっている。重ねて抜き差しすると長さが変えられる閉管となり、気柱共鳴の実験に使える。
 

回路カードシステム 山本による森本雄一さんの実験教材の紹介
 かがく教育研究所・ファラデーラボの森本雄一さんは、小学校から高校までの電気回路実験のために、汎用性の高い個人用の「回路カード」を考案し、児童・生徒および教員向けの講習を精力的に行っている。
 「回路カード」はA6版のコート厚紙に幅6mmの銅箔テープを貼り付けて回路を形成する。小学校向けの簡易版「回路カード工作・実験キット」(写真左)と、中高生向けの「回路カードシステムキット」(写真右)の二種類があるが、いずれもパターンが印刷してあり、切れ目も入れてあるので、手でパーツを切り離して簡単に工作できる。なお、キットとして提供されるのは厚紙と銅箔テープだけで、電池、抵抗、豆電球などのパーツおよび、パーツを押さえるためのダブルクリップなどは別途調達する必要がある。
 生徒一人ひとりが普通教室の机の上で使え、工作が簡単で、保管に場所を取らないことなどが開発のコンセプトだ。

 下の写真は簡易版の「回路カード工作・実験キット」のパーツと組み立て例。★印の切断部にパーツをのせてクリップでとめる。右は導通テスターの回路。定番実験は「1円玉、10円玉、100円玉、これを、電気を通すものと通さないものに予想して分けてください。」と言って予想してもらい実験して確かめる。子どもはもちろん、大人や小学校の先生でも意外と悩むのだそうだ。
 

 下の写真は「回路カードシステムキット」のパーツと組み立て例。トランジスタ、ダイオード、LED、コンデンサーなどを自分で調達して加えるとパーツの数が豊富になり、工夫次第でさまざまな回路が組み立てられる。こちらのキットは粘着剤にも導電性がある「導電型銅箔テープ」を使用している。パーツの足に銅箔テープを重ねて貼るだけで電気的接触が確保できる。ただし粘着力はあまり強くないので、銅箔にハンダ付けできれば一番よい。
 以上、二種類のキットはかがく教育研究所で販売している。
 詳しい解説は、森本雄一「回路カードシステムの開発と活用」日本物理教育学会近畿支部年報・近畿の物理教育21(2015年3月)を参照。
 

二次会 黄金町駅前「華の舞」にて
 10人が参加してカンパーイ!今回は二次会参加者が少なめだったが、例会自体は充実していて、深い議論がなされ、時間内に発表を消化しきれなかったほどだ。せっかく話題を持ってきてくれたのに次回回しになった方々、ごめんなさい。12月例会は再びナリカの新社屋が会場。きっと大勢集まるだろうなあ。


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