例会速報 2016/03/13 多摩大学附属聖ヶ丘中学・高等学校


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授業研究:運動方程式 宮崎さんの発表
 接触2物体や糸で連結した2物体の運動方程式の問題を解く時、生徒は加えた力がそのままの大きさで2つめの物体にはたらくと考えがちだ。宮崎さんはその点について、班で考えさせて意見を交換し、実験によって確認した。拓殖大学の岸澤先生からアイデアをもらって、ヤガミの定力装置を使った問題を考えた。
 加速度に違いがあるので、競争させて確認する。次に定力装置で引く台車におもりを載せて再度競争させて今度は加速度が同じになるのを見て考えるというところが宮崎さんが工夫した点だ。
 

 現在の職場にあるヤガミの定力装置で予備実験をしているときに宮崎さんが気がついたのは、100gwのはずの力が130gwになっていることだった。距離センサーを使って運動を解析して130gwになっているのを確認したが、何分1つしかないのでこの装置で授業をした。例会では授業時の生徒の反応などの発表があった。
 

 「そんなばかな。100gwって書いてあるよ。」「装置が間違っているの?」という例会参加者の反応が面白かった。宮崎さんによると、前任校にはヤガミの定力装置が何台もあったので、いくつか装置をいじってみると個体差があることにすぐに気がつくそうだ。自分の勤務校の1台しかない装置でうまくいかなくても、自分が悪いと思わずに、装置も含めてあらゆる可能性をチェックする事も大事だと若い教員の皆さんに伝えたい、とは宮崎さんの弁。
 

音の干渉装置派生版 古谷さんの発表
 古谷さんは当初、塩ビ管を利用した「音の干渉装置」を作成するつもりだった。しかし、部品を買い揃え、作業に取りかかったが、難題にぶつかってしまった。塩ビ管の「継ぎ手(内径90mm)」の内部にスピーカー(以下SP)(径77mm)を取り付けるための塩ビ版(厚さ2mm)をSPの径に沿ってうまく切断することができず、製作をあきらめざるをえなかった。しかし、塩ビ管をいじっているうちに、以前から興味のあった「塩ビ管スピーカー」の作成意欲が高まった。本来ステレオ用のSPだが、その片チャンネルである。
 SPの最低共振周波数(fo)は不明。しかし、120Hz位まで伸びていそうだ。そのSPを板厚9mmのバッフル板に取り付けて塩ビ管の継ぎ手に接着(2種類の継ぎ手にそれぞれ1個のSPを取り付けた)。
 

 音出しをしてみてわかったのは、管の開放部を机に押し当てるとfoが下がり、力強い音になる。また、2個の装置をつなげた場合(写真左)、当然ではあるが、管の体積が増えるため、同様の効果がある。
 最後に蛇足ではあるが、2個の継ぎ手(SPを含む)を取り付け角度を変えると音の放射面が変化し、聞き手にとって音の味わいの違いが感じられる。
 

チョコっと不思議なチョコの科学 車田里奈さんの発表
 車田里奈さんは日本科学未来館のボランティア有志と高エネルギー加速器研究機構をたずねた。今回紹介したフォトンファクトリーでは様々な研究がなされているが、チョコと結びつくキーワードは「結晶」。
 例会当日は3/13!ホワイトデーの前日!!里奈さんは1ヶ月遅れのバレンタインとして3種類のチョコレートを用意してくれた。融点を変えて作った、つまりココアバターの結晶構造が違う3種類のチョコレートだ。
 チョコレートはただ単に溶かして固めただけでは美味しいものを作ることができないという奥が深い食べ物。美味しいチョコレートを作るには、種類によっても違うが、43℃くらいの温度で溶かし、それを26℃くらいまで冷却し、再び温度を上げて32℃くらいにしてから固めることでなめらかで光沢があって、手の体温では溶けないけれど口に入れたら溶けるというチョコレートが出来上がる。この作業をテンパリングという。今も昔もショコラティエが職人のカン(チョコレートの粘度や光沢)を元に「いまだ!」と思った瞬間に温度を上げたり下げたりしながら美味しいチョコレートを作り上げている。
 科学の力によってチョコレートの中で美味しい結晶構造があることが解明されてきたという「食品物理学」をチョコレートをいただきながら解説してもらった。
 

補色残像 水野さんの発表
 水野さんが昨年の科教協全国研究大会の帰りに大阪市立科学館に立ち寄った際、光のイベントを開催中だった。そこで紹介していた演示実験の一つに青色のひまわりの写真を15秒間見続けた後、モノクロのひまわりの写真を見るとそれがイエローに見える、というのがあった。補色残像という知る人ぞ知る現象だそうだ。ちなみに例会では青色の花の他に赤色と緑色の花でも参加者に試してもらった。赤色の花の場合はモノクロの花が補色のシアンに、緑色の花の場合は補色のマゼンタに見え実験は成功。ただし色の鮮明さには個人差があった。
 

単極モーターの磁界 田代さんの発表
 電流が流れている矩形コイルが作る鉄粉の模様を扱う授業は、教科書ではスタ ンドで厚紙を固定するなどていねいな扱いをしているが、写真のように発 泡スチ ロールを使うと、簡単にできる。切込みは電熱線を使ってていねいにやってもい いが、これはのこぎりで切込みを入れたものである。(写真左)
 一方、右の写真は銅線が回転するタイプの単極モーターである。電池の下にアルミフォイルで包んだフェライト磁石がつけてある。金属メッキされたネオジム磁石を用いてもよい。
 

 単極モーターの磁力線は磁石単独の時をみかん型とするならば、電池を付けると フットボールボール型になる。電池の外装容器が鉄でできているため である。この磁界の分布だと、銅線の上部のあたりが主にトルクを生じることになりそうだ。
 写真にはないが、会場校の鈴木さんが鉄とアルミの円柱を用意してくれたので、それぞれを磁石に付けて磁界を観察すると、アルミではみかん型のままの磁力線だが、鉄はフットボール型の磁力線に なっ た。
 

送電線による電圧降下 田代さんの発表
 送電線にも小さいとはいえ抵抗があるので、大電流では送電線でジュール熱が発生し、電力が無駄になる。その無駄 をできる限り少なくするため、送電電圧を数十万Vの高電圧 にして電流を小さくしている。
 それを安全な電圧で実験する。1.5V用の豆電球を1.5Vで点ける。その後、その 電圧のまま細く長いエナメル線を間に直列に入れる。今度は豆電 球は光らな い。低電圧の大電流だったので、長いエナメル線で顕著に電圧が降下したのである。
 次に9Vぐらいで点く豆電球を使い9Vで点ける。その後、その電圧のまま細 く長いエナメル線を間に直列に入れる。今度は豆電球は見た目ではその まま点 く。高電圧の小電流だったので、長いエナメル線で顕著に電圧は降下しなかった のである。実用上は高電圧のまま使用するのは危険なので、消費地に変電設備が必要になる。
 

新撮映像3作 水上さんの発表
 ウェーブマシンの左端を上下させると波が生じて伝わっていく様子の映像である。以前は、真横から撮影した映像(左側)だけだった。新たに斜め上から実態がわかるように撮影した動画(右側)を加えた。
 

 水波投影器による円形波の干渉の映像は、以前は左のような2次元の波の映像だけだったが、実験の原理を説明する以下の映像を加えることにした。

 振動体の部分から広がる水波の俯瞰映像。水面の山谷がわかる。これに上から光を当てると、山は凸レンズになって明るく、谷は凹レンズとなって暗く投影されるという原理を説明するための映像である。振動体を二個にして投影すれば上の写真が得られる。
 

 凹面鏡の光軸上で物体(豚のフィギュア)を凹面鏡に徐々に近づけていくときの像の変化の様子を、カメラを光軸上に置いて撮影した。授業では、『焦点より遠い時には倒立実像→焦点上では像なし→焦点より近くなると正立虚像』を作図させてからこの映像で確認している。
 

東京都の入試問題をめぐって 山本の発表
 平成28年2月に実施された都立高入試の力学の問題に、YPCメーリングリスト上で疑問の声が上がり、理科教育メーリングリストでもひとしきり話題となった。
 「疑問」の要点は、都が正答とした選択肢エの図の垂直抗力および摩擦力の作用点の位置が誤っているということである。物体が回転しないためには、力のモーメントの総和が0でなければならないが、垂直抗力および摩擦力の作用点が重力の作用線上にないエの図では回転が起きてしまう。
 MLでの議論のうちには「中学校では質点の力学にとどめるべきでは?」という主張もあったが、手元の5社の中学教科書を確認したところ、各社とも「作用点と作用線」を扱っている以上、著しい範囲逸脱とは言えない。それどころか、3年で学習する「力のつり合いの条件」には各社とも例外なく「2力が同一直線上にあること(作用線の一致)」を明記している。このことを前提とすれば、エも誤答となり、正答がないことになる。
 もうひとつ、本問をめぐる議論の中で明らかになったことは、どの中学教科書にも「垂直抗力や摩擦力の矢印は接触面の中央から描く」などとは記されていないにもかかわらず、現場ではそのような教え方が広くなされていたことである。これは、実は誤っているので、今後は正す必要がある。「抗力」の作用点は摩擦力の大きさによりその位置が変化する。決して接触面の中央に固定しているわけではない。
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本物のノーベル賞メダルチョコ 山本の発表
 大村智先生のノーベル生理学医学賞・文化勲章受賞を祝う祝賀会が3月10日に開かれた。その席で、出席者に引出物として配られた品々の中に、この「ノーベル賞チョコレートメダル」があった。ストックホルムのノーベル博物館で販売されている「本物」で、ノーベル賞受賞者がお土産用に大量買いするのだそうである。中身は普通のチョコ。箱には大村先生のサインがある。
 

「理科教室」リニューアル 鈴木健夫さんの発表
 『理科教室』誌は、諸般の事情により、2015年4月号から、出版元が日本標準から本の泉社に変更となった。
 編集長の鈴木健夫さんは「これまでも、『若い人が魅力を感じる記事がある』ということを刷新の柱のひとつとして編集してきましたが、新しい出版社となっても、基本理念を堅持し、より魅力的な誌面となるよう努力を続ける決意です。ぜひ定期購読を。」と語った。


二次会永山駅前「塚田農場 京王永山店」にて
 12人が参加してカンパーイ!例会参加者は20人と少なめだったが、二次会は出席率60%と好成績。2015年度も間もなく終わる。年度末はいつも成績処理や異動の準備などで忙しい。でも、そんなときこそ科学談義で盛り上がってちょっとリフレッシュ。新年度もガンバロー!


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