例会速報 2016/04/17 慶應義塾高等学校
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授業研究:授業開き みんなの発表
4月の例会は恒例の「授業開き交換会」。年度の最初の授業の様子をみんなで紹介しあう・・・ことになっていたが、東横線が強風でストップするという想定外のアクシデントのため、一時間遅れの例会開始になんとか間に合った3人の報告だけになってしまった。
益田さんは、かつて平野さんが2012年4月例会で披露してくれた授業開きネタ、「記憶を頼りに何も見ないでニワトリの絵を描く」を実施。4本足のニワトリを描く生徒はやっぱりいた。客観的に観察することの大切さを訴える。
伊藤さんは、今年度の授業ではペアワークを導入することにより、生徒同士で概念獲得ができるように仕向けていきたいと考えた。
物理では波と聞いて何を考えるのかをプリントに記述させた後、隣の生徒同士で考えを交換し合った。地学基礎では地球の絵を描かせた後、なぜそのように地球の絵が描けたのかということをプリントに書かせ、意見を交換させたとの報告があった。以下、伊藤さん自身のコメント。
「今後の授業では課題を出し、課題に対する答えをそれぞれの生徒に書かせた後、ペアで意見をまとめさせるということを行っていきたい。2人で意見をまとめるという中で誤概念の克服をめざしたいと考えている。現状では他科であまりペアワークが取り入れられていない様子で、生徒自身が慣れておらず、どのように生徒を動かすかが課題である。また、クラスの中に話し合おうという、考えようという雰囲気ができていないのでこれからどのようになっていくのかは不透明である。数か月たったら私自身が断念しているかもしれない。来年1年生を持ったらまた同じ挑戦をしてみようかと考えている。」
武捨さんは慶応高校に移って初の授業。力学のイントロとして、以前に例会で教えてもらった「運動とは?」という発問からはじめた。時間の経過を印象づけることが狙い。予想させた後、「時間の経過」だけを白塗りした辞書のコピーを配ると、生徒からは「時間の経過」の他、「力によって」や「エネルギーによって」という意見が出された。参加者からは、「物体が動くこと」や、「力によって…」、「エネルギーによって…」という説明が適切ではないということに時間をかけた方がよい、とのコメントが寄せられた。
くつのままはけるローラースケート 熊田さんの発表
熊田さんは、作用反作用(押し合い、引き合い)や慣性の実験に使えるローラースケートで、くつのまますぐにはけるものを探していたところ、おもちゃ屋でちょうどよさそうなものを見つけたので購入してみた。商品名「Cardiff
Cruiser Large」、実際には通販サイトで購入、1万3000円程度。
装着性や走行性はとても良く、やりたかった実験をするには十分な品質だった。実際に授業で生徒に実験させるかどうかは、安全面など考え、検討中である。例会では、昔ながらの古いローラースケートにも「懐かしい!」と注目が集まった。
スポーツコーチングカメラシステム JVCケンウッドさんのデモ
JVCケンウッドが昨夏発表したハイスピードビデオカメラGC-
両社はハイスピードビデオカメラを複数台連動させて同時記録、同時再生分析ができる「スポーツコーチングカメラシステム」を提供している。
製品群の特長は次の通り。
・瞬間的な動きをさまざまな記録スピードで高画質に記録する「ハイスピード撮影機能」
・タグを入力することで、必要なシーンを簡単に検索し撮影・編集・管理を効率的に行うことができる「タギング機能」
・複数台のビデオカメラをPC1台にて制御操作をする「マルチカメラ無線遠隔機能」
カメラは見た目よりずっと軽く、ホールドしやすいハンドグリップも付属していて、操作性はよさそうだ。付属アプリでPCやタブレット端末から遠隔操作できる。
気になるお値段は、カメラ本体が一台約35万円と安くはないが、工業用ハイスピードカメラと比べれば破格の普及価格だ。複数台連動撮影も他社製品にはない特長である。科学実験や理科教材にも活用できないだろうか。
製品情報はこちら:http://www3.jvckenwood.com/pro/video/gc-lj25b/
GC-
3mの板を買った 武捨さんの発表
斜面を下る台車を演示するために、通販で長さ3mの板を買った。距離センサで測定すると良い感じのx−tグラフ、v-tグラフ、a-tグラフが得られた。動画(movファイル906KB)はここ。ポイントは自重でたわむのを防ぐため、板の端だけでなく、中央も下から支えること。詳細はYPCニュースをご覧いただきたい。
例会参加者からは、板が短いと加速の様子が分かりにくいが、長さが3mあると加速の様子が分かって良い、いいけど置き場に困りそう、などのコメントが寄せられた。
無接点充電器など 田代さんの発表
愛知県西尾市立平坂中学校 三浦真一さんの東レ賞受賞論文「無接点充電器から電磁誘導を理解させる指導展開」の追試報告が田代さんからあった。電動歯ブラシの無接点充電器を使った電磁誘導の実験である。
写真左のようにコイルと豆電球を用意して充電器を交流電源につなぐと、豆電球側のコイルが2次コイルとなって豆電球が点く。ところが不思議なことに、1.5V用の豆電球ではコイルが15回巻きでは点くが80回巻きだと点かない。また、LEDで点けておき点いているLEDをゆすっても50Hzのような点滅をしない。会場校のオシロスコープで周波数を調べると26kHzだった。1次コイル側は、インバーターになっていて電流制限回路も組み込まれているようだ。
「バークレー物理学コース 電磁気」にファラデーの「物理学の実験」(岩波文庫・絶版)の図が掲載されており(写真左)、彼の時代に電磁誘導の実験がいろいろな方法で行
われていたことがわかる。その一つ、磁石にコイルを巻いた鉄芯を付けておき、鉄芯を引き離すとコイルに電流が流れる実験をやってみた。コイルは変圧器用である。検流計でもLEDでも確認できた。
クランプメーターの原理は変圧器と似ている。測定するコードがクランプ 内を貫くと、クランプ部が1回巻きの1次コイルとしてはたらく。したがって、クランプ
メーターの近くで磁石を動かして磁界に揺さぶりをかけても、メーターが何らかの値を示すはずである、やってみると確かにメーターの表示に変化があった。このときクランプを開くとメーターの値はけた違いに大きくなる。
補色残像(その2) 水野さんの発表
水野さんは3月例会で補色残像の報告をしてくれた。その後、例会参加者の一人から、補色残像を利用したカードが商品化されているという情報提供があった。水野さんは早速購入して今回の例会で追加発表した。
購入先は昨年12月のナリカ例会で発表のあった「格子虫」を売っているのと同じ「福永紙工」だそうだ。補色残像のカードは写真のように三種類あり、例会では「LOVE」という文字が見えるものを見本として増し刷りして例会参加者に体験してもらったが、印刷の色がよくなかったのか、この文字が見えると言った参加者はあまりいなかった。本物で見てもらうとら見えるという人が多くなったので、プリンターの色再現性の問題かもしれない。やはり本物に限る!
カチカチロボット 山本の紹介
例会と同じ日、横浜市を拠点に活動している科学教育NPO「おもしろ科学たんけん工房」の全体交流会が藤沢で開かれていた。子どもたちに作らせる工作物や実験ネタなどのアイテムをブース形式で披露し合う、会員の総会だ。写真は横浜北1地区の熊谷さん作の「カチカチロボット」。拍子木のように「カチ、カチ」と音を立てながら一歩ずつ坂道を下る。簡単な構造だが実によくできている。ボールの位置をずらすと歩幅が変えられる。ユーモラスな動きの動画(movファイル3.8MB)はここ。
マグデブルグの茶碗 天野さんの発表
天野さんは、2月の鎌倉学園例会でステンレスボウルの自作マグデブルグ半球を披露してくれたが、今度は火を使わない吸引式のマグデブルグ真空球モドキを作った。部品のほとんどはダイソーで調達したとのこと。吸引機はダイソーの空気入れを改造したもの。信頼性はプラスチックの注射器の改造の方が良いかもしれないとのこと。真空をつくるポイントは、茶碗の底の穴にとりつけた不動弁だ。幅広の両面テープと薄いゴムシートでつくったそうだ。
中国製レーザー 天野さんの発表
天野さんは、中国で明るいグリーンレーザーポインターを仕入れてきた。リチウム充電池とその充電器が付属して1800円。安全キーがついていて鍵を解除しないとボタンを押しても光らない。右は天井に映った干渉パターン。非常に明るいので取り扱いには十分注意したい。
微少視差3Dカメラ 竹内さんの発表
竹内さんが在職中に開発に携わった3Dビデオカメラ。小型化のために両眼の距離が小さいが、高画質の3D映像を楽しむことができる。必見なのは本体内蔵の液晶ディスプレイ(写真右)。こんなに小さいのにしっかり3Dディスプレイになっているのだ。このカメラはまだ市場に出回っているそうだ。
3Dショットカム 古谷さんの発表
続いて3Dネタ。3Dカメラを探していた古谷さんは、タカラ・トミーが発売している「3Dショットカム」を発掘した。これは玩具のジャンルなので価格は3000円未満と格安。本体とビューアーが2個付属している。撮影・観察の手順は次の通り。
(1)撮影映像がSDカードに保存される。
(2)プリンターでL判の光沢紙に印刷する。即見られるように切り取り線も印字される。
(3)付属のビューアーに写真を装着して観察する。
ただし、実際に撮影した写真は立体感はあるものの映像としての質はよくない。画素数の関係か?価格相応というところだ。
ところで見本でついている写真(写真下左)を適当な倍率で拡大し、付属のビューアーより焦点距離が長い(9cm弱)レンズを使った自作ビューアーで見たところ、左側の写真を右の写真よりも若干上にずらさないとピントが合わなかったという。焦点距離の違いに合わせ、左右の像(写真)の距離を離すという調整は当然であるが、上下の調整をしなければいけない理由は何だろう?よくみると二枚の写真は確かに若干上下にずれている。光軸が平行でないようだ。カメラ自身の工作精度の問題だろうか。
錯視の動画 市江さんの発表
鎌倉学園科学部の今年の学園祭テーマは「錯視の世界」。参考文献として購入した「だまし絵錯視大事典」(あかね書房)に掲載されている明治大学杉原先生の作品を、部員の高校生が、写真だけを参考に展開図なしで再現した。原理を探っていくうちに、独自に1本橋上りバージョンと下りバージョンも作成した。その動画はこちら。
十字橋:https://www.youtube.com/watch?v=48Hl7qx6zN4&feature=youtu.be
一本橋:https://www.youtube.com/watch?v=HQY3EtwkcFg&feature=youtu.be
見様見真似なので、忠実な再現とは言えないが、写真1枚でここまで再現できたのはなかなかのもの。学園祭当日6/11(土),12(日)には、人が入れる「エイムズの部屋」も展示すべく、目下作成中。お楽しみに。
二次会日吉駅前浜銀通り「小青蓮」にて
18人が参加してカンパーイ!春の嵐による東横線の運休も何のその。二次会会場にはみんなしっかり到着している。慶応例会の時はいつも行きつけのこのお店。安くてボリュームたっぷりの中華料理に舌鼓をうつ。今回はKさんの退職祝いも兼ねている。長い間お疲れ様。定年しても例会には出ようね。言われるまでもないか・・・。
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