例会速報 2016/02/14 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:実感できる電磁波の授業 市江さんの発表
 市江さんは、2006年6月例会で右近さんが行った「ヘルツの実験」をもとにいくつかの実験を組み合わせて、電磁波演示実験アラカルトを編成してみた。ヘルツの実験装置の前で直線アンテナを水平にすると、銅板によってつくられた電場によって、アンテナ中央のネオン管が光る。(写真右)同様に円形アンテナで磁場の方向が確認できる。電磁波の進行方向に対し、電場も磁場も垂直、すなわち電磁波が横波であることがわかる。
 

 さらにアルミホイルで作った即席のコヒーラ-検波器(写真左)を各班に作らせ、教卓上のヘルツの装置で電磁波を発生させると、各班の検波器につないだ電子メロディーが一斉に鳴りだす。これは最も原始的な電波通信といえる。振動数や情報量の違いはあっても、電磁波に情報をのせるという点においては、携帯電話の電波と本質的にちがいはない。
 ここから電磁波の振動数を上げていく。リモコンの赤外線を太陽電池で受け拡声器につなぐと、赤外線通信の信号を音として聞くことができる。
 

 また、赤外線の代わりにを赤色LEDの赤色光に情報をのせて通信することもできる。電池につないだLEDにipadなどの音声出力を並列につなぐだけで、アナログ光通信ができてしまう。赤色光を拡大鏡で太陽電池上に集光すると大音量になる。目に見えない赤外線でも同じことをすると、やはり大音量になることから、赤外線も可視光線と同じ電磁波であることが実によく実感できる。
 

 手作りコヒーラーによる検波実験、赤外線通信を音で聞く実験、LEDによるアナログ光通信、どれをとってもはじめての生徒は驚きをもって見てくれる。これらの実験を振動数の順番にならべることで、つかみどころのない電磁波の存在を実感させることができる。派手ではないが、普遍性を大切にする物理の醍醐味が感じられる実験だ。

生徒が作ったIC555等価回路 喜多さんの発表
 左の写真はエレクトロニクス工作では定番のタイマーIC555に、固定抵抗2つと可変抵抗1つ、コンデンサ2つで構成したシングルショット回路である。右下のスイッチを押すとある一定時間出力を出すことができ、左下のLEDが一定時間発光する。可変抵抗の値を変えることにより、その時間を変えている
 このタイマーIC555の等価回路を、喜多さんの教え子の生徒が実際に組み立てた。抵抗18個、ダイオード18個、トランジスタ30個の計66個で構成されている。写真右はその回路図。
 

 左は、基板の裏側で、8つの端子から8本のリード線を出し、8ピンのICソケットにつないでいる。右は、左上の写真のブレッドボードから555を取り外し、代わりに等価回路のICソケットを差し込んだところ。例会のデモでも、555ICと全く同じ動作をすることが確認できた。これだけの回路が、ミリサイズのワンチップに集積されているということだ。それにしても、生徒がこれを作ってしまうというところがすばらしい。
 

マグデブルグ半球と真空実験 天野さんの発表
 天野さんは、神奈川理科サークルで発表されたマグデブルグ半球を自分でも作ってみた。百均のスチールボウルに6mm26cmの鉄棒を曲げ、スポット電気溶接機で接合した本格的なものだ。穴あけ工作を伴わないので機密性が抜群である。
 アルコールを含ませたティッシュなどをボウルの中で燃やし、濡らした厚紙のパッキングをのせる。
 

 火が消えかかった頃にもう一つのボウルをかぶせてしっかり押しつける。火が消えてからしばらく冷ますと、水蒸気・アルコール蒸気の凝縮と気体の収縮により、内部がかなりの真空状態になる。大人の力で引っぱってもはずれない。大気圧の大きさが実感できる。体裁も良く強度も十分なので、会場では早くも人気。天野さんも量産を検討中。
 

 関連で、もう一つの演示。水入りPETボトルをおもりにして、上の皿の上で小さなロウソクを燃やす。その上からコップをかぶせる。皿とコップの間は気密にしておく。やがて火は消え、冷却すると右の写真のように水入りPETボトルが持ち上がる。
 

ヘルムホルツ共鳴器のその後のこと 古谷さんの発表
 前回に引き続き、疑似試験管と疑似丸底フラスコ(共に、全長250mm)による気柱共鳴実験に関して考察した。ヘルムホルツ共鳴の理論に反し、疑似フラスコの方が振動数が高いのは本体の構造に起因することについては、古谷さんも納得した。しかし、疑似フラスコを吹いたときに明らかに低域の共鳴音がかすかに聞こえることが新たな発見として報告された。
 

 参加者の櫻井さんがリアルタイムFFTができる「e-scope3in1」というスマホアプリで計測した結果、疑似フラスコで約80Hzという振動数の小さなピークが計測された(写真左)。高くて強い音は約960Hzだった。ついでに、塩ビ管製の長短の閉管や開管の共鳴音のスペクトルを計測してみたところ、おおむね理論値に近い結果となった(写真右)。
 

科学少年団での実験 山本の発表
 昨年9月のナリカ例会で紹介した三原色の実験器(写真左)を、藤沢市科学少年団の2月活動「電気工作」で、小4~中3の団員約100名に作らせることにした。午前中2時間半でハンダ工作をし、午後は自作の実験器を使って1時間程光と絵の具の三原色についての実験学習を行う。
 団員用(子ども向け)の製作マニュアル「光と絵の具の三原色の実験」のワークシートは、「天神のページ」に公開してある。
 

 混色の観察にはレプリカグレーティングを用いた簡易分光器を併用する。下の写真のように長めの単語カードのパンチ穴に、8mm角のグレーティングシートを「閉じ穴補修シール」で貼り付けるだけでよい。この穴を目に近づけて、光源を観察する。光の成分が色ごとに分解されるので、加法、減法の混色がわかりやすい。
 

 上の写真のようにプリンタ用の補充インクを数滴入れたタレビンに水を半分まで入れて薄める。シアン、マゼンタ、イエローの3色の色水を用意する。下の写真は赤、緑、青の3色LEDを同時に光らせて「白」に見えている状態(左)で、シアンの色水をその前にかざした様子(右)。シアンの色水は赤い光だけを吸収する。「白-赤=緑+青=シアン」というわけだ。これが減法混色である。小学生には「ひきざんまぜいろ」と教えた。シアンと赤の関係がいわゆる「補色」である。光の三原色と、絵の具の三原色は互いに補色の関係にある。
 

二次会 大船駅前「あじたろう」にて
 8人が参加してカンパーイ!校舎新築中のため久し振りの鎌倉学園例会だった。例会参加者はちょっと少なめだったがやはり入試シーズンで忙しいからだろうか。教え子が受験している高校入試の結果が気がかりな中学の先生もいた。二次会もご覧の通りの少人数だったが、濃密な熱のこもった議論が交わされた。


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