例会速報 2006/06/17 県立横浜桜陽高校
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授業研究:物理T「電気」の授業 右近さんの発表
今月の授業研究はホスト校の右近さんの「電気」の単元の授業展開を披露してもらった。以下、右近さん自身のコメントから。
本校では,物理I「電気」の単元を単に電気知識の集積としてではなく,静電気から電磁波の発生に至る一連の流れの中で構成し,できるだけ生徒が自発的に参加できるような授業展開を目指している。その中で今回は電気振り子を使った授業展開を紹介した。写真のように空き缶を2つ用意し,塩ビ棒で帯電させると,空き缶の間にある絶縁したひもで吊るされた軽いアルミの金属球は二つの缶に交互に衝突し,缶の間で往復運動を繰り返す。そこで生徒にプリントを配布し,次の課題を考えてもらう。
(1)その理由を書きなさい。
(2)他の人の意見を参考にして,さらに考えたところがあれば書きなさい。
(3)左側の空き缶の下にある絶縁体を取って実験をしたらどうなるだろうか,予想しなさい。
(4)左側の空き缶はそのままで,右側の空き缶の下に絶縁体を入れて実験をしたらどうなるだろうか,予想しなさい。
すでに静電誘導に関しては既習である。物理という教科が概念的理解を追及する教科であることを,生徒に印象付けることが,特に初めの物理の授業では必要と考えたので,こうした授業展開にこだわってみた。
手回し発電ヘリコプター 右近さんの発表
やはりこの一連の「電気」の授業の中で,モーターと発電機を取り上げた際,最近発売された「科学のタマゴ」シリーズのこの教材を活用した。ほんとうに小さなヘリコプターが飛び上がる。
ついでにラジコンの「ドラえもん」も披露した。ネット販売で4000円ぐらいで手に入る。
飛行中の動画が見られるサイト。http://www.jo-nets.com/doraemon/index.html
木屑で電場を見る 右近さんの発表
シーナリーパウダーと食用油を使う、すでによく知られている実験であるが,容器として適当なものがなかった。あまり大きくても後処理がめんどう。そこで,100円ショップのビール用カップ(6〜8個入り)の底を切って使ってみたところ,ちょうどよかったという。
絶縁性が高く、安くて使い捨てにできるのがよい。
陰極線の電荷 右近さんの発表
生徒に陰極線の電荷を調べるにはどうしたらよいか,と質問する。すると,帯電体を上から近づければよい,との返事。もし帯電しているのならば陰極線はそれで曲がるはずである,というのだ。実はこうした自然な発想がなぜいままで教科書や参考書になかったのか不思議である。そこで近づけると・・・曲がらない。そこで再度質問。なぜ曲がらないのか?陰極線は速すぎるから?の返事。うーむ,生徒はよく考える・・・その後の授業展開は7月発行のYPCニュースの記事をお楽しみに。
ヘルツの実験 右近さんの発表
ご存知ヘルツの実験でE波,B波を検出する。左の写真は棒状のアンテナで電場の振動を検出する装置。中央にネオン管があり、左右に導線を張ってある。右の写真は円形コイルにネオン管をとりつけたもの。輪を貫く磁場が変化すると電磁誘導でネオン管が光る。これで磁場の振動が検出できる。
詳しくは愛知岐阜物理サークルの「いきいき物理わくわく実験」を参照のこと。
SPACE FOOD RICE CAKE(宇宙もち) 佐藤さんの発表
4月の科学技術週間の時の一般公開に車田さんと行ってきた時に購入したという宇宙食。未来館のミュージアムショップでも売っている。
JAXAの一般公開ではおもちを含め色んなものが少し安くなっていた。(おもち500円→400円くらい)
カチカチのおもちを水にひたしてやわらかくし、付属のきなこをまぶして食べる。思ったより美味しかった。
一般公開では,宇宙食を食べるコーナーでいちごのフリーズドライを水で戻したものとレトルトカレーも食べたそうだ。ちなみに日本のレトルトカレーは,ほぼそのままで宇宙食として採用できるくらいの品質だとのこと。
上昇中の「気球」から静かに手を離すと 水上さんの発表
「速さVで上昇中の気球から小球を「静かに」手放した」場合,小球の運動は鉛直投げ上げでになることを示す実験である。電磁石に鉄球を付けて上昇させる。その途中でスイッチ(二つの目玉クリップで水平に張った約20pの導線:写真左)をはじきとばすと鉄球は磁石から離れてそのまま上昇する。(写真右:鉄球は電磁石の左下)『静かに離せば小球は自由落下するのでは?』という誤解を払拭できたという。
どこでも吸盤 高橋さんの発表
小河原さんのご紹介でアメリカの通販から多くの方が購入した「Lil Sucker」の(ほぼ)同等品を作っているところを見つけたので、新デザインで作成して「どこでも吸盤」と名付けました。大気圧を手軽に「実感」するのに最適です。
テーブルに置いた紙の上にどこでも吸盤付きのペットボトルを置いてみると……。仮説社で315円で発売中です。
真空実験キットの水ポンプ 車田さんの発表
おなじみのYPC特製簡易真空実験キットの応用として、真空デシケーター(円筒形パック)に2つ目の穴を開けそこにチューブを取り付けた。真空デシケーター(円筒形パック)が水溜りとなりポンプ(注射器)まで水が入りません。例会の演示では水の吸い込みが勢いよく注射器のチューブに直接かかってしまったが・・・。
簡易正多面体キット 車田さんの発表
車田さんは数学を教えている。数学基礎の授業で生徒に正多面体を作らせた。紙に展開図を印刷したものをただ単に作らせるのではなく、正多面体の頂点と辺の数に着目させるために簡易キットを作ってみた。以前は竹ひごを使った、長さを揃え切るのが大変だったのでつまようじを辺として利用した。材料はつまようじとゴムチューブ(東急ハンズで購入)と輪ゴムだけだ。頂点はゴムチューブを2センチくらいに切り、3つを輪ゴムで束ねた。正四面体はゴムチューブ2つでOK。授業で生徒には正四面体を最初に作らせ、隣の生徒とパーツを合体して正六面体、正八面体、正十二面体、正二十面体(生徒5人)と作らせた。写真の左がつまようじで右が竹ひごのもの。
燃料電池 市江さんの発表
鎌倉学園の学園祭でクラブの生徒が製作した燃料電池である。電極も含めすべて手作りだ。ニッケル金網を以下の方法でパラジウムメッキした。
200mlの水に50mgの塩化パラジウムと0.1mlの濃塩酸を入れ、メッキ液をつくる。このメッキ液にニッケル金網を入れて、しばらく液を攪拌し、金網が黒くなればOK。ニッケル金網は楽天のひだまり経由でケニスの別売部品1-123-018
燃料電池用ニッケル金網2,000円を入手したが、この直後買えなくなってしまったという。塩化パラジウムは出入りの業者で時価1g7000円弱だったそうだ。
電子メロディーは鳴らすことができた。うまくいけば、太陽電池用のモーターも回るはずだ。ステンレス金網も試してみたが、メッキが難しいようでうまくいかなかったとのこと。まだ改良の余地はありそうだ。
CO2風船通信 市江さんの発表
2005年11月のカリタス例会で業務用ジャンボバルーンを1つ使ったCO2レンズの実験をしたところ、カリタスの黒瀬さんからふつうの風船でも十分聞こえるという情報をいただいた。また、クラブの生徒が見つけた98年科学の祭典の「炭酸ガス風船通信」(山田善春氏)では2つのジャンボバルーンを向かい合わせにすると何十メートルも聞こえるという。
そこでふつうの風船2つでやってみると、少々ざわついていても3,4メートルはヒソヒソ話でも十分聞こえた。風船は口や耳から5cm程度離す。また前回試せなかった安価なジャンボバルーン(1個945円)も十分使えるので、ダイナミックにやるのもOKだ。
簡易紫外線測定器 小河原さんの発表
慶應高校地学科が大量購入した簡易紫外線測定器を、共同購入の手間賃として5つほど譲り受けたそうで、持参してくれた。中にはUVビーズと5段階の色が示された紙が入っているだけなので、これなら自作できそう。100個で$200はちょっと高めか。
マグヌス効果自動車 小河原さんの発表
NY学院赴任中、いろいろな物理サークルのホームページを丹念に見ていたところ、のらねこ学会のページには自分でも作りたいと思わせるものが多かったそうで、これもそのひとつらしい。オリジナルは第189回例会で発表されていて、おそらくそちらのほうがよくできているだろうということだが、追試していちおう動いたので、参考までにと実物を見せてくれた。円柱を高速回転させると、車全体にそれとは逆向きのトルクが発生し、車体が若干回転してしまうのが課題とのこと。
Flying SaucerでF=ma 小河原さんの発表
小河原さんが、米国で買ったおもちゃFlyingSaucerを授業で活用した様子について報告してくれた。このおもちゃは、慣性運動を観察できるキックディスを軽量化したようなもので、リモコンの引き金を引くと、プロペラが回って空気からの反作用を受け、本体が上に向かって浮上する。
今年の授業では、教科書の例題を解くかわりに、この運動を計算してみた。本体が54
gなので重力は0.53 N、はかりの上皿に手で固定した本体を近づけ、プロペラに押された空気を上皿に集めたときの目盛りが約65
gであることから、プロペラが受ける反作用を0.64 Nとすると、F=maより加速度a=2.0
m/s/sと計算できる。
さらに、この加速度の値を検証するため、教卓から天井まで物体を浮上させ、ビデオ撮影した映像をコマ送りして時間を計測した。1/30秒が52コマ進んだところで、つまり1.73秒で2.0
m上の天井に着いているが、加速度a=2.0 m/s/s ならばx=at^2/2よりt=1.41秒となる。実際にはよけいに時間がかかっているわけだが、映像を見ると真上ではなく、多少斜めに浮上していることが主な原因と考えられるのではないかとのこと。
ちなみに、角運動量保存により、本体はプロペラとは逆に回転することになるが、本体にもプロペラとは逆の角度の翼が付いていて、本体でも揚力を得ている構造は興味深い。
携帯検電器 平野さんの発表
静電気の性質を学習するときに,はく検電器の実験は非常に重要である。この実験で起こる現象を,演習問題で確認させるだけであったり,演示実験だけで終わらせてしまったりすることは良くない。そこで,生徒が自宅でも実験できるように平野さんは携帯型の検電器を作ってみた。
簡易自走式ホバークラフト 越さんの発表
科学の祭典千葉大会で松戸市立河原塚中学校の羽根先生が工作教室で作られていたホバークラフトを元に、より簡単に作れるようにしたものを越さんが作ってきた。
本体は、プラ段ボール、マブチFA-130とアルカリ単3乾電池2本、市販の3枚羽根のファンの組み合わせ。モーターの適正負荷に合ったファンの大きさと、重心位置の調整がポイント。
祭典のガイドブックでは、モーターの適正負荷のデータからファンの翼面積を計算させているというところは、とても参考になった。工作教室では、同軸に自作浮上用のローターと自作推進用のファンを取り付けていたが、工作に時間がかかっていたようだ。そこで、より簡単に作れるように、1つのファンでエアーインテイク(空気取り込み口)より送風の一部を底面に送り込むタイプに改造した。
薄いビニール袋を底面に貼り、中央を四角く切り取りスカートとした。これにより空気の漏れを減らし圧力を保ち、エアークッションに乗って摩擦のない状態で加速度運動する。直進性を増せば、水平面上の等加速度直線運動の良い教材にできるであろう。
写像公式用パワーポイント教材 水上さんの発表
授業をすべてパワーポイント化している水上さんは、レンズで像ができる様子の板書代わりに使えるものを3つ作った。凸レンズによる実像と虚像,凹レンズによる虚像。これらの像を撮影したものも貼り付けた。図はパワーポイントの作図機能で自由に変更できる。
DHMOの脅威 平松さんの発表
平松さんは2006年2月の柏陽例会で配布された「ぶつりの散歩道」をヒントに、過去に授業で持っていない学年の高3理系クラスの授業開きでやってみた。ほぼ半分の生徒が、平松さんの意図する方向(!?)で回答してくれたという。「いかに騙されずにものごとを見ることが出来るか?」という話として、興味深い話題だと思う。
二次会 戸塚駅前「北海道」にて
15名が参加してカンパーイ!今回の例会は久しぶりに桜陽高校が例会の会場だった。初めて桜陽でやったのは三年前の台風接近の日で、同じビルの「北乃一丁」だった。あのときは、ずいぶん寂しかったような記憶がある。今回はにぎやかだ。ホスト校の右近さん、お疲れ様。
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