例会速報 2006/07/15 鎌倉学園中・高等学校
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授業研究:1単位の波の授業 市江さんの発表
普通、物理は理工系に進学する生徒を対象として開講されているところがほとんどであると思うが、鎌倉学園では文系に進む学生にも物理のテイストを味わってほしいと、1年生を対象として1単位の物理を設けている。時間と内容の面から、力学から入るよりも波動の学習を1年かけて終わらせる事にしている。波の基本性質をやってから音波、光波に入るというの教科書の順番にはこだわらず、重ね合わせの原理、定常波、波の干渉模様、ホイヘンスの原理、薄膜の干渉の順番で音波、光波の内容をおりまぜて進めている。単振動や正弦波の式、ドップラー効果、レンズなどは扱わず、2年生以降にまわしている。
昨年の改装に伴い、タッチパネル式のプロジェクタースクリーンが使えるようになった。止まった図でくどくど説明するより、図をアニメーションで動かして見せる方がずっと効果的である。とくに波動の学習ではこれが顕著である。ただし、実際の実験を単に動画で見せるという使い方は避けるべきである。実験は、ライブでやるのが一番!これは言うまでもない。
壁を登るカエル 小河原さんの発表
小河原さんは、米国にて$15で購入したという、吸盤を使って壁を登るおもちゃを紹介してくれた。シンプルだが、とても工夫された構造になっていて、思わずうなってしまう。
手足となる4つの吸盤の中央には穴が開き、管の先に空気ポンプ(浮き輪などを膨らませるものの小型版)が接続されている。ポンプは2つあり、1つのポンプから左手と右足の吸盤に空気を送るとき、もう片方では右手と左足の吸盤から空気を抜き、吸い付いた方の2つの吸盤を使って登るしくみだ。
探してみたものの、日本では販売されていないようなので、米国からの購入を検討するとのこと。3千円以下で買える(カエル)といいなあ。
浮遊磁石 高橋さんの発表
リング状磁石の中を通る透明パイプの中にネオジム磁石が浮かぶ。ここまでは見慣れた光景だが、全体をさかさにしても中の磁石が落ちない。以前山本が徹底研究した「U-CAS」と同様の磁場のポケットを利用した演示だと思われるが、上下ひっくり返しても落ちない意外性はなかなかのデモ効果だ。喜多さんがサイフから取りだした「ビジュアル・シート」を使って磁場を調べるなど、しばらくの間議論が続いた。
こ の実験は理科教育MLで薬剤師の飯島秀治さんが紹介していたものだ。
手応えで磁場の様子を調べる。ネオジム磁石の上に乗せたキャラクターは、富士通の「タッチおじさん」。演示効果を考えてつけたという。
簡単自走式ホバークラフトV2 越さんの発表
越さんは、前回紹介した「簡単自走式ホバークラフト」に、簡易ダクト、リニアガイド用のストロー、ラダー、おもり、を取り付け、プロペラの保護、直線運動、曲線運動ができるように改良してきた。
本体左右に取り付けたストローの一方に糸を通し、糸を水平にピンと張り固定することにより、一定のコースを等加速度直線運動をさせされる。加速度を測定するのには、放電式の記録タイマーでは摩擦が大きいので、ビデオで撮影し、2003年8月例会で紹介されていた運動解析ソフト(「運動くん」)などを用いるとよい。( http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/ypc/ypc038.htm )
また、本物の小型ホバークラフトと同じように、ラダーと、おもりによる重心移動により本体左右で摩擦力の差を作り、緩やかに曲がることが出来る。これならば、おもちゃとしても面白い。
左はデジタルスケールの上に本体を載せ、プロペラで生じる圧力の大きさを測定しているシーン。
よく見える顕微鏡カメラ 石附さんの発表
40万画素、1/4インチCCDカメラ:非常にコンパクトなサイズで、コントロール本体も全て一個の筒(筒長6センチ)に収まる簡易型。無限遠から近接高倍率撮影可能な、プラスチック非球面レンズを標準搭載。農作物の生育監視、理科の授業での植物観察等にも適している。価格が抑えられるといろいろ使い道がありそうだ。詳しくはこちらhttp://www18.ocn.ne.jp/~opt/
磁力を向心力とする円運動 小河原さんの発表
小河原さんが米国で受講したサマーコースで、講師が紹介していたという実験。
棒磁石と球形磁石(またはどちらかが鉄)を用意し、棒の周囲を円運動するよう上手に球を転がすと、磁力を向心力として、球がしばらく円運動する様子を観察できる。磁界の強さや回転半径、初速度などを工夫すると、3回転以上まわりつづけるので、始めると意外に熱中してしまうという。小河原さんの記録は、現在のところ3回転半とのこと。
生徒実験「紙パイプで演奏会」 小河原さんの発表
小河原さんが受講した米国サマーコース最終日、受講者が10分ずつ実験や指導法の工夫などをプレゼンテーションしたとき、米国人女性教員が紹介した実験の改定版。
まず、表のように各音階の紙パイプを作り、これを机上に落下させてその衝撃で音を出す。紹介されたのは塩ビパイプだったが、加工がたいへんな割に、音は小さかったので、少し厚手の新聞の折り込み広告で十分らしい。断面積から、開口端補正はそれほど大きくないので、1
mm程度短くしておけば、その音階に近く聞こえるようだ。
授業では、各生徒に長さの違うパイプを2本ずつ配り、下の表のパイプ長さ以外を板書して、自分が持っているパイプの長さを測定させる。パイプには開管の基本振動ができていると考え、波長と音速から振動数を計算させて、自分の持っているパイプがどの音階に相当するか判断させる。
パイプではなく、棒状のもので実験したら、棒の固有振動音が聞こえるわけだから、これも同様の音が聞こえているのではないかという指摘があったが、片方をテープでふさぐと、閉管となったように音が変化したので、気柱共鳴と考えていいだろう。
準備が整ったら、No.1から8までを順番に机へ衝突させ、音階を確かめる(7と8は演奏に不要のため、配布していないので、教卓で倒す)。そして、曲を次のように板書して、演奏開始。曲名がわかるだろうか?
からくり人形師「玉屋庄兵衛の世界展」報告 大谷さんの発表
日本橋・高島屋で開催された展覧会。玉屋庄兵衛は、現在9代目のからくり人形師。復元、修復、創作の他、操作もする。田中久重製作の「弓曳童子(ゆみひきどうじ)」の完全復元は、9代目が行った。日本に2体。展示内容は、「山車(だし)にのせるからくり」の実物約10種の展示と、その動きのビデオ上映。「座敷からくり」。実演では、念願の「弓曳童子」の動かした。
説明も興味深かった。座敷からくりの最高峰といわれるこの自動人形は、4本の弓を射る。特に、「山車からくり」の動きの複雑さに、驚く。これは、祭りの山車ごとにのせるもので、だいたい3体で、1セット。これは、下で人が操作する。一例をあげると、3体が別々に動いていたのが、とちゅうで、1体の人形の肩の上に、もう1体が片手で逆立ちをし、もう1方の手で、下の人形が持つ太鼓をたたく。完全に足が上がってしまう。
音のなんでも実験室 吉澤さんの発表
音に関して、作って実験しよう、さらに一歩進んで「サウンドモニター FFT
Wave」(通称:野津FFT)で調べてみようという本を、吉澤さんが講談社ブルーバックスから出版した。
「音のなんでも実験室」(B1521) \800 + tax
例会当日は著者割引で本が販売され、売れ行き好調だった。
講談社の「本」のページに紹介文が載っている。
http://shop.kodansha.jp/bc/magazines/hon/0607/index01.html
この本の内容を補足する吉澤さん自身のホームページ。
http://www.hi-ho.ne.jp/touchme/
円偏光で見る虫の構造色 渡邊昇さんの発表
杉並区立科学館、公募館長の渡邊さんが久しぶりの参加。ガリレオ工房の滝川洋二代表が異動先の東大駒場・美術館・博物館で実施するイベントに協力する際、偏光に「はまってしまった」とのこと。立体映画用の「円偏光」眼鏡の廃棄されたものをたまたま持っていて、これで玉虫色の昆虫を見ると左円偏光ではきれいな色が見えるが、右円偏光では真っ黒に見えることを知り、自分でそのような昆虫を見つけてきたとのこと。
詳しくは東工大の石川 兼 先生のページ、
http://www.op.titech.ac.jp/lab/Take-Ishi/html/ki/hg/et/sb/index.html
http://www.op.titech.ac.jp/lab/Take-Ishi/html/ki/hg/et/sb/goldbug/goldbug.html
を参照のこと。会場では円偏光めがねと昆虫が回覧された。写真は小さいほうがヒマラヤツヤカナブン、大きいほうがラッケリー。色がある方が左円偏光フィルターを通したもの。
二次会 大船駅前「あじたろう大船店」にて
17名が参加してカンパーイ!もうすぐ夏休みである。夏はYPCにとって一番忙しい季節。とりわけ、科教協神奈川大会の運営と発表、それに今年は東京で開かれるICPEの大会など、YPCが中心的役割を果たすイベントが目前に迫っている。酒を酌み交わしながらも、それぞれの分担を決めて、入念な打合せが行われる。
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