例会速報 2016/01/17 神奈川学園
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授業研究:波動「音」の授業 平本さんの発表
平本さんは教員一年目の昨年度途中までは、とにかくピア・インストラクション(PI)をやることに重きを置いていた。2014年11月の例会で発表したとき「(ある一問を指して)この問題は何を学ばせたくてやるのか」と言われたことが、この考えを変える契機になった。以降、平本さんはPIをやることにこだわるのではなく、何も目的として、どの問題を、どのタイミングで実施するか考えながら授業を構成していくことを心がけてきた。また、同例会で「初学者に物理を教えるという点で、本家PIとは異なるので、解説には実際の現象や映像を見せた方が良いのではないか」と言われ、本年度からはそのようにしている。
今回、平本さんは音の単元の実践について発表してくれた。波の単元では、気柱共鳴で定常波ができていることを確信させることを目標とした。単元の前半では縦波(用語や現象)は出さず、横波のみを取り扱い、波の基本的な考え方を学ばせ、後半部分で縦波(音)を扱った。
例会参加者からは主に以下の視点でコメントがあった。
・実験の精度について
・単元の構成について
・生徒の声(生徒は授業についてどう思っているのか)について
平本さんは「実践を発表して、いただいた意見は次に生かしていきたい。また、実践をまとめることの大切さを改めて感じた。今後も授業をやりっぱなしにするのではなく、実践を記録して、発表し、また次の授業へと繋げていきたい。」と感想を述べている。
写真左は気柱共鳴の身近な例として鳴らして見せたビン。「よりシンプルな試験管笛の方がよいのでは?」の声も。写真右は超音波距離計。管の開端でも音波が反射することを示す、YPCでは定番の実験アイテムである。
気柱共鳴の実験では、共鳴管の中に聴診器(左)を差し入れて、節の部分で音が大きく、腹の部分で音が小さくなることを確かめ、それぞれの位置に付箋をつけていく。節と腹が交互に等間隔に並ぶことが視覚的に確認できる。
ヘルムホルツ共鳴と気柱共鳴 古谷さんの発表
古谷さんは、北海道高等学校理科研究会『物理基礎』の授業案p57にある「ヘルムホルツ共鳴と気柱共鳴」の実験を追試しようとした。しかし、試験管、丸底フラスコが手元になかったので塩ビ管と硬質塩ビ版を利用し、疑似的に塩ビ管の一端をふさいだ試験管と写真のようなフラスコもどきを製作して実験してみた。
全長を揃えたにも関わらず、管を吹いて発生した音が、何と、記述内容と全く逆。つまり、疑似フラスコを吹くと疑似試験管よりも明らかに甲高い音が発生。首に相当する管の径を太くしても同じ結果。古谷さんは、なぜだろうとと疑問を持ち、例会でレポートした。動画(movファイル1.1MB)はここ。
しかし、会場校にある本物の試験管と丸底フラスコを吹いた音は試験管の音の方が高かった。右の写真の通り、わずかに試験管の方が長いのにその結果だから、まさに授業案の説明通りである。
自作した疑似装置の何に問題があるのか?疑問は残った。細い塩ビ管と太い塩ビ管の接続部分で、急激な形状の変化で音響インピーダンスのギャップを生じていて、そこで反射が生じてしまうためではないかとも推測される。つまり、細い塩ビ管の部分だけで定常波が立ってしまっているのではなかろうか。フラスコが球形の胴体をもっていることが重要な要素なのかどうか、さらに追求してみたいテーマだ。
凸レンズによる像 水野さんの発表
青森の野呂さんがFBで、コップやワイングラスに水を入れて色々な図を見ると左右反転した像が見られることを動画で投稿しておられた。水野さんはこれを見て面白いと思い、ペットボトルでやってみた(写真右)。上下反転した像はどうしたらできるのかと考え、ペットボトルを横倒しにしてみた。予想通り上下反転した像が見られた。当然と言えば当然である。
さて、左右反転と上下反転の2つを合わせたのが凸レンズによる像だと考えたらどうだろう。それを分かりやすく見せようと、大小2枚の紙に上下左右反転した図をプリントアウトした(写真左)。これを凸レンズを通して見ると紙と図のすべてが上下左右反転した像になって見える(写真右)。
教科書には凸レンズによる像の作図で、よく上下反転した像は描いてあるが、左右も反転した像にはなかなかお目にかからないので、これを見せることで凸レンズによる像について生徒の理解も深まるのではないかと思うがどうだろうか。
鏡映反転 海後さんの発表
2015年11月14日土曜日の朝日新聞beに載った記事に関連した実験。物理的な鏡像反転は奥行きの前後が反転して見える現象であるが、同じ現象を認知心理学では鏡映反転といい、「左右が反転して見えるのに上下が反転して見えないのは何故か」と不思議に思う認知のしかたは、現在でも説明が難しいらしい。
海後さんは新聞記事のイラストの実験を実際に「G」の形を作って追試してみた。新聞記事の「F」の実験では東大生被験者300人の90%が切り抜いた「F」の裏側と鏡像を見比べて「左右逆でない」と答えたという。例会での実験でも左右逆と感じた参加者はいなかった。
Webの「かかしさんの窓」に冒頭の朝日新聞の記事について、実験を交えて詳しく解説した記事がある。右の写真のように切り抜いて裏から見られる状態で鏡像と見比べる時は左右反転感覚は生じないらしい。
コークス 海後さんの発表
ロンドンのパブで誕生したといわれるφ3㎝×6㎝のコルクを平らな面に落として立たせるCORXというバランスゲームの紹介。10㎝の高さから水平よりも5度位角度をつけて落とし、2つのコルクの立ち方の組み合わせで得点を競う。このバランスゲームは、ゴム栓や紙筒、紙コップ、フィルムケースなど色々なもので代用できる。
ミラクルロケット改 天野さんの発表
前回例会で益田さんが紹介し、即売した「ミラクルロケット」の新しい遊び方を天野さんが開発した。端から3分の1ぐらいのところを輪ゴムでくくり、ズレないようにエナメル線などを挿した後、短い方を内側に折り込むようにして右の写真のように立てる。待つこと数秒、文字通りロケットのように突然飛び上がる。海後さんも「ミラクルロケット」を大量買いをして今回例会で販売したが、天野さんが面白い飛ばし方を発表したおかげでほぼ完売した。
さらに後日談がある。二次会で天野さんと改良案を話し合っていた海後さんは、直ぐにほつれてしまう端部の補修方法として、弾力性のある強力ボンド(コニシボンドウルトラ多用途SU等)を端面に盛りつけると長持ちすることを発見した。
同様に、時間をおいて突然飛び上がるおもちゃとしては「ジャンピングトーイ」があるが、今はあまり見かけなくなった。天野さんは、手近な材料で簡単に作れるジャンピングおもちゃ二種も合わせて紹介してくれた。
消しゴムハンコ・学者シリーズ 成見さんの発表
成見さんは生徒の実験プリント確認印用に、自作で日本人のノーベル賞受賞者似顔絵消しゴムハンコを作った。「似てるー」「楽しいー」と生徒からの評判は上々。成見さんは目下、このハンコでオリジナルおもちゃを作ろうと開発中だ。期待しよう。それにしても、よく特徴をつかんでいる。「画才があるなー」と一堂、感心しきり。
Sphero BB-8 ドロイド 越さんの発表
スターウォーズepisode7で話題の新ドロイドのBB8のおもちゃ。定価19800円+税。メーカーのサイトはここ→http://www.sphero.jp/starwars/
スマホによりコントロールでき、本物さながらの愛らしい仕草や動き・音声が再現されている。ただし、音声や「ホログラム投影風の画像」は、すべてスマホから出力される。
ドライブモード、パトロールモードなどがあり、英語で数種類の音声コントロールも可能だ。樹脂製の球殻内にスッポリ収まるリモコンカーが内部を走ることにより、本体が転がりながら移動する。また、本体内の上部と頭の下部には磁石が2つずつ内蔵されていて、本体が転がっている間も、頭部はほぼ同じ位置にある。頭部無しで本体だけでも動かすことができる。本体内下部と、充電ベース内部にはコイルがあり、電磁誘導により非接触で充電できる。
分解した内部の様子はここ→http://tanosimukoto.com/archives/827
元となった「Sphero」という球状のおもちゃはココ→http://www.kotaku.jp/2015/04/how-the-hell-does-bb-8-move.html
気象データロガーDT-174Bの使用例 山本の発表
2015年6月例会で宮田さんから紹介があった「USB温度/湿度/気圧データロガー・DT-174B」(製造元:米国CEM社)を購入し、半年間、いろいろなものを手当たり次第に測定してみた。スリムなスティック型、直接PCのUSB端子に挿してデータの吸い出しやセットアップができる。機能が限定されている分だけシンプルで非常に使い勝手のよいデータロガーである。
測定間隔は1分~18時間。10000点の観測データを本体内にメモリーできる。1分間隔でも1週間弱の連続観測が可能だ。リチウム電池1個で半年以上、電池交換なしに連続観測できる。右は、2015/12/11の低気圧通過時のデータ。緑色の気圧(hPa)のグラフが台風並みに発達した低気圧の中心通過をとらえている。
YPCではおなじみとなった飛行機の機内気圧の測定(左)も簡単。手荷物で持ち込める。一方、新幹線の車内の気圧(右)は非常に激しい変化を示した。トンネル通過時の変化と思われるが、新幹線車両は気密構造のはずなのにかなり大きな変化、しかも減圧方向の変化だったのが意外である。いずれ詳しく調べてみたい。新幹線ではないがこのサイトの記事が参考になりそうだ→http://trashbox.homeip.net/nownow/20140511/ 気圧センサー内蔵スマホならこんな実験もできるというわけだ。
10月に数日間家を留守にした間、冷蔵庫内にデータロガーを放り込んでおいた。ドアの開閉のない静穏な環境の元で、サーモスタットや自動霜取り装置の動作についての興味深いデータが得られた(左)。湿度の変化が特徴的である。
山登りにも携行してみたが、変化があって面白いのはスキーのゲレンデに持参したときのデータ(右)である。リフトで上昇、コースを滑降などの行動との対応がつけやすく、施設の位置がはっきりしているので地形図から正確な標高を読み取ることができる。高度と気圧・気温の対応関係を調べるよい教材になりそうだ。
カラフルマグネット 海後さんの発表
海後さんはダイソーで5mm球形ネオジムマグネットを発見して購入。以前にネオキューブを購入して色々な形を作って楽しんでいたが単価が同程度で色が赤・金・緑・紫の4色なのが嬉しい。同じダイソーのホワイトボード上に付けると掲示しやすく、アーチやタワーなど立体的な形も組める。耐久性も確認できたので、もっと欲しくて近所のダイソーを探し歩いたが見つからず、店員に大量発注した。
熱量・熱容量・比熱 車田さんの発表
車田さんは、比熱が異なり、温度が違う物体を接触させ、熱平衡になるときの計算過程を授業で説明するにあたり、3Dグラフ表示の手法を試してみた。比熱、質量、温度を3軸とする3Dグラフで表すと、熱容量は直方体の底面積、熱量は直方体の体積に対応付けられる。同じ高さ(温度)になるまでに移動する体積(熱量)が等しいというわけだ。授業では生徒に好評だったという。
二次会 横浜天理ビル25階「北海道」にて
19人が参加してカンパーイ!高層ビルの上にある居酒屋で、横浜の中心街を眼下に見下ろしながら杯を交わす。初参加の学生さん二人も参加してくれた。二人とも4月から神奈川県に新採用になるとのこと。若い世代の活躍に大いに期待したい。
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